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極道恋浪漫 第三章
102 男たちの夢
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香港、九龍城砦地下街焔邸――。
その日、同じ邸の別棟に住む遼二が皇帝・焔を訪ねて、二人は午後のひと時を家令の真田が用意した飲茶を囲んでまったりと過ごしていた。
「もうあと少ししたら冰も卒業か。早いもんだな」
遼二が茉莉花茶を含みながら穏やかに笑む。
「そうだな。あいつをこの邸に引き取ってからかれこれ一年か――。どうもつい昨日のことのように思えるぞ」
「俺たちも歳を取ったってことだ。月日が過ぎるのが年々早く感じられるとはな」
ここの遊郭街を立て直して以来、毎日が飛ぶように過ぎていったように思う。焔は相変わらずに地下街の統治で忙しい日々を過ごしていたし、遼二もまた、紫月と協力して遊郭街区の治安に努めている。
「卒業したら冰は黄の爺さん共々、ここのカジノでディーラーデビューすると聞いているが――」
「ああ。冰はそのつもりでいるようだ。まあ俺としては、なにもカジノ勤めせずともこの邸でゆっくり過ごしてくれればいいと思っているのだがな」
焔にとって冰一人を養うくらいどうということもない。ディーラーとして少しでも役に立ちたいと思ってくれる冰の気持ちは有り難いが、それよりも邸にいて、自分の帰りを待っていてくれる方が嬉しいなどと思ってしまうわけだ。
「だったらすぐにでも娶っちまえばいいだろうに。元々遊郭街から救い出す際にはそうしようとしていたわけだし」
クスッと遼二は笑う。
「お前さん、一年も共に住んでいて、未だヤツに手を出してねえんだろ? 俺にはそれの方が不思議でならんぞ」
遼二は焔の親友だ。彼が冰をどう思っているかくらい、傍で見ていれば聞かずとも分かるというものなのだ。
「そういうお前さんこそどうなのだ。あの紫月と少しは進展してるのか?」
ニヤっと意味ありげに笑みながら反撃開始だ。
「進展って……俺ァ別に」
「隠しても無駄だ。お前さんがあの紫月にぞっこんだってことくらい見抜けねえとでも?」
「ぞっこんって……」
嫌な言い方をしやがる――と、遼二はタジタジだ。卓の上に置いてあった煙草に手を伸ばしては深く一服を吸い込んでごまかすのが精一杯。
「――ったく、互いに他人のことを言えた義理じゃねえな」
ふうと煙を吐いて苦笑する。
「カネ、俺だってまるっきり何も考えてねえわけじゃねえさ。とにかく冰が卒業するまでは、いろいろな意味で伸び伸びと青春を過ごさせてやりてえと思ってるだけだ」
「青春ねぇ……。お前さんからそんな言葉が出るとはな。つまり、ヤツが卒業したらちゃんと気持ちを打ち明けようってか?」
「まあそんなところだ。冰はどう考えているか知れねえが、少なくとも俺を嫌ってはいねえと思える。ゆくゆくはあいつを娶りたいと思っているが、ものには順序ってのがあるわけだしな」
「順序――ねえ」
つまり、それだけ真剣に考えているというのが聞かずとも分かる。焔の中では彼に対する気持ちは既にしっかり固まっているようだ。
「そこまで決めてて未だ手付かずにしてるとはな。冰だってもう十八歳だろうが。日本じゃ十八歳と言えば野郎は結婚が認められてる歳だぞ? 女なら十六歳で……」
「そういうてめえは二十八歳、紫月は二十五歳だろうが」
とっくに成人を越してるな――と、不敵に笑う。
「ああ、ああ……分かった。もう言いっこなしだ。精進する!」
参ったなと言わんばかりに二人で反撃のし合いっこに苦笑し、互いの想いがいつか実ることを願い合う。そんな平和な午後だった。
その日、同じ邸の別棟に住む遼二が皇帝・焔を訪ねて、二人は午後のひと時を家令の真田が用意した飲茶を囲んでまったりと過ごしていた。
「もうあと少ししたら冰も卒業か。早いもんだな」
遼二が茉莉花茶を含みながら穏やかに笑む。
「そうだな。あいつをこの邸に引き取ってからかれこれ一年か――。どうもつい昨日のことのように思えるぞ」
「俺たちも歳を取ったってことだ。月日が過ぎるのが年々早く感じられるとはな」
ここの遊郭街を立て直して以来、毎日が飛ぶように過ぎていったように思う。焔は相変わらずに地下街の統治で忙しい日々を過ごしていたし、遼二もまた、紫月と協力して遊郭街区の治安に努めている。
「卒業したら冰は黄の爺さん共々、ここのカジノでディーラーデビューすると聞いているが――」
「ああ。冰はそのつもりでいるようだ。まあ俺としては、なにもカジノ勤めせずともこの邸でゆっくり過ごしてくれればいいと思っているのだがな」
焔にとって冰一人を養うくらいどうということもない。ディーラーとして少しでも役に立ちたいと思ってくれる冰の気持ちは有り難いが、それよりも邸にいて、自分の帰りを待っていてくれる方が嬉しいなどと思ってしまうわけだ。
「だったらすぐにでも娶っちまえばいいだろうに。元々遊郭街から救い出す際にはそうしようとしていたわけだし」
クスッと遼二は笑う。
「お前さん、一年も共に住んでいて、未だヤツに手を出してねえんだろ? 俺にはそれの方が不思議でならんぞ」
遼二は焔の親友だ。彼が冰をどう思っているかくらい、傍で見ていれば聞かずとも分かるというものなのだ。
「そういうお前さんこそどうなのだ。あの紫月と少しは進展してるのか?」
ニヤっと意味ありげに笑みながら反撃開始だ。
「進展って……俺ァ別に」
「隠しても無駄だ。お前さんがあの紫月にぞっこんだってことくらい見抜けねえとでも?」
「ぞっこんって……」
嫌な言い方をしやがる――と、遼二はタジタジだ。卓の上に置いてあった煙草に手を伸ばしては深く一服を吸い込んでごまかすのが精一杯。
「――ったく、互いに他人のことを言えた義理じゃねえな」
ふうと煙を吐いて苦笑する。
「カネ、俺だってまるっきり何も考えてねえわけじゃねえさ。とにかく冰が卒業するまでは、いろいろな意味で伸び伸びと青春を過ごさせてやりてえと思ってるだけだ」
「青春ねぇ……。お前さんからそんな言葉が出るとはな。つまり、ヤツが卒業したらちゃんと気持ちを打ち明けようってか?」
「まあそんなところだ。冰はどう考えているか知れねえが、少なくとも俺を嫌ってはいねえと思える。ゆくゆくはあいつを娶りたいと思っているが、ものには順序ってのがあるわけだしな」
「順序――ねえ」
つまり、それだけ真剣に考えているというのが聞かずとも分かる。焔の中では彼に対する気持ちは既にしっかり固まっているようだ。
「そこまで決めてて未だ手付かずにしてるとはな。冰だってもう十八歳だろうが。日本じゃ十八歳と言えば野郎は結婚が認められてる歳だぞ? 女なら十六歳で……」
「そういうてめえは二十八歳、紫月は二十五歳だろうが」
とっくに成人を越してるな――と、不敵に笑う。
「ああ、ああ……分かった。もう言いっこなしだ。精進する!」
参ったなと言わんばかりに二人で反撃のし合いっこに苦笑し、互いの想いがいつか実ることを願い合う。そんな平和な午後だった。
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