極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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 主人はまだ冰の博打の腕前を知らないので、いずれは紫月同様に男娼として使うことを目論んでいる様子だ。今はまだ色気が足りないが元々の容姿は文句なしなので、ここで過ごす内に男娼として十分な稼ぎ手となるだろうと期待しているわけだ。
 そうして紫月と冰の源氏名が決まったところで、他の皆は普段通りの名で呼び合うことに決まった。まあ、源次郎は源さん、レイや倫周はレイちゃん、倫ちゃんなどといったあだ名呼びであれば、素性がバレることもないだろう。
「あの――、ひとつよろしいですか? 自分は花魁付きの下男の役割ですが、お客様の前などでは花魁のことを何とお呼びすればよろしいでしょう」
 そう訊いたのは春日野である。確かに確認必要事項といえる。
「そうだね、お客様の前では太夫と呼んでもらえばいいかね。男花魁だが遊女たちと同じで構わんだろう」
「承知しました。では座敷では太夫と呼ばせていただきます」
「ああ、頼むよ。まあね、座敷を離れれば堅苦しくする必要もないのでね。姉さん――ああ、男花魁だから兄さんか。そんな感じで構わんよ」
 主人がそんなことを言うので、春日野は、
「こちらは遊郭ですし、雅と粋を考慮して”姐さん”では如何でしょう」
 と訊いた。
「姐さんか。なかなかに粋ではないか。それで構わんよ」
 主人は呼び方ひとつにも気遣いとやる気が感じられると言って、たいそう喜んだ。
「では普段は姐さんと呼ばせていただきます」
 些細なことと思えるだろうが、春日野にしてみれば呼び名ひとつが案外重要なのだ。咄嗟の時に普段の癖で『姐さん!』と出てしまうことも鑑みての事前の対処というところであった。
「それじゃ皆! 明日からよろしく頼みますぞ」
 いよいよ男遊郭に花魁が誕生した初披露目の幕が上がろうとしていた。



◇    ◇    ◇



 その頃、周と鐘崎の方では血眼になって消えた皆の行方を追っていた。
 拉致現場と思われる場所の防犯カメラが使えないので、駐車場出入り口が写っていそうな周辺施設を片っ端から当たると共に、運転手に預けられた買い物袋から皆が立ち寄ったと思われるショップのすべてを回って聞き込みを続けた。
 その結果、紫月らのことを覚えていた店員は多数見つかったが、彼らが来店していた同じ時刻に怪しい客がいなかったかどうかを尋ねても、そう簡単には見つからなかった。
「そのお客様たちでしたらよく覚えています。すごく気前良くご購入くださって、それ以前に皆さんめちゃくちゃカッコ良かったので何をやってる人なんだろうねって店内でもちょっとした噂になっていたんです。ただその方たちは買い物中もずっと目立っていたので、他のお客様もその人たちのことをチラチラ見ている方も多くてですね……」
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