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社長様はご乱心
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※周焔の社長室での、とある日常の話です。
汐留、午後四時過ぎ――。
あと小一時間もすれば終業時刻だ。
いつものようにツインタワーの関連企業を巡回し終えた冰は、周の社長室へと戻ってきた。
「ただいま戻りました」
本当は「ただいまぁー!」くらいフランクさでいいのだが、冰は律儀な性格だ。いくら亭主といえども社にいる間は『社長と秘書』という立場をわきまえているわけだ。
周にとってはそんな生真面目さが可愛くもあり、愛しくもあるのだが、時にはその真面目過ぎる壁を突き崩してみたくもなる。
清々しく感じられる身なりは、目上のクライアントにも決してだらしない印象を与えない。『雪吹君はいつも本当に好感がもてますな』などと褒められるのは毎度のことだ。
もちろん社にとってはこれ以上ないことに違いない。有り難い限りなのだが、たまにはその生真面目さを踏みにじってみたい――などと思うのは男の勝手な我が侭だろうか。
綺麗な花を手折ってみたい。思いきりむしり取って散らしてみたい。
そんな欲望がムクムクとし出し、本能のままに可憐な伴侶を腕の中へと引き寄せた。
「え……白龍……ッ?」
焦る間もなく大きなソファへと張り付けられる――。
「あの……白ッ……! ど……」
どうしたの? という短い文句さえ言わせてもらえずに、有無を言わさず唇を塞がれる。馬乗りになられ、ベルトを一気に引き抜かれて、冰は驚きに目を白黒とさせてしまった。
――が、それも最初の内だけだ。野生の獣の如く荒々しい雄々しさに、あれよという間に引き込まれてしまう。
「白……ッ、どッ……して」
何故急にこんなことを? と訊いても周は答えない。
答えないというよりは答える余裕がないといった方が正しいか。
抜いたベルトは床へ、乱暴にジッパーを下されて、大きな掌が肌を撫で回す。
ふと触れ合った彼の熱は、既に硬く凶暴になっていて、一気に心拍数が上がる。
「白……ッ! 待っ……ここ会社……」
そんなことは分かっていると言いたげな漆黒の瞳も色香が灯って、これでは本物の『焔』そのものだ。
しばしグリグリと凶暴なまでに雄と雄とを擦り付けられて、冰もまた抗えずに吐息を漏らした。
さすがに最後まではされずに済んだものの、目の前の男はまるで狩を終えた獣そのものだ。荒い欲情の息遣いはしばらく治らずに、ソファにぐったりと身を預けては未だ百獣の王のようにギラギラとした雄の視線が相変わらずに凶暴さを讃えていて、今にも獲って喰われてしまいそうだ。
「すまねえ――」
本気でそうは思っていないのだろう男は、溢れあふれた色香でダダ漏れだ。
「ん……もう! いきなり……びっくりするじゃない……」
唇を尖らせながらベルトを拾い上げ、慌てて身なりを訂す。
「我慢が効かなかったんだ」
――お前をめちゃくちゃにしてみたかった。
そんな台詞が聞こえてきそうだ。
「もう! ご乱心あそばされたのかと思いました!」
わざと秘書の口調でそう嗜めると、目の前の獣は不敵に微笑を浮かべてみせた。
まるで、『そんなことを言うとまたひん剥くぞ!』とでも言わんばかりのその笑みに、ズクズクと身体が熱を持つ。
終業まではあと五分――きっと今夜の夕飯は冷めてしまうのだろうな。そんな想像とは裏腹に、身体は燃える焔のようだった。
社長様はご乱心 - おしまい-
汐留、午後四時過ぎ――。
あと小一時間もすれば終業時刻だ。
いつものようにツインタワーの関連企業を巡回し終えた冰は、周の社長室へと戻ってきた。
「ただいま戻りました」
本当は「ただいまぁー!」くらいフランクさでいいのだが、冰は律儀な性格だ。いくら亭主といえども社にいる間は『社長と秘書』という立場をわきまえているわけだ。
周にとってはそんな生真面目さが可愛くもあり、愛しくもあるのだが、時にはその真面目過ぎる壁を突き崩してみたくもなる。
清々しく感じられる身なりは、目上のクライアントにも決してだらしない印象を与えない。『雪吹君はいつも本当に好感がもてますな』などと褒められるのは毎度のことだ。
もちろん社にとってはこれ以上ないことに違いない。有り難い限りなのだが、たまにはその生真面目さを踏みにじってみたい――などと思うのは男の勝手な我が侭だろうか。
綺麗な花を手折ってみたい。思いきりむしり取って散らしてみたい。
そんな欲望がムクムクとし出し、本能のままに可憐な伴侶を腕の中へと引き寄せた。
「え……白龍……ッ?」
焦る間もなく大きなソファへと張り付けられる――。
「あの……白ッ……! ど……」
どうしたの? という短い文句さえ言わせてもらえずに、有無を言わさず唇を塞がれる。馬乗りになられ、ベルトを一気に引き抜かれて、冰は驚きに目を白黒とさせてしまった。
――が、それも最初の内だけだ。野生の獣の如く荒々しい雄々しさに、あれよという間に引き込まれてしまう。
「白……ッ、どッ……して」
何故急にこんなことを? と訊いても周は答えない。
答えないというよりは答える余裕がないといった方が正しいか。
抜いたベルトは床へ、乱暴にジッパーを下されて、大きな掌が肌を撫で回す。
ふと触れ合った彼の熱は、既に硬く凶暴になっていて、一気に心拍数が上がる。
「白……ッ! 待っ……ここ会社……」
そんなことは分かっていると言いたげな漆黒の瞳も色香が灯って、これでは本物の『焔』そのものだ。
しばしグリグリと凶暴なまでに雄と雄とを擦り付けられて、冰もまた抗えずに吐息を漏らした。
さすがに最後まではされずに済んだものの、目の前の男はまるで狩を終えた獣そのものだ。荒い欲情の息遣いはしばらく治らずに、ソファにぐったりと身を預けては未だ百獣の王のようにギラギラとした雄の視線が相変わらずに凶暴さを讃えていて、今にも獲って喰われてしまいそうだ。
「すまねえ――」
本気でそうは思っていないのだろう男は、溢れあふれた色香でダダ漏れだ。
「ん……もう! いきなり……びっくりするじゃない……」
唇を尖らせながらベルトを拾い上げ、慌てて身なりを訂す。
「我慢が効かなかったんだ」
――お前をめちゃくちゃにしてみたかった。
そんな台詞が聞こえてきそうだ。
「もう! ご乱心あそばされたのかと思いました!」
わざと秘書の口調でそう嗜めると、目の前の獣は不敵に微笑を浮かべてみせた。
まるで、『そんなことを言うとまたひん剥くぞ!』とでも言わんばかりのその笑みに、ズクズクと身体が熱を持つ。
終業まではあと五分――きっと今夜の夕飯は冷めてしまうのだろうな。そんな想像とは裏腹に、身体は燃える焔のようだった。
社長様はご乱心 - おしまい-
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