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崩れていく、何もかも
25話 遠ざかる背中は
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ゲーム内の王子達は仲の良い兄弟で、意見の食い違いはあれどここまで険悪な雰囲気では無かったはずだ
酸素が薄いのだろうか
やけに息が苦しい
気を抜けば息切れがしそうな程に張り詰めた空間
「姉上、私に用とは?」
「あ…迷惑をかけてしまったので謝罪をと……。それと、私を襲った刺客達の事で相談したいと思って探していました」
重たい空気に本来の目的を忘れかけていた
ただ、あまりにも『騎士団長が僕に刺客を差し向けた』と言うことが理解出来ない
どう言うことかとアズに尋ねようとした
「お前を狙ったのは騎士団長だ」
尋ねる前に答えを告げたのは僕の一応夫であるハルジオンだ
部屋の外に聞こえた声からして、アズやリージュに告げたのもハルジオンだろう
騎士団長ならば僕を狙う動機はある
それでも、おかしな点がどうしても出てきてしまう
「……王太子殿下、それは有り得ません。騎士団長は私が襲われる直前に剣をくれました。本当に刺客を向けたのであればそんなことはしませんよね…?」
「「「!」」」
僕の髪のような赤い剣
刺客達から身を守れたのは、騎士団長があの時剣をくれたからだ
僕は、犯人が彼であるとは考えられない
「剣を与えたところで女の身で守れないと思ったのだろう」
「でもハル兄様、姉様は騎士団長と戦って勝ってたよ…?」
そう、騎士団長が手加減していたかどうかに関わらず僕は勝った
剣を交えて、騎士団長は刺客よりも圧倒的に強いと分かっている
自分より弱い刺客達を向けておいて僕に剣を渡すのはあまりにもおかしい
「騎士団長の部屋からは証拠も出てきているんだ。刺客達との契約書がな」
「でも、私は確かに騎士団長がくれた剣に救われ……」
「何を言おうと無駄だ。騎士団長はつい先程ーーー」
……え?
僕は、ハルジオンの最後の言葉を理解するまでかなりの時間がかかった
強く、聡い人が
光のような優しい人が
僕を真っ直ぐ見て、当たり前のように笑いかけてくれた人が
『騎士団長はつい先程、俺が処刑した』
騎士団長が、死んだ
アズが取り乱していたのも、リージュが今にも涙を零しそうなのも、つい先程まで笑っていた彼が死んだからだった
そんな中、彼の死刑を執行した僕の愛する夫は無表情だ
冷たい目で、真っ直ぐに僕を見つめている
……訂正、ハルジオンは真っ直ぐに僕を睨みつけている
僕は嫌われているのだと
今ではそんなことどうでも良くなっていた
誰に愛され誰に嫌われようともどうだっていい
それでも、僕の大切な人が死んだことはどうでもよくなんて無かった
この時、僕はまだ人の死で涙を流す『心』があったのだと知った
そしてその『心』は、何重もの鎖でさらに閉じ込めた
この瞬間から僕は本当に狂って行ったんだ
酸素が薄いのだろうか
やけに息が苦しい
気を抜けば息切れがしそうな程に張り詰めた空間
「姉上、私に用とは?」
「あ…迷惑をかけてしまったので謝罪をと……。それと、私を襲った刺客達の事で相談したいと思って探していました」
重たい空気に本来の目的を忘れかけていた
ただ、あまりにも『騎士団長が僕に刺客を差し向けた』と言うことが理解出来ない
どう言うことかとアズに尋ねようとした
「お前を狙ったのは騎士団長だ」
尋ねる前に答えを告げたのは僕の一応夫であるハルジオンだ
部屋の外に聞こえた声からして、アズやリージュに告げたのもハルジオンだろう
騎士団長ならば僕を狙う動機はある
それでも、おかしな点がどうしても出てきてしまう
「……王太子殿下、それは有り得ません。騎士団長は私が襲われる直前に剣をくれました。本当に刺客を向けたのであればそんなことはしませんよね…?」
「「「!」」」
僕の髪のような赤い剣
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僕は、犯人が彼であるとは考えられない
「剣を与えたところで女の身で守れないと思ったのだろう」
「でもハル兄様、姉様は騎士団長と戦って勝ってたよ…?」
そう、騎士団長が手加減していたかどうかに関わらず僕は勝った
剣を交えて、騎士団長は刺客よりも圧倒的に強いと分かっている
自分より弱い刺客達を向けておいて僕に剣を渡すのはあまりにもおかしい
「騎士団長の部屋からは証拠も出てきているんだ。刺客達との契約書がな」
「でも、私は確かに騎士団長がくれた剣に救われ……」
「何を言おうと無駄だ。騎士団長はつい先程ーーー」
……え?
僕は、ハルジオンの最後の言葉を理解するまでかなりの時間がかかった
強く、聡い人が
光のような優しい人が
僕を真っ直ぐ見て、当たり前のように笑いかけてくれた人が
『騎士団長はつい先程、俺が処刑した』
騎士団長が、死んだ
アズが取り乱していたのも、リージュが今にも涙を零しそうなのも、つい先程まで笑っていた彼が死んだからだった
そんな中、彼の死刑を執行した僕の愛する夫は無表情だ
冷たい目で、真っ直ぐに僕を見つめている
……訂正、ハルジオンは真っ直ぐに僕を睨みつけている
僕は嫌われているのだと
今ではそんなことどうでも良くなっていた
誰に愛され誰に嫌われようともどうだっていい
それでも、僕の大切な人が死んだことはどうでもよくなんて無かった
この時、僕はまだ人の死で涙を流す『心』があったのだと知った
そしてその『心』は、何重もの鎖でさらに閉じ込めた
この瞬間から僕は本当に狂って行ったんだ
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