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本編 〝弘〟視点
20/21 より良い道へと ※
しおりを挟むわたしには、何かで聞いた理想の人物像がある。
自分の選択に自信を持ち、失敗から逃げない。
失敗しても、やり直しを恐れない。
自分が怖いものが何かを知っているから、回り道もできる、最後には立ち向かえる。
そんな、人間になりたかった。
そんな人間に、なれるだろうか。
もう人生の半分が過ぎてしまい、これから新しいことに手を伸ばすのは怖い。
晋矢さんと一緒にいれば、まだ半分あると思えるだろうか。
これまでに知らなかったことも、知る機会がなかったことも。
わたしだけでは手に入れられなかった何もかもが、目に前に差し出されているような気がする。
晋也さんに頼って甘えて依存するのではなく、わたしも晋矢さんに与えて差し出して、慈しめるようになりたい。
変わるなら、ここがはじめの一歩だ。
「俺の能力はPK分類のサイコヒーリングです」
「サイコ、ヒーリング」
「珍しい能力らしいので、扱いさえ間違えなければ、どの方面を目指していても能力研究には関わっていたと思います」
サイコヒーリングという単語だけなら、訓練中に聞いたことがあるけれど、能力として独立しているものだとは思わなかった。
サイコという単語がつくなら、精神を治癒する能力?
普通はヒーリング能力といえば、外傷治癒能力になる。
クレアボヤンス能力者の協力があれば、内傷治癒も可能だと。
「どんな力なんですか?」
「それが、あー、精神的な揺らぎや苦痛を緩和できる、感じです」
「効果がよくわからない能力なのですか?」
「いいえ、俺がまだ学生なので、専従資格は取得済みで実技研修も受けていますが、実践経験が足りないんです」
晋矢さんが医療関係の特殊専門職を目指しているというのは、精神科医のような方向なのか。
……おじいさんカウンセラーさんのような?
「本来なら、院を卒業後は能力研究、解析方面に進む予定だったのですが、等級の変化で、どうしても実務方面に来て欲しいと言われてしまいまして。
弘さんがその気なら、近くで働けたらな、と……」
「……」
「弘さんが望まないのに無理を言うつもりはありませんからね、それにやっぱり職場恋愛は難しいって聞きますから、望まないですよね」
「もしかして、晋矢さんと一緒に居られるのですか?」
職場恋愛云々という話は、わたしも知っている。
最初の職場で修羅場を演じる同年代に、辟易とさせられた。
家と職場の往復で鬱々と過ごす日々の中で、うるさくわめく人々の存在は苦痛にしか感じられなかった。
「一緒の職場というか、建物は同じだと思います、あーでも棟が違う可能性がありますよね、俺はPKで弘さんはESPなので、所属部署は別のはずです」
なぜか慌てている様子の晋矢さんの胸に、頬をすり寄せる。
なぜだか、そうするべきだと思ったから。
どくどくと聞こえる心臓の音が心地よい。
直に触れているすべすべとした胸元には、余分な体毛はない。
ムラなく日焼けした肌に頬をすり寄せると、弾力があって温かくて気持ちいい。
晋矢さんは体格が良いから、そのうち胸毛が生えてきたりするんだろうか、とぼんやり思いながら、わたし自身の貧弱な胸元を思い返す。
なまっちろい上に、昔の洗濯板のような胸元を。
肋骨が浮いていると、晋矢さんはがっかりするだろうか。
日焼け、した方が良いかな。
この温もりを、日中に感じる事は無理でも、同じ職場なら手を繋ぐくらいなら、ほんの少し嗅ぐくらいなら、許されないだろうか。
晋矢さんのいない生活なんて、考えたくない。
もう会えないと思っていた一週間は長くて、乾いて冷えきっていた。
「わたしは晋矢さんと一緒が良いです、職場では声をかけないように気をつけますから」
「弘さん、もう、我慢できませんっ!」
「え??」
気がつけば。
畳んだばかりの布団が、再び伸ばされて敷かれていて、その上に寝かされていた。
一瞬、憲司くんに押さえつけられていた感覚が脳裏をよぎる。
けれど恐怖で体を硬直させる前に、股間に温もりを感じた。
「ん、むっっ」
「晋矢さんっ!?」
借り物のスウェットに手を突っ込まれて、トイレで用を足したばかりのものを、晋矢さんが引っ張り出して、パクリと咥えた。
な、なんで?
これが何という行為なのかは知っているけれど、初めての経験に驚くばかり。
すると、わたしのふにゃふにゃのものを咥えている晋矢さんと、目があった。
「……んむぅ」
「し、晋矢さん?」
晋矢さんは柔らかく目を細めてから、大きな両手をわたしの股間に添えた。
「ん、んぅ」
「ぁあ、ま、待ってくださいっ」
左の手のひらで陰嚢を揉みこまれ、右手の全体で包まれるように竿を扱かれ、先端は口の中で吸われる。
初めての感覚が強烈すぎて、晋矢さんのしていることが、されていることが衝撃的で、手足に力が入らない。
晋矢さんから目が離せない。
なんでこんな。
うわ、あゝ、気持ちいい、嘘だ、晋矢さんにこんなことをさせてしまうなんて。
口元をすぼめ、頬を上気させている上目遣いの晋矢さんが色っぽくて、わたしは自分のものが勃ちあがるのを感じた。
気持ち良い、濡れて温かい口の中が。
硬い手のひらで撫でるように揉みこまれるのが。
ゆっくりと裏側をさすられるのが。
「んー」
「晋矢さん、だめです、汚いですよ、晋矢さんっっ」
フェラチオされるのは初めてで、したこともない。
やり方も知らない。
こんなに気持ちいいものだなんて知らなかった。
ジュウッと音を立てて先端を締め付けられ、ジュルジュルと音を立てて鈴口を吸われると、腰が前後に動きそうになる。
舌で敏感な裏側を舐められて、背中に電気が走る。
「だめです、もう、出る、でるっ、うう!?」
誰かに触れられることが、こんなに気持ちいいなんて知らなかった。
そう思いながら、最後を駆け上がろうとしたのに。
ぎゅ、と根元を押さえられて射精できない。
「し、晋矢さんっ、な、なんで、や、どうしてっ」
情けないと思いながら、その場でうめくことしかできない。
腰が勝手にひくひくと突き上げるように動いてしまう。
晋矢さんの喉を突かないように、必死でシーツを握りしめた。
この先を望まれているなら。
今はだめだ。
「し、晋矢さん、わたし、準備してないんです、待って、お願いします」
もう少しなのに辿りつけないもどかしさの中でそう告げると、返事の代わりに晋矢さんが履いていた寝間着のパンツを脱いだ。
片手だけで器用に、日焼けした肌を彩るローライズボクサーも脱ぎ捨てる。
布地から解放されると同時に、ぶるん、と勢いよく起き上がったものに目を奪われた。
お、大きい!?
目の前に、美しい若者の裸体を晒されて、言葉が出ない。
どうしよう。
時間が経っているから、中を洗わないと汚い。
かなりほぐさないと、あんなに大きなものは入らないだろう。
体格にあっているといえばそれまでだけれど、晋矢さんの性器はとても立派で、浅黒い赤みを帯びた先端には透明な体液がにじんでいる。
血管が浮き出した竿は太くて、ゆるく左に傾いている。
腹筋にくっつくほどに起きあがっている角度に、あゝもう若いなー!と現実逃避したくなった。
その下で膨らんで見える陰嚢も大きい。
興奮しているのだと主張するように、ふっくらと張り詰めている。
「大丈夫ですよ、昨晩、念入りに洗ってほぐしたので、今ならまだいけると思います」
「……え?」
「すいません弘さん、俺、ネコなんです」
「え、猫派ですか?」
何でここでペットの話になるのだろう、と見上げた晋矢さんは、小麦色の頬を上気させて、瞳を欲情に潤ませている。
若者らしい爽やかな見た目と同居する、淫靡な魅力にクラクラした。
これが噂に聞く、若い色気というやつなのかもしれない。
わたしの股間を押さえている手に力はなく、射精感もゆっくりと治まってきていたのに、布団の上に膝立ちしている晋矢さんの、艶っぽい姿だけで出てしまいそうだ。
こんなに節操がない姿を見られ、恥ずかしい。
晋矢さんがどこからか取り出したボトルの中身を手のひらに出して、その手を背後に回す。
すぐに、ぬち、ぬちと水音が響きだして、晋矢さんの勃ち上がっている竿が、踊るようにゆらゆらと揺れた。
そこだけ赤みが強く、形の良い先端にぷくりとあふれた体液が、とろとろと竿を伝っていく。
「でかい男を抱くのが嫌なら、無理なら言ってくださいっ」
「ええ?、え、あ、し、晋矢さんっ?」
仰向けで布団の上に転がる貧弱なわたしの上に、たくましくて美しい体がある。
まるで肉食の獣を思わせるしなやかな四肢。
艶めいて滑らかで盛り上がる胸元、綺麗に割れた腹筋、脇腹までも筋肉の凹凸が見える。
逆三角の肉体は、雑誌の表紙を飾りそうなほどに美してくて、それなのに上気した顔で見下ろされ、腰が疼く。
晋矢さんの股間の周辺だけは白く、他は綺麗に日焼けしているのが、とても淫らに見えた。
「ん、っ、ーっっ」
「晋矢さん、晋矢さんんっっ」
筋の浮いた立派な太ももがわたしをまたいで、先端に濡れた熱を感じた。
ぐぬ、と押し付けられた狭い入り口を押し広げる感覚の後に、痺れるような温もりに包まれ。
目の前で、光が爆発した。
「うっっ」
とんでもなく、ものすごく、申し訳ないのだけれど、わたしは先端が入っただけで、射精してしまっていた。
「……」
「……あ、あの」
「……」
「す、すいません」
晋矢さんの色っぽい姿を見ているだけで限界を迎えそうだったのに、それ以上の初めての快感を与えらえれたことで、わたし達の初めては数分もせずに終わった。
わたしは、声も出せずに呆然としている晋矢さんに、仰向けのまま謝ることしかできなかった。
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