極道恋浪漫

一園木蓮

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極道恋浪漫 第一章

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紫月ズィユエ、親父さんはお前を信用してねえわけじゃねえさ。てめえはどうなっても構わねえ、お前だけには汚ねえことも辛えこともできる限り知らねえままで幸せに生きて欲しい。そう思ってこられたように俺には感じられるんだ」
「……そんなん……あいつの言い訳じゃん……! 水臭えにもほどがあるってんだよ……。俺だってもういい大人だ。自分一人で何でもかんでも抱え込んでねえでさ、ちゃんと話してくれれば俺にだってちっとは役に立てることくれえ……」

 あったかも知れないのに――。

 その言葉の代わりに、色白の頬にポロリと一筋の涙が伝った。
 それをそっと指で拭ってやる。
「それが――親ってもんなんだろうぜ。かくいう俺だって、未だ親父にとっちゃ頼りねえガキだろうさ」
「遼……」
紫月ズィユエ――俺は、俺たちはこれからイェンや親父たちと共にこの遊郭街の闇を何とか変えようと決意したんだ。お前も言ってただろう? この遊郭街を芸事や粋を重んじた花街に変えられたらいいって。俺たちは非力かも知れねえが、そういった理想の花街にできるよう精一杯立ち向かう心づもりでいる。もしもそれが叶えば――お前さんと親父さんも何の憂いもなく向き合える日が来るって、そう思ってる」
「遼……それってまさかあの頭目かしらに楯突こうってこと……?」
「楯突くというよりは――完全にぶっ潰す方向の話になるだろう。イェンイェンの親父さんも、遊女や男娼が無惨に始末されるような横行を許しておくわけがねえ。ここの頭目ってヤツがやってることは放り置けねえってことだ」
 まあ親父たちとも相談の上でしっかり策を練ってから挑むことになろうがと遼二は言った。
「ぶっ潰すって……大丈夫なのか? あの頭目かしらはそれこそ何考えてるか分かんねえ……っつーか、こんなことがあの人の耳に入ったらやべえんだけども……俺の感覚では正直かなり危ねえことに手を染めてるんじゃねえかと思ってるんだ。そんな人を相手にしておめえらに何かあったらと思うとさ」

 心配なんだ――紫月ズィユエの瞳がそう語っていた。

「大丈夫だ。俺たちはそんなに柔じゃねえ。それにいつかはこの街を正さなきゃ、これからも理不尽な目に遭う人間が増え続けるだけだ。あの雪吹冰の拉致をきっかけにお前さんや飛燕さんに会うこともできたんだ。今がその機会ってことだ」
「遼……」
「な、紫月ズィユエ。それとはまた別の話だが、お前がガキの頃からずっと――辛かった思いや寂しかった思いを……全部取り戻してやることはできねえとは思う。もちろん飛燕さんの代わりになれるなんざこれっぽっちも思っちゃいねえ。だが、こんな俺で良ければ――お前をとことん甘えさしてやりてえ」

 こんな俺の腕で良ければ、思う存分甘やかして抱き締めてやりてえ――。

 そんなことを考えてる俺は自惚れ者か――? と、瞳を細める。

「遼……おめえ……どしてそんな……」

 会ったばかりの俺をそんなふうに気に掛けてくれるんだ?
 どうしてそんな――あったけえことを言ってくれるんだ?

「意味はねえさ。ただ――どうしても放っておけねえ。お前のことが気になって仕方ねえ。多分――初めて椿楼の前で会ったあの時から俺は……」

 お前が気になって仕方なかった。
 その言葉を呑み込んで遼二は続けた。

「俺にできることがあるなら、こんな俺で構わねえなら――どんなことでもしたい。どんなちっぽけなことでも構わねえから、おめえの役に立ちてえって思ってやまねんだ」
 遼二はそんな思いを込めて華奢な肩をそっと腕の中へと引き寄せた。

「……あったけえのな」

 遼、お前の腕の中はこんなにもあたたかい――。

 しばしの間、紫月ズィユエはされるがまま、素直に逞しい胸板に頬を預けていた。
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