Wild Passion

一園木蓮

文字の大きさ
13 / 13

13話

しおりを挟む
(俺もヤキが回ったかな――。こんな、恋する乙女みてえなこと言っちまうだなんて)

 本気で惚れたというなら抱かれてもいい。けれど一夜限りの遊びのつもりならば身体を許すのは嫌だ――そんなふうに言ってしまったようで、情けなくなる。
 もういい。この際、欲情のままに絡み合い、抱かれて乱れてとことん堕ちてしまってから考えればいいじゃないか。そう思う気持ちさえ、単に言い訳なのだということに気付いている。冰は覚悟を決めたように目の前の逞しい胸板に顔を埋めた。

「氷川……ッ、ベッド……行くぜ」
「――?」
「あっち行けば……ローション……とか、あるから……」
「冰?」
「挿……れてえん……だろ?」
「急に――何だ。無理しなくていいんだぜ?」
「無理なんかしてねえ……よ。俺もちょっと……興味湧いちまっただけ」
「――いいのか?」
「ああ……いいから言ってる……」
 急な申し出に躊躇うように視線を泳がせる彼の手を取り、思い切りエアコンの効いたベッドルームへと誘う。
 暗い室内に灯りは点けない。
 冷蔵庫の中のような冷たい空間も、互いの熱と熱とがほとばしり合って、すぐにも暑い空間へと変わりそうだ。逸ったようにローブを毟り取られ、スプリングへと押し倒されて、もう互いが欲しいという感情以外見当たらないといったふうに激しく求め合い――
「……氷川……ッ、俺、言っとくけど……初めてだか……んな」
「ああ、分かってる。任せろ」
 激しさとは裏腹の、とびきり丁寧な愛撫にとてつもないやさしさが垣間見えるようで堪らない。下世話な表現をすれば『上手い愛撫』と言えるそれ――慣れた仕草に、過去にこの男が抱いたろう女との情事を思い浮かべてチクリとした胸が痛むのは、紛れもない嫉妬なのだろう。身も心も瞬時に堕とされ、嵌まり込んでしまいそうだ。
 冰は観念したといったように、淫らな愛撫を受け入れた。



◇    ◇    ◇



 うだるような真夏の日に、自身を直撃した手痛い恋の終わりと引き換えに、十年の月日を経て再会した男との激情に溺れた。
 心の奥底から新たな微熱が沸々とくすぶり出すのを感じながらも、少しの不安と期待の入り混じった思いで目の前の熱に呑み込まれることを選んでとった。

 照りつける太陽の熱が冷めやらぬ、灼熱のような一夜の出来事だった。

- FIN -
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

お人好しは無愛想ポメガを拾う

蔵持ひろ
BL
弟である夏樹の営むトリミングサロンを手伝う斎藤雪隆は、体格が人より大きい以外は平凡なサラリーマンだった。 ある日、黒毛のポメラニアンを拾って自宅に迎え入れた雪隆。そのポメラニアンはなんとポメガバース(疲労が限界に達すると人型からポメラニアンになってしまう)だったのだ。 拾われた彼は少しふてくされて、人間に戻った後もたびたび雪隆のもとを訪れる。不遜で遠慮の無いようにみえる態度に振り回される雪隆。 だけど、その生活も心地よく感じ始めて…… (無愛想なポメガ×体格大きめリーマンのお話です)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...