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極道恋浪漫 第三章
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「請け負ったのは――ターゲットの少年の家族に両親を殺された復讐だ……。あの少年の親か兄弟か、細かいことは知らないが、とにかく両親を殺されたっていう同じ思いをあの少年の家族に味わわせてやりてえからと……」
「依頼者の名前は?」
「……ッ、本名は知らねえ。アリスと名乗ってた」
「アリスだ? 一緒にいた女か?」
コクリと小さくロナルドはうなずいた。
「アリス――ね。そいつぁ偽名だな」
「偽名……?」
首を傾げるロナルドの眼前に、李が白蘭という女の写真を突き出して見せた。
「アリスというのはこの女で間違いありませんか?」
李の冷え冷えとした瞳が突き刺すように鋭く問い掛けてくる。言葉じりは至極丁寧だが、その視線は丁寧とは程遠い。ロナルドはもうそんなことまで把握されていたのかと、完全に白旗を上げたようだ。
「……おっしゃる通りです。写真の女で間違いありません」
その答えに焔は薄く口角を上げた。
「そうか。よく白状した」
では本当のところを教えてやろう――と、ロナルドの足元に女の写真を投げ捨てる。
「いいか、よく聞け。そいつの名は何梓晴。ある所ではトパーズ、または白蘭とも名乗っていた。女の両親は健在で、殺されたなんてのは真っ赤な嘘だ」
「嘘……? じゃあ、あの女の目的は……」
「お前さんが手にかけようとしていたボウズを邪魔に思っていることは確かだろう。あのボウズは女の恋敵だからな」
「恋敵……?」
「と言っても女の独りよがりだ」
「……片想い……ということですか?」
ロナルドは困惑気味で視線を泳がせる。女と少年が同一の誰かを取り合っていたとするなら、その相手が男にせよ女にせよ、どちらかが同性愛ということになるからだ。
ロナルドの問いには答えずに、焔は続けた。
「ちなみにあのボウズだが――我がファミリーの一員だ」
「え……!?」
ロナルドは相当驚いたようだった。
「まさかそんな……ッ、じゃあ俺は……」
「先程俺たちが阻止しなければ、お前さんは我々に戦を売ったことになっていたな」
「そんな……ッ」
みるみるとロナルドは蒼白となり、わずかの間に蒼を通り越して顔面を真っ白にしながら震えた。この香港の裏社会を治める周一族の身内に手を出したとあれば、その時点で行く末が決まったも同然だからだ。まさか女のターゲットがそんな大それた相手と知っていれば、当然請け負わなかった仕事だ。
だが、拘束されているとはいえ、今時点で自分は葬られずに生きている。目の前の皇帝たる男も殺すつもりはないと言う。ではいったいどのような仕打ちが待っているというのか――ロナルドは想像すらできずにただただ震え出す身体を必死に抑えるしかできずにいた。
「本来であれば、未遂だろうと我がファミリーに手をかけようとしただけでお前さんは赦されざる輩だ。だが、今回ばかりは不問にしてやろう」
「……不問? それはどういう……」
ロナルドは再三驚いた様子で、言葉も出ない。
「まさか……俺を放免にして……今後はあんたたちに狙われ続けるっていうことですか?」
今は見逃してくれたとしても、この先いつどこで命を狙われるかと怯え続けることがファミリーからの報復だということだろうか。そうとしか考えられない。
「お前さん、あのボウズが我がファミリーと知っていれば依頼は受けなかった。そうだな?」
「……も、もちろん……。ですが……」
「女からはターゲットが単なる一般人の堅気としか聞いていなかった」
これも当たっているな? と言うようにチラリと視線を向けられる。
「……おっしゃる通りです」
とはいえ、ファミリーの身内に手を出そうとしたことは事実だ。今更、どのような経緯で仕事を請け負ったかなどということを事細かに弁明したところで、言い訳がましいだけだということは分かっている。今ここで殺されないということは、やはりこの先にそれ以上辛辣な状況が待ち受けているとしか考えられない。ロナルドにはそれ以外思い付かないようだった。
「依頼者の名前は?」
「……ッ、本名は知らねえ。アリスと名乗ってた」
「アリスだ? 一緒にいた女か?」
コクリと小さくロナルドはうなずいた。
「アリス――ね。そいつぁ偽名だな」
「偽名……?」
首を傾げるロナルドの眼前に、李が白蘭という女の写真を突き出して見せた。
「アリスというのはこの女で間違いありませんか?」
李の冷え冷えとした瞳が突き刺すように鋭く問い掛けてくる。言葉じりは至極丁寧だが、その視線は丁寧とは程遠い。ロナルドはもうそんなことまで把握されていたのかと、完全に白旗を上げたようだ。
「……おっしゃる通りです。写真の女で間違いありません」
その答えに焔は薄く口角を上げた。
「そうか。よく白状した」
では本当のところを教えてやろう――と、ロナルドの足元に女の写真を投げ捨てる。
「いいか、よく聞け。そいつの名は何梓晴。ある所ではトパーズ、または白蘭とも名乗っていた。女の両親は健在で、殺されたなんてのは真っ赤な嘘だ」
「嘘……? じゃあ、あの女の目的は……」
「お前さんが手にかけようとしていたボウズを邪魔に思っていることは確かだろう。あのボウズは女の恋敵だからな」
「恋敵……?」
「と言っても女の独りよがりだ」
「……片想い……ということですか?」
ロナルドは困惑気味で視線を泳がせる。女と少年が同一の誰かを取り合っていたとするなら、その相手が男にせよ女にせよ、どちらかが同性愛ということになるからだ。
ロナルドの問いには答えずに、焔は続けた。
「ちなみにあのボウズだが――我がファミリーの一員だ」
「え……!?」
ロナルドは相当驚いたようだった。
「まさかそんな……ッ、じゃあ俺は……」
「先程俺たちが阻止しなければ、お前さんは我々に戦を売ったことになっていたな」
「そんな……ッ」
みるみるとロナルドは蒼白となり、わずかの間に蒼を通り越して顔面を真っ白にしながら震えた。この香港の裏社会を治める周一族の身内に手を出したとあれば、その時点で行く末が決まったも同然だからだ。まさか女のターゲットがそんな大それた相手と知っていれば、当然請け負わなかった仕事だ。
だが、拘束されているとはいえ、今時点で自分は葬られずに生きている。目の前の皇帝たる男も殺すつもりはないと言う。ではいったいどのような仕打ちが待っているというのか――ロナルドは想像すらできずにただただ震え出す身体を必死に抑えるしかできずにいた。
「本来であれば、未遂だろうと我がファミリーに手をかけようとしただけでお前さんは赦されざる輩だ。だが、今回ばかりは不問にしてやろう」
「……不問? それはどういう……」
ロナルドは再三驚いた様子で、言葉も出ない。
「まさか……俺を放免にして……今後はあんたたちに狙われ続けるっていうことですか?」
今は見逃してくれたとしても、この先いつどこで命を狙われるかと怯え続けることがファミリーからの報復だということだろうか。そうとしか考えられない。
「お前さん、あのボウズが我がファミリーと知っていれば依頼は受けなかった。そうだな?」
「……も、もちろん……。ですが……」
「女からはターゲットが単なる一般人の堅気としか聞いていなかった」
これも当たっているな? と言うようにチラリと視線を向けられる。
「……おっしゃる通りです」
とはいえ、ファミリーの身内に手を出そうとしたことは事実だ。今更、どのような経緯で仕事を請け負ったかなどということを事細かに弁明したところで、言い訳がましいだけだということは分かっている。今ここで殺されないということは、やはりこの先にそれ以上辛辣な状況が待ち受けているとしか考えられない。ロナルドにはそれ以外思い付かないようだった。
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