club-xuanwu extra

一園木蓮

文字の大きさ
27 / 43
未来への招待状

未来への招待状 1話

しおりを挟む
 高瀬芳則による拉致事件から丸二日が過ぎた頃――心身共に休養を得た冰は、氷川に連れられて鎌倉にある彼の別荘を訪れていた。
 都心のビル群と違って、閑静な山道を少し入ったところにある一軒家である。周囲は竹林に囲まれていて、おいそれとは人目にもつかないプライベートな空間に建てられた、まさに別荘というにふさわしいような邸だった。
 冰らが到着してしばらくの後、遼二と紫月もやって来た。事件に巻き込んでしまったことへの詫びも兼ねて、氷川が招待したのだ。

「紫月、遼二、この度は本当に申し訳なかった。俺のせいでキミらを巻き込んじまった。勘弁して欲しい、この通りだ」
 冰は深々と頭を下げて詫び、氷川も同じく二人揃って謝罪をする。遼二と紫月は大慌てで冰らの傍へと駆け寄った。
「オーナー、代表、そんな……とんでもないです!」
「どうか頭を上げてください!」
 特に紫月の方は、高瀬にいいように言いくるめられ、連れ去られてしまった自分に非があると思っているようで、恐縮しきりであった。
「俺がもっと注意していればこんなことにはならなかったんです。何も疑わずに高瀬って人にホイホイ付いて行っちまって……。本当にすいませんでした」
 紫月の話では、店先でいきなり声を掛けられて、『自分は以前この店に通っていた客だが、雪吹代表のことについて内密の話がある』と意味深なことを言われて誘われたとのことだった。酷く神妙な様子だったので、特に警戒せずに誘いに乗ってしまったのだという。
 まあ、ホストになって間もない紫月では経験も浅いことだし、致し方ないことかも知れない。紫月自身もいい勉強になったようで、反省しきりだった。だが、それ以上に事を重く感じていたのは冰も同じだった。
 帝斗から代表の座を受け継ぐ際にも、恋人の氷川からはホストの仕事を辞めて彼の傍にだけいて欲しいと言われたのに、どうしても続けたいと言い張ったのは他でもない、自分自身だったからだ。
 今回のことで、代表として店を仕切るということは、ただ単にお客に気を配り店を切り盛りしていくだけでは足りないのだということを痛切に思い知らされた。自分の与り知らぬところでスタッフである紫月をさらわれ、彼には酷く嫌な思いをさせてしまった。それもこれも自分の甘さが引き起こしたことなのだ。
 幸い、大事には至らなかったものの、冰は代表としての自身の過信を深く反省すると共に、少なからずの不安を感じていたのは確かだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?

monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。 そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。 主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。 ※今回の表紙はAI生成です ※小説家になろうにも公開してます

秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~

めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆ ―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。― モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。 だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。 そう、あの「秘密」が表に出るまでは。

青龍将軍の新婚生活

蒼井あざらし
BL
犬猿の仲だった青辰国と涼白国は長年の争いに終止符を打ち、友好を結ぶこととなった。その友好の証として、それぞれの国を代表する二人の将軍――青龍将軍と白虎将軍の婚姻話が持ち上がる。 武勇名高い二人の将軍の婚姻は政略結婚であることが火を見るより明らかで、国民の誰もが「国境沿いで睨み合いをしていた将軍同士の結婚など上手くいくはずがない」と心の中では思っていた。 そんな国民たちの心配と期待を背負い、青辰の青龍将軍・星燐は家族に高らかに宣言し母国を旅立った。 「私は……良き伴侶となり幸せな家庭を築いて参ります!」 幼少期から伴侶となる人に尽くしたいという願望を持っていた星燐の願いは叶うのか。 中華風政略結婚ラブコメ。 ※他のサイトにも投稿しています。

《完結》僕が天使になるまで

MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。 それは翔太の未来を守るため――。 料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。 遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。 涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

処理中です...