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6 ボク
ホロビヘノミチ
しおりを挟むとある国が神の怒りに触れた。
そんな風聞が流れて来たのは、その国が滅んでから。
王族が軒並み悶死した後に、国の上層部まで同じように死んでいったという。
国民にまで広がるかと思われた神の怒りは、国の運営を担っていた者たちのみで終わり、平穏が訪れた。
かに見えた。
秩序を保っていた者たちを根こそぎ失った国が、どうやってその形を保ち続けるというのか。
都に住んでいた国民たちは逃げ出し、管理者を失った国は荒れた。
城が荒らされ、町に火がつけられ、全てが失われた。
逃げた者たちが飢えから盗賊となり、自国民同士で奪い合いを続け、人は次々と数を減らしていき。
周辺国はただそれを警戒して見ていた。
国境を閉鎖して、決して国内に入れるなと厳命が下された。
神の怒りを受けている可能性ある者を自国に入れる事は、罪を引き継ぐと同じ。
神の怒りをかった国が滅びれば終わる、と誰もが思った。
速やかな死を望まれながら、季節が変わる頃には人の姿すら見られなくなり、周辺国は警戒を続けながらも安堵の息をもらした。
◆ ◆
◆ ◆
巫は深く息をつく。
命を吐き出すように肩を落とし、これでまた世界が滅びへと進んだのではないかと怯える。
巫の力など誰かに譲り渡したいと何度思ったことか、いつでも見たくないものばかり見える。
進む道を間違えた愚かなヒトの末路。
かみさまを人の手の内で飼い殺そうなどという考えは、あまりにも強欲で傲慢すぎる。
見えていたのに、変えることができなかった。
数十万の命が失われた。
夢見の巫の力は不確実だ。
能力は制御できず、夢遊病患者のように未来と過去をたゆたい夢を見る。
夢と現実が分からなくなるたび、唯一つ星に願った。
現在はいつでもいくつにも枝分かれしていて、どの道がヌー・テ・ウイタ・ラ・ドゥンネゼウの望みを叶えられるかは分からない。
何度も夢に見て、未来を変えられぬものかと試行錯誤してみたが、やはり国は滅んでしまった。
祭司の血筋が世界から失われつつある。
それは信仰の喪失。
世界の滅亡。
唯一人、かみさまの肉体に触れることを許されている御使いは未熟で、全てを託すことはできなかった。
神使と御使いの違いも理解していない者に、なにを告げればよかったのか。
苦肉の策で、反感を買うと知りながら懐刀の息子を潜り込ませてみたが、息子も問題を抱えている。
かみさまの慈愛に触れて、変わることができれば良いが。
どれだけ慈悲を願っても、自分たちの未来は夢に見ることができない。
かみさま、ケモノである我らに愛されることを、どうかお受け取りください。
滅びの道を恐れずに歩む強さを、我らにお与えください。
そう願うのみ。
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