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番外編

37 発情期のおれ 前 ※

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 形が良くて美しくて長い兄のちんこが、おれの気持ち良いところをずりずりと押しつぶして、浅く深く貫かれる。

「ひぎぃ……あぅぎゅぅ……う、んぐううっ!」
「ん……っ」

 ずぷり、とゆっくり突き入れられた腹の中で、内臓を揺らされる感覚に、目の前がぐらぐらと揺れた。
 全身に力が入って、腹の中にある熱を締めつけてしまい、兄のちんこの先端にある、美しいくびれの形を感じてしまう。

 きつく締めつけているはずなのに、兄は腰を止めずにおれをもっと気持ちよくしてくれる。

「はひ……ぅえっ」
「なんだい、かわいいスノシティ?」
「めっ、そ……ぁめぇっ!」

 腹側をこすられると、びりびり、違う、びっくんびっくんするから。
 そこはだめ、と言いたいのに、兄上、と呼びかける声すら言葉にならない。

 ずっと続く快感で、すでに視界が定まらなくなってるのに、そこからさらに上に押し上げられると、おれのちんこから出ていた子種が止まってしまう。
 子種が出ないまま、快感の渦の中に突き落とされてしまう。

 こうなると、もう、何もできない。
 全身を強張らせて、兄のちんこに貫かれて鳴くだけ。
 子種が出ていないことを感じているのに、どこかにのぼり続ける感覚が断続的に続いてしまう。

「ひぐふっ!!……んぎぃいっ!!……ひぎゅぅっ!!」
「くふふ、スノシティ、ずっと気持ち良くなれているんだね、中がすごくうねって抱きしめられているのを感じるよ」
「んんっふぃうっ♡」

 うん、きもちいいよぅ、と返事をしたつもりなのに、これも声にならなかった。

 おれは胴体が長いから、クッションに尻を乗せた仰向けの姿勢で愛しあうと、自分の尻の穴に兄のちんこが出入りするところが見える。

 ぜんぶ見えてしまう。
 これ、あまり良くないんだ。
 おれの精神衛生的に。

 すごく嬉しいぃ。
 兄が好きぃ。
 ってなってしまい、他のことが考えられなくなるから。

 休みながら何度も中に注いでくれた子種を、一引きごとに外にかきだしながら、優しく激しくおれに出入りする、兄のきれいなちんこが見える。
 幸せすぎる。

 おれを覗き込む兄がとても幸せそうな顔をしているのも、おれとずっと愛しあうことを望んでいることも、見えてしまうから。

 全部見えているから。
 幸せすぎて、頭の中が沸騰したみたいになる。

 石みたいにがちがちになって、血管が浮き上がっているのにきれいな兄のちんこが、おれを愛してくれる。
 胸も腹もきゅう、きゅうっと締め付けられる。
 これは、兄がおれを愛してる証だよなって。

「ぅえ、あ……ぅえ゛っっ~~~~っ!!」

 おれは兄が、そして兄のちんこが世界一好きだ。
 でも、発情期は大っ嫌いだ。





 暑くなってきて。
 日に日に、頭の奥がぼんやりしてくる。
 初めての時から何度目かの、発情期と呼ばれる時期が来た。

 毎年のことなのに、この時期が終わった後に記憶が残っていないことが多い。
 欲望に溺れてもうろうとしている間に、季節が巡っていくから。

 ただ、季節が一つ過ぎる間に体に刻まれた、兄の愛情の痕跡が夢ではないことを教えてくれる。

 これまではそれで良かった。
 覚えていなくても、兄がおれの側にいてくれた証は残っていたから。

 それでも、記憶がなくて大丈夫なのか、不安になった。

 一昨年、兄に発情期の記憶が曖昧だと伝えた。
 ひどく焦った顔で驚く兄が医学書を紐解き、そこに記載がないからと新しい本を何冊も取り寄せていた。

 その結果。
 どうも、おれの種族の男には時々あることらしい。
 興奮しすぎて理性と記憶がぷっつんするそうだ。

 発情こわい。
 獣人こわい。

 そんなこんなで、兄が王妃であるおれの健康管理の一環として、昨年の発情期を記録してくれた。
 映像記録ができる魔術道具とかいうもので。

 発情期のおれはどんなことしてるんだろう、という不安。
 兄が一緒だから大丈夫という安心。
 相反する感情を抱えて、兄と二人で記録映像鑑賞に挑んだ。

 魔術ってなんでもできてすごいな。
 そんな呑気な感想は、映像を見て吹っ飛んだ。

 その内容はひどすぎた。

 食事と寝る時間以外、ほとんど一日中、兄に甘えてべったりとくっついて。
 しかもくっついている間は、ずっと兄と〝愛しあう〟ことをしていた。
 兄と一緒に執務室にいるときでもだ。

 こんなの見たくなかった。
 ひどい。

 頼むから、誰にも見せないで欲しいと頼んだら、「当たり前だよ」ときれいな笑顔を返された。
 きっと兄は分かってない。

 ひどいじゃないか。
 こんなのひどい。

 おれ、覚えてない!!

 あんなに幸せそうに、舌を伸ばして白目をむいて、よだれ垂らしながら甘えたように吠える自分の姿を。
 あんなに艶めいて美しい兄の姿も。

 兄が食事や仕事や休憩をしている間は、兄のちんこから型を取った魔術道具を使ってくれていることも覚えてないなんて!
 悲しい。
 悲しすぎて、涙が出てきた。

 おれは、兄と愛しあっている時間の全てを覚えておきたいのに。
 兄と愛しあう大切な時間を、欲望に溺れて忘れてしまう発情期なんて大っ嫌いになった。

 大嫌いなのに、毎年やってくるのが、いやだ。
 大切な時間のほとんどを、忘れてしまう自分が許せない。

 それでも、毎年、発情期はやってくるのだ。





 四つん這いやうつ伏せだと、おれの表情が見えずに体調が分かりにくいと言われたので、愛しあう時は仰向けが多い。
 両手両足の鉤爪には手袋をはめて。

 こうやって兄と愛しあうようになって。
 おれが過ぎた快感で顔中をぐちゃぐちゃにして、満足に呼吸もできずに喘ぐ姿を、兄はことさら嬉しそうに見つめてくる気がする。

 幸せすぎて涙が止まらない。
 ただただ、周囲の空気が暑い。

「可愛い僕のスノシティ、もっと気持ちよくなって良いんだよ」

 兄の声が煮詰めすぎた蜜のようにどろりと重たくて、甘い。
 とろけたような声だけで、脳みそまで兄のちんこに愛されているような気持ちになる。

「うん、うんんっ、うゅんっ……うぎぃいいいっ!!」

 おれのちんこから噴き出す子種が止まらない。
 発情期のおれのちんこは、壊れた噴水と同じだ。

 びゅるりびゅるりと噴水のように噴き上げて腹に溜まり、兄が好きだと言ってくれる腹毛は、ずっとどろどろのぐちゃぐちゃだ。
 革袋つきの筒なんて、何本あってもおさまりきらない。
 出しても出しても体の熱が治らない。

「毎年、こんなに可愛く乱れてくれるのは嬉しいけれど、困ったな……うっ」
「ひゅあ……んぎゅぅっ!」

 とく、とく、と腹の奥に兄の子種を注がれて、体が勝手にのぼりつめた。
 嬉しい。
 幸せ。
 心だけでなく体まで、兄と愛しあう喜びに溺れている。

「スノシティ、いいかい?」

 兄はどうして、おれの尻の中に子種を放ちながら、まともに会話できるんだろう。
 おれ、気持ち良すぎて死にそうになってるのに。

 尻の中だけでなく頭の中まで、兄の声ででろでろにかきまぜられて。
 考える力は溶けてしまった。

 快感に溺れる中でなんとか理解したのは、去年の大規模なひでりで作物が足りていない地域が何箇所もある。
 それをその地方の領主がなんとかかんとかして、それを王がなんとかかんとかするらしいってこと。

 後半は、あにのこえだいしゅきぃ、と思ったことしか覚えてない。

 子種をちんこから噴水みたいに噴いた後で、逆に出なくなる渦の中に落ちてしまい「兄上助けて!」と泣いて吠える。

 そんなふうに、兄に与えてもらう快感に半狂乱になりながら、これだけ理解したおれがすごいと思う。
 うん、もっと褒めてほしい、嬉しいから。

 とにかく、兄が何箇所もあるひでりの傷痕残る現地まで、順番におもむいて激励する必要がある。
 順調に国中を回ることができても、兄が城に戻ってくるまでに、季節が変わってしまうのは確実だという。

 情勢は安定しているけれど、前国王の時に腐ってた奴らに、足元をすくわれる隙を見せるわけにはいかないらしい。

 城に信用できる者を残していくから、兄が心配なのはおれだけ。
 なぜなら、おれが発情期ど真ん中だから!

 兄を心配させるなんて、やっぱり発情期なんて、大っ嫌いだ。

 
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