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Daydream Candy 2話
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「……ったく、あの龍さんって、マジ愛想ねえっていうか……ポーカーフェイスっての? 冗談全く通じねえし、何言っても無表情で反応ねえし。ヘルプ入っても緊張しちゃって疲れますよ……」
「そうそう、俺もこないだあの人と一緒ンなって、すっげえ場を盛下げちゃったっつーか、波濤さんとは正反対っすよ!」
「波濤さんはナンバーワンなのに全然気取りとかねえし、バカやって一緒にテーブル盛り上げてくれるもんなぁ……」
「だよなぁ! それに何てったって波濤さんのマジックの腕は超プロ級だし! 話題なくて困ってるテーブルでも波濤さんの華麗テク一発で速効盛り上がるし、まさに神ッスよ!」
波濤の特技はマジック――いわば手品だ。客の至近距離で時折披露される腕前はプロ顔負けの、それは見事で溜め息が出るほどのものだった。まあ実のところ、この波濤の特技というのは彼の熾烈ともいえる人生に付随するものであったわけだが、そういった事情を知っている者はいない。単なる趣味の延長だと思っている者が殆どだろう。
それはさておき、相変わらずにホストたちの愚痴は止め処ない。
「俺、もう龍さんのヘルプに付くの嫌ッスよー! 今日もできることなら波濤さんのテーブル呼んで欲しい」
「俺も! 龍さんはまるで仏頂面だしさぁ、頭ひねって出したこっちのジョークに笑いもしねえから客も引きつっちゃって申し訳ねえのなんのって。当の本人は助け船を出すでもなきゃ、クールに煙草なんか吸っちゃって、脚組んで扇子扇いでるんスよ! てめえはマフィアの頭領かっつの!」
「そうそう! あの人、煙草の火も客に点けさせんだぜ!」
「うわっマジッ!? それじゃ本末転倒じゃね? どっちがホストってか、客がホステスってか?」
「やっぱ頭領? ありゃホストじゃねえーーー!」
あんな奴がどうして六本木でナンバーワンを張っていられたのか皆目不思議――
というのが新宿店のホストらのほぼ一致した見解だった。
「まぁまぁ、そうトガりなさんな。皆仲良く! それがこの店のモットーだろうが?」
後輩らの愚痴を聞き宥めながら、かくいう波濤自身もある種唖然とした思いで龍を見ていたのは事実だった。
確かに彼は一風変わっていた。今まで客が第一、できる限りの明るさともてなしでサービスするのが信条だった波濤にとっては、楽しく場を盛り上げることを何より大切にやってきたつもりだ。結果、ナンバーワンとなってからも、ベテラン、新人、ヘルプを問わずに同席に付いた者は分け隔てなく、時には自ら進んで道化を買って出たりもするし、とにかく来てくれた客に目一杯楽しんでもらうことが目標だった。
ナンバーワンの波濤がそんなふうだから、店の後輩ホストらも比較的伸び伸びとしていて、雰囲気は明るかった。そこへ突如、まるっきり水の違う男が入ってきたわけだから、店内の雰囲気も一転、次第に焦れたり愚痴ったりする者が現れても当然といったところか。
波濤は皆を宥めながらも、だが反面、この龍という男に不思議な興味を引かれていたのも否めなかった。
自分とはまるで正反対のやり方――客を楽しませるどころか、彼に寄り添い入店してくる女性客らの様子を窺っていると、大概は少し緊張したような面持ちで長身のその背中に隠れるようにして席に着くのが非常に印象的で、とにかく見たこともない手腕に強く興味を持ったのは確かだ。
後輩らの言うように、客に煙草の火を点けさせているところを目にしたこともある。
席にいる彼はおおよそ酒を作ることもなければ、会話を楽しんでいるふうでもないことが多い。客の女性らは恥ずかしそうにうつむき加減で、遠慮がちにグラスの酒を口にする――そんな様からは、手持ち無沙汰というのがありありと窺えるようでもある。
当の龍はといえば、そんな中にあっても我関せずで脚を組み、まるで自分は一国一城の主とばかりに、どっかりとソファの中央に腰を落ち着けたままだ。側ではヘルプに付いた後輩ホストが、緊張の面持ちで一心不乱に酒のグラス片手にトングを握り締めている。
嵐の前の静けさとでもいおうか、あるいは火事場に爆弾を抱えている状況とでもいおうか――そんな緊張の中にあって、だが時折何かの弾みで彼がわずかに笑みなどを漏らせば、それだけで満足というように女性たちは頬を染める。そんな瞬間を目の当たりにすれば、驚きを通り越して得体の知れない奇妙な感情が湧き上がる。
薄く笑う彼の口元と、その傍らでうっとりと頬を染める女の様が切り取った絵画のようで、ドキリとさせられるのも不本意だ。
自身の客を得意の会話で楽しませつつも龍のテーブルが気になって、横目で追うのが日課のようになってしまい、ここ最近の波濤はそんな自分に溜め息の出る思いでいた。
「そうそう、俺もこないだあの人と一緒ンなって、すっげえ場を盛下げちゃったっつーか、波濤さんとは正反対っすよ!」
「波濤さんはナンバーワンなのに全然気取りとかねえし、バカやって一緒にテーブル盛り上げてくれるもんなぁ……」
「だよなぁ! それに何てったって波濤さんのマジックの腕は超プロ級だし! 話題なくて困ってるテーブルでも波濤さんの華麗テク一発で速効盛り上がるし、まさに神ッスよ!」
波濤の特技はマジック――いわば手品だ。客の至近距離で時折披露される腕前はプロ顔負けの、それは見事で溜め息が出るほどのものだった。まあ実のところ、この波濤の特技というのは彼の熾烈ともいえる人生に付随するものであったわけだが、そういった事情を知っている者はいない。単なる趣味の延長だと思っている者が殆どだろう。
それはさておき、相変わらずにホストたちの愚痴は止め処ない。
「俺、もう龍さんのヘルプに付くの嫌ッスよー! 今日もできることなら波濤さんのテーブル呼んで欲しい」
「俺も! 龍さんはまるで仏頂面だしさぁ、頭ひねって出したこっちのジョークに笑いもしねえから客も引きつっちゃって申し訳ねえのなんのって。当の本人は助け船を出すでもなきゃ、クールに煙草なんか吸っちゃって、脚組んで扇子扇いでるんスよ! てめえはマフィアの頭領かっつの!」
「そうそう! あの人、煙草の火も客に点けさせんだぜ!」
「うわっマジッ!? それじゃ本末転倒じゃね? どっちがホストってか、客がホステスってか?」
「やっぱ頭領? ありゃホストじゃねえーーー!」
あんな奴がどうして六本木でナンバーワンを張っていられたのか皆目不思議――
というのが新宿店のホストらのほぼ一致した見解だった。
「まぁまぁ、そうトガりなさんな。皆仲良く! それがこの店のモットーだろうが?」
後輩らの愚痴を聞き宥めながら、かくいう波濤自身もある種唖然とした思いで龍を見ていたのは事実だった。
確かに彼は一風変わっていた。今まで客が第一、できる限りの明るさともてなしでサービスするのが信条だった波濤にとっては、楽しく場を盛り上げることを何より大切にやってきたつもりだ。結果、ナンバーワンとなってからも、ベテラン、新人、ヘルプを問わずに同席に付いた者は分け隔てなく、時には自ら進んで道化を買って出たりもするし、とにかく来てくれた客に目一杯楽しんでもらうことが目標だった。
ナンバーワンの波濤がそんなふうだから、店の後輩ホストらも比較的伸び伸びとしていて、雰囲気は明るかった。そこへ突如、まるっきり水の違う男が入ってきたわけだから、店内の雰囲気も一転、次第に焦れたり愚痴ったりする者が現れても当然といったところか。
波濤は皆を宥めながらも、だが反面、この龍という男に不思議な興味を引かれていたのも否めなかった。
自分とはまるで正反対のやり方――客を楽しませるどころか、彼に寄り添い入店してくる女性客らの様子を窺っていると、大概は少し緊張したような面持ちで長身のその背中に隠れるようにして席に着くのが非常に印象的で、とにかく見たこともない手腕に強く興味を持ったのは確かだ。
後輩らの言うように、客に煙草の火を点けさせているところを目にしたこともある。
席にいる彼はおおよそ酒を作ることもなければ、会話を楽しんでいるふうでもないことが多い。客の女性らは恥ずかしそうにうつむき加減で、遠慮がちにグラスの酒を口にする――そんな様からは、手持ち無沙汰というのがありありと窺えるようでもある。
当の龍はといえば、そんな中にあっても我関せずで脚を組み、まるで自分は一国一城の主とばかりに、どっかりとソファの中央に腰を落ち着けたままだ。側ではヘルプに付いた後輩ホストが、緊張の面持ちで一心不乱に酒のグラス片手にトングを握り締めている。
嵐の前の静けさとでもいおうか、あるいは火事場に爆弾を抱えている状況とでもいおうか――そんな緊張の中にあって、だが時折何かの弾みで彼がわずかに笑みなどを漏らせば、それだけで満足というように女性たちは頬を染める。そんな瞬間を目の当たりにすれば、驚きを通り越して得体の知れない奇妙な感情が湧き上がる。
薄く笑う彼の口元と、その傍らでうっとりと頬を染める女の様が切り取った絵画のようで、ドキリとさせられるのも不本意だ。
自身の客を得意の会話で楽しませつつも龍のテーブルが気になって、横目で追うのが日課のようになってしまい、ここ最近の波濤はそんな自分に溜め息の出る思いでいた。
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