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7 竜に乗る ※
しおりを挟むさっきは勢いでなんとなったが、二回目もうまく入れられるか不安になる前に、てらてらと濡れる穴が求めるように口を開いて俺を招き入れた。
『あ゛あっ、入ってくるぅっ♡……ぅう゛んっ』
すでに中で出した後だからなのか、俺をねっとりと包み込んでくる。
最高だ。
きゅっ、きゅむっ、と挿入されたことを喜ぶように抱きしめられ、精を搾り取ろうとするように、中がうねうねと震えた。
すごいな。
締め付け具合が、理想的だ。
まるで俺のために用意された特注品みたいだ。
思い上がりすぎ、だろうか。
『ぅぁあ゛あぁっ♡』
勢いでぬるー、と突き入れて、ぺたん、と間抜けな音をたてて俺の肌が黒い鱗に包まれた尻にぶつかると、竜が低い声で幸せそうに喘ぐ。
尻を撫でてやると、ひく、ひく、と腹の中が動く。
腰を引くと、行かないでと縋りつかれて、根元まで押し込むと、もっと奥まで、と誘い込まれる。
『やぁあ゛っ……のばなちゃんっ……あ゛ぅうっ……』
可愛いなぁ。
見た目には可愛い要素が欠片もないのに、ものすごく可愛い。
長い首を曲げて、濁った黄色い瞳が俺を見つめてくる。
俺がお互いの結合部分を見ていると知るなり、瞳孔が開いて、うっとりと歌うように鳴いた。
『のばなちゃん、いっぱいきもちよくなってぇ♡』
「うん、もうすげーきもちいい」
『あはぁ、うれしい♡、ずっとのってほしかったのっ』
なんだこれは。
俺の下にいるのは、竜だ。
間違いなく騎士団に現れた黒い竜の……ちっこいやつ。
さっき陰茎らしきものを確認したから、雄だ。
雄だよな。
鳴き声は人の言葉に聞こえないのに、なぜか意味がわかる。
気絶してこの部屋に来るまでの記憶が飛んでるから、ここはどこで、こんなことしていて良いのか、と思うのに、腰が止まらない。
一回、出したのに、簡単に復活してしまったのは、この竜が可愛いからだ。
雄だけどな。
可愛いから、いけないんだ。
俺は竜が大好きだ。
大好きな竜に「乗って」と言われて、断れるわけがない。
どっからどう見ても、望まれているのが性行為でしかなくても。
全身が真っ黒い鱗に包まれた竜なのに、可愛い。
小さくなったからかな。
いいや、大きい時も可愛かったな。
俺を見つめる瞳で、ゆらゆら燃える青い火のせいかもな。
焚き火とか、見つめていたくなるし。
ぬるぬるとつやめく鱗が燃える。
小さな青い火が、ぽ、ぽ、と増えて消えて、そんな所にまで興奮する。
「もっと、お前に乗っていいのか?」
『いっぱいのって♡、のばなちゃんは私にのるために生まれてきたんだから、いつでも、すきなだけのってぇ♡』
その言葉に、思い出す。
俺にその言葉を言った男の姿を。
一度しか会ってないのに、強烈な印象を残していった全裸男の姿を。
この竜は、あいつと関係があるのか?
「俺が、乗るために生まれたって、どういう意味?」
『そのままのいみ、だよ』
返ってきた答えが、いまいち要領を得ない。
もう少し聞き出せないかな、と懐柔を試みてみることにした。
腰だと思う場所をがっしりと掴んで、ぱん、ぱん、と腰を叩きつける。
『あう゛っ……ふぁう゛ぅっ……きもちぃ、そこ、すき……あ゛あっ』
人の男でも突っ込まれて気持ちよくなれる者がいるように、竜の雄も気持ちよくなれるようだ。
痛めつける気はないので、安心しながらもう一度〝乗る〟の意味を聞くと、竜は背中の羽根の皮膜をゆらゆらと広げたり閉じたりしながら、低く鳴いた。
ぴしゃ、ぴしゃっと床に液体がこぼれる音がしてるが、もしかしてこの竜が射精してるのか?
『あゃうっ……わっ、私、わた、しはっえんどくりゅうで、ずっとっ、つがい、さがして、あ゛あっ、そこ、しゅき、きもちいいっ、もっとしてぇ♡』
最後の方とか、うわ言になってんだけど。
可愛いな。
もっと可愛い姿が見たい。
俺から見て下側というか、腹側を中からこするようにしてやると良いのか、悲鳴じみた鳴き声が上がった。
竜の腹の下から、ぽたぽたと水が垂れる音が耳に届く。
『やっ、そこ、しょこ、あぁ、っきもちいぃの、のばなちゃんとつがいになれてうれしいっ、しゅきぃっ、すき、しゅきいいっっ』
「っっ……」
なんかもうすっげー可愛いな、と二度目も余さずに注ぎ込んた。
二回連続とか、初めてなんだけど。
中で出すのも。
呼吸を整えながら、目の前の尻を撫でる。
見た目はぬめぬめとした光沢があるのに、触ると陶器のようにつるりとしている。
撫でながらぼんやりして、やっとその言葉の意味を理解できた。
「……え、つがい?、おい、嘘だろ」
動きを止めてしまった俺を、長い首を伸ばした竜が振り返る。
黄色い瞳がぱち、ぱち、とまばたく。
まぶたの内側で動く透明な瞬膜が見えてしまって、やっぱりこいつは本物の竜なんだな、と思った。
『ふぁ……のばなちゃん?』
声が溶けてる。
腹に響くほど低い声なのに、可愛い。
俺がこの竜を溶かしてしまった、と分かっているからこんな気持ちになるんだろうな。
誇り高い空の王者。
伝説の中に生きる、最強の種族。
それが竜。
竜には番がいるのか。
つがい?
番。
それって、動物でいうところの、夫とか、嫁とか。
そういう扱いの呼び方だよな。
俺が、こいつの、この〝えんどくりゅう〟とかいう竜の番?
生まれも育ちも、ありふれた孤児の俺が?
種族も性別も、釣り合ってないのに。
くたん、と磨き上げられた石の床に伏せていた竜が、半身を起こす。
はふ、と息をついて、青い燐光を身に纏い、俺へと上半身を向けた。
可愛い。
下半身が立たない、みたいにぷるぷる震えてる。
気づいてないと思ってんのかな。
尻穴や竜自身の外性器から、今もとろとろと床に垂れているものについては、追求しない方が良さそうだ。
はふ、はふ、と息を整えたらしい竜が、こてん、と首を傾げた。
鋭い牙を見せながら、鳴いた。
途端に、竜の姿が全裸の男性になった。
浅黒い肌と、黒い髪の美しい男だ。
床に座り込んでいて、股間付近がどろどろのままだが。
「私は〝リサンデ〟。
本当の名前は違うけれど、番だけに教えるものだから、二人きりの時に言うね、野花ちゃん」
含みなく甘えているようにしか聞こえない声は、快楽の名残でかすれて震えている。
俺が顔を上げると、不透明な乳黄色の瞳に、青が揺れているのが見えた。
瞳孔の奥で、青い火が燃えている。
「炎毒を司る私に近づけて、乗ることが出来るのは、番の野花ちゃんだけ」
とんでもなく不穏な台詞に、なんかめちゃくちゃ大事なことを間違えたんじゃないか。
そう気がついた俺に、リサンデが告げた。
「私の中に種を注いだ以上、他の竜に乗ることは許さないから、ねえ、野花ちゃん?」
ふしゅるぅ、と音を立てて、リサンデが口から白い靄を吐くと、吹きつけられた壁紙が真っ黒に染まった。
同時に壁の向こうで、絶叫と共になにかが倒れるような音がして、悲鳴と誰かの名前を叫ぶ声が聞こえた。
なにが起きてるんだ。
「野花ちゃんがいるから、私はここにいるんだよ」
「だから、これからもたくさん私に乗ってね」と心を捕える甘い声が、どこか脅迫じみて聞こえてしまうのは、俺の被害妄想なのか。
斯くして俺は、炎毒竜の騎士に選ばれた。
そして、ヒデランテ竜王国で唯一の、本物の騎竜騎士となった。
なんか違う気がするんだが、幸せなので、気にしないことにした。
了
ここで終わりの予定でしたが、興が乗ったので、明日からおまけ二話+いちゃいちゃするだけのせかんどしーずん?に入ります!
よろしければ、お付き合いくださいませ
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