ステータス、SSSじゃなきゃダメですか?~クソザコステータスの人間が魔王軍に加入させられたら~

シュリ

文字の大きさ
13 / 53
第一章

第十二話

しおりを挟む



「それでさ、あそこでアイツが酷いのよーー」

「……なるほどな」


  ミミが窮地に陥っていた頃、ヴィルヘルムはそんな事とは露知らず、先日と同じようにアンリの長話に付き合っていた。

  昨日と全く同じ場所、同じ相手。相変わらずの串焼きを手に、アンリの話に相槌を打つ。ヴィルヘルムは初めて取れたコミュニケーションに、内心で非常に歓喜していた。


(ああ、これが小説で読んだリア充って奴なんだな。俺は今、最高に一般人している……!)


  流石にこれをリア充と評するにはハードルが低すぎる気もするが、そもそも彼の平均が低すぎたのだ。そう思ってしまうのも仕方がない。


「ーーっと、何だかまた私ばっかり話してるわね。ゴメンゴメン!  お詫びって言うのも何だけど、貴方の話も聞かせてくれない?」


  と、そこで苦笑いを浮かべながら、アンリはヴィルヘルムへと話を変える。

  彼女にしてみれば、いや、普通に考えればそれは順当な気遣いである。会話とは両者の間で交わされる物。一方的に捲したてるものではない。

  だが、先日が会話の初デビュー戦であったヴィルヘルムにとって、その要望はかなりの無理難題であった。


(は、話すって一体何を話せば良いんだ……好きな食べ物?  いや、そんなん話してどうするんだよ。聞かれてるのは俺の近況、その位は分かる。くっそ、けど正直にそのまま言うわけにも行かないし……)


  必死に言葉を選ぼうとして、ぐるぐると思考を回す。気楽な村人ならまだしも、初対面の相手に『自分は天魔将軍です』などと言う訳にはいかないからだ。

  無論、天魔将軍と名乗る事が禁じられている訳では無い。ただ、相手と仲良くなると言う目的の為に権力をちらつかせるのは、どこか違うような気がしたのである。

  結果、彼の頭で選りすぐられた言葉は。


「……最近は、とある目的の下に動いている」

「……随分と濁してきたわね」


  アンリの言うことも最も、彼の言葉からは何の情報も得られない。


「理解されるべき話でもない。だが、それが私にとって何より大切な物である事は確かだ」


  余談だが、口に出す際のヴィルヘルムの一人称は『私』である。極力相手と話す時は失礼の無いようにと、自宅の枕相手に敬語の練習をしていた名残だ。

  語るヴィルヘルムの顔を見て、アンリも真面目な顔になる。


「……そうよね、口に出したく無い夢だってあるものね。うん。やっぱり貴方、私に似てるわ」

(え?  絶対似てないと思うけど)


  因みにヴィルヘルムの『目的』というのは、まともなコミュニケーションが取れるようになることである。
  アンリと話す事で克服出来つつ(少なくとも彼目線では)あるが、それでもまだ足りない。少なくともそこらの店員と話せるようにならなければ、一人で満足に店へ行く事も出来ないからだ。

  だがそんなヴィルヘルムの内心は置き去りにして、アンリは彼の手を掴む。


「決めた!  貴方の夢を応援する!  流石にいつでもどこでもって訳にはいかないけど、それでも出来る限り私が手伝ってあげる!」

「……良いのか?」


  その提案はヴィルヘルムにとって、まさしく渡りに船であった。

  コミュニケーション能力を上げようにも、斬鬼では忠誠心が高すぎて上手く行かず、先日のミミも怯えたり敬ったりで彼には訳の分からない存在として位置付けられている。
  その点、アンリならば(比較的)気安く話せ、おまけにその一般人的感覚が頼りになる。良くも悪くも、突き抜けた人材がヴィルヘルムの周囲には多すぎた。


「勿論!  その代わりって言うのも何だけど、貴方も私の夢に協力するのよ?  私もやる事があってここに来てるんだから」


  パチリとウインクしてみせるアンリ。その小悪魔的仕草は、女慣れしていない男をドギマギさせるには十分過ぎた。


「お、昨日の嬢ちゃんに、愛想の無い兄ちゃんか。まだ話してたんだな……仲の良いこって」


  と、そこに通りがかるのは連日で串焼きの屋台を率いていた中年の男。二人を見ると笑顔を浮かべながら近づいて来る。


「え?  いや、そんなんじゃ……」

「いやいや、否定しなくても良い。おっちゃんには全部分かってる。あんたらを見てると、なんだか新婚ホヤホヤの女房を思い出すからな。それが今では……おっと、何でもない」


  一瞬遠い目をする男。奥さんがらみで何かあったのだろうか。他人の痴話話で盛り上がるほど悪趣味では無いが、気になるのも事実である。


「ま、二人とも頑張れよ。俺はちょっと場所を移すから、またどっかで会えると良いな」

「……何かあったのか」

「うお、喋った!?   ……って、よく考えたら一昨日も喋ってたな。すまんすまん」


  相変わらずこんな扱いなのか、と思わず天を仰ぎたくなるヴィルヘルム。

  とはいえ、実際彼の口数はかなり少ない。どれくらいかというと、この三日間で話した数が去年一年分の会話数とほぼ同等である。
  月に一度話す方が珍しい彼に無口の烙印が押されるのはそう不自然な事でもなかった。


「いやな、どうにもこの近くで暴力沙汰が起きてるらしくてさ。なんでもヒョロヒョロの兄ちゃんがこの村の不良グループに連れてかれたとか……」

「ヒョロヒョロの兄ちゃん?」

「ああ。どうせいつものカツアゲだろうな……ま、んな事起きた後じゃ客足も遠退いちまうし、何より縁起も悪い。というわけで、俺は退散させてもらうよ」


  そんじゃあ、と屋台を引き、後ろ手に手を振りながら去って行く男。

  その後ろ姿を見ながら、アンリは暫し考え込む。


「……ゴメン、ちょっと私行かなきゃ!  少し用事思い出したの!」


  急に杖を抜いたが早いか、彼女の足元に魔法陣が展開される。

  魔法の効果は転移。並みの魔導士では扱う事も出来ない、上級魔法の一つに数えられる大魔術である。それを一瞬で展開する彼女の実力は、紛れも無く本物だ。

  だが、その早さがミスに繋がった。


(あ、やべ)


  近くに立っていたヴィルヘルムは、急に展開された魔法陣に驚いてバランスを崩す。

  たたらを踏んで耐えようとするも、その足先は魔法陣の中へ。バン、と強く大地を踏みしめ耐え切った時には、既に魔法陣は発動しーー。














◆◇◆














(で、ナニコレ?)


  腕の中に収まるミミと、刀に手を携えている斬鬼。そして見知らぬ男が二人。

  自身が放り込まれた状況が分からず、無表情のまま固まるヴィルヘルム。
  そんな彼の事を嘲笑うように、『ジャイアント・キリング』が発動した事を、彼の左手の紋章が光り輝く事で伝えていた。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...