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極道恋浪漫 第四章
155 再会のとき
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「羅鵬、組織の名を振り翳して裏の世界の掟を穢した罪は見過ごせんぞ。お前のやったことは組織の顔に泥を塗ったも同然の愚業だ。棲み分けの意味も理解せず、土足で他人様の家を荒らしただけに過ぎない。お前には組織が定める掟によって、その身を以て始末をつけてもらわねばならん」
組織がどういった沙汰を下すのか、それは周隼らにとって最早知り得るところではないし、口出しする必要もない。それがこの世界に生きる者の棲み分けということだ。
松健正というデスアライブ組織上層部の男は連れ立って来た部下たちに羅鵬を拘束するよう指示すると、静かに周隼らの前で一礼をしてみせた。
「頭領・周。此度は我々の組織の者がとんだご迷惑をお掛けした。本日今、この時を以て九龍城砦を周一族と皇帝周焔殿にお返しし、この通り深くお詫び申し上げる」
言葉通り数十秒に渡るほど深々と頭を下げて詫びた松健正に、周隼以下ファミリーの者たちも揃って敬意を表した。
「松健正殿のご理解に感謝する」
頭領同士の合致を経て、名実ともに九龍城砦地下街は周ファミリーの手に返ってくることがはっきりと決まったのだった。
静まり返っていたカジノ内にどこからともなく歓喜の声が上がり、次第に大歓声となって轟いた。
そんな中、焔はずっと自らの身体で庇っていた若きギャンブラーを気にかけて振り返った。
「お客人、お騒がせして申し訳ない。お怪我はないか――?」
そう言って振り返った先に、またもや驚きに息を呑む。
目深に被っていた帽子をゆっくりと持ち上げた細い手の先に垣間見えたのは――、
「……! お……前さん、まさか……」
穏やかな笑みの双眸から今にもあふれそうな大粒の涙をたたえたその顔は――この一年の間、一日一時たりとて忘れたことのなかった愛しき笑顔。若き凄腕のギャンブラーは、なんと冰だったのだ。
「焔……さん。焔さん!」
「……冰……お前……なのか?」
「はい……。はい、焔さん!」
帰って来ました。僕はあなたの下に帰って来ました――。
満面の笑顔と共に大粒の涙が白い頬を濡らして滝のように流れ落ちる。焔は震える手を伸ばすと、信じられないといった顔つきで胸を震わせた。
「……冰、本当に……お前か」
帽子の下から現れた顔は確かに愛しい冰だ。一年前に別れた時より背も伸びて、当時肩先につくかつかないかというくらいだった髪も背中まで伸びている。
「背が……伸びたのだな。髪も長くなって……」
何よりも身体つきが痩せ細ってしまったことを心配そうにしながらも、焔は震える手でその肩を抱き寄せた。
未だ夢か幻かという感じで、信じ難い顔つきでいる焔に、紫月の明るい声が耳を揺さぶる。
「皇帝様、冰君はな、なんとかして皇帝様のお力になれないかとこの一年の間修業をがんばってきたんだぜ!」
「修業……?」
「うん! 俺と一緒になって親父から体術の稽古を受けてさ。老黄からはディーラーとギャンブラーの修業をな。ものすげえ厳しい訓練の日々だったが、冰君は弱音ひとつ吐かずによく耐えたんだぜ!」
紫月からはこの九龍城砦を取り戻すに当たって、羅鵬の持ち金を正攻法で吸い上げる手立てとして黄老人が考えた策が告げられた。この街の人々を戦という暴力に巻き込むことなく羅鵬の力を削ぐには、彼の持つ大金を空にすることだという僚一らの考えを聞いた黄老人が、冰にカジノで大勝ちする技を教え込み、一発逆転で金庫の金を吸い上げる術を叩き込んできたのだという。その間に香港では父と兄らファミリーが一丸となってデスアライブの組織に伝手をつけるべく尽力してくれたのだそうだ。
「そう……だったのか。苦労を……掛けた。冰にも、そして皆にも――」
堪え切れずに焔もまた、ボロボロと大粒の涙を流しては男泣きに身を震わせた。
組織がどういった沙汰を下すのか、それは周隼らにとって最早知り得るところではないし、口出しする必要もない。それがこの世界に生きる者の棲み分けということだ。
松健正というデスアライブ組織上層部の男は連れ立って来た部下たちに羅鵬を拘束するよう指示すると、静かに周隼らの前で一礼をしてみせた。
「頭領・周。此度は我々の組織の者がとんだご迷惑をお掛けした。本日今、この時を以て九龍城砦を周一族と皇帝周焔殿にお返しし、この通り深くお詫び申し上げる」
言葉通り数十秒に渡るほど深々と頭を下げて詫びた松健正に、周隼以下ファミリーの者たちも揃って敬意を表した。
「松健正殿のご理解に感謝する」
頭領同士の合致を経て、名実ともに九龍城砦地下街は周ファミリーの手に返ってくることがはっきりと決まったのだった。
静まり返っていたカジノ内にどこからともなく歓喜の声が上がり、次第に大歓声となって轟いた。
そんな中、焔はずっと自らの身体で庇っていた若きギャンブラーを気にかけて振り返った。
「お客人、お騒がせして申し訳ない。お怪我はないか――?」
そう言って振り返った先に、またもや驚きに息を呑む。
目深に被っていた帽子をゆっくりと持ち上げた細い手の先に垣間見えたのは――、
「……! お……前さん、まさか……」
穏やかな笑みの双眸から今にもあふれそうな大粒の涙をたたえたその顔は――この一年の間、一日一時たりとて忘れたことのなかった愛しき笑顔。若き凄腕のギャンブラーは、なんと冰だったのだ。
「焔……さん。焔さん!」
「……冰……お前……なのか?」
「はい……。はい、焔さん!」
帰って来ました。僕はあなたの下に帰って来ました――。
満面の笑顔と共に大粒の涙が白い頬を濡らして滝のように流れ落ちる。焔は震える手を伸ばすと、信じられないといった顔つきで胸を震わせた。
「……冰、本当に……お前か」
帽子の下から現れた顔は確かに愛しい冰だ。一年前に別れた時より背も伸びて、当時肩先につくかつかないかというくらいだった髪も背中まで伸びている。
「背が……伸びたのだな。髪も長くなって……」
何よりも身体つきが痩せ細ってしまったことを心配そうにしながらも、焔は震える手でその肩を抱き寄せた。
未だ夢か幻かという感じで、信じ難い顔つきでいる焔に、紫月の明るい声が耳を揺さぶる。
「皇帝様、冰君はな、なんとかして皇帝様のお力になれないかとこの一年の間修業をがんばってきたんだぜ!」
「修業……?」
「うん! 俺と一緒になって親父から体術の稽古を受けてさ。老黄からはディーラーとギャンブラーの修業をな。ものすげえ厳しい訓練の日々だったが、冰君は弱音ひとつ吐かずによく耐えたんだぜ!」
紫月からはこの九龍城砦を取り戻すに当たって、羅鵬の持ち金を正攻法で吸い上げる手立てとして黄老人が考えた策が告げられた。この街の人々を戦という暴力に巻き込むことなく羅鵬の力を削ぐには、彼の持つ大金を空にすることだという僚一らの考えを聞いた黄老人が、冰にカジノで大勝ちする技を教え込み、一発逆転で金庫の金を吸い上げる術を叩き込んできたのだという。その間に香港では父と兄らファミリーが一丸となってデスアライブの組織に伝手をつけるべく尽力してくれたのだそうだ。
「そう……だったのか。苦労を……掛けた。冰にも、そして皆にも――」
堪え切れずに焔もまた、ボロボロと大粒の涙を流しては男泣きに身を震わせた。
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