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SS 麗しの月妖精 視点なし
しおりを挟むフォルン王国の辺境で暮らす人々に、新たな宝ができたのは一年前のこと。
無骨者ばかりの辺境に、新人辺境伯の婚約者として王都から来訪した、アルドレイ・ミッサ・アフ殿は、夜の森を柔らかく包みこみ、人々に安眠を与える月の妖精のごとき麗人であった。
柳の木のように、すらりとした長身痩躯。
陽光を反射し、艶やかな冠を写す黒髪。
月の光を固めたような、涼やかで理知的な銀の瞳。
なんとお美しい方。
と、誰もが見惚れたその時。
アフ殿は辺境伯家の家人に囲まれて、ぱたりと倒れた。
落石が当たっても、いてぇ、で済んでしまう妖精の子を見慣れている辺境の人々には、王都生まれ、王都育ちの洗練された涼やかな容姿は眩しかった。
初対面の者に囲まれて、緊張から倒れたのだと思った。
まさか、ステルク祭りだ、わっしょいぃ!?、と目を回して倒れたなんて、気づくはずもなく。
辺境領に住まう者たちは、一目で彼が姫君だと知った。
守ってさしあげる対象だと心に決めた。
アフ殿は手弱女な見た目どおり、とても繊細な方なのだ。
辺境の常識で驚かせないように、細心の注意が必要だ。
と、領民は信じ込んだ。
あまりにもありのままを見せてしまうと、王都に帰ってしまうのではないか、と領民も現役騎士も案じてしまった。
実際のところ、アルドレイ本人は王都に居場所がない、と思い込んでいるため、よほどのことがない限り、辺境に骨を埋める覚悟を決めていたが。
辺境の人々には、明るい色の髪色と瞳色が多く出る。
土地柄的に魔力が多い者が生まれがちで、妖精の子でなくても、背が低くて体格は華奢だ。
その上を行く妖精の子は、くるくるでふわふわな髪を持ち、まつ毛は長くて目はぱっちり。
体つきもぺったんつるり、ほっぺはぷにぷにで、手はぷくぷくだ。
そこに、すらりと背筋が伸びた身に黒衣を纏って、ほっそりとしていても成人男性の平均よりも上背のあるアルドレイが来たのだ。
素敵なお嫁さんだ、やったー!
と、喜ばない理由がなかった。
きっと、似た光景を知る者がいたら、こう思うだろう。
飼育場で、ひよこのお世話をする人みたいだ、と。
アルドレイは今日も、ふわふわでくるくるのひよこたちが「だいすきぴよぴよ」と纏わりついてくるのを、必死になってさばいた。
どうして懐かれているのかよく分からないまま、長期赴任の先輩取締官と一緒に、隣国からの薬物流入を防ぐ体制を作り上げるべく働きあげた。
そして、夜になれば。
「ただいま、つかれた、ふろ、アル、たべる」
「おかえ、おい、ま、待てっ、意味がわからんっ」
疲れきって片言になっている夫に風呂に連れ込まれ、がっつりと食われるのであった。
*
「ただいま、とってもつかれたから、いっしょにふろにはいってくれ、アルにいやされてからしょくじにしたい」
と使用人には聞き取れています
もてている自覚がないアルドレイは、ステルクの独占欲に気がつけないので、むしゃむしゃされます
一応、ここで完結(´∀`)
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