12 / 21
本編
12 忠義の騎士の嘘と真実
しおりを挟む
ツッコミはご容赦ください
不妊なども含めて、あくまでもどこまでも創作です
# #
ボクは、真実を知ってしまった。
ユナズフに残された依頼内容はこうだ。
『 かつて、腹の子が育たずに流れて悲しむ最愛の王妃のために、アルシリヤの王は助けを求めた。
派遣された魔術師は、アルシリヤの医師団と共に、王妃の体の子を育てる能力が低いこと調べ上げて、王に告げた。
嘆く王と王妃に、魔術師は告げた。
百年以上前の魔術師としては、とても斬新な方法を。
それは、他の誰かの腹に王妃の卵を移し、王が受精をさせること。
当時、受精は生物の体内に擬似母胎を構築して行う必要があった。
受精したあとの卵は、そのまま擬似母胎で臨月まで育てるしかない。
王は、王妃以外の女を抱くことはできぬ、と拒絶した。
魔術師と医師団で話し合い、長い説得の末に王は、男ならばと譲歩した。
子が必要と王妃も認めた。
こうして、男の腹で子を育てる試しが行われることになった。
王に忠誠を捧げた乳兄弟の騎士が立候補して、無事に王子が生まれた。
忠義の騎士は、その後も国に仕えた。 』
アルシリヤに派遣された魔術師、すっごく頑張ったな~と思う。
今回の依頼で、ボクは過去に用いられた術式を知った。
正式には、知らないうちに荷物に追加されていた本に載っていた。
卵子を死なないように体外に移すだけでも大変なのに、擬似母胎で育てられるように栄養循環や体内抵抗の値まで計算されて、緻密に構築された術式は、芸術の域だった。
考察で本が一冊書けるくらい。
無事に、王家の血筋を残す依頼は大成功。
それがボクの知る話だった。
実際の忠義の騎士は、忠義を持たなかった。
騎士は、王に恋をしていた。
王に愛されたいと、騎士は望んでいた。
他人の子を己の体内で育てて産み落とした騎士は、生まれたばかりの子から引き離されて、狂った。
王に恋情を抱いていた騎士は、受精のために繰り返される交配実験を、自分が愛されているからと思い込んだ。
何度も繰り返すからだよ。
ボクなら二回目から受精確率を上げる術式を追加する。
この当時にあったかは、不明だけど。
なんなら、体外受精の術式構築を考察すべきだった。
あー、今回の件も、体外受精でよかったのでは?
気がつくのが遅すぎた。
まあとにかく、当時の魔術師は受精効率上昇の術式構築を検討してない。
母体に負担がかかるから必要とされなかったのか、できなかったのか。
騎士は、王の子を産めば、王が自分を愛してくれると考えた。
子を孕み、妊娠した女性同様に大きくなっていく腹を、なによりも大切にしたらしい。
そこまでは周囲の人々も、王に身を捧げる忠臣だと考えていた。
子が無事に生まれた後に、騎士は自分が王配になれると思い込み、王妃の暗殺を企んだ。
乳兄弟として育ち、高潔と名高い騎士の忠誠が、愛憎まみれだったことを知った王は、温情から騎士の説得を繰り返して疲弊した。
最後には、騎士を非公開に処刑するしかなかったという。
死の間際まで、騎士は王への愛と王妃への憎悪に吠え狂った。
うん、この結末は国の外に出せない。
この件を引き起こしてしまったユナズフの魔術師は、依頼内容自体は違えていないから、真実を知らされないまま帰ったらしい。
「……ボクがすることは変わらない、王妃の腹で子を育てて欲しい」
王の子を宿す、が契約にあるから体外受精を検討してもらうのは無理だろう。
一から交渉し直してくれるなら、助かるんだけどな。
「子を産めば、権力と地位が望めるぞ」
「いらない」
「王の寵愛を得たくないのか」
「いらない」
ボクは愛せないから、と付け加えると、王妃が驚いたような表情をした。
きれいだ。
「なにを望む」
「魔術契約を結んでくれるなら、全部、話しても良い」
ボクが魔神のいとしごであり、生まれつき〝愛する〟心をもっていないこと。
過去の実例から、いとしごが持たない心の欠片を、周囲が押し付けてはいけないと決まっていること。
カビラと視線を交わした王妃は、長椅子に座ったまま、ボクに手を差し出した。
覚悟を決めた表情は、見惚れてしまうほど美しかった。
「それなら、我々の嘘を告白して等価としよう、可愛らしい魔術師どの」
「わかった」
こうしてボクは王妃の嘘を知り、告白を受け入れた。
そして、五年が経った。
# #
カビラ:
ワタシハクウキデスゥ
とある事情により、空気になりきることにしたカビラさん
不妊なども含めて、あくまでもどこまでも創作です
# #
ボクは、真実を知ってしまった。
ユナズフに残された依頼内容はこうだ。
『 かつて、腹の子が育たずに流れて悲しむ最愛の王妃のために、アルシリヤの王は助けを求めた。
派遣された魔術師は、アルシリヤの医師団と共に、王妃の体の子を育てる能力が低いこと調べ上げて、王に告げた。
嘆く王と王妃に、魔術師は告げた。
百年以上前の魔術師としては、とても斬新な方法を。
それは、他の誰かの腹に王妃の卵を移し、王が受精をさせること。
当時、受精は生物の体内に擬似母胎を構築して行う必要があった。
受精したあとの卵は、そのまま擬似母胎で臨月まで育てるしかない。
王は、王妃以外の女を抱くことはできぬ、と拒絶した。
魔術師と医師団で話し合い、長い説得の末に王は、男ならばと譲歩した。
子が必要と王妃も認めた。
こうして、男の腹で子を育てる試しが行われることになった。
王に忠誠を捧げた乳兄弟の騎士が立候補して、無事に王子が生まれた。
忠義の騎士は、その後も国に仕えた。 』
アルシリヤに派遣された魔術師、すっごく頑張ったな~と思う。
今回の依頼で、ボクは過去に用いられた術式を知った。
正式には、知らないうちに荷物に追加されていた本に載っていた。
卵子を死なないように体外に移すだけでも大変なのに、擬似母胎で育てられるように栄養循環や体内抵抗の値まで計算されて、緻密に構築された術式は、芸術の域だった。
考察で本が一冊書けるくらい。
無事に、王家の血筋を残す依頼は大成功。
それがボクの知る話だった。
実際の忠義の騎士は、忠義を持たなかった。
騎士は、王に恋をしていた。
王に愛されたいと、騎士は望んでいた。
他人の子を己の体内で育てて産み落とした騎士は、生まれたばかりの子から引き離されて、狂った。
王に恋情を抱いていた騎士は、受精のために繰り返される交配実験を、自分が愛されているからと思い込んだ。
何度も繰り返すからだよ。
ボクなら二回目から受精確率を上げる術式を追加する。
この当時にあったかは、不明だけど。
なんなら、体外受精の術式構築を考察すべきだった。
あー、今回の件も、体外受精でよかったのでは?
気がつくのが遅すぎた。
まあとにかく、当時の魔術師は受精効率上昇の術式構築を検討してない。
母体に負担がかかるから必要とされなかったのか、できなかったのか。
騎士は、王の子を産めば、王が自分を愛してくれると考えた。
子を孕み、妊娠した女性同様に大きくなっていく腹を、なによりも大切にしたらしい。
そこまでは周囲の人々も、王に身を捧げる忠臣だと考えていた。
子が無事に生まれた後に、騎士は自分が王配になれると思い込み、王妃の暗殺を企んだ。
乳兄弟として育ち、高潔と名高い騎士の忠誠が、愛憎まみれだったことを知った王は、温情から騎士の説得を繰り返して疲弊した。
最後には、騎士を非公開に処刑するしかなかったという。
死の間際まで、騎士は王への愛と王妃への憎悪に吠え狂った。
うん、この結末は国の外に出せない。
この件を引き起こしてしまったユナズフの魔術師は、依頼内容自体は違えていないから、真実を知らされないまま帰ったらしい。
「……ボクがすることは変わらない、王妃の腹で子を育てて欲しい」
王の子を宿す、が契約にあるから体外受精を検討してもらうのは無理だろう。
一から交渉し直してくれるなら、助かるんだけどな。
「子を産めば、権力と地位が望めるぞ」
「いらない」
「王の寵愛を得たくないのか」
「いらない」
ボクは愛せないから、と付け加えると、王妃が驚いたような表情をした。
きれいだ。
「なにを望む」
「魔術契約を結んでくれるなら、全部、話しても良い」
ボクが魔神のいとしごであり、生まれつき〝愛する〟心をもっていないこと。
過去の実例から、いとしごが持たない心の欠片を、周囲が押し付けてはいけないと決まっていること。
カビラと視線を交わした王妃は、長椅子に座ったまま、ボクに手を差し出した。
覚悟を決めた表情は、見惚れてしまうほど美しかった。
「それなら、我々の嘘を告白して等価としよう、可愛らしい魔術師どの」
「わかった」
こうしてボクは王妃の嘘を知り、告白を受け入れた。
そして、五年が経った。
# #
カビラ:
ワタシハクウキデスゥ
とある事情により、空気になりきることにしたカビラさん
10
あなたにおすすめの小説
自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話
あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」
トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。
お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。
攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。
兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。
攻め:水瀬真広
受け:神崎彼方
⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。
途中でモブおじが出てきます。
義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。
初投稿です。
初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
婚活アプリのテスト版に登録させられたら何故か自社の社長としかマッチング出来ないのですが?
こたま
BL
オメガ男子の小島史(ふみ)は、ネットを中心に展開している中小広告代理店の経理部に勤めている。会社が国の補助金が入る婚活アプリ開発に関わる事になった。テスト版には、自社の未婚で番のいないアルファとオメガはもちろん未婚のベータも必ず登録して動作確認をするようにと業務命令が下された。史が仕方なく登録すると社長の辰巳皇成(こうせい)からマッチング希望が…
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで
二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる