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復讐の旅、開始!
10.俺のための装備品
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メガネの人が死体を運んでる間に店の武器を見させてもらった。
「気になるのがあれば試してもえぇぞ!」
気になるの、かぁ…。正直あの剣は使いやすかった。切れ味が良くて、刃が薄いのに頑丈だった。ただ刃が軽くて柄の方が重いと振る時に勢いが付きづらかったし、いくら頑丈でも力の入れ方を間違えたら折れそうだ。どちらかと言うと速度重視って感じの剣なのだろうか。
ただ、速度重視も悪く無い。頑丈な鱗や盾が無ければ何度も斬りつけて失血死を狙える。俺も腕力に自信は無いがスピードは自信がある。
となれば軽いものがいいだろうか。いや、パワーが無いからこそ力の入りやすいものの方がいいか?スピードを潰さずに力を入れやすい武器……あ。
「爺さん、重量のある短剣はあるか?出来れば二本セットがいいんだが…」
「注文が多いわい!だが喜べ、あるぞ!」
「よし来た!」
なんだかんだこの爺さんのノリに乗れるようになったな。最初は五月蝿いが慣れれば楽しい人だ。
爺さんは一枚板の机に2セット、四本の短剣を並べた。片方は金属っぽい材質の鞘に収められた黒とシルバーの短剣。もう片方は大理石模様の石の鞘に収められた真っ黒なで不透明なガラスのような短剣。
鞘から出して見比べると、シルバーの短剣は刃が鋭いが黒い短剣は刃が潰れていた。
「こっちは一般的なナイフだ。切れ味も強度も確かで誰だって使えるが、ちょっとばかし切れ味が良すぎてケガしやすいのが難点だ。で、こっちの黒いのは特殊で『魔力武装』を使わねぇとただのガラスの鈍器だ」
「魔力武装?」
「武器に魔力を纏わせるアレだ」
アレじゃ分からないに決まってるだろ。説明を放棄するなよ職人。なんて呆れてると、グルーが腰にかけてる細身の剣をスラリと抜いた。
「ヤト、見ていてください」
そう言ってグルーが剣に魔力を流すと、よくある鉄の剣はあっという間に形が変わって俺の背丈くらいある黒と赤の大剣になった。すげぇ!何コレ!これが魔力武装!?
「私は人より変化が起きやすいのですが…最低限できるようになると形は変わらずに強化されたりもします。おそらくその黒曜石の短剣は魔力を纏わせることで鋭利になるでしょう」
「おっ、なかなか詳しいじゃねぇの。あぁその通りだ。刃物を使う初心者の中には潰れた剣に魔力を流して戦う奴もいるもんだ」
「ですが店主、黒曜石は素材としてあまり適していないのでは?矢尻や包丁、槍に使われてもこの大きさのナイフとなれば壊れやすいと思うのですが」
く、詳しい……。俺は『こくようせきって何?』のレベルにいるから何となくしか分かってない。話の流れ的に、たぶん使われてる材料…とかか?で、それはそこまで硬いわけじゃないと。
「へっ、そこで活躍したのがアル坊だ!」
「アル坊?って?」
「さっきのメガネの人間さ!アイツのスキルは物の情報を読み取る能力らしくてなぁ、ワシがここの一角を貸してやる代わりに硬えのを提供してもらってんだ!それをこのワシが鍛えてやることで、ただの鉄とは比にならねぇのを作り出してるってェワケだ」
実際に持ってみろと渡された黒曜石のナイフ。持っただけでしっかりしてるのが分かる。手触りもいいし、これで人を殴ったら骨くらいは簡単に逝きそうだな…。
魔力武装が気になったから、グルーに魔力を流した時のようにナイフに流してみた。するとナイフは淡く光り、グルーが言った通りに鋭利になった。
「試し切りしてみるか?」
「あぁ!」
若干血溜まりの残る訓練場に行き。立てて固定された丸太を切ってみることになった。
しっかりと持ち手を握って魔力を流す。…ちょっと多めに流してみよっ。
「…ん?うわっ!何コレ!?」
「ぁん?おい、何があったん…だぁ!?マジか!テメェ、コイツに選ばれてやがる!」
え、選ば…!?ナイフが俺を選んだのか!?
急に何かが手とナイフを巻きつけたような感覚がしたと思ったら、刃と柄の境目近くに三日月型の穴が空いた。あ…商品が形変わって…って、そういえば魔力武装って形変わるんだっけ。
じゃあ、この手とナイフを固定するような感覚が特殊なんだ。これがナイフに選ばれる感覚…なんだかさっきよりも手に馴染むな。
とりあえず、試しに丸太を切ってみるか!
「はぁッ!」
………ん?あ、あれ?ナイフって木を切る道具じゃ無いよな?なんで丸太がこんな綺麗に真っ二つに切れてるんだ…?
切る感覚はあった。でもつっかえる感覚は無くて、包丁で芋を切るみたいに切れた。
何この新感覚…!なんか楽しい!
訓練場から店に戻ってナイフを鞘にしまおうとした。が…
「あれっ、三日月の穴が戻らない…」
やっべ、商品のデザイン変えちゃったっぽい。ど、どうしよう………
「とりあえずソイツはもうテメェのモンだ」
「え?」
「武器の方からテメェを選んだんだ!なら貰ってやんのが筋ってもんだ!」
えっと、つまり、金を払う前から俺のナイフになったってこと…?そりゃあ俺は一文無しだからグルーに買ってもらうことにはなってるけど、タダより怖いものは無いって言うくらいだしなんか怖い!
「いいか大事に使ってやれよ!武器のほとんどが自分の求める使い手に出会えねぇんだからよ!」
「も、貰っていいのか?」
「あぁそうだ、それはもうテメェの一部だからな!ガッハッハ!」
よ、よく分からないけど爺さんが嬉しそうにするならいいか。
そんな感じで黒曜石のナイフを二本手に入れた。両手に短剣、これが俺の考える最適解だ。
そう言えばステータスで『三つの神器』とか書いてあったよな。このナイフが俺を選んだならコレが神器じゃないのか?一応ステータスを爺さんの見えないとこでコソッと確認した。けど三つにこのナイフは含まれてないようだ。
少し気になって『三つの神器』の文字に触れてみた。やっぱり詳細が更にあった!
えーっと…三つの神器は『流星のレイピア』『三日月の弓』『望月の御杖』って名前か。なるほど、レイピアに弓に杖…系統がバラバラだけど全部武器だ。そして全部夜空に関係する名前。『宵』が名前なだけあって夜とは関係が深そうだ。
神器の詳細も見れるようで、それぞれを確認した。
流星のレイピアは『朔日に血を浴び顕現』と書いてある。物騒だな。そして朔日は過ぎたばっかだぞ。
三日月の弓は『兎の血を飲み顕現』と書いてある。うぇっ…飲むのかよ……。まったく、なんつー儀式をさせるんだ。
望月の御杖は『××が所有』と書いてある。これだけ顕現させるんじゃ無いのかい!そして誰かが持ってんの!?誰だよ××は!
●●●
俺の武器が決まって、最後に店に並んでるものを眺めているときにさっきのメガネ…アル坊がひょっこりと戻ってきた。…血だらけで。
「テメェ血生臭ェまま上がってくんなつってんだろうが!」
「ごっ、ごめんなさいぃ…!そのっ、下に見覚えない袋があったので…」
上がってくんな?下に?地下室に居たってことか。地下室であの死体に何をしてたんだアル坊…。そんなアル坊の手には太陽のマークの巾着袋があった。
「おや?その袋…太陽神の紋章が刻まれていますね。神官か信徒でも来たのですか?」
「あー…、そういやぁさっき変なヤツが来てよ、何も買わずにコレだけ置いて行きやがったんだ。マント被ってたから顔も見えなかったが変なこと言ってさっさと消えやがってよォ」
なんだそれ怖っ。太陽神の紋章って…宗教勧誘かなんかでも来たのか?
「ソイツは『夜に渡してくれ』とかワケ分からんこと呟いてて、不気味だったからゴミ箱に突っ込んだんだ」
…………なんだろう、すっごく変な感じ。『夜に渡してくれ』?夜に…宵に?いや、そんな、まさか…だよな?
「…アル坊、その袋見せろ!」
「ひぁっ!?は、はひっ…!」
巾着袋をぶん取…受け取って中身を机に出した。中に入ってるのは緋色の石が垂れたピアスと、ボロボロの黒いミサンガと綺麗な白いミサンガ。それから『耳飾りを肌身離さず』と日本語で書かれたメモ。
……まだ確信は出来ない。だけど可能性はかなり高い。緋色のピアスは見たこと無いが、二本のミサンガは見覚えがある。白と黒…、アイツが俺にくれた白いミサンガは数年前に切れた。黒いミサンガはアイツと一緒に消えた。
そういう、ことなのか…?
「……これ、たぶん俺宛てだ」
「フゥン…どうせ捨てるヤツだ、持ってけばいい。が…アル坊に謝っとけよ」
え?ちらっとアル坊を見ると、驚き過ぎて地面に座り込んで泣いていた。やっぱり無理矢理奪うのは良く無かったか。
「わ、悪かった……」
「ひゃい……」
本当に大丈夫なのかこの人。ガタガタ震えてるけど。
「とと、ところで…、グルーさんの剣、おっ、お城の支給品じゃ……。ば、バレちゃいます、よ…?」
「…やっぱり貴方、城にいましたよね?」
ん…?顔見知り……?アル坊、グルーの名前知ってるし、城にいたなら俺たちの敵ってことじゃ…。
「ひぇっ!ごご、ごめんなさい…ごめんなさい……!そのっ、お二人のことは誰にも言いませんからっ、命だけはぁ……!」
「えっと、何コレ」
「彼を以前城で見かけたことがありまして、まさか私のことを知ってるとは思いませんでしたが…」
「あっ、五年ほど前にお城勤めの人の顔と名前と多少の情報を全て暗記しまして、その時に…」
待て待て、全員?あの規模じゃ何百人と居たっておかしく無いよな?兵士から使用人から他にも…それ全部?
「その、と、特にグルーさんはお若く見えるのに四十代と知って驚きまして…」
「四十!?」
「……年齢の話はご遠慮願います」
嘘だ!どう見たって二十代後半か、行っても三十前半!俺の倍以上あるとかマジか!?それにグルー自身も気にしてるのかよ!
それにしたって、城の関係者に見つかったのは相当な痛手じゃないのか?口封じに殺す…のは抵抗あるな、この人。流石に弱いものイジメか?
「とりあえず、俺たちの居場所が城にバレるのはマズいんだよな」
「あぅ…そのぉ……、わ、私も実は追われてましてぇ……。三年前に脱走しちゃってるんです……」
対人恐怖症も重症になると無断で仕事から逃げることがあるのか?いやいやダメだろ!てへっ、て感じで笑うんじゃ無いよ笑えねぇだろうが!?
「ガッハッハァ!こんな愉快な人間もそうそういねェだろ?だからワシはコイツを側に置いてやってんだ!」
「うぅ…私はずっとイヴァル爺が怖いです……」
「あ゛ぁ?」
「ひぇっ…!」
ま、まぁ仲は悪く無さそう…だな?
●●●
グルーが新しく剣を買って、武器は揃え終わった。ついでにナイフをセットするホルスターの付いたベルトを買ってもらってすぐにシャツの上から着けた。
ナイフはホルスターにセットして、巾着袋は二つのミサンガをしまってアイテムボックスに入れた。ピアスは…俺、穴空いて無いんだよな。ま、いっか。
「ヤト!」
ぶちっ
……ってぇ!やっぱり痛い!流石に無理矢理刺すのは良くなかったか?血も出てるし…グルーもすぐに気付いて俺を止めようとしてたし。だってピアスの穴の開け方とか知らねぇもん。こんなとこに安全ピンなんて無いだろうし。片方だけで良かった、痛いのは右耳だけで済んだ。
グルーがすぐにハンカチで止血して絆創膏をピアスの上から貼ってくれた。ピアスは穴が安定するまで外したらダメらしい。本当に肌身離さず着ける事になりそうだ。
グルー、ピアスの開け方とか詳しいなって思ってたら、よく見ると透明なピアスが着いてることに気付いた。なるほど経験者か……って、耳たぶ以外にも耳に開けてる!?
●●●
準備は整い、とうとう旅立ちの時だ。アル坊とイヴァル爺にお礼を伝えて店を出た。
「あばよー!」
「さ、さようならっ!」
そう言って手を振って見送ってくれた二人の姿が見えなくなるほど離れた。
「……ヤト、先ほどの袋のことですが…」
「俺の予想が正しければやっぱりもう一人この世界に来てる。そしてそいつは…人間じゃない、俺と同類の何かだ」
白いミサンガは元の世界で切れた。なのに綺麗なのが入ってたってことは新しいのを作ったってことだ。
そして黒いミサンガは、送り主が誰かを教えるために入れたもの。ボロボロだけど分かる。上手く作れなくて曲がったところがそのままだ。十年前のことでもよく覚えている。
「俺の兄がこの世界に来てる…たぶんだけどな」
そして俺の動きを把握してる。近くにいる。………絶対に見つけ出して締め上げてやる……!
「気になるのがあれば試してもえぇぞ!」
気になるの、かぁ…。正直あの剣は使いやすかった。切れ味が良くて、刃が薄いのに頑丈だった。ただ刃が軽くて柄の方が重いと振る時に勢いが付きづらかったし、いくら頑丈でも力の入れ方を間違えたら折れそうだ。どちらかと言うと速度重視って感じの剣なのだろうか。
ただ、速度重視も悪く無い。頑丈な鱗や盾が無ければ何度も斬りつけて失血死を狙える。俺も腕力に自信は無いがスピードは自信がある。
となれば軽いものがいいだろうか。いや、パワーが無いからこそ力の入りやすいものの方がいいか?スピードを潰さずに力を入れやすい武器……あ。
「爺さん、重量のある短剣はあるか?出来れば二本セットがいいんだが…」
「注文が多いわい!だが喜べ、あるぞ!」
「よし来た!」
なんだかんだこの爺さんのノリに乗れるようになったな。最初は五月蝿いが慣れれば楽しい人だ。
爺さんは一枚板の机に2セット、四本の短剣を並べた。片方は金属っぽい材質の鞘に収められた黒とシルバーの短剣。もう片方は大理石模様の石の鞘に収められた真っ黒なで不透明なガラスのような短剣。
鞘から出して見比べると、シルバーの短剣は刃が鋭いが黒い短剣は刃が潰れていた。
「こっちは一般的なナイフだ。切れ味も強度も確かで誰だって使えるが、ちょっとばかし切れ味が良すぎてケガしやすいのが難点だ。で、こっちの黒いのは特殊で『魔力武装』を使わねぇとただのガラスの鈍器だ」
「魔力武装?」
「武器に魔力を纏わせるアレだ」
アレじゃ分からないに決まってるだろ。説明を放棄するなよ職人。なんて呆れてると、グルーが腰にかけてる細身の剣をスラリと抜いた。
「ヤト、見ていてください」
そう言ってグルーが剣に魔力を流すと、よくある鉄の剣はあっという間に形が変わって俺の背丈くらいある黒と赤の大剣になった。すげぇ!何コレ!これが魔力武装!?
「私は人より変化が起きやすいのですが…最低限できるようになると形は変わらずに強化されたりもします。おそらくその黒曜石の短剣は魔力を纏わせることで鋭利になるでしょう」
「おっ、なかなか詳しいじゃねぇの。あぁその通りだ。刃物を使う初心者の中には潰れた剣に魔力を流して戦う奴もいるもんだ」
「ですが店主、黒曜石は素材としてあまり適していないのでは?矢尻や包丁、槍に使われてもこの大きさのナイフとなれば壊れやすいと思うのですが」
く、詳しい……。俺は『こくようせきって何?』のレベルにいるから何となくしか分かってない。話の流れ的に、たぶん使われてる材料…とかか?で、それはそこまで硬いわけじゃないと。
「へっ、そこで活躍したのがアル坊だ!」
「アル坊?って?」
「さっきのメガネの人間さ!アイツのスキルは物の情報を読み取る能力らしくてなぁ、ワシがここの一角を貸してやる代わりに硬えのを提供してもらってんだ!それをこのワシが鍛えてやることで、ただの鉄とは比にならねぇのを作り出してるってェワケだ」
実際に持ってみろと渡された黒曜石のナイフ。持っただけでしっかりしてるのが分かる。手触りもいいし、これで人を殴ったら骨くらいは簡単に逝きそうだな…。
魔力武装が気になったから、グルーに魔力を流した時のようにナイフに流してみた。するとナイフは淡く光り、グルーが言った通りに鋭利になった。
「試し切りしてみるか?」
「あぁ!」
若干血溜まりの残る訓練場に行き。立てて固定された丸太を切ってみることになった。
しっかりと持ち手を握って魔力を流す。…ちょっと多めに流してみよっ。
「…ん?うわっ!何コレ!?」
「ぁん?おい、何があったん…だぁ!?マジか!テメェ、コイツに選ばれてやがる!」
え、選ば…!?ナイフが俺を選んだのか!?
急に何かが手とナイフを巻きつけたような感覚がしたと思ったら、刃と柄の境目近くに三日月型の穴が空いた。あ…商品が形変わって…って、そういえば魔力武装って形変わるんだっけ。
じゃあ、この手とナイフを固定するような感覚が特殊なんだ。これがナイフに選ばれる感覚…なんだかさっきよりも手に馴染むな。
とりあえず、試しに丸太を切ってみるか!
「はぁッ!」
………ん?あ、あれ?ナイフって木を切る道具じゃ無いよな?なんで丸太がこんな綺麗に真っ二つに切れてるんだ…?
切る感覚はあった。でもつっかえる感覚は無くて、包丁で芋を切るみたいに切れた。
何この新感覚…!なんか楽しい!
訓練場から店に戻ってナイフを鞘にしまおうとした。が…
「あれっ、三日月の穴が戻らない…」
やっべ、商品のデザイン変えちゃったっぽい。ど、どうしよう………
「とりあえずソイツはもうテメェのモンだ」
「え?」
「武器の方からテメェを選んだんだ!なら貰ってやんのが筋ってもんだ!」
えっと、つまり、金を払う前から俺のナイフになったってこと…?そりゃあ俺は一文無しだからグルーに買ってもらうことにはなってるけど、タダより怖いものは無いって言うくらいだしなんか怖い!
「いいか大事に使ってやれよ!武器のほとんどが自分の求める使い手に出会えねぇんだからよ!」
「も、貰っていいのか?」
「あぁそうだ、それはもうテメェの一部だからな!ガッハッハ!」
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神器の詳細も見れるようで、それぞれを確認した。
流星のレイピアは『朔日に血を浴び顕現』と書いてある。物騒だな。そして朔日は過ぎたばっかだぞ。
三日月の弓は『兎の血を飲み顕現』と書いてある。うぇっ…飲むのかよ……。まったく、なんつー儀式をさせるんだ。
望月の御杖は『××が所有』と書いてある。これだけ顕現させるんじゃ無いのかい!そして誰かが持ってんの!?誰だよ××は!
●●●
俺の武器が決まって、最後に店に並んでるものを眺めているときにさっきのメガネ…アル坊がひょっこりと戻ってきた。…血だらけで。
「テメェ血生臭ェまま上がってくんなつってんだろうが!」
「ごっ、ごめんなさいぃ…!そのっ、下に見覚えない袋があったので…」
上がってくんな?下に?地下室に居たってことか。地下室であの死体に何をしてたんだアル坊…。そんなアル坊の手には太陽のマークの巾着袋があった。
「おや?その袋…太陽神の紋章が刻まれていますね。神官か信徒でも来たのですか?」
「あー…、そういやぁさっき変なヤツが来てよ、何も買わずにコレだけ置いて行きやがったんだ。マント被ってたから顔も見えなかったが変なこと言ってさっさと消えやがってよォ」
なんだそれ怖っ。太陽神の紋章って…宗教勧誘かなんかでも来たのか?
「ソイツは『夜に渡してくれ』とかワケ分からんこと呟いてて、不気味だったからゴミ箱に突っ込んだんだ」
…………なんだろう、すっごく変な感じ。『夜に渡してくれ』?夜に…宵に?いや、そんな、まさか…だよな?
「…アル坊、その袋見せろ!」
「ひぁっ!?は、はひっ…!」
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……まだ確信は出来ない。だけど可能性はかなり高い。緋色のピアスは見たこと無いが、二本のミサンガは見覚えがある。白と黒…、アイツが俺にくれた白いミサンガは数年前に切れた。黒いミサンガはアイツと一緒に消えた。
そういう、ことなのか…?
「……これ、たぶん俺宛てだ」
「フゥン…どうせ捨てるヤツだ、持ってけばいい。が…アル坊に謝っとけよ」
え?ちらっとアル坊を見ると、驚き過ぎて地面に座り込んで泣いていた。やっぱり無理矢理奪うのは良く無かったか。
「わ、悪かった……」
「ひゃい……」
本当に大丈夫なのかこの人。ガタガタ震えてるけど。
「とと、ところで…、グルーさんの剣、おっ、お城の支給品じゃ……。ば、バレちゃいます、よ…?」
「…やっぱり貴方、城にいましたよね?」
ん…?顔見知り……?アル坊、グルーの名前知ってるし、城にいたなら俺たちの敵ってことじゃ…。
「ひぇっ!ごご、ごめんなさい…ごめんなさい……!そのっ、お二人のことは誰にも言いませんからっ、命だけはぁ……!」
「えっと、何コレ」
「彼を以前城で見かけたことがありまして、まさか私のことを知ってるとは思いませんでしたが…」
「あっ、五年ほど前にお城勤めの人の顔と名前と多少の情報を全て暗記しまして、その時に…」
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対人恐怖症も重症になると無断で仕事から逃げることがあるのか?いやいやダメだろ!てへっ、て感じで笑うんじゃ無いよ笑えねぇだろうが!?
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「うぅ…私はずっとイヴァル爺が怖いです……」
「あ゛ぁ?」
「ひぇっ…!」
ま、まぁ仲は悪く無さそう…だな?
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グルーが新しく剣を買って、武器は揃え終わった。ついでにナイフをセットするホルスターの付いたベルトを買ってもらってすぐにシャツの上から着けた。
ナイフはホルスターにセットして、巾着袋は二つのミサンガをしまってアイテムボックスに入れた。ピアスは…俺、穴空いて無いんだよな。ま、いっか。
「ヤト!」
ぶちっ
……ってぇ!やっぱり痛い!流石に無理矢理刺すのは良くなかったか?血も出てるし…グルーもすぐに気付いて俺を止めようとしてたし。だってピアスの穴の開け方とか知らねぇもん。こんなとこに安全ピンなんて無いだろうし。片方だけで良かった、痛いのは右耳だけで済んだ。
グルーがすぐにハンカチで止血して絆創膏をピアスの上から貼ってくれた。ピアスは穴が安定するまで外したらダメらしい。本当に肌身離さず着ける事になりそうだ。
グルー、ピアスの開け方とか詳しいなって思ってたら、よく見ると透明なピアスが着いてることに気付いた。なるほど経験者か……って、耳たぶ以外にも耳に開けてる!?
●●●
準備は整い、とうとう旅立ちの時だ。アル坊とイヴァル爺にお礼を伝えて店を出た。
「あばよー!」
「さ、さようならっ!」
そう言って手を振って見送ってくれた二人の姿が見えなくなるほど離れた。
「……ヤト、先ほどの袋のことですが…」
「俺の予想が正しければやっぱりもう一人この世界に来てる。そしてそいつは…人間じゃない、俺と同類の何かだ」
白いミサンガは元の世界で切れた。なのに綺麗なのが入ってたってことは新しいのを作ったってことだ。
そして黒いミサンガは、送り主が誰かを教えるために入れたもの。ボロボロだけど分かる。上手く作れなくて曲がったところがそのままだ。十年前のことでもよく覚えている。
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