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極道恋浪漫 第一章
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「出番だ、お役目。この者たちを始末しろ!」
余裕綽々で脚を組み直しながら勝ち誇ったように笑みを浮かべる。
ところが――だ。
次の瞬間には、高笑いする羅辰の鼻っ柱目掛けて、刃の切っ先が向けられた。驚いたのは羅辰だ。
「お役目……貴様ッ! 気でも狂ったか……!」
どういうつもりだと憤りながらも、今にも切っ先が眉間に触れるのではないかという位置にあっては、おいそれと身動きさえままならない。飛燕は静かに口を開いた。
「申し訳ないが、私はこちら側の人間なのでな」
つまり、隼や僚一らの味方だと暴露したも同然だ。
「そちら側の人間だ……と? どういうことだ……」
「言葉通りの意味ですよ、頭目殿。二十四年前、あなたが私と赤子を拐ってここに連れて来た時から私は何一つ変わっちゃいない。元々あなた側の人間ではないというわけです」
「な……んの綺麗事だ! 貴様がそんな真っ当なことをぬかせる身綺麗な輩だとでも!? 散々っぱらこの街の人間を殺戮し続けて来たその手で今更何をぬかす!」
「そうしろと命じたのはあなただろう。私はそれに従ったまでだ」
「この期に及んで……まだそんなくだらん言い逃れか……! 手を下したのはお前だろうが! どんな言い訳をしようとその事実は変わらんぞ!」
まるで極悪人はこの飛燕一人だけだと、隼らにまで言い訳するかのように怒鳴り散らす。本来対峙中の隼らに向かって、敵は自分ではない、この飛燕こそがお前らの狩るべき標的だと逃げ腰だ。相反して、憤る羅辰に焦るでもなく、飛燕は気味の悪いくらいに落ち着いた無表情を崩さない。切っ先は未だ羅辰の眉間ギリギリに据えられたままだ。
だが、羅辰とて数十年の間この遊郭街で非情を繰り返してきた生粋の悪だ。さすがに本気で成敗されるとは思っていないのだろう。
「ふははは――! そんなことをして私に勝ったつもりか? 詰めが甘いぞ、飛燕! お前が私を斬れば、お前の言うお仲間たちも同時に私の部下によってあの世行きだ!」
確かに数の上では圧倒的な差が一目瞭然だ。羅辰の手下共はぐるりと隼や僚一らを取り囲むように迫っている。
「飛び道具が使えないこの状況で、お前が私に手を掛ければ、その瞬間にお仲間もお陀仏だ。如何にお前の腕が達者だろうが、たった一人で何が出来ような?」
クククと可笑しそうに勝ち誇った顔を見せる。
「お前もそこまで馬鹿ではあるまい。お仲間の――というよりも、紫月の命が惜しければ諦めて刃を下ろせ」
早くしろ! と睨みを据える。
が、飛燕はその唇に薄い笑みを浮かべてこう言った。
「確かに――。私一人では分が悪い。だが、二人ならどうかな?」
「何だと――!?」
言うが早いか、飛燕は腰元にあったもう一振りの剣を抜くと、
「受け取れ、紫月!」
そう言ってその一振りを紫月目掛けて放り投げた。
羅辰も彼の手下共も、その場の全員が一瞬時が止まったかのように放り投げられた刀を視線で追い――。
まるで意思以前に身体が勝手に動いたかのようにして、空を舞ったその一振りを受け取った瞬間、紫月は鞘を抜いて隼らを取り囲んでいた手下連中に峰打ちを食らわしていた。
その目にも止まらない速さに何があったか分からないといったふうに動揺する手下共の手からヌンチャクや鉄製の棒が叩き落とされていく。次の瞬間には隼、焔、僚一、遼二の体術によって、次々と手下たちが床へと沈められていった。
その間、わずか数分と掛からなかった。
羅辰の周囲にいた側近連中も飛燕の早技によって峰打ちを食らわされ、その場に静寂が戻った時には相変わらずに羅辰の鼻先に突き付けられた刃の切っ先があった。
余裕綽々で脚を組み直しながら勝ち誇ったように笑みを浮かべる。
ところが――だ。
次の瞬間には、高笑いする羅辰の鼻っ柱目掛けて、刃の切っ先が向けられた。驚いたのは羅辰だ。
「お役目……貴様ッ! 気でも狂ったか……!」
どういうつもりだと憤りながらも、今にも切っ先が眉間に触れるのではないかという位置にあっては、おいそれと身動きさえままならない。飛燕は静かに口を開いた。
「申し訳ないが、私はこちら側の人間なのでな」
つまり、隼や僚一らの味方だと暴露したも同然だ。
「そちら側の人間だ……と? どういうことだ……」
「言葉通りの意味ですよ、頭目殿。二十四年前、あなたが私と赤子を拐ってここに連れて来た時から私は何一つ変わっちゃいない。元々あなた側の人間ではないというわけです」
「な……んの綺麗事だ! 貴様がそんな真っ当なことをぬかせる身綺麗な輩だとでも!? 散々っぱらこの街の人間を殺戮し続けて来たその手で今更何をぬかす!」
「そうしろと命じたのはあなただろう。私はそれに従ったまでだ」
「この期に及んで……まだそんなくだらん言い逃れか……! 手を下したのはお前だろうが! どんな言い訳をしようとその事実は変わらんぞ!」
まるで極悪人はこの飛燕一人だけだと、隼らにまで言い訳するかのように怒鳴り散らす。本来対峙中の隼らに向かって、敵は自分ではない、この飛燕こそがお前らの狩るべき標的だと逃げ腰だ。相反して、憤る羅辰に焦るでもなく、飛燕は気味の悪いくらいに落ち着いた無表情を崩さない。切っ先は未だ羅辰の眉間ギリギリに据えられたままだ。
だが、羅辰とて数十年の間この遊郭街で非情を繰り返してきた生粋の悪だ。さすがに本気で成敗されるとは思っていないのだろう。
「ふははは――! そんなことをして私に勝ったつもりか? 詰めが甘いぞ、飛燕! お前が私を斬れば、お前の言うお仲間たちも同時に私の部下によってあの世行きだ!」
確かに数の上では圧倒的な差が一目瞭然だ。羅辰の手下共はぐるりと隼や僚一らを取り囲むように迫っている。
「飛び道具が使えないこの状況で、お前が私に手を掛ければ、その瞬間にお仲間もお陀仏だ。如何にお前の腕が達者だろうが、たった一人で何が出来ような?」
クククと可笑しそうに勝ち誇った顔を見せる。
「お前もそこまで馬鹿ではあるまい。お仲間の――というよりも、紫月の命が惜しければ諦めて刃を下ろせ」
早くしろ! と睨みを据える。
が、飛燕はその唇に薄い笑みを浮かべてこう言った。
「確かに――。私一人では分が悪い。だが、二人ならどうかな?」
「何だと――!?」
言うが早いか、飛燕は腰元にあったもう一振りの剣を抜くと、
「受け取れ、紫月!」
そう言ってその一振りを紫月目掛けて放り投げた。
羅辰も彼の手下共も、その場の全員が一瞬時が止まったかのように放り投げられた刀を視線で追い――。
まるで意思以前に身体が勝手に動いたかのようにして、空を舞ったその一振りを受け取った瞬間、紫月は鞘を抜いて隼らを取り囲んでいた手下連中に峰打ちを食らわしていた。
その目にも止まらない速さに何があったか分からないといったふうに動揺する手下共の手からヌンチャクや鉄製の棒が叩き落とされていく。次の瞬間には隼、焔、僚一、遼二の体術によって、次々と手下たちが床へと沈められていった。
その間、わずか数分と掛からなかった。
羅辰の周囲にいた側近連中も飛燕の早技によって峰打ちを食らわされ、その場に静寂が戻った時には相変わらずに羅辰の鼻先に突き付けられた刃の切っ先があった。
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