召喚され救世主じゃないと言われたが、復讐の旅でなぜか身体を狙われている

輝石玲

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いよいよ本格的な復讐へ

72.小さな働き者

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 ヴィンスが俺の服を持ってくれた時に昼食がいるか聞かれたから「食べる」と答えた。確かに昼を食べるとは言っていたけど、まさか一日後の昼になるとは思ってなかったな。




 いつもの服に着替えてから食堂にグルーと共に向かった。既に四人分の食事が置かれていて、ヴィンスとアカツキは既に席に着いている。
 いくらなんでも準備が早すぎないか?ヴィンスが部屋に来てから十分も経ってないのに綺麗に並べられているし、ヴィンスやアカツキが準備したわけでも無さそうだし…。
 ヴィンスもアカツキも目の前の料理に目を輝かせて楽しみにしている。メニューもフレンチのようで二人が準備するものでは無いだろう。ヴィンスが作るならサバイバル系、アカツキが作るなら和食。いや、ヴィンスの料理は野宿の時にしか見てないからそう思い込んでるだけか?

「どうした?二人とも早く座りなよー」
「あ、あぁ、そうだな……っだ!?」

 な、後ろから誰かに押された!?グルーも俺と同じように背後を確認してるから誰かに押されたんだろう。ま、まさか幽霊………いてもおかしく無いか。ゾンビがいる世界だし。

「ははっ!そういえば紹介がまだだったな!この屋敷の管理をしてる精霊達だ。今はイタズラのために姿を隠してるようだけどな」

 アカツキが面白おかしく笑いながら紹介すると、どこからか手のひらサイズで二頭身の精霊が現れた。口が見えなくて目が記号みたいな…マスコットみたいな姿。
 色もカラフルで、いろんな色の精霊がいる。浮いてる精霊を指先でつつくと「ピー!」と笛のような声を出した。鳴き声か?言葉は喋れないようだな。

「イタズラっ子め」
「ピー!ピィ……」

 目の前にいる黄色い精霊のふわふわの頬を何度もつつくと、精霊は申し訳なさそうに項垂れた。コイツ…そうすれば俺が許すと思ってるな?謝ってるようで笑ってるのが隠せていない。表情無いくせに感情を隠すのは苦手らしい。


 とうとう怒ったのか精霊は俺の手…いや、人差し指を引っ張った。力が弱いから俺を動かせはしてないものの、要するに『さっさと席に着け』と伝えたいらしい。

「この精霊とやらが飯を作ってくれたんだ。さっさと食おうぜ」
「なるほど…こんな小さいのによく作れたな」

 自分の体より大きい食べ物をどうやって調理したんだ?そもそも調理器具を持てるのか?謎が多いな……



 席に着いて目の前にあるメインディッシュの肉を食べてみた。これは……柔らかい。トロトロの甘塩っぱいタレがよく絡んでいて、フォークだけで簡単に切れる。
 カップに入ったオリオンスープはあっさりしていてしつこく無い。脂身の多いメインディッシュによく合うだろう。
 サラダは一見何も掛かっていないように見えるけど、食べてみると結構酸っぱい。これは…酢?メインが濃いから他はあっさりとさっぱりみたいだな。



 なんだろう、確かに美味しいんだけど…前より食べることに喜びを感じない。向こうの世界だと家も貧乏でなんでも美味しく調理して食べてたけど、途端に楽しく無いな。

 たぶん、環境が変わったから…だけじゃない。俺の体も味覚も変わったからなんだろうな。
 今は血を失って体力も使ったから食事を摂ってる。でも放っておいても本当は回復して、こんな行為はただの気休め、娯楽でしか無い。
 しかも味は分かるのに『美味しいか』と言われたら分からない。まだ『美味しい』と感じてた時の記憶と感覚があるからいいものの、『美味しい』と感じる感覚さえ消えたら娯楽にすらならないんじゃないか?

 まるで、自分の中から『好きな味』が無くなったみたいな虚無感だ。



「ピー?」

 さっきまでつっついてた精霊は俺の顔を覗き込んだ。そして俺の左手に触れると、精霊の言いたいことが自然と伝わってきた。
 この精霊は『おいしい?』と聞いてきているようだ。今食べてるこの食事はこの精霊が作ってくれたらしい。

「美味しいよ。その小さな手でよく作ったものだ」
「ピィ………」

 俺が美味しいと答えると精霊は悲しそうな顔をした。まさか、嘘が分かるのか?

「……ごめん、本当はよく分からない」
「ピィ!ピィピー!」

 怒ったように荒々しく鳴く精霊。でも触れた手から伝わってくるのは、嘘をついたことへの怒りだ。嘘も隠し事も、この小さな生命体には通じないみたいだな。


 料理を残さず平らげると、他の精霊達が食器を全て片付けた。片付けた…というよりは消した?
 もしかしてあの料理も魔法を使ってあっという間に作ったのか?だとしたら確かにあの小さな体であっという間に俺とグルーの分も用意できるな。

「ピピー!」
「ん?どうしたんだ?」

 俺に懐いたのか黄色い精霊は俺の周りをぐるぐる飛び回った。ぐるぐる回るばかりで他に何かしてくるでもないけど、何をしたいんだ?触れている時は言いたいことが伝わって来たけど、ただ近くにいるだけじゃ意思疎通ができない。




 一度部屋まで戻るが、精霊はずっとついて来ていた。と言うより、途中から俺の肩に乗っていた。右肩から「ピィ♪」と楽しげな声が聞こえていたけど、あれは鼻歌か?

「お前…名前ないと不便か?じゃあ適当だけどピィ、って呼ぶな。ピィ、一体どこまでついてくるんだ?来たところで会話も出来ないし面白いことも何もないぞ?」
「ピ…」

!」

 ………しゃ、喋った!?しかもなんだ?契約完了って!

「ゴ主人、ピィに名前くれたピィ!だから、ピィはピィだピィ!」

 結局ピィピィ言ってるな!?
 でも、えーっと、タイミングと発言的に…俺が『ピィ』って呼んだから、名付けしたことになってそれが主従契約になったってことか?

「ピィはゴ主人の精霊ピィ!ゴ主人にたくさん尽くすピィ♡」

 よく見ると小さな額に三日月のマークが新しく付いてる。本当に俺の精霊になったのか…。一体良いのか悪いのか。

 まぁ、しばらく様子を見てみるかな。
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