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8. Flame
Flame 3話
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そんな沈黙を打ち破るように帝斗は皆を見渡し、微笑んだ。
「皆、勝手を言って済まない。でも心配しないでおくれ。僕は引退して稼業を継ぐが、この店は畳まない。新しい代表の下でより一層盛り立てていって欲しい」
帝斗の言葉に一同は辛そうに表情を曇らせた。
「……新しい代表って……そんなん、嫌ッスよ……。俺たち、オーナーがいいッス。オーナーの下だから……辛いことがあったって今までやってこられたんだ」
「そうですよ! 波濤さんたちもいなくなって、オーナーもチェンジだなんて……それじゃもうxuanwuじゃないッス!」
涙声と共に怒りを堪えながらそう訴える者もいて、重苦しい雰囲気がますます皆の心を暗くしていく。そんな一同を切なげに見渡しながら、
「皆、ありがとう。そんなふうにこの店を愛してもらえて……僕は本当に嬉しいよ。お前たちと一緒に働くことができたことは僕の生涯の宝物さ」
そう言って頭を下げた。そして、切なさを吹き飛ばすかのようにとびきりの微笑みを見せると、続けてこう言った。
「さあ皆、新しい代表を紹介させておくれ」
僕の後を継いでくれることになった――波濤こと、雪吹冰だ――!
波濤の背に手を回しながらそう紹介した。
その瞬間、フロアーに再び地鳴りのようなざわめきが巻き起こった。
「う……うおーーー! マジっすか!?」
「波濤さんが……新代表……!?」
「夢じゃないッスよね!?」
「嘘じゃねえッスよね!?」
もう隣にいる者の声も聞こえないくらい、歓喜の絶叫がこだまする。
「オーナーも人が悪いッス!」
「そうですよ! 落としといて……上げるって! 何の商法っすか!」
「うおー、すっげ夢みてえだ! 嬉しすぎてやべえ!」
「オーナー、もう隠してることないッスよね!?」
わいの、わいのと詰め掛けて、ホストたちの熱気で帝斗らの席は押しつぶされそうになっていた。
「ちょっと皆、一旦自分の席に戻れって! 分かった、分かった、もう隠してることはないよ」
帝斗も大声でそう叫びながら、その表情は心からの満面の笑みで破顔する程だ。
「xuanwuは元々、この龍の持ち物だったんだ。土地も、このビルも龍の名義だから、正確にはオーナーは龍ということになる。そして新代表が波濤。皆、二人を助けて店を盛り立てていっておくれ! 僕も今度はお客として、ちょくちょく寄せてもらうさ」
そう言って、波濤へとバトンタッチをした。
龍との香港帰郷で、自分にとって最も大切なものに気付くことが出来た波濤は、その素直な気持ちを洗いざらい彼に打ち明けた。先ずは何よりも誰よりも龍を大切に想っていること――これはもう云うまでもないことであるが――龍と共に生涯を添い遂げたいと思っていること。そして同じくらい今の職場が大事であり、それは波濤にとってかけがえのないものだということ。これまでオーナーの帝斗をはじめ同僚の皆から与えてもらった厚情に対して、出来得る限りの恩返しをしたいと思っていることを伝えた。
龍も波濤の熱意とその深い思いを汲み取り、心配ではあるがホストを続けることに同意したのだ。
そして、帰国後にそのことを帝斗に報告したところ、ちょうど彼も実家の父親からそろそろ財閥を継ぐ為に戻って来いと急っ付かれているらしいことを知り、三人で話し合った結果、それぞれにとって進むべくして開かれたような人生を歩むことに決めたというわけだった。
「じゃあ波濤、お前さんからもひと言挨拶をお願いできるかい?」
「はい――」
波濤が立ち上がると、皆は静かに耳を傾ける。一人一人、誰を見てもその表情は輝き、既に新代表の下での意気込みを感じさせてくれるかのようだった。
「今、オーナーからご紹介いただいたように、これから代表を務めさせてもらうことになった雪吹冰です。この店は俺が日本へ来て初めて就いた、何物にも代え難い職場です。ここで皆に出会えて本当に良かったと思っている。感謝の気持ちを込めて、今まで以上にこの店を盛り立てていけるよう精進するんで、皆付いて来てくれ。よろしく頼む――」
深々とした礼と共にそう挨拶を述べた波濤に、割れんばかりの拍手が巻き起こった。
「こちらこそ……よろしくお願いします、新代表!」
「代表!」
「雪吹代表!」
「俺ら、今まで以上に頑張りますんで! よろしく面倒見てやってください!」
誰もがとびきりの笑顔で微笑み合う。花の季節の訪れと共に、club-xuanwuにも暖かい春風が舞い込んだようであった。
◇ ◇ ◇
その後、オーナー帝斗の引退と新オーナーの龍、そして新代表へ就任した雪吹冰のお披露目イベントも滞りなく済み、ホストクラブxuanwuは新たなメンバーで好調に滑り出していた。まさに春爛漫の季節である。
龍と波濤が競っていたナンバーも今は後継の辰也と純也に代替わりし、店先のボードも一新、ますます勢いを見せている。
「お前らもすっかり一人前のナンバーワンだな」
開店前の事務所で純也らにそう声を掛ける波濤も新代表の風格が出て、現役時代とはひと味違った色香を醸し出している。今日はオーナーの龍も顔を見せていて、ホストたちの意気込みも一段と高まっていた。
「皆、勝手を言って済まない。でも心配しないでおくれ。僕は引退して稼業を継ぐが、この店は畳まない。新しい代表の下でより一層盛り立てていって欲しい」
帝斗の言葉に一同は辛そうに表情を曇らせた。
「……新しい代表って……そんなん、嫌ッスよ……。俺たち、オーナーがいいッス。オーナーの下だから……辛いことがあったって今までやってこられたんだ」
「そうですよ! 波濤さんたちもいなくなって、オーナーもチェンジだなんて……それじゃもうxuanwuじゃないッス!」
涙声と共に怒りを堪えながらそう訴える者もいて、重苦しい雰囲気がますます皆の心を暗くしていく。そんな一同を切なげに見渡しながら、
「皆、ありがとう。そんなふうにこの店を愛してもらえて……僕は本当に嬉しいよ。お前たちと一緒に働くことができたことは僕の生涯の宝物さ」
そう言って頭を下げた。そして、切なさを吹き飛ばすかのようにとびきりの微笑みを見せると、続けてこう言った。
「さあ皆、新しい代表を紹介させておくれ」
僕の後を継いでくれることになった――波濤こと、雪吹冰だ――!
波濤の背に手を回しながらそう紹介した。
その瞬間、フロアーに再び地鳴りのようなざわめきが巻き起こった。
「う……うおーーー! マジっすか!?」
「波濤さんが……新代表……!?」
「夢じゃないッスよね!?」
「嘘じゃねえッスよね!?」
もう隣にいる者の声も聞こえないくらい、歓喜の絶叫がこだまする。
「オーナーも人が悪いッス!」
「そうですよ! 落としといて……上げるって! 何の商法っすか!」
「うおー、すっげ夢みてえだ! 嬉しすぎてやべえ!」
「オーナー、もう隠してることないッスよね!?」
わいの、わいのと詰め掛けて、ホストたちの熱気で帝斗らの席は押しつぶされそうになっていた。
「ちょっと皆、一旦自分の席に戻れって! 分かった、分かった、もう隠してることはないよ」
帝斗も大声でそう叫びながら、その表情は心からの満面の笑みで破顔する程だ。
「xuanwuは元々、この龍の持ち物だったんだ。土地も、このビルも龍の名義だから、正確にはオーナーは龍ということになる。そして新代表が波濤。皆、二人を助けて店を盛り立てていっておくれ! 僕も今度はお客として、ちょくちょく寄せてもらうさ」
そう言って、波濤へとバトンタッチをした。
龍との香港帰郷で、自分にとって最も大切なものに気付くことが出来た波濤は、その素直な気持ちを洗いざらい彼に打ち明けた。先ずは何よりも誰よりも龍を大切に想っていること――これはもう云うまでもないことであるが――龍と共に生涯を添い遂げたいと思っていること。そして同じくらい今の職場が大事であり、それは波濤にとってかけがえのないものだということ。これまでオーナーの帝斗をはじめ同僚の皆から与えてもらった厚情に対して、出来得る限りの恩返しをしたいと思っていることを伝えた。
龍も波濤の熱意とその深い思いを汲み取り、心配ではあるがホストを続けることに同意したのだ。
そして、帰国後にそのことを帝斗に報告したところ、ちょうど彼も実家の父親からそろそろ財閥を継ぐ為に戻って来いと急っ付かれているらしいことを知り、三人で話し合った結果、それぞれにとって進むべくして開かれたような人生を歩むことに決めたというわけだった。
「じゃあ波濤、お前さんからもひと言挨拶をお願いできるかい?」
「はい――」
波濤が立ち上がると、皆は静かに耳を傾ける。一人一人、誰を見てもその表情は輝き、既に新代表の下での意気込みを感じさせてくれるかのようだった。
「今、オーナーからご紹介いただいたように、これから代表を務めさせてもらうことになった雪吹冰です。この店は俺が日本へ来て初めて就いた、何物にも代え難い職場です。ここで皆に出会えて本当に良かったと思っている。感謝の気持ちを込めて、今まで以上にこの店を盛り立てていけるよう精進するんで、皆付いて来てくれ。よろしく頼む――」
深々とした礼と共にそう挨拶を述べた波濤に、割れんばかりの拍手が巻き起こった。
「こちらこそ……よろしくお願いします、新代表!」
「代表!」
「雪吹代表!」
「俺ら、今まで以上に頑張りますんで! よろしく面倒見てやってください!」
誰もがとびきりの笑顔で微笑み合う。花の季節の訪れと共に、club-xuanwuにも暖かい春風が舞い込んだようであった。
◇ ◇ ◇
その後、オーナー帝斗の引退と新オーナーの龍、そして新代表へ就任した雪吹冰のお披露目イベントも滞りなく済み、ホストクラブxuanwuは新たなメンバーで好調に滑り出していた。まさに春爛漫の季節である。
龍と波濤が競っていたナンバーも今は後継の辰也と純也に代替わりし、店先のボードも一新、ますます勢いを見せている。
「お前らもすっかり一人前のナンバーワンだな」
開店前の事務所で純也らにそう声を掛ける波濤も新代表の風格が出て、現役時代とはひと味違った色香を醸し出している。今日はオーナーの龍も顔を見せていて、ホストたちの意気込みも一段と高まっていた。
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