【完】ゲームの世界で美人すぎる兄が狙われているが

輝石玲

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まじか攫われた!?

56.これからの会議!

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 夕方、みんなで夕食を食べてから大部屋でこれからの事を話し合うことになった。



 ガルさんとメリストのベッドの間に集まり、二つのベッドを椅子代わりにして座った。ガルさんのベッドにガルさんとみつ兄、メリストのベッドにメリストと俺の並びで。

「これからの事だが…俺に考えがある」

 ガルさんの一言で話し合いが始まった。既に昨日から少しずつ考えていたらしい計画を少しずつ俺たちに話し出した。

「まず、この場にいる四人は極力離れるべきじゃ無いと思う。ミツル・コウセイは魔力が無い以上自分の身を守る術が無い。コウセイは前は戦えたが…今じゃ歩くのがやっとなんだろ?」

 歩くのがやっと、その通りだ。俺は何も言わずに頷いた。この世界の危険は身をもって実感した。俺の力じゃみつ兄どころか自分の身すら守れない。

「それと、メリストは一応重罪人だ。自由にすることは出来ない。本来なら然るべき場所に送るべきだが…魔法生物だと言うことが知られれば殺されるだろう。だから、メリストはミツルとコウセイの護衛と言うことにして、二人にメリストの監視を任せたい」
「僕たちがですか?ガルさんは?」
「俺は仕事があるからな。ずっと一緒にいることは出来ねぇだろうよ」

 そっか、メリストはどう頑張っても自由になれないんだ。異世界から来た俺たちにとっては『たかが魔法生物』でも、この世界の基準だと全て悪いって扱いだもんな。メリストに与えられる自由は俺たちありきのものになる。



 ……ってことは、もしかしてこれから四人で暮らすことになるってこと?流石に孤児院にメリストは連れて行けないし、どこに住むかは分からないけどこの四人で暮らすことになるのだろうか。

「まぁ、そんな感じで考えたんだが……これからは四人で一つの家で暮らすのはどうだ?俺以外の三人を外に出すのは難しくなるが……全員が無事に生きて行くにはこれくらいしか思い浮かばなかった」

 それでも一人も欠けないでいれるなら十分だと思う。
 他に何か案があるかと言われれば思い浮かばないし、ガルさん一人に無理をさせるようにも感じるけど、かと言って他の誰かが外に出れば面倒に巻き込まれるだろうなって簡単に想像できる。
 まぁ、四人全員が面倒を起こしやすい体質なんだろうけど。ガルさんも例外じゃ無いけど力技でなんとか出来て、かつ存在するだけで捕まりはしないって考えると……。

「ガレアンの考えが一番いいだろうが…もう一つ問題があるな」
「問題?」
「この近辺じゃあオレと裏で繋がってる奴と遭遇しないとは限らねぇ。裏社会っつーのは厄介でな、足を洗った奴を生かしちゃあ置けねぇのさ」

 つまり、メリストが表で生きてることが知られたら殺されるかもしれないってことか。多分、俺たちもメリストの関係者として殺される。窓も閉め切って外から見られない場所で縮こまるしか無いのはストレスになりそうだけど……。
 いや、この近辺が危ないんだよな?なら全く違う場所、違う大陸にでも行けば安全になる?道中は危険かもしれないけど………

「……なぁ、オレらはこの大陸で生きれねぇって気付いてるのか?お前らだけならまだしも…」
「だから兄貴を見捨てろと?」
「オレを見捨てて何が悪ぃんだよ」

 ……え、別の大陸に行くとかってもしかして無理!?確かに船とか移動費はかかるし時間もかかるけど…でも、ゲームだと普通に行けてたんだけどな。やっぱりゲームとは違うのかな。

「……二人とも、その…やっぱり別の大陸に行くのって難しいのか?」
「…………」
「…………」

 え、なんで黙るの!?この世界の住人になったばっかの俺とみつ兄は何も把握してないんだけど!?わがままかも知れないけど、やっぱり可能か不可能かくらい言ってくれてもいいんじゃ………。

「船っていくら掛かるんだ?オレ、クーターの船しか乗ったこと無ぇんだけど」
「さぁ…?俺はこの大陸から出たこと無いし………」

 二人も分からないだけかい!え、確か船って片道が千からじゃないっけ。乗る船にもよるけど、一般的な船は八千くらいで、ただ移動したいだけなら安く済むはず。
 ただ、この世界の金銭感覚が元の世界と違うからな…。食事は二百あれば腹一杯食べられるし、宿も五百くらいで泊まれる。高いのはアルコールとかタバコとか宝石みたいな嗜好品と武器防具、それから魔道具なんかも高い。ガルさんが貸してくれていた防音の水晶もあの小ささで六千するらしい。




 ………こういう時は確実に知ってるミレさんに聞こう。三人に「ちょっと待ってて」とだけ言ってミレさんのいる診察室のカウンターを覗いた。
 この病院だけか分からないけど元の世界とは違って、受付と診察室が繋がってるらしい。診察の時は分厚いカーテンで仕切るみたいだ。ほぼ一人で経営してるから大変なんだろうな……。

「その、ミレさん、いますか?」
「……何」

 診察室の更に奥、恐らく個人の部屋からミレさんがひょっこりと顔を出した。昼間のセーラー服みたいなワンピースとは違ってシンプルなワンピースを着ているけど、変わらずずっと白衣は羽織っている。

「こんな時間にすみません。今、これからの事を話し合ってて、大陸を移動する船がいくらするのかって話題に出て……」
「最低でも三千。それ以下は治安が悪いからダメ。目的地は?」
「それは…まだ決まってなくて………」
「……ちょっと待ってて」

 あ、あれ。思ったより協力的?ゲームのイメージだと「私がやる意味ないでしょ」って言われると思ってたから、なんてお願いしようか考えてたんだけど………

「目的地に合わせてリストアップした。値段に合わない船もあるからリストに従って」
「あ、ありがとうございます………」

 凄い、この大陸以外の三つの大陸ごとに、それもいくつかの港の船を丁寧に書いてある。まぁ、走り書きではあるけど。それでもこの世界の文字に慣れてない俺でもスラスラ読める。
 しかもメモの裏に捕捉まで………。『夜の船に乗らない』『夜明けの船に乗らない』『非常食必須』『荷物は最低限』『武器は見えるように』『船で買い物はしない』…………まだある。

「私が協力するのは意外?」
「え、えっと………」
「ただ早くいなくなって欲しいだけ。病院は人のいるべき場所じゃ無い」

 いなくなって欲しいって、患者の目の前で言う言葉じゃ無いんじゃ……あ、そういうことか。『病院は人のいるべき場所じゃ無い』って、病院に来るのは怪我人とか病人だから、そんな状況の人がいない方がいいってこと?
 そうだよな、病院が繁盛する状況は良く無い。怪我人も病人もいないに越したことは無い。
 ミレさんなりの優しさ…なのかも。善悪で判断する彼女らしい。自分の不利益になっても同情はしないで善に向けるだけ。結構分かりやすい人だ。

「そうですね。頑張って早く治します」
「そうして。それと、今日はもう急患以外起きないから呼ばないで」
「は、はい………」

 本当にハッキリした人だな………。そう言えば実況のコメントで『ドM生産機』とか言われてたっけ。冷たくされる良さは俺には分かんないや。愛ある虐めの方がまだいい。




 船のリストが書かれたメモを持って部屋に戻った。どうやら待ってる間にみつ兄に大陸の説明をしてたらしい。

「こう君は船旅出来るならどこに行きたい?」
「え、ミツルが大陸知らなかったのにコウセイは知ってんのか?」

 あ…そっか、メリストからすればそうなるよな。みつ兄が大陸も知らない世間知らずだと思ったら俺はちゃんと知ってる、なんて………。
 これ、メリストにも話した方がいいかな。違う世界から来たってこと。でもそれは今じゃ無い。ちゃんと落ち着いて生活できるようになったら教えよう。

「俺は知ってるよ。故郷が特殊な場所で、知識に偏りが出やすいんだ。いつかメリストに俺たちの故郷のことも教えるよ」
「へぇ、オレも知らねぇ場所があんのか。それは聞くのが楽しみだ」

 ……ちゃんと、教えないとな。俺だけメリストの過去を知ってるのは不公平だ。信憑性の低い話であることに変わり無いけど、きっとメリストなら信じてくれる気がする。まぁ、魔法の世界に科学を持ち込むのはアウトな気がするからそこは濁すけど。



 で、どの大陸に行きたいか、だっけ。この世界にある大陸は四つ。それぞれ季節の名前が付いた大陸だ。

 春の大陸は花が咲き誇る大陸だ。特別な花や木があって、絵の具の顔料や楽器の素材として使われることが多い芸術の大陸。食べ物や服飾にも花を入れることがあって、常に町も森も花のいい香りが漂う。人も町も森も華やかな場所だ。

 夏の大陸は活気ある富の大陸だ。リゾートや港が多く、世界の心臓として交易の中心部を担っている。他にも騎士や冒険者になりたい人はこの大陸にいるモンスターを狩って経験を得て、そのモンスターの新鮮で上質な肉で精気を付けている。物も財も人も集まる都心のような場所だ。

 秋の大陸は勤勉で落ち着いた大陸だ。世界でもっとも大きな学園と図書館があり、学者や読書家、作家も集まっている。身分制の無い学園だが貴族が多く、その学園を無事卒業しただけでも大きなステータスとなる。貴族も平民も王族も教養を身につけられる硬派な場所だ。

 冬の大陸は雪と氷に覆われた大陸だ。常に寒く過酷な環境だが、独特の文化と知恵で発展した美しい景色で埋め尽くされている。最も魔法と縁があり、冷たく無い氷でできた家や魔力を多く含む鉱石が多く見られる。人も魔法も氷さえも温かな幻想的な場所だ。


 楽しそうな花と芸術の大陸、見識を深められる文学の大陸、幻想的で温かな魔法の大陸。どこも捨てがたい………。一番好きな大陸は夏の大陸だけど、残念ながら今いる大陸だから逆に離れないといけない。

 でも、行きたい場所は本当は決まってる。

「……みつ兄はどこがいいと思った?」
「それ言っちゃったらこう君合わせそう…」
「いや、俺は行きたい場所思いついてるから」
「そう?なら…兄さんは春の大陸に行きたいな」

 よっし!俺の行きたい場所と一致した!
 実は、みつ兄に見せたかった場所が一箇所あった。でもそれは叶わずゲームをプレイさせる前にこの世界に来た。今がみつ兄に見せるチャンスなら……

「俺は、春の大陸にある『ララの町』に行きたいんだ」
「ララの町?」
「「!」」

 ガルさんとメリストはその名前に反応した。そう、その町は……都市伝説とされてる町だ。実在するかどうかも怪しい町。でも俺はゲームでどんな場所か知っている。正しい行き方も知ってる。

「ま、待て、ララの町って怪談話じゃねぇか!テメェ、正気か!?」
「『夢喰い花畑』は有名な話だが…ただのおとぎ話だろ?」

 そう、ガルさんの言う通りおとぎ話だ。……『夢喰い花畑』って話は。
 ララの町の住人は旅人を花畑に連れて行っては生贄にする、なんて都市伝説がある。でもそんな事は無い。
 本当のララの町は確かに天国と見紛う場所だ。でも、その正体はこの世界で唯一妖精が住む神聖な町。わざと恐ろしい噂を流し、邪な客人は妖精が『退治』しているのだ。そう、つまりは自分たちが無害であると証明すればいい。
 証明方法は簡単。嘘を見抜ける妖精の前で正直でいればいい。

「……確認、してみる?俺は本当にあることも、噂とは違うことも知ってるよ」
「まさか……」
「こう君、それって………」

 ここがゲームの世界だと知ってるガルさんとみつ兄はすぐに気付いた。でもメリストは簡単に信じ無いみたいだ。そりゃあそうだ。

「ふぅん…、じゃあテメェの言葉に賭けてやるよ」
「え、本当!?」

 すっごく意外!本当に俺の言葉を信じようとしてくれるんだ。…まぁ、完全に信用してるわけじゃ無いみたいだけど。


 とりあえず目的地は決定!目指すは都市伝説になってる『ララの町』だ!
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