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復讐の旅、開始!
30.魔王の器と恐ろしい姿
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給仕の人が淹れてくれた紅茶と甘いマドレーヌを食べながらグルーを待った。既に二時間が経っていて、ヴィンスはついに俺の肩を枕に昼寝を始めてしまった。なんでも
「何もしないで待つのは性に合わねぇ」
らしい。確かに似合わないな。そのままずるりと頭が落ちて来て、ちょうど膝枕のような状態になった。膝枕の『ような』っていうか膝枕だな、これ。
それでも起きないヴィンス。相当眠かったのか、それとも俺の側にいれば警戒する必要が無いと思ったのか。懐かれてるってことでいいだよな?なんだか大きな子供みたいだ。
動けなくなった俺は、ステータスをもう一度見た。神器の一つ『流星のレイピア』の解放条件…『朔日に血を浴び顕現』の朔日はもうすぐだ。大体あと一週間くらいか?この辺に戦いやすいモンスターがいるか調べてみないとな。
コンコン
「入るぞ」
冷たい声に背筋が凍った。グルーだ。グルーの声が聞こえてすぐにヴィンスも飛び起きた。
部屋に入ったグルーは…姿が変わっていた。
暗めの褐色肌に、露出された腕に見える黒い刺青のような模様。黒光りする太く大きく鋭い角、上に尖った耳にはたくさんのピアス、口を開ければ見える長い牙。何より、ただでさえ高い身長がさらに高くなっている。
服装も髪型も顔の造形もそのまま。それでも別人に見えてしまうほどの恐ろしいオーラ。空気がピリピリする……。
これが、魔王の姿?
「…グルー、なんか機嫌悪い?」
「あぁ、私はまだ王のままにされているらしい。まったく……既に世継ぎはいるというのに、あの狂信者共………」
お、怒ってる………。ただでさえ低い声がさらに低くなってる…。
「はぁ…、ともかくお前達はしばらく待機だ。しばらく寝泊まりする部屋を用意するが、同室か別室かどちらがいいか?」
「えっと……」
「お、オレはどっちでも………」
「じゃあ同室で」
「分かった」
ヴィンス、今にも泣きそうになってる。あんまり一人にしない方がいいかもしれないな。まぁ、俺も一人が嫌なだけだったりもするんだけど。
すぐに部屋は用意されて、俺達はそっちの部屋に移った。移動してすぐに夕飯の時間になり、部屋まで運んできてもらったご馳走を二人で食べた。
「さっすが悪魔の国の城だな!獣人の国とは大違いだ!」
そう言って楽しそうに食べるヴィンス。さっきまでガクガク震えてたくせによく食べるな。まぁ、確かに美味しいもんな。でも俺は…しっかり調理したものよりも野宿の時に食べた肉の方が美味く感じる。
でも………
「結局ここでも肉だな」
「あ?それ以外になんかあんのか?」
「え、魚とか…」
「魚ァ?アレ、そんな美味いか?」
どうやらヴィンスは魚が嫌いらしい。好き嫌い結構ありそうだもんな。……たまに子供みたいだし。
「おい、今失礼なこと考えただろ」
「え、そんなこと……」
「鼻で笑ってたのは無意識か?」
無意識だ。やばいな…隠し事とか苦手かもしれないな、俺。
そんな会話をしながらもフォークは休むことなく、あっという間に食べ終わった。あんまり食べたことないものだったけど、美味しいは美味しかったな。
そして久しぶりの風呂に入ってサッパリしたところで、バスローブを借りて同じベッドに入った。
「あれ、寝る時は狼の姿じゃないのか?」
「せっかくフカフカのベッドがあるのになる意味無ぇだろ」
狼の姿で寝てたのって、寝心地の問題だったのか。やっぱりモフモフだと寝心地いいのだろうか……。
ヴィンスの隣で横になって目を閉じても眠れない。疲れてるはずなのに眠ることを拒否してるみたいだ。
理由は十中八九グルーの事だろうな。俺の知らないグルーの姿、喋り方、冷たい目。今までの甘いグルーはいなくなって、俺のことを嫌いになったみたいに冷たかった。流石に、ショックだな………
「ヤト、寝れねぇか?」
「あっ……ごめん、起こした?」
「いや、昼寝したからか全っ然眠れねぇだけだ」
そりゃあそうだろうよ。まさか、目を閉じてただけでずっと起きてたのか?
「そういやぁ、アイツの魔王の姿見てお前はどう思った?オレは怖かったぜ」
「俺は…どうだろう」
怖く無かったと言えば嘘になる。でも、俺がグルーを怖いと思ったのはその姿が理由じゃない。あんなにも冷たいグルーは初めて見たから、全く知らない人みたいで怖かった。
「なぁ、想像してみろよ。もしあの姿のグルージアに抱かれるってなったらどう思う?」
「………ん?」
「お前が言った事だろ。オレらなら抱かれてもいいって思ってんだろ?でも、あの姿のアイツまで受け入れられるか?」
そ、それは……。いや、怖いとか不快感があるとかそういう事じゃ無くて……体が大きくなってたってことは、もしかしたらアレも………?だとしたら怪我するし無理!
「い、今は無理かも……」
「今じゃなけりゃあいいと?」
「…だって、絶対尻が裂けるだろうし………」
「その心配かよ!」
その心配だよ!未だヴィンスは誤解したままだろうが俺は未経験だからな!?
……いや、そもそもどんな質問だよ!わざわざ魔王の姿で抱く必要無いだろ!?人間に近い姿でも出来そうだったし……って、そもそもグルーが俺を抱く気があるのかどうかすら分からないし。
そうだ、抱く気があるか無いかで言えばヴィンスも分からない。あの時は発情期だったから俺に手を出しただけで、俺自身にはそもそも興味が無いかもしれない。
目の前にいるし直接聞けばいっか。
「なぁ、ヴィンスは俺を抱きたいと思うか?」
「ん?まぁな」
「あっ、そうなんだ」
「………なんだよ悪ぃかよ」
いやだってヴィンス全くそんな素振り見せないし。キスだって一回だけで…って、それは関係無いか?
「今は抑制剤が効いてるから繁殖力が止まってんだよ」
「うわぁ…そりゃあ具合悪くなるよな」
「こればっかは改善が難しいっつってたもんな……。だが、抑制剤もずっと効くわけじゃ無ぇし、そろっと切れるはずだ。まぁ…次の発情期の時は頼んだぜ?」
うーん…この調子じゃ初体験が発情期の狼なんだよな。無事に終わるかすら怪しいし、やっぱりその前に経験くらいしておかないと怪我しそうだ。
「発情期じゃなくても相手するぞ?」
「うーわ」
「おい引くなよ」
俺は淫乱じゃ無いからな。……今のところは。
たぶん一度知ったら戻れなくなる。ルカに『授業』を受けた時に分かったけど、自分の体のコンディションと相手によってはすぐに乱れるだろうから。
はぁ……思い出しただけでスイッチ入りそうだな…………。
「何もしないで待つのは性に合わねぇ」
らしい。確かに似合わないな。そのままずるりと頭が落ちて来て、ちょうど膝枕のような状態になった。膝枕の『ような』っていうか膝枕だな、これ。
それでも起きないヴィンス。相当眠かったのか、それとも俺の側にいれば警戒する必要が無いと思ったのか。懐かれてるってことでいいだよな?なんだか大きな子供みたいだ。
動けなくなった俺は、ステータスをもう一度見た。神器の一つ『流星のレイピア』の解放条件…『朔日に血を浴び顕現』の朔日はもうすぐだ。大体あと一週間くらいか?この辺に戦いやすいモンスターがいるか調べてみないとな。
コンコン
「入るぞ」
冷たい声に背筋が凍った。グルーだ。グルーの声が聞こえてすぐにヴィンスも飛び起きた。
部屋に入ったグルーは…姿が変わっていた。
暗めの褐色肌に、露出された腕に見える黒い刺青のような模様。黒光りする太く大きく鋭い角、上に尖った耳にはたくさんのピアス、口を開ければ見える長い牙。何より、ただでさえ高い身長がさらに高くなっている。
服装も髪型も顔の造形もそのまま。それでも別人に見えてしまうほどの恐ろしいオーラ。空気がピリピリする……。
これが、魔王の姿?
「…グルー、なんか機嫌悪い?」
「あぁ、私はまだ王のままにされているらしい。まったく……既に世継ぎはいるというのに、あの狂信者共………」
お、怒ってる………。ただでさえ低い声がさらに低くなってる…。
「はぁ…、ともかくお前達はしばらく待機だ。しばらく寝泊まりする部屋を用意するが、同室か別室かどちらがいいか?」
「えっと……」
「お、オレはどっちでも………」
「じゃあ同室で」
「分かった」
ヴィンス、今にも泣きそうになってる。あんまり一人にしない方がいいかもしれないな。まぁ、俺も一人が嫌なだけだったりもするんだけど。
すぐに部屋は用意されて、俺達はそっちの部屋に移った。移動してすぐに夕飯の時間になり、部屋まで運んできてもらったご馳走を二人で食べた。
「さっすが悪魔の国の城だな!獣人の国とは大違いだ!」
そう言って楽しそうに食べるヴィンス。さっきまでガクガク震えてたくせによく食べるな。まぁ、確かに美味しいもんな。でも俺は…しっかり調理したものよりも野宿の時に食べた肉の方が美味く感じる。
でも………
「結局ここでも肉だな」
「あ?それ以外になんかあんのか?」
「え、魚とか…」
「魚ァ?アレ、そんな美味いか?」
どうやらヴィンスは魚が嫌いらしい。好き嫌い結構ありそうだもんな。……たまに子供みたいだし。
「おい、今失礼なこと考えただろ」
「え、そんなこと……」
「鼻で笑ってたのは無意識か?」
無意識だ。やばいな…隠し事とか苦手かもしれないな、俺。
そんな会話をしながらもフォークは休むことなく、あっという間に食べ終わった。あんまり食べたことないものだったけど、美味しいは美味しかったな。
そして久しぶりの風呂に入ってサッパリしたところで、バスローブを借りて同じベッドに入った。
「あれ、寝る時は狼の姿じゃないのか?」
「せっかくフカフカのベッドがあるのになる意味無ぇだろ」
狼の姿で寝てたのって、寝心地の問題だったのか。やっぱりモフモフだと寝心地いいのだろうか……。
ヴィンスの隣で横になって目を閉じても眠れない。疲れてるはずなのに眠ることを拒否してるみたいだ。
理由は十中八九グルーの事だろうな。俺の知らないグルーの姿、喋り方、冷たい目。今までの甘いグルーはいなくなって、俺のことを嫌いになったみたいに冷たかった。流石に、ショックだな………
「ヤト、寝れねぇか?」
「あっ……ごめん、起こした?」
「いや、昼寝したからか全っ然眠れねぇだけだ」
そりゃあそうだろうよ。まさか、目を閉じてただけでずっと起きてたのか?
「そういやぁ、アイツの魔王の姿見てお前はどう思った?オレは怖かったぜ」
「俺は…どうだろう」
怖く無かったと言えば嘘になる。でも、俺がグルーを怖いと思ったのはその姿が理由じゃない。あんなにも冷たいグルーは初めて見たから、全く知らない人みたいで怖かった。
「なぁ、想像してみろよ。もしあの姿のグルージアに抱かれるってなったらどう思う?」
「………ん?」
「お前が言った事だろ。オレらなら抱かれてもいいって思ってんだろ?でも、あの姿のアイツまで受け入れられるか?」
そ、それは……。いや、怖いとか不快感があるとかそういう事じゃ無くて……体が大きくなってたってことは、もしかしたらアレも………?だとしたら怪我するし無理!
「い、今は無理かも……」
「今じゃなけりゃあいいと?」
「…だって、絶対尻が裂けるだろうし………」
「その心配かよ!」
その心配だよ!未だヴィンスは誤解したままだろうが俺は未経験だからな!?
……いや、そもそもどんな質問だよ!わざわざ魔王の姿で抱く必要無いだろ!?人間に近い姿でも出来そうだったし……って、そもそもグルーが俺を抱く気があるのかどうかすら分からないし。
そうだ、抱く気があるか無いかで言えばヴィンスも分からない。あの時は発情期だったから俺に手を出しただけで、俺自身にはそもそも興味が無いかもしれない。
目の前にいるし直接聞けばいっか。
「なぁ、ヴィンスは俺を抱きたいと思うか?」
「ん?まぁな」
「あっ、そうなんだ」
「………なんだよ悪ぃかよ」
いやだってヴィンス全くそんな素振り見せないし。キスだって一回だけで…って、それは関係無いか?
「今は抑制剤が効いてるから繁殖力が止まってんだよ」
「うわぁ…そりゃあ具合悪くなるよな」
「こればっかは改善が難しいっつってたもんな……。だが、抑制剤もずっと効くわけじゃ無ぇし、そろっと切れるはずだ。まぁ…次の発情期の時は頼んだぜ?」
うーん…この調子じゃ初体験が発情期の狼なんだよな。無事に終わるかすら怪しいし、やっぱりその前に経験くらいしておかないと怪我しそうだ。
「発情期じゃなくても相手するぞ?」
「うーわ」
「おい引くなよ」
俺は淫乱じゃ無いからな。……今のところは。
たぶん一度知ったら戻れなくなる。ルカに『授業』を受けた時に分かったけど、自分の体のコンディションと相手によってはすぐに乱れるだろうから。
はぁ……思い出しただけでスイッチ入りそうだな…………。
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