72 / 108
いよいよ本格的な復讐へ
72.小さな働き者
しおりを挟む
ヴィンスが俺の服を持ってくれた時に昼食がいるか聞かれたから「食べる」と答えた。確かに昼を食べるとは言っていたけど、まさか一日後の昼になるとは思ってなかったな。
いつもの服に着替えてから食堂にグルーと共に向かった。既に四人分の食事が置かれていて、ヴィンスとアカツキは既に席に着いている。
いくらなんでも準備が早すぎないか?ヴィンスが部屋に来てから十分も経ってないのに綺麗に並べられているし、ヴィンスやアカツキが準備したわけでも無さそうだし…。
ヴィンスもアカツキも目の前の料理に目を輝かせて楽しみにしている。メニューもフレンチのようで二人が準備するものでは無いだろう。ヴィンスが作るならサバイバル系、アカツキが作るなら和食。いや、ヴィンスの料理は野宿の時にしか見てないからそう思い込んでるだけか?
「どうした?二人とも早く座りなよー」
「あ、あぁ、そうだな……っだ!?」
な、後ろから誰かに押された!?グルーも俺と同じように背後を確認してるから誰かに押されたんだろう。ま、まさか幽霊………いてもおかしく無いか。ゾンビがいる世界だし。
「ははっ!そういえば紹介がまだだったな!この屋敷の管理をしてる精霊達だ。今はイタズラのために姿を隠してるようだけどな」
アカツキが面白おかしく笑いながら紹介すると、どこからか手のひらサイズで二頭身の精霊が現れた。口が見えなくて目が記号みたいな…マスコットみたいな姿。
色もカラフルで、いろんな色の精霊がいる。浮いてる精霊を指先でつつくと「ピー!」と笛のような声を出した。鳴き声か?言葉は喋れないようだな。
「イタズラっ子め」
「ピー!ピィ……」
目の前にいる黄色い精霊のふわふわの頬を何度もつつくと、精霊は申し訳なさそうに項垂れた。コイツ…そうすれば俺が許すと思ってるな?謝ってるようで笑ってるのが隠せていない。表情無いくせに感情を隠すのは苦手らしい。
とうとう怒ったのか精霊は俺の手…いや、人差し指を引っ張った。力が弱いから俺を動かせはしてないものの、要するに『さっさと席に着け』と伝えたいらしい。
「この精霊とやらが飯を作ってくれたんだ。さっさと食おうぜ」
「なるほど…こんな小さいのによく作れたな」
自分の体より大きい食べ物をどうやって調理したんだ?そもそも調理器具を持てるのか?謎が多いな……
席に着いて目の前にあるメインディッシュの肉を食べてみた。これは……柔らかい。トロトロの甘塩っぱいタレがよく絡んでいて、フォークだけで簡単に切れる。
カップに入ったオリオンスープはあっさりしていてしつこく無い。脂身の多いメインディッシュによく合うだろう。
サラダは一見何も掛かっていないように見えるけど、食べてみると結構酸っぱい。これは…酢?メインが濃いから他はあっさりとさっぱりみたいだな。
なんだろう、確かに美味しいんだけど…前より食べることに喜びを感じない。向こうの世界だと家も貧乏でなんでも美味しく調理して食べてたけど、途端に楽しく無いな。
たぶん、環境が変わったから…だけじゃない。俺の体も味覚も変わったからなんだろうな。
今は血を失って体力も使ったから食事を摂ってる。でも放っておいても本当は回復して、こんな行為はただの気休め、娯楽でしか無い。
しかも味は分かるのに『美味しいか』と言われたら分からない。まだ『美味しい』と感じてた時の記憶と感覚があるからいいものの、『美味しい』と感じる感覚さえ消えたら娯楽にすらならないんじゃないか?
まるで、自分の中から『好きな味』が無くなったみたいな虚無感だ。
「ピー?」
さっきまでつっついてた精霊は俺の顔を覗き込んだ。そして俺の左手に触れると、精霊の言いたいことが自然と伝わってきた。
この精霊は『おいしい?』と聞いてきているようだ。今食べてるこの食事はこの精霊が作ってくれたらしい。
「美味しいよ。その小さな手でよく作ったものだ」
「ピィ………」
俺が美味しいと答えると精霊は悲しそうな顔をした。まさか、嘘が分かるのか?
「……ごめん、本当はよく分からない」
「ピィ!ピィピー!」
怒ったように荒々しく鳴く精霊。でも触れた手から伝わってくるのは、嘘をついたことへの怒りだ。嘘も隠し事も、この小さな生命体には通じないみたいだな。
料理を残さず平らげると、他の精霊達が食器を全て片付けた。片付けた…というよりは消した?
もしかしてあの料理も魔法を使ってあっという間に作ったのか?だとしたら確かにあの小さな体であっという間に俺とグルーの分も用意できるな。
「ピピー!」
「ん?どうしたんだ?」
俺に懐いたのか黄色い精霊は俺の周りをぐるぐる飛び回った。ぐるぐる回るばかりで他に何かしてくるでもないけど、何をしたいんだ?触れている時は言いたいことが伝わって来たけど、ただ近くにいるだけじゃ意思疎通ができない。
一度部屋まで戻るが、精霊はずっとついて来ていた。と言うより、途中から俺の肩に乗っていた。右肩から「ピィ♪」と楽しげな声が聞こえていたけど、あれは鼻歌か?
「お前…名前ないと不便か?じゃあ適当だけどピィ、って呼ぶな。ピィ、一体どこまでついてくるんだ?来たところで会話も出来ないし面白いことも何もないぞ?」
「ピ…」
「契約、完了ピィ!」
………しゃ、喋った!?しかもなんだ?契約完了って!
「ゴ主人、ピィに名前くれたピィ!だから、ピィはピィだピィ!」
結局ピィピィ言ってるな!?
でも、えーっと、タイミングと発言的に…俺が『ピィ』って呼んだから、名付けしたことになってそれが主従契約になったってことか?
「ピィはゴ主人の精霊ピィ!ゴ主人にたくさん尽くすピィ♡」
よく見ると小さな額に三日月のマークが新しく付いてる。本当に俺の精霊になったのか…。一体良いのか悪いのか。
まぁ、しばらく様子を見てみるかな。
いつもの服に着替えてから食堂にグルーと共に向かった。既に四人分の食事が置かれていて、ヴィンスとアカツキは既に席に着いている。
いくらなんでも準備が早すぎないか?ヴィンスが部屋に来てから十分も経ってないのに綺麗に並べられているし、ヴィンスやアカツキが準備したわけでも無さそうだし…。
ヴィンスもアカツキも目の前の料理に目を輝かせて楽しみにしている。メニューもフレンチのようで二人が準備するものでは無いだろう。ヴィンスが作るならサバイバル系、アカツキが作るなら和食。いや、ヴィンスの料理は野宿の時にしか見てないからそう思い込んでるだけか?
「どうした?二人とも早く座りなよー」
「あ、あぁ、そうだな……っだ!?」
な、後ろから誰かに押された!?グルーも俺と同じように背後を確認してるから誰かに押されたんだろう。ま、まさか幽霊………いてもおかしく無いか。ゾンビがいる世界だし。
「ははっ!そういえば紹介がまだだったな!この屋敷の管理をしてる精霊達だ。今はイタズラのために姿を隠してるようだけどな」
アカツキが面白おかしく笑いながら紹介すると、どこからか手のひらサイズで二頭身の精霊が現れた。口が見えなくて目が記号みたいな…マスコットみたいな姿。
色もカラフルで、いろんな色の精霊がいる。浮いてる精霊を指先でつつくと「ピー!」と笛のような声を出した。鳴き声か?言葉は喋れないようだな。
「イタズラっ子め」
「ピー!ピィ……」
目の前にいる黄色い精霊のふわふわの頬を何度もつつくと、精霊は申し訳なさそうに項垂れた。コイツ…そうすれば俺が許すと思ってるな?謝ってるようで笑ってるのが隠せていない。表情無いくせに感情を隠すのは苦手らしい。
とうとう怒ったのか精霊は俺の手…いや、人差し指を引っ張った。力が弱いから俺を動かせはしてないものの、要するに『さっさと席に着け』と伝えたいらしい。
「この精霊とやらが飯を作ってくれたんだ。さっさと食おうぜ」
「なるほど…こんな小さいのによく作れたな」
自分の体より大きい食べ物をどうやって調理したんだ?そもそも調理器具を持てるのか?謎が多いな……
席に着いて目の前にあるメインディッシュの肉を食べてみた。これは……柔らかい。トロトロの甘塩っぱいタレがよく絡んでいて、フォークだけで簡単に切れる。
カップに入ったオリオンスープはあっさりしていてしつこく無い。脂身の多いメインディッシュによく合うだろう。
サラダは一見何も掛かっていないように見えるけど、食べてみると結構酸っぱい。これは…酢?メインが濃いから他はあっさりとさっぱりみたいだな。
なんだろう、確かに美味しいんだけど…前より食べることに喜びを感じない。向こうの世界だと家も貧乏でなんでも美味しく調理して食べてたけど、途端に楽しく無いな。
たぶん、環境が変わったから…だけじゃない。俺の体も味覚も変わったからなんだろうな。
今は血を失って体力も使ったから食事を摂ってる。でも放っておいても本当は回復して、こんな行為はただの気休め、娯楽でしか無い。
しかも味は分かるのに『美味しいか』と言われたら分からない。まだ『美味しい』と感じてた時の記憶と感覚があるからいいものの、『美味しい』と感じる感覚さえ消えたら娯楽にすらならないんじゃないか?
まるで、自分の中から『好きな味』が無くなったみたいな虚無感だ。
「ピー?」
さっきまでつっついてた精霊は俺の顔を覗き込んだ。そして俺の左手に触れると、精霊の言いたいことが自然と伝わってきた。
この精霊は『おいしい?』と聞いてきているようだ。今食べてるこの食事はこの精霊が作ってくれたらしい。
「美味しいよ。その小さな手でよく作ったものだ」
「ピィ………」
俺が美味しいと答えると精霊は悲しそうな顔をした。まさか、嘘が分かるのか?
「……ごめん、本当はよく分からない」
「ピィ!ピィピー!」
怒ったように荒々しく鳴く精霊。でも触れた手から伝わってくるのは、嘘をついたことへの怒りだ。嘘も隠し事も、この小さな生命体には通じないみたいだな。
料理を残さず平らげると、他の精霊達が食器を全て片付けた。片付けた…というよりは消した?
もしかしてあの料理も魔法を使ってあっという間に作ったのか?だとしたら確かにあの小さな体であっという間に俺とグルーの分も用意できるな。
「ピピー!」
「ん?どうしたんだ?」
俺に懐いたのか黄色い精霊は俺の周りをぐるぐる飛び回った。ぐるぐる回るばかりで他に何かしてくるでもないけど、何をしたいんだ?触れている時は言いたいことが伝わって来たけど、ただ近くにいるだけじゃ意思疎通ができない。
一度部屋まで戻るが、精霊はずっとついて来ていた。と言うより、途中から俺の肩に乗っていた。右肩から「ピィ♪」と楽しげな声が聞こえていたけど、あれは鼻歌か?
「お前…名前ないと不便か?じゃあ適当だけどピィ、って呼ぶな。ピィ、一体どこまでついてくるんだ?来たところで会話も出来ないし面白いことも何もないぞ?」
「ピ…」
「契約、完了ピィ!」
………しゃ、喋った!?しかもなんだ?契約完了って!
「ゴ主人、ピィに名前くれたピィ!だから、ピィはピィだピィ!」
結局ピィピィ言ってるな!?
でも、えーっと、タイミングと発言的に…俺が『ピィ』って呼んだから、名付けしたことになってそれが主従契約になったってことか?
「ピィはゴ主人の精霊ピィ!ゴ主人にたくさん尽くすピィ♡」
よく見ると小さな額に三日月のマークが新しく付いてる。本当に俺の精霊になったのか…。一体良いのか悪いのか。
まぁ、しばらく様子を見てみるかな。
7
あなたにおすすめの小説
転生したが陰から推し同士の絡みを「バレず」に見たい
むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。
ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。
しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。
今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった!
目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!?
俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!?
「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?
キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。
知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。
今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど——
「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」
幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。
しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。
これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。
全8話。
囚われた元王は逃げ出せない
スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた
そうあの日までは
忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに
なんで俺にこんな事を
「国王でないならもう俺のものだ」
「僕をあなたの側にずっといさせて」
「君のいない人生は生きられない」
「私の国の王妃にならないか」
いやいや、みんな何いってんの?
魔王を倒した勇者の凱旋に、親友の俺だけが行かなかった理由
スノウマン(ユッキー)
BL
スラム育ちの二人は、スキルを得た事で魔王討伐に旅立つ勇者と彼の帰還を待つだけのただの親友となる。
勇者と親友の無自覚両片想いのじれったい恋愛の物語。
BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている
青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子
ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ
そんな主人公が、BLゲームの世界で
モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを
楽しみにしていた。
だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない……
そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし
BL要素は、軽めです。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる