日本一無名な島根が異世界に行ったら世界一有名になった話

マキナ

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3 会議

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島根県庁本庁舎と隣接する建物である議事堂。
午前十時が近づくにつれてその議事堂に続々と人が集まってくる。

議場の席には島根県議員たちに加え、県知事の寺山や会議を取り仕切る議長などが座っていた。
また三階の傍聴席には今回の会議を取材するために新聞記者や、地元のテレビ局の職員などが座っている。
多くの人が集まりどことなくものものしい雰囲気を感じるのは、これが島根において重要な会議であるがゆえだろう。

そうしてしばらくの間議事堂に人が入ってきていたが、参加者が全員集まったところで入り口の扉が閉められ、議長が開会の宣言を行う。

「それではこれより、第156回島根県議会本会議を行います」

議長のそんな言葉に、いくつかの決まり文句が続く。
そしてそれが終わるといよいよ会議が始まった。

内容は主に今年度の予算案といくつかの条例の改定。
少子高齢化が進み財源に苦慮する島根にとって、予算案は特に重要な項目だった。
それゆえに議論は白熱する。
次々と出される様々な案。
議員たちは手元の資料やパソコンの画面を見ながら、時折自らの発言も混ぜこんでいった。

そうして気が付けば会議が始まって一時間が過ぎようとしていた。
様々な賛否がありつつも、議題についてはおおむねまとまりそうな様相を見せている。
これには寺山もほっと胸をなでおろした。
というのも彼は、様々な使途において例年よりも金額の多い予算案を提出していたからだ。
子育て支援や教育、新たな産業の創生やインフラ整備などに重点を置いた予算案に加えて、それらを有効活用できるような条例案の改定。
それらはすべて島根の将来を考えて寺山が考案したものだった。

しかしいくら将来のためとはいえ、議会が承認しなければ何の意味もない。
島根の経済力から考えてかなりギリギリ、というか地方交付金も使っているという意味では実質アウトなその案に、当初は反対の声も上がった。

だが事前に議員の何人かに理解を求めていたこと、また議場での寺山の懇切丁寧な説明により何とか案が通る方向で話がまとまりつつある。

そんな状況の中、正午に近づいたこともあり昼休みをとって続きは午後に持ち越されることになった。
議長の挨拶によって会議が中断されて休憩時間になる。
各々は昼食を食べるなりなんなりするために席を離れる。
会議中座りっぱなしだった彼らの中にはトイレに行ったり、凝り固まった体をほぐすべく背伸びしたりするものもいた。

そうして各自自由に休憩時間を過ごす。
寺山も本庁舎地下にある食堂で昼食を食べようと立ち上がった。
貴重品を入れた荷物をもって退出しようとする。
だがそのときどこからともなく声が聞こえてきた。

「なんか…揺れてないか?」

決して大きな声ではない一言。
だが同様の感想を持つ者たちの間で波紋のように広がっていき、やがて室内は静寂に包まれていった。

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