極道恋事情

一園木蓮

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三千世界に極道の華

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「なるほど。一戦構えるに当たっては、周りの関係ねえ者たちの安全を確保する必要があるな」
 茶屋や遊女、それに外界から来る客たちを巻き込むわけにはいかないからだ。
「武器庫を押さえると共に兵糧を断つのも手だな。奴ら、メシはどうしてるんだ? 外から持ち込むと言っても弁当ばかりってわけじゃなかろう?」
 さすがは鐘崎である。なかなかにいい目の付け所だが、この地下街は元々ここから出ずとも生活ができるようにと計算されて造られた街である。生鮮食料品などを売る店も存在しているし、それを生業にしている者たちも数多くいる。つまり、この街の住人すべてが遊郭関係者とは限らないわけで、外の世界と何ら変わることなく生活そのものができてしまうということだ。昔の戦のように移動する軍の兵糧を尽くのとは少々意味合いが違うのだ。丹羽もそこで苦労しているのだと言った。
「そうか……。兵糧の線が無理となるとやはり武器庫を襲撃するしかねえだろうな。思っていた以上にデカい戦になるかも知れねえな」
 苦い顔の鐘崎に、皆も同様に難しい表情で黙り込む。
「とにかくこちらの戦力を万全にするしかねえ。時間は掛かるが、焦らず敵に気付かれねえよう注意を払いながら日々見方をこの地下世界に引っ張って体制を整える。ある程度制圧できそうだと踏んだところで一気に警察からの応援がなだれ込むようにして一網打尽にしたいと思っている」
 それまでは今しばらくこれまで通りの営業を続けていくしかないと丹羽は言った。
「鐘崎は奥方のことが心配だろうから、毎日この茶屋に通い詰めるという形で常連になってくれ。その為に必要な資金は俺の方で都合する」
 花魁を買うには膨大な資金が必要である。客が何日も居座り続けることは江戸吉原の頃からもご法度とされていたので、通い続けるには一度引き払ってからまた次の晩に新たな客として訪れるしかないわけである。当然資金も嵩むが、花魁をモノにするには賭場を通らなければならないとなると尚更だ。もちろん茶屋の主人に事情を打ち明けて協力してもらうという手もあるが、それだと敵への上納金が滞ってしまう。鐘崎としては紫月の為ならばそのくらいどうということもないわけだが、助力を頼む丹羽の側からすれば、それも経費といった認識でいるのだろう。
「周の方はこのまま茶屋の働き手という形でここに残ってくれ。入る時は客という名目で来たから大門でもそう厳しくはチェックされずに済む。一人二人帳尻が合わねえくらいなら、なんとかごまかしは効くはずだ。ここの主人には俺から伝えておく」
 これでひとまず周は下男として茶屋に常駐できることになる。
「とにかく今夜はゆっくり休んでくれ。武器庫への襲撃の手筈が整ったらまた連絡する」
 丹羽の仲間である警察関係者も各茶屋に散らばりながら機会を窺うというので、何かあればすぐにこの地下施設内でも団結は可能だ。そうして鐘崎らは丹羽を見送ると、ひとまずは久々の夫婦再会の時を過ごしたのだった。
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