完全版【R18】魔術師は王の子を宿さなくてはならない

Cleyera

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本編

12 忠義の騎士の嘘と真実

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ツッコミはご容赦ください
不妊なども含めて、あくまでもどこまでも創作です





   # #


 ボクは、真実を知ってしまった。

 ユナズフに残された依頼内容はこうだ。

 『 かつて、腹の子が育たずに流れて悲しむ最愛の王妃のために、アルシリヤの王は助けを求めた。

 派遣された魔術師は、アルシリヤの医師団と共に、王妃の体の子を育てる能力が低いこと調べ上げて、王に告げた。

 嘆く王と王妃に、魔術師は告げた。
 百年以上前の魔術師としては、とても斬新な方法を。

 それは、他の誰かの腹に王妃の卵を移し、王が受精をさせること。

 当時、受精は生物の体内に擬似母胎を構築して行う必要があった。
 受精したあとの卵は、そのまま擬似母胎で臨月まで育てるしかない。

 王は、王妃以外の女を抱くことはできぬ、と拒絶した。

 魔術師と医師団で話し合い、長い説得の末に王は、男ならばと譲歩した。
 子が必要と王妃も認めた。

 こうして、男の腹で子を育てる試しが行われることになった。

 王に忠誠を捧げた乳兄弟の騎士が立候補して、無事に王子が生まれた。
 忠義の騎士は、その後も国に仕えた。 』


 アルシリヤに派遣された魔術師、すっごく頑張ったな~と思う。

 今回の依頼で、ボクは過去に用いられた術式を知った。
 正式には、知らないうちに荷物に追加されていた本に載っていた。

 卵子を死なないように体外に移すだけでも大変なのに、擬似母胎で育てられるように栄養循環や体内抵抗の値まで計算されて、緻密に構築された術式は、芸術の域だった。
 考察で本が一冊書けるくらい。

 無事に、王家の血筋を残す依頼は大成功。
 それがボクの知る話だった。



 実際の忠義の騎士は、忠義を持たなかった。

 騎士は、王に恋をしていた。
 王に愛されたいと、騎士は望んでいた。

 他人の子を己の体内で育てて産み落とした騎士は、生まれたばかりの子から引き離されて、狂った。

 王に恋情を抱いていた騎士は、受精のために繰り返される交配実験を、自分が愛されているからと思い込んだ。

 何度も繰り返すからだよ。
 ボクなら二回目から受精確率を上げる術式を追加する。
 この当時にあったかは、不明だけど。

 なんなら、体外受精の術式構築を考察すべきだった。

 あー、今回の件も、体外受精でよかったのでは?
 気がつくのが遅すぎた。

 まあとにかく、当時の魔術師は受精効率上昇の術式構築を検討してない。
 母体に負担がかかるから必要とされなかったのか、できなかったのか。

 騎士は、王の子を産めば、王が自分を愛してくれると考えた。

 子を孕み、妊娠した女性同様に大きくなっていく腹を、なによりも大切にしたらしい。
 そこまでは周囲の人々も、王に身を捧げる忠臣だと考えていた。

 子が無事に生まれた後に、騎士は自分が王配になれると思い込み、王妃の暗殺を企んだ。

 乳兄弟として育ち、高潔と名高い騎士の忠誠が、愛憎まみれだったことを知った王は、温情から騎士の説得を繰り返して疲弊した。

 最後には、騎士を非公開に処刑するしかなかったという。
 死の間際まで、騎士は王への愛と王妃への憎悪に吠え狂った。


 うん、この結末は国の外に出せない。
 この件を引き起こしてしまったユナズフの魔術師は、依頼内容自体は違えていないから、真実を知らされないまま帰ったらしい。

「……ボクがすることは変わらない、王妃の腹で子を育てて欲しい」

 王の子を宿す、が契約にあるから体外受精を検討してもらうのは無理だろう。
 一から交渉し直してくれるなら、助かるんだけどな。

「子を産めば、権力と地位が望めるぞ」
「いらない」
「王の寵愛を得たくないのか」
「いらない」

 ボクは愛せないから、と付け加えると、王妃が驚いたような表情をした。
 きれいだ。

「なにを望む」
「魔術契約を結んでくれるなら、全部、話しても良い」

 ボクが魔神のいとしごであり、生まれつき〝愛する〟心をもっていないこと。
 過去の実例から、いとしごが持たない心の欠片を、周囲が押し付けてはいけないと決まっていること。

 カビラと視線を交わした王妃は、長椅子に座ったまま、ボクに手を差し出した。
 覚悟を決めた表情は、見惚れてしまうほど美しかった。

「それなら、我々の嘘を告白して等価としよう、可愛らしい魔術師どの」
「わかった」

 こうしてボクは王妃の嘘を知り、告白を受け入れた。

 そして、五年が経った。


   # #





カビラ:
ワタシハクウキデスゥ

とある事情により、空気になりきることにしたカビラさん
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