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復讐の旅、開始!
63.龍神の洞窟、最後の夜
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体力が限界になりダウンした俺とヴィンスの後始末はグルーがしてくれたらしい。おかげで目が覚めると腰痛と疲労感以外、俺は特に支障は無かった。
そう…俺は。
「頼む…全部忘れてくれ…………」
部屋の隅で三角座りで今にも灰になりそうなほど干からびているヴィンス。尻尾も耳もぺしょりと垂れ下がり、声はビックリするほどか細い。
ショックを受けるのも納得できる。さっきの豹変ぶりは明らかに暴走していた。正気に戻れば嫌な記憶にもなりそうだ。にしてもここまで落ち込まれると俺がショックを受ける。
「ヴィンス、そんなに嫌だったのか?」
「当たり前だろ!…ってあぁ、お前とヤるのが嫌とかじゃなくて、あんな情け無ぇ姿を見られたのが恥ずかしくて死にそうだ……。つかいっそ殺してくれ………」
そ、そこまで!?あんなの不可抗力だろ!仕方のないことだったんだからそこまで落ち込むことは無いだろ?それに俺は知らない一面を見れて満足だし。
「おやおやヴィンス、そこまで言うのなら頭を強打して忘れるか試してみましょうか?」
「テメェのそれは冗談に聞こえねぇから!ってかまた愛称で呼んだな!?」
…ま、まぁ元気付けるのはグルーの方が得意そうだ。ジョークでヴィンスもすぐに元通りになった。
……ジョークだよな?流石に。笑みが怖いが…
まぁ、そんな感じで話していたところで腰の痛みは一瞬でも忘れない。治せば消えるけど、それもなんだかなぁって名残惜しく感じるのは変態臭いか?
それにしたって随分と急な発情期だったな。会ったばかりの時のは事前に予兆があって自ら隔離したらしいけど、今回はその予兆はあったのか?
「ヴィンス、今回の発情期は事前に分からなかったのか?」
「まーな。なんてったってグルージアのプレッシャーのせいで狂ったっぽいし、これほどストレスの波があれば予定より半分近く早く来たっておかしくもなんとも無ぇ」
ストレスで時期が変わるんだ。そしてそこまでグルーが怖かったのか。まぁ、誤解して怒ってたグルーはいつにも増して怖かったもんな。俺ですら気圧されてたし。
でもやっぱりおかしい気がする。グルーがあんなに怒るって中々じゃないか?
「ヴィンスのストレスもそうですが、今回のことはおそらく私のせいでもありますね」
「おそらくじゃなくてテメェのプレッシャーのせいだっつってんだろ。あとまた愛称で…」
「私のせいですよ。私もちょうど力の波が来ているようですから」
え、グルーにも何かあったのか?なんて言うか…ここ三人、時期によって色々起こりすぎじゃないか?俺は体温が下がり、ヴィンスは発情期があり、グルーも何かある。
「龍神が増えてからでしょうか…ここら一帯の空気が毒性を持ち始めたようで、私の『理性』が魔王の力の『本能』に敵わなくなりそうになっています。このままでは私は感情を制御出来ずに魔物のようになってしまってもおかしく無い………」
つまり、神と名のつく存在が増えたせいで力が濃くなってるからってことか?確かにモミジが来てから魔力は濃くなった。でもそれも微々たるものだ。そのちょっとの差でグルーの力が暴走し始めている…?
だとしたらここから離れた方がいいんじゃ無いだろうか。どの道そろそろ復讐の準備も始めたいところ。ここでのんびりする時間が長くなるのも駄目だろう。
「…二人とも、ここから離れて復讐の計画をしよう」
●●●
この洞窟から出るため荷造りを始めた。設備に年季が入っているとはいえ、なんだかんだ住み心地のいい場所だったから離れるのは名残惜しい。
元々は龍神達の住処だったらしいが、そこに宵や暁が共に暮らし始めたそうだ。宵に…俺にとって一番最初の『家』だったそうだ。名残惜しく感じるのも無理は無い。
「ヨル、ここを出てくなら俺にも声をかけてくれたっていいんじゃないかなぁ?」
「あ、アカツキ」
「いや『あ』ってなんだよ!俺もついて行くからな!」
もちろんそれはいい。閉鎖的な洞窟だと魔力が篭りやすいから出るだけだし、龍神達もついてくるわけじゃ無いからなんの問題もない。
そう言えば、他の龍神達はどこにいるのだろう。アカツキ達が探さないところを見る感じは居場所を知っていそうだ。
サクラとアオ…モミジとヒイラギみたいに季節にそった見た目をしていそうだ。まぁ、モミジみたいにヤバいやつじゃないといいけど…と思ったが、アカツキが『龍神は変人揃い』とか言ってたしヤバいんだろうな。
「なぁ、サクラとアオはどこにいるんだ?」
「さぁ知らん。あの自由人共は追いかけるだけムダだからな」
知らないのかよ!しかも追えない自由人って…最後に龍神が揃ってたのっていつなんだ?まさか、かなり昔だったり………
「そ、その自由人な二人はどんなヤツなんだ……?」
「サクラは知的好奇心を満たすためなら手段を選ばないサイコパス、アオは人間観察が趣味の大変態だ」
「ひえぇ………」
そうやって聞くとヒイラギってマトモなんだな……
「あ、今ヒイラギはマトモだと思っただろ。そんなこと無いから」
「えっ」
「アイツは龍の要素が強い、モミジとは比にならない程にな。アイツは唯一の人間を喰らう龍だぞ?」
そ、そうだった……。俺も喰われたまではいかないけどボロボロになったな。
「なぁ、ヨル。思ってたより長くここに留まったな」
「そうだな…正直ここにいる間は復讐の事を忘れてた」
この場所があまりにも心地良くて……このままでいたい、なんて思いそうだった。ここで起きた全部が良いことだったわけじゃ無いのに、不思議だ。
「別に少しくらい忘れてたってなんの問題も無いだろ?ぶっちゃけ復讐って何にもならない害だし」
「そ、それはそう。完全に気持ちの問題だな」
「なら違う意味の行動だって思えばいい。例えば…『復讐』じゃなくて何かを守るために悪いヤツを倒すんだ、とかな」
それ、物は言いようじゃないか。でも、正当な理由があって人間の王を打ち倒すのであれば後味は悪く無いだろう。周りから見ても俺たちは正当な事をしたと。ズルい考えだけどさ。
この場所を離れる最後の夜、アカツキと共に眠り翌日に備えることにした。
そう…俺は。
「頼む…全部忘れてくれ…………」
部屋の隅で三角座りで今にも灰になりそうなほど干からびているヴィンス。尻尾も耳もぺしょりと垂れ下がり、声はビックリするほどか細い。
ショックを受けるのも納得できる。さっきの豹変ぶりは明らかに暴走していた。正気に戻れば嫌な記憶にもなりそうだ。にしてもここまで落ち込まれると俺がショックを受ける。
「ヴィンス、そんなに嫌だったのか?」
「当たり前だろ!…ってあぁ、お前とヤるのが嫌とかじゃなくて、あんな情け無ぇ姿を見られたのが恥ずかしくて死にそうだ……。つかいっそ殺してくれ………」
そ、そこまで!?あんなの不可抗力だろ!仕方のないことだったんだからそこまで落ち込むことは無いだろ?それに俺は知らない一面を見れて満足だし。
「おやおやヴィンス、そこまで言うのなら頭を強打して忘れるか試してみましょうか?」
「テメェのそれは冗談に聞こえねぇから!ってかまた愛称で呼んだな!?」
…ま、まぁ元気付けるのはグルーの方が得意そうだ。ジョークでヴィンスもすぐに元通りになった。
……ジョークだよな?流石に。笑みが怖いが…
まぁ、そんな感じで話していたところで腰の痛みは一瞬でも忘れない。治せば消えるけど、それもなんだかなぁって名残惜しく感じるのは変態臭いか?
それにしたって随分と急な発情期だったな。会ったばかりの時のは事前に予兆があって自ら隔離したらしいけど、今回はその予兆はあったのか?
「ヴィンス、今回の発情期は事前に分からなかったのか?」
「まーな。なんてったってグルージアのプレッシャーのせいで狂ったっぽいし、これほどストレスの波があれば予定より半分近く早く来たっておかしくもなんとも無ぇ」
ストレスで時期が変わるんだ。そしてそこまでグルーが怖かったのか。まぁ、誤解して怒ってたグルーはいつにも増して怖かったもんな。俺ですら気圧されてたし。
でもやっぱりおかしい気がする。グルーがあんなに怒るって中々じゃないか?
「ヴィンスのストレスもそうですが、今回のことはおそらく私のせいでもありますね」
「おそらくじゃなくてテメェのプレッシャーのせいだっつってんだろ。あとまた愛称で…」
「私のせいですよ。私もちょうど力の波が来ているようですから」
え、グルーにも何かあったのか?なんて言うか…ここ三人、時期によって色々起こりすぎじゃないか?俺は体温が下がり、ヴィンスは発情期があり、グルーも何かある。
「龍神が増えてからでしょうか…ここら一帯の空気が毒性を持ち始めたようで、私の『理性』が魔王の力の『本能』に敵わなくなりそうになっています。このままでは私は感情を制御出来ずに魔物のようになってしまってもおかしく無い………」
つまり、神と名のつく存在が増えたせいで力が濃くなってるからってことか?確かにモミジが来てから魔力は濃くなった。でもそれも微々たるものだ。そのちょっとの差でグルーの力が暴走し始めている…?
だとしたらここから離れた方がいいんじゃ無いだろうか。どの道そろそろ復讐の準備も始めたいところ。ここでのんびりする時間が長くなるのも駄目だろう。
「…二人とも、ここから離れて復讐の計画をしよう」
●●●
この洞窟から出るため荷造りを始めた。設備に年季が入っているとはいえ、なんだかんだ住み心地のいい場所だったから離れるのは名残惜しい。
元々は龍神達の住処だったらしいが、そこに宵や暁が共に暮らし始めたそうだ。宵に…俺にとって一番最初の『家』だったそうだ。名残惜しく感じるのも無理は無い。
「ヨル、ここを出てくなら俺にも声をかけてくれたっていいんじゃないかなぁ?」
「あ、アカツキ」
「いや『あ』ってなんだよ!俺もついて行くからな!」
もちろんそれはいい。閉鎖的な洞窟だと魔力が篭りやすいから出るだけだし、龍神達もついてくるわけじゃ無いからなんの問題もない。
そう言えば、他の龍神達はどこにいるのだろう。アカツキ達が探さないところを見る感じは居場所を知っていそうだ。
サクラとアオ…モミジとヒイラギみたいに季節にそった見た目をしていそうだ。まぁ、モミジみたいにヤバいやつじゃないといいけど…と思ったが、アカツキが『龍神は変人揃い』とか言ってたしヤバいんだろうな。
「なぁ、サクラとアオはどこにいるんだ?」
「さぁ知らん。あの自由人共は追いかけるだけムダだからな」
知らないのかよ!しかも追えない自由人って…最後に龍神が揃ってたのっていつなんだ?まさか、かなり昔だったり………
「そ、その自由人な二人はどんなヤツなんだ……?」
「サクラは知的好奇心を満たすためなら手段を選ばないサイコパス、アオは人間観察が趣味の大変態だ」
「ひえぇ………」
そうやって聞くとヒイラギってマトモなんだな……
「あ、今ヒイラギはマトモだと思っただろ。そんなこと無いから」
「えっ」
「アイツは龍の要素が強い、モミジとは比にならない程にな。アイツは唯一の人間を喰らう龍だぞ?」
そ、そうだった……。俺も喰われたまではいかないけどボロボロになったな。
「なぁ、ヨル。思ってたより長くここに留まったな」
「そうだな…正直ここにいる間は復讐の事を忘れてた」
この場所があまりにも心地良くて……このままでいたい、なんて思いそうだった。ここで起きた全部が良いことだったわけじゃ無いのに、不思議だ。
「別に少しくらい忘れてたってなんの問題も無いだろ?ぶっちゃけ復讐って何にもならない害だし」
「そ、それはそう。完全に気持ちの問題だな」
「なら違う意味の行動だって思えばいい。例えば…『復讐』じゃなくて何かを守るために悪いヤツを倒すんだ、とかな」
それ、物は言いようじゃないか。でも、正当な理由があって人間の王を打ち倒すのであれば後味は悪く無いだろう。周りから見ても俺たちは正当な事をしたと。ズルい考えだけどさ。
この場所を離れる最後の夜、アカツキと共に眠り翌日に備えることにした。
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