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2. Nightmare Drop
Nightmare Drop 6話
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*源氏名:波濤(本名:雪吹冰)に関する調査報告書*
調書によれば、波濤は国内でも有数の財閥系企業である平井家の当主、平井剛造氏の次男として生まれる――とあった。以下が大まかな報告である。
雪吹冰は平井剛造が社の拡張事業で香港滞在中に見初めた日本人女性、雪吹冴絵との間に生まれた妾腹の子。
当時、剛造には妻と二歳になる男児があったが、本妻とは家同士の政略結婚だった為に冴絵と恋に落ちたと思われる。その後、冰を身籠もった冴絵を連れて帰国するも、本妻の逆鱗に触れ、冴絵は心身を疲労。冰を生むと間もなくして他界した。
剛造は冰を手元に置いて育てようとしたが、周囲の猛反対に合い、致し方なく香港の知人である黄氏に預けた。名字も”平井”を名乗ることは許されず、母方の”雪吹”とされた。
黄氏は香港の裏社会に顔がきく人物で、当時はカジノを経営。身寄りを亡くした冰が一人で生きていけるようにと、ディーラーの技を仕込みながら大切に育ててくれたようである。
黄氏が老衰で亡くなる際に聞かされた実の父親・平井剛造に一目会いたいと願った冰は、単身で日本へ帰国。だが、腹違いの兄である平井菊造によって、その願いを阻まれる。
ちょうどその頃、菊造は財閥の跡継ぎ候補から外されるという苦難に直面していた。素行、学業共にあまり褒められたところがなく、株主や役員たちによってそう決議されたようだが、そのことで妾腹の冰に財閥を乗っ取られるのではと危惧するようになる。
以来、冰に逆恨みをした菊造は、母親と自分から父を奪った慰謝料と称して、冰に多額の現金を要求するようになる。
冰は菊造の要求を真に受けて、二年前から毎月二百万円もの金を彼の口座に振り込んでいて、ホストになったのも金に都合をつける為と思われる。
現在、冰はホストクラブxuanwuにてナンバーワンホストを務めるが、通常の稼ぎでは足らず、男性客を相手に色を売っているようである。菊造による現金の要求は日増しに増額されているのも事実である。
以上――
かいつまんで大体このような内容が記されていた。
「ふぅ……。波濤がこんな難儀なものを背負っていただなんてね。何とかしてあげたいのは山々だが――」
帝斗はシガーを灰皿に揉み消すと、またひとたび重い溜め息をついた。
「財閥のトップ――、妾――、妾腹の子――、そして肉親からの恐喝と金の無心か。僕が冰にしてやれることがあるとしても、おそらくは彼の心の痛みまでを包み込んでやることはできないだろうかね。僕では何かと力不足か――」
だが、このまま見て見ぬふりを続けるわけにもいかない。そもそも帝斗が今回、興信所に頼んでまで波濤のことを調べたのには、彼の様子がおかしいことをひどく危惧していたからである。
表面は常に明るく、就業態度も真面目で、後輩にも好かれるとてもいい人柄の波濤である。だが、彼が明るさを装う裏で、何やら苦悩を抱えているように思えてならなかったのだ。
波濤の心の揺れをいち早く読み取った帝斗は、一先ず彼の生い立ちから、何故この店のホストになったのかなどについて、密かに調べてみることにしたのだった。
「――この件、ヤツに賭けてみるか。僕ではできないことでも、あいつならばきっと……」
手元の携帯電話のアドレス帳を見つめながら、帝斗はそう独りごちる。画面に映し出されたのは一人の男の名。帝斗にとって幼馴染みであり、人生の中でも数少ない”本物の親友”と呼べる男の名だった。
-FIN-
次エピソード3『Halloween Night』です。
調書によれば、波濤は国内でも有数の財閥系企業である平井家の当主、平井剛造氏の次男として生まれる――とあった。以下が大まかな報告である。
雪吹冰は平井剛造が社の拡張事業で香港滞在中に見初めた日本人女性、雪吹冴絵との間に生まれた妾腹の子。
当時、剛造には妻と二歳になる男児があったが、本妻とは家同士の政略結婚だった為に冴絵と恋に落ちたと思われる。その後、冰を身籠もった冴絵を連れて帰国するも、本妻の逆鱗に触れ、冴絵は心身を疲労。冰を生むと間もなくして他界した。
剛造は冰を手元に置いて育てようとしたが、周囲の猛反対に合い、致し方なく香港の知人である黄氏に預けた。名字も”平井”を名乗ることは許されず、母方の”雪吹”とされた。
黄氏は香港の裏社会に顔がきく人物で、当時はカジノを経営。身寄りを亡くした冰が一人で生きていけるようにと、ディーラーの技を仕込みながら大切に育ててくれたようである。
黄氏が老衰で亡くなる際に聞かされた実の父親・平井剛造に一目会いたいと願った冰は、単身で日本へ帰国。だが、腹違いの兄である平井菊造によって、その願いを阻まれる。
ちょうどその頃、菊造は財閥の跡継ぎ候補から外されるという苦難に直面していた。素行、学業共にあまり褒められたところがなく、株主や役員たちによってそう決議されたようだが、そのことで妾腹の冰に財閥を乗っ取られるのではと危惧するようになる。
以来、冰に逆恨みをした菊造は、母親と自分から父を奪った慰謝料と称して、冰に多額の現金を要求するようになる。
冰は菊造の要求を真に受けて、二年前から毎月二百万円もの金を彼の口座に振り込んでいて、ホストになったのも金に都合をつける為と思われる。
現在、冰はホストクラブxuanwuにてナンバーワンホストを務めるが、通常の稼ぎでは足らず、男性客を相手に色を売っているようである。菊造による現金の要求は日増しに増額されているのも事実である。
以上――
かいつまんで大体このような内容が記されていた。
「ふぅ……。波濤がこんな難儀なものを背負っていただなんてね。何とかしてあげたいのは山々だが――」
帝斗はシガーを灰皿に揉み消すと、またひとたび重い溜め息をついた。
「財閥のトップ――、妾――、妾腹の子――、そして肉親からの恐喝と金の無心か。僕が冰にしてやれることがあるとしても、おそらくは彼の心の痛みまでを包み込んでやることはできないだろうかね。僕では何かと力不足か――」
だが、このまま見て見ぬふりを続けるわけにもいかない。そもそも帝斗が今回、興信所に頼んでまで波濤のことを調べたのには、彼の様子がおかしいことをひどく危惧していたからである。
表面は常に明るく、就業態度も真面目で、後輩にも好かれるとてもいい人柄の波濤である。だが、彼が明るさを装う裏で、何やら苦悩を抱えているように思えてならなかったのだ。
波濤の心の揺れをいち早く読み取った帝斗は、一先ず彼の生い立ちから、何故この店のホストになったのかなどについて、密かに調べてみることにしたのだった。
「――この件、ヤツに賭けてみるか。僕ではできないことでも、あいつならばきっと……」
手元の携帯電話のアドレス帳を見つめながら、帝斗はそう独りごちる。画面に映し出されたのは一人の男の名。帝斗にとって幼馴染みであり、人生の中でも数少ない”本物の親友”と呼べる男の名だった。
-FIN-
次エピソード3『Halloween Night』です。
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