極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「それを読み解いたのもすげえが、実際にニロクに目を揃えちまうんだからな。冰の腕前はルーレットやカードで既に知ってはいたが、まさか壺まで振れるとは……」
 クイと盃の酒を口に含みながら、鐘崎が恐れ入ったぜと心酔している。他の皆も同様であった。
「ところで――さっきの男だが。あいつはただの客じゃねえかも知れねえな」
「ああ、さっきの客か……」
「念の為、橘に後を付けてもらっている。まあ、ヤサを突き止めるだけで深追いはするなと言ってあるからすぐに戻って来るだろう」
「橘の京ちゃんか? ヤツも来てくれてんのか?」
 橘は鐘崎組の幹部の男である。若頭の護衛役として付いて来たのだろうが、それにしてもよく大門での審査をくぐり抜けられたなと紫月が感心顔でいる。
「橘には俺たちとは別ルートで、隣の茶屋の働き手として潜入してもらったんだ。明日には氷川ンところの李さんとも合流できるはずだ。おめえの親父さんの飛燕さんも待機してくれている」
「親父も来るつもりなのか!」
 一度に何人もでは疑われそうなので、日をずらして数人を送り込んでもらう計画だそうだ。
「来る前にこの丹羽からも話を聞いたが、どうもここを乗っ取った連中を片付けるには多少骨が折れそうなんでな。こちらとしても応援は多いに越したことはねえ。態勢は万全を期したい」
 その丹羽の方でも警察からの応援をどのタイミングで迎え入れるかなど、しばらくはここにいる面々だけで少しずつ準備を整えながら様子見したいとのことだった。
 そうこうしている内に偵察にやっていた橘が戻って来た。
「よう、お疲れ! まあ一杯やってくれ」
 若頭自ら徳利の酒を注いでやる。橘の方も恐縮しながらも嬉しそうに盃を受け取った。
「来て早々ご苦労様だったな。で、どんな様子だ?」
 部下を労いながら鐘崎が訊くと、橘はやはりあの男は乗っ取り犯の一味で間違いないだろうとの見解を示した。
「ヤツは大門とは反対方向の街の外れに向かいました。この施設の一番端じゃねえかと思われる所に神社のような祠が祀ってあって、その裏の建物で姿を消したんで、おそらくそこがヤサと見ていいかと。しばらく様子を窺っていたところ、ガラの悪そうな連中が出たり入ったりしてましたね。どうも厠が外にある造りのようです」
 橘の報告を受けて、丹羽もそこが彼らのアジトで間違いないだろうとうなずいた。
「しかし……ここの施設……っつーか、ほぼ街ですが。奥へ行くほどヤバい雰囲気になっていますね。奴さんが消えたちょっと手前辺りじゃ酔っ払った夜鷹が男を引き込んでましたぜ。ここは厳しい審査がある会員制ってわりには、客の方もえらく質が悪そうでしたが……」
 それについてはおそらく客ではないのだろうと丹羽が言った。
「あの辺りは元々茶屋だった建物を乗っ取り犯たちが住処にしちまったようだからな。遊女として使い物にならなくなった女を集めちゃ薬漬けにして、てめえらの慰みとして住まわせていやがるんだ」
 酷い話もあったものだと誰もが苦々しい顔で舌打ちをする。
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