召喚され救世主じゃないと言われたが、復讐の旅でなぜか身体を狙われている

輝石玲

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復讐の旅、開始!

31.悪魔の人間への印象

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 悪魔の国に来て三日目。昨日はグルーに会うことすら無かった。なんでも情報交換と復讐の手立てを話し合っているとか。それから王位のことで揉めてるとか……。


 俺とヴィンスは城内の移動を一部だけ許可されたから、図書館に行って本を読み漁った。城の中で読むならと本を借りて部屋で読むことも許可されたけど、やっぱり悪魔からの視線が痛い。ヴィンスは他国の王として値踏みされ、俺は人間だと思われ忌避している。
 グルーが連れて来た客と説明されてるようだけど、それが無かったら食い散らかされていてもおかしく無いほど殺気を向けられている。


 だから気付かなかった。怨みを含んだ殺気の中に紛れる小さな気配に。


 図書館の中、 猛スピードで向かってくる気配に何とか気付いたから良かった。もし気付かなかったら…俺は後ろからナイフで刺し殺そうとした十歳くらいの悪魔の子供に殺されていただろう。
 ただ、咄嗟に右手でナイフを掴んで止めたから痛いものは痛い!切れ味いいなこのナイフ!

「ニンゲンめ!姉上のカタキ!」

 この子供…人間に恨みがあるんだろうが俺は無関係だろ!?って思ったところで本人に知る由は無いか。
 ヴィンスが子供を掴んで宙吊りにしたことでとりあえずナイフから手は離せた。はぁ…痛すぎる……。この感覚、血管と神経も逝ったか?まぁ、過去に同じようなことになって完治したから治療すれば治るだろうけど。……やっぱり人間じゃありえない回復力だよな。

「このガキ……!」
「やめろヴィンス、捕まえるだけで何もするな」
「お前が一番怒れよ!利き手ダメになってんだろ!?」

 まぁ、めちゃくちゃ痛いけど怪我したばっかの時はそんなに痛いと感じないし。とりあえず持ってた本は…縁に血が付いたか。これ、弁償とか大丈夫か?



 痛みと失血で頭がボーッとして来たかも……。とりあえずその子供を大人に渡さないと。ちゃんと躾はするように伝えて、本を汚したのを管理人に謝って、治療…は受けられなさそうか。このまま死んで欲しいくらいには思ってそうだもんな。

 って感じで考えてると、子供と同じ形と色の角を持った女が俺の前に来て土下座した。

「息子が申し訳ありません!罰なら私が受けるので、どうか、どうか息子だけでも解放を………!」

 ………悪魔が、人間を怖がってるのか?
 土下座をした女は俺を殺そうとした子供の母親だった。そう言えばさっき、姉上がどうのこうのって言ってたっけ。人間に恨みがあるんだろうな。まぁ、見た感じ悪魔はみんなそうか。

「……罰を与える気は無い。ただ、保護者が子供から目を離すな。外でのマナーくらい教えておけ。こんな俺みたいな若造にそんな説教をさせないでくれ」
「は、はい………」
「あ、罰は無いってやっぱ無し。ハンカチかいらない布無いか?」
「ハンカチなら………」

 女からハンカチを受け取って切れた手に巻いた。うわ…上質な布。血で汚すのなんか嫌だったかも。でも血を垂らしながら歩いて床を血だらけにするのもな。


 図書館の管理人が騒ぎを知って駆けつけた。白髪に白い口髭のダンディーなおじさまって感じの悪魔だ。一部始終を見てた人が管理人に説明すると、管理人は俺の方に来た。

「同胞が申し訳ありませんでした。すぐに治療をするのでこちらへ」
「それはいい。それより、本に血が付いて…高い本だったか?」
「いえ、平民でも入手できる本ですので…。それよりも治療を受けてくださいませんか?国王陛下の貴賓に怪我を負わせ治療すらしなかったとなると我々が叱責を喰らってしまいますので、哀れな爺を助けると思って協力してくだされ」

 そう言われたら拒否出来ないな…。悪魔でもグルーは怖いんだろ?もし怒ったら爺さんの心臓が止まりかねない。




 案内されるまま管理人室に入った。ヴィンスも付き添ったけど、やけにイラついている。俺が怪我するのをよく思ってないのか、あの子供を許せないのか。

 管理人の爺さんは慣れた手つきで処置をした。とは言え縫うほどの傷。俺はたぶん仮眠用のベッドで横になって、部分麻酔を打たれて手を縫われている。

「ひぃっ………」
「ヴィンス、無理に見る必要無いだろ」
「だ、だがこのジジィが変なことしねぇか見てないとだろ………」

 仲間思いと言えば聞こえはいいが、かなり人間不信…いや、悪魔不信だな。俺が警戒心無いだけか?




 二時間経ってようやく縫い終わったようだ。爺さんの処置が丁寧だったのもあるが、結構縫われていたようだ。チラリと手を見てみると、塗った傷の上に貼るテープが二枚貼られていた。そっか、あのナイフ両刃だったもんな。

「はぁ………」

 えっ、爺さん何でため息?長い処置が終わって深呼吸でも無く、冷ややかな目を俺に向けて、明らかに呆れるようなため息をした。

「よくこんな深い傷で治療を拒否しようとしましたな……」

 ギクっ、そ、それは悪魔が人間に治療するわけないと思ってたから………。なんて口が裂けても言えないけど爺さんは気付いたみたいだ。

「全ての悪魔が人間を恨んでいるわけではありません。私も六百年ほど前に人間に助けられていますからな。人間の旅人が崖から落ち満身創痍だった私を治療し介抱して下さった。今では当時の傷跡すら残らないほど完治しておりますから」

 ろ、六百年……。この人いくつだよ。悪魔の年齢の感覚が分からないけど、見た目的には十年で一歳分くらいか?……だとしたらグルーって、今いくつ………

 よし、考えるのをやめよう。
 そして話してる間に手に包帯が巻かれていた。手際良すぎるなこの爺さん。



「さて、三日後にまた来てくだされ。それまで右手は使わないように、ヴィンセント陛下がサポートしてくださるよう、頼みましたぞ」

 そう言って管理人の爺さんは、片手でも持ちやすいようにと借りる予定だった本を紙袋に入れてくれた。腕の麻酔はあと一時間もすれば戻るらしい。いい人だったな、あの爺さん。




 そして一時間後、部屋に戻って本を読んでいると手の平の痛みがジワジワと戻って来た。い、いってぇ……!そうだよな!本来なら声も出ないほどの痛みだもんな!

「おい、大丈夫か?」
「ちょっと今日はダメかも………」

 痛すぎてむしろ感覚が無い(?)
 ……ん?痛いなら感覚はあるな?あ、あれ、頭が上手く働いてない。結構出血してたもんな。



 それからとりあえず休んで、夕飯も風呂もヴィンスに手伝ってもらってすぐに寝た。痛みで寝れないんじゃ無いかって思ってたけど、血を失ってて良かったと思うくらいには順調に眠れた。明日から大変になりそうだ……。
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