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章間
01 運動不足=不健康 1/2 ※ 人×人
しおりを挟む裕壬は無事に進級した。
卒業に必要な単位はほとんど履修し終えて、卒業制作にかかりきりの日々の中。
裕壬は金曜の夕方からゴーシュの家に泊まりに来ていた。
泊まり……強制的に連れさらわれてきていた。
ここ一週間近く、仕事でゴーシュは不在だった。
ゴーシュが不在の間の裕壬が、人らしい健康的な生活を送っていなかった、と判断されてしまったのだ。
番の幸福がゴーシュの幸福。
それでも許容できる上限はある。
徹夜と寝落ちを繰り返し。
食事は気がついた時に食べる、それもゴーシュが冷蔵庫に入れておいたものを取り出すだけ。
水分に至っては、水道水を直飲み。
裕壬がそんな生活が続けていれば、ゴーシュだって不安になる。
うつろな表情は幸せそうなのに、フラフラしているから。
番の幸福以上に、健康でいてもらいたい。
寝不足の高揚感ではなく、笑っていて欲しいのだ。
本能と理性の間で葛藤したゴーシュは、裕壬を自分の巣穴にさらった。
溜めこまれた一週間超えの服や下着やタオルは一緒に持ってこられて、ゴーシュの家の洗濯機に踊らされた後で、風通しの良い庭に揺れている。
はればれとした青空は白く霞んで、季節の花々が手入れされた庭のあちこちを彩っていた。
そんな平和な庭先の光景とは別に、連行された裕壬はゴーシュの教育的指導を受けていた。
寝ろ、食え、そして運動しろ。
連れてきて食事をさせて風呂に突っ込んだら、寝不足の裕壬はそのまま寝落ちした。
足りない運動を補うべく、ゴーシュは早朝に裕壬を起こして……少なくとも、気持ちの上では教育的指導だった。
ぱん、ぱん、と拍子をとるように肉と肉がぶつかる音が、大きなベッドの他にはほとんど何もない室内に響く。
じゅぽ、じゅぷと粘着質な水音も。
太陽は空高くに登っているのに、遮光一級のカーテンが閉められている室内は薄暗い。
暗い室内で、時折、琥珀色の瞳がわずかな光を拾って、ぎらりと光る。
ベッドの上では、全裸の人影が二つ、淫らに絡み合っていた。
「……ぃい、……ぅあっ……」
裕壬は閉じられない口から喘ぎ声をこぼしながら、ほほをシーツに押し付けていた。
長時間の快楽に泣かされて溶けた瞳には、疲労が見える。
汗や唾液で冷えたシーツから顔を上げることもできず、両手は顔の近くでシーツを握りしめているが、ほとんど力が入っていない。
大きな手に腰を抱えこまれて。
尻の穴を深くまで貫かれ。
何時間も揺さぶられ続けていた。
膝を支えに尻だけを高く上げた姿勢で、ぶらぶらと揺れる裕壬の男根の先端からは、ぽた、ぽた、と射精というには頼りなさすぎる薄い白が垂れる。
「……ぁや……も……っあ……」
もう何度も射精を繰り返しているので、出るものがない。
空っぽだ。
ぐりっ、と快感の蓋をこじ開けるように貫かれて、全身に電流が流れる。
出るものがないのに、さらに押し出そうと胎の中を愛撫する熱に、裕壬は悲鳴じみた嬌声をあげた。
「ひぁ……あ、……はっ……ぅあっ、い、イく、イっ、イくぅっ!」
「ユージン、かわいい」
「うぅ、やめ……イってる、うごかないでぇっ」
裕壬の嘆願に気がついているはずなのに、ぱん、ぱん、と肉を打つ音は止まらない。
肌と肌がぶつかる時の水音も。
息を吸おうとしても、腹の中を満たす肉の熱と貫かれる勢いのせいでできなくて、裕壬はあえいだ。
背後から覆い被さるように伸しかかり、裕壬の中を堪能しているのはゴーシュだ。
裕壬が胎の中からの刺激だけで達しだした頃から、子供っぽい口調に変わったまま。
今では嬉しそうに、楽しそうに裕壬を味わっている。
快感を感じる場所の全てを知り尽くしたように、ゴーシュはゆったりと腰を振って男根を根本までねじこむ。
その際に、押さえこんでいる細い体が快感を感じる部分を、丁寧にこすることも忘れない。
つまり、裕壬が白目をむいて、びくびくと震えて絶頂を享受している間も、ゴーシュは快感を与えることをやめようとしなかった。
「ユージンはうごかないといけない、もっといっぱいしような、からだをうごかさないとふけんこうだ」
「や……、こわ、いっ、なかでイくのもうやだ……むり……イきすぎてしんじゃうぅ」
「だいじょうぶだ、おれがいるから」
ゴーシュがいるから大丈夫じゃないんだよ!
絶頂の最中でまともに声も出ないのに、と裕壬は力の入らないなりに逃げ出そうとする。
番を一番に考えるゴーシュが、生活を放棄した(と思われても仕方ない行動をとっていた)裕壬の逃亡を許すはずがないとしても。
裕壬は自分が悪いことを知っている。
今回の件に関しては、言い訳もできない。
裕壬が集中するとのめり込んでしまい、寝食を疎かにする点を、ゴーシュは改善するべきだと主張してきた。
諦めずに何度も。
主張した上で、寝る時間を削って制作に当てるのは、かろうじて許してくれていた。
一徹までは。
ゴーシュが社長の出張に付き添って一週間来ない、と裕壬は油断していた。
集中力の続く限り徹夜して、食事も摂らずに制作に没頭していたら、一週間などあっという間だ。
一週間の予定が、六日目の夕方にゴーシュはやってきた。
昼頃に家に戻ってきてから料理を作って、大急ぎで番の元に駆けつけたのだ。
連日徹夜している、と一目でわかる、熱で浮かされたような目をしているのに青白い顔をした裕壬を見るなり、ゴーシュはただでさえ鋭い目をさらに吊り上げた。
そして冷蔵庫に持参したおかずを入れようとして……。
「裕壬、最後はいつ、何を食べた?」
と地面を這うように低い声で聞いてきた。
それを聞いた裕壬は、ふわふわとのぼせたような寝不足の頭で、ようやく気がついた。
ゴーシュは、食べない、ことは許してくれないんだった、と。
裕壬はゴーシュと自分の価値観が違うことは理解していた。
ただそれが人狼だからなのか、ゴーシュだからなのかまでは、思い至れていなかった。
食べないのはお腹が空かないから。
お腹が空かないのは運動不足だから。
運動不足は不健康になる、二人で一緒に運動しよう。
誘拐同然に洗濯物と裕壬を巣穴に持ち帰ったゴーシュは、久々の湯船とたっぷりの食事と睡眠を得て、少しだけ人の顔色をとりもどした番にそう告げた。
早朝にいきなり乳首を甘噛みされて、ほぼ叩き起こされたも同然の裕壬の、喘ぎ声をBGMにしながら。
強引な上に謎すぎる三段論法を聞いた裕壬は、完全に寝ぼけていた。
へえ、と右から左に流して、そうなんだね、と頷いた。
前日の時点で完徹三日目で、一晩寝たくらいでは完全復活には程遠かった。
ただ寝ぼけながら、乳首が気持ちいい、ゴーシュ楽しそうだな、とぼんやりしていた。
与えられる快感に素直に喘ぎながら。
裕壬が油断していなければ、風が吹いて桶屋が儲かる、わけないだろ、とツッコミも入れられたかもしれない。
しかし裕壬は、ゴーシュに突っ込まれるまで寝ぼけっぱなしだった。
三徹の後で、夢と現実が混ざり合っていた。
ようやく目が覚めた時には、ゴーシュの男根の根本まで、しっかりと尻穴に咥えさせられていた。
中で射精されて、あれ、これって夢じゃないかも?、と目が覚めたのだ。
ゴーシュが、まだ運動量が足りていない、と言い出してから、裕壬はずっと絶頂と快感に翻弄されている。
こんなの運動じゃない、という訴えはあっさりと棄却された。
食事を用意する時間があれば、もう少し筆を走らせたい。
色を乗せたい。
鉛筆を持ちたい。
空腹になった時に食事を摂るのではなく、集中力が切れた時が食事時間、なんて言い訳を、ゴーシュが聞くはずもなかった。
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