【完】天使な淫魔は勇者に愛を教わる。

輝石玲

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64.ただの一人

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 散々抱かれて気が狂いそうになったが、と言うか狂ったが、結局は慣れない体で無茶をしたイオリが先にダウンした。まぁ、オレも力を取り戻してるからな。スケールが違うのは仕方がない。
 後始末を終えるとすぐに眠ってしまった。


 隣でぐっすり眠るイオリの頭を撫で、ベッドから降りてカーテンを開けた。ベランダにやけに集まっている聖なる子ら。オレの魔法の影響で部屋に入れないからベランダで待ってたのか。
 ……いやさ?流石に力の粒子と言えど自我のあるこの子達に行為を見られたくは無いし。ちょっとの間だけ出禁にしてただけだ。

 それにしてもこんなにどうしたんだ?
 ベランダに出ると聖なる子らはオレに纏わりつき、声を掛けた。神じゃ無いオレに声を聴かせるなんて、一体何があったんだろうか。


(聞いて、聞いて、光の子。)


 幼い声が重なり、頭の中に直接響く。声がある事は知ってたけど、聞くのは初めてだ。


「どうした?」
(最後の天使、怖いの。この世界じゃない、大きな力が見えた。)


 最後の天使?
 聖なる子らは堕天使を天使とは認めない。マイヤの事じゃ無いのだろう。なら、ヴィントか?
 でもあいつが最後なら、他の天使はどうなった?

 その疑問を読み取ったのか、頭に直接映像を見せて教えてくれた。



 ーーーーーーーーーー



 天空宮の本殿。我らが集う聖なる場所。
 一人の異人がその場を汚した。




「……何者だ。」


 張り詰めた風の声。その天使の前には神聖な龍。


「私は櫻。お前を見込んで取り引きをしに来たのだ。」
「取り引きだと?」
「………力が欲しく無いか?」


 風は吹き荒れる。神聖な龍と風は、白い子をたくさん壊してしまった。
 贄を与えられた風は威力を増し、今にもこの世を壊そうとしている。

 龍は風に告げていた。力が欲しくば、人を滅ぼせと。



 ーーーーーミカーーーーー



 力をやるから人間を滅ぼせって言われて呑んだのか、あいつ。しかも力を得る方法が、他の天使を贄に…養分にすること。
 オレが滅ぼすべき天使はヴィントの一人だけ。ただ、かなり強化されている。
 倒すべき敵の数は大幅に減ったが、天使全ての力を持つたった一人を倒すとなると難しいかもしれない。


(残された光の子。)
「ん?」
(この世界の神になって。そして、世界を守って。)


 神になれ、か…
 確かに正式に神に昇格すれば、今より力を得ることになるだろう。
 サクラは神だと考えていいだろうし、このままじゃ勝ち目なんてないに等しい。ヴィントも天使の力を大量に手に入れたなら、死んだ神よりも強いはず。しかも戦闘の天使ともなれば実力はかなり強いだろう。この二人を相手にするのに今のオレじゃ勝てない可能性だって全然ある。
 最悪、オレを殺す力まであるかもしれない。
 でも……


「悪いな。オレは神にもならないし世界を守る気も無いんだ。」
(……!何故?)
「オレは神でも大天使でもなく『ミカ』として恋人と家族を守りたい。お前たちがオレに何度も力を貸してくれたことは感謝してる。でも、お前たちに恩を返せない最低なオレは神になる資格もねぇよ。」


 それからなんの返事も無くなった。とうとう見限られたかな。それでもオレは神になりたくない。ただの個人で勝手に動きたいから。

 聖なる子らがそれぞれ散り散りにどこかへ行くと、ぐっすり眠っていたイオリが目を覚ました。
 部屋の中にオレがいないと慌てていたが、ベランダにいると気付くとホッとしていた。起きて真っ先にオレを探すなんて可愛いな。


「おはよう、ミカ。そんなとこで何してるんだ?」


 上裸のままベランダに来ようとする寝ぼけてるイオリを部屋に戻し、聖なる子らに教えてもらったことを教えた。
 オレからすれば二人の敵を一気に片付けるチャンスだが、イオリからすれば一応父親と戦うことになる。それなりに思うこともあるだろう。

 そう思っていたが、イオリはサクラと戦うことになんの抵抗も示さなかった。同じ体で記憶があっても、あいつは父親とは別人だと。


「イオリって執着すごいのに、たまにあっさりしてるよなぁ。」
「そうか?……まぁ、思い当たる節はあるな。」


 なんて苦笑するイオリ。
 ……とりあえず、さっさと服を着てくれ。見慣れてるはずなのになんか恥ずかしいから。

 イオリが服を取りに行こうと背を向けたとき、うなじにうっすらと鱗が見えた。一応指摘したが、それだけは消せないらしい。本当に薄らだから見られることは無いと思うけど、万が一見られたら事情を知らない人は混乱するだろうな。まぁ見られることは無いだろうけど。




 とりあえず、幸せを堪能するのはここまでだ。こっから先は敵を倒してからだ。
 本当はイオリを前線に出したく無いんだけど、本当にオレの言うことなんか聞いちゃくれないから諦めた。その代わり、自分を優先させることとオレを守らないことだけ約束させた。ディークの時に守られること自体がトラウマになったからな。


 人間の国は人間に任せて、堕天した大天使のオレと半分人間じゃないイオリの二人のバケモノ様が一肌脱いで来よう。
 大天使という立場に苦しめられたオレも、人間として育ち人間じゃなかったイオリも、今は自分の種族で納得してる。
 大切な人を守る力があるのなら、オレたちは化け物にだって喜んでなってやる。



 そして二人はそれぞれ大天使と龍の黒い翼を広げ、ベランダから最後の決戦の場として選んだ天空宮に向かった。
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