【完】悪女と呼ばれた悪役令息〜身代わりの花嫁〜

輝石玲

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ただいま

135話 一生の傷跡

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それぞれの状況を話した後、エルシードとエリーは医師にディンが目覚めたことを報告しに行った
この部屋には僕とディンの2人
今までのことがフラッシュバックしてしまう

ディンを助けた時のこと
赤い瞳を知った時のこと
ディンが回復して手合わせした時のこと
涙を拭ってくれた時のこと
体を重ねた夜のこと
ディンが血を流して倒れてた時のこと


「どうした、なんで急に泣き出すんだ?」
「なんか、自分が情けなくて。腕…ごめんなさい」
「お前のせいじゃねぇよ」

ディンは右手で僕の頭を撫でた
その手は温かくて、ちゃんと生きている温度である事に安心する

「……ん?ミリー、お前…魔力どうした?」
「え?」
「人間離れしてた魔力が全く感じられない。……お前、魔力が使えなくなったんじゃ……」

気付くのが早すぎる
それでも今は心配させたく無い
確かに僕は二度と魔力を使えないけど、今はそれを知らないフリをしよう

「大丈夫、今は空っぽだけどそのうち回復するよ」
「本当か?」
「うん。っていうか、ディンは僕より自分の心配した方がいいと思うよ。片腕じゃ色々と大変だろうし」

ディンはじっと僕を見つめている
嘘だってバレたかな
いやきっと大丈夫、嘘だって分かるようなことは何も無いはず

「ミリー、その杖…お前のか?」
「え?あぁ、そうだけど」
「……ミリー、正直に話せ。お前も何かしら後遺症があるんじゃないのか?」

やっぱり僕って嘘が下手なのかな
秒でバレてる…
大丈夫って言っても信じて貰えなさそうだな

「……その、脚に上手く力が入らなくなって、今はリハビリ中」
「他には?」
「うぅ…、はぁ、魔力が二度と使えなくなった。本当にこれで全部だから…」

ディンはそれを聞くなり大きなため息を吐いた
目覚めたばかりとは思えない程軽々と僕を引っ張ると、片腕で僕を抱きしめた

「無茶をしすぎだ…!それでお前が死んだらどうする気だったんだ」
「ご、ごめん…なさい……」
「……ん?おい、これは聞いてないな」

ディンは僕を抱きしめる手をそのまま腰に回して服をたくし上げた
服が薄いせいで包帯に気付いたんだ
ちょっとの変化にすぐ気付く

「なんか拳銃で撃たれたんだって。もう傷は塞がってる」
「はぁ…本当に無茶を……」
「満身創痍のディンに言われたくは無いな」

体中縫った人が何を言ってるんだか
僕は足が不自由になったけど失ってはいない
銃で撃たれたけど一発だけ
どう考えてもディンの方が重症なのに

僕は傷に触れないようそっとディンを抱きしめた

「……本当に、生きててよかった。もう二度と死のうとしないで…!」
「そうだな、死んでたら今お前に触れる事も出来なかっただろうな。……ごめんな、ミリー」

確かに動いているディンの心臓の鼓動を感じた
その音が心地良いのか、段々と意識が遠のいて行く
僕はそのまま眠ってしまった



ーーーーーーーーーー



眠ったミリーを片腕でなんとか横に寝かせた
ミリーは全て自分のせいだと思っているのだろうか
俺の勝手に付き合わされている立場だと言うのに


ドアを叩く音

「アスフォデルです。カメリアはいますか?」
「第二王子か。あぁ、いるぞ」

俺が返事したことに疑問を持った第二王子が部屋に入った
まぁ、ミリーは寝てるから返事出来ねぇしな

「泣き疲れて眠ってる。起こしてやるなよ」
「……そうですか。分かりました」

第二王子はそう言って何の迷いもなくミリーを抱き抱えた
言葉や表情からあまり俺の近くに置きたくないらしい
分かりやすい牽制
それでもミリーは気付いていないのか……

「そう言えば、襲った事に関してカメリアは否定していました。嘘を吐いたのですか?」
「…否定したのか。本人がどう言えど俺からしたら襲ったも同然だ」
「では、やはりカメリアを………」

まぁ、それは不変の事実だ
それを改めて知った第二王子は悔しそうな顔をしてミリーを連れて行った
そう言えば、あいつはあの夜が初めてだった
あぁ……我ながら最悪だ
こんな時に悦に浸ってしまうなんてな


ニヤける口元を必死で抑えながら医師を待ち続けた
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