異世界帰りの僕が100人斬りの勇者だなんてまだ誰にも知られていない ~帰還した元勇者の爛れたラブコメディ~

墨色

文字の大きさ
51 / 156
ランペイジ!

罪と自発的罰

しおりを挟む
| 首藤 絹子


 京介くんを一人部屋に残し、はるはると台所に来た。お茶受けとお茶を用意している間に考える。家には入った。部屋にも入った。

 あとは。


「ねぇ」

「なんですか?」


「協力しない?」

「舎弟なんだから命令すれば良いじゃないですか」


 この女、自分のリスクは侵さない気か。まあ仕方ないか。中2だし。視野が狭い。この状況がわかってない。


「嫌。それを盾に言い訳させない」

「ちっ。え~嫌ですよぉ~…。私は京介さんと一緒の部屋に居れるだけでも良ぃーんです。そんなリスクは侵せません」


 わかってる。そんなこと私にもわかってる。道すがらずっと考えていた。

 京介くんに見つかった以上、もうあのデートは出来ない。今日でお別れかもしれない。


 小学校のとき、上級生にイジメられていた私を助けてくれた時と同じ距離まで初めて近づけた。

 手を取って立たせてくれた、あの距離。

 お気に入りのピンバッジを取られ、汚されて。長い髪を引っ張られて泣いて。相手をのして、ピンバッジを取り返してくれて。手を繋いで、柔らかく微笑んで、公園で洗ってくれて。クローバー可愛いって。髪短くても似合うって。そう言って付け直してくれて。

 そんな距離まで近づいた。


 でも。


「…多分、今日が、最初で、最後」

「……チャンスがですか? なんでですか?」


 はるはるの写真…あんな愛香ちゃんは中学1年以来だ。京介くんも、あの笑顔なのは中学2年以来……


 何度悔しい思いに泣いただろう。


「はるはるの写真。愛香ちゃんが蕩けていた。方針を変えた。隙がなくなっ…たかもしれない…」

「成瀬愛香の方針?」


 あれだけ素っ気ない素振りで京介くんを振り回していたのに。まるで真逆だ。暴行だけじゃない。絶対に何かあった。でもそれはいい。そこじゃない。


「魔女は知らない。愛香ちゃんの正体を」

「はぁ~ん? あんな女対した事ないでしょ? 何ビビってんです?」


 やっぱり同級生以外には無理か。あの愛狂いの愛香ちゃんを見抜くには。外面完璧だし。操るし。


「初期円卓12人。転校した桃ちゃん入れて。束になっても無駄だった」

「それ、小学生の時ですよねぇ~? ノーカンですよ、ノーカン」


 私達もそう思っていた。最初は。

 中学に上がって中学捨てる組と捨てない組に別れた。捨てない組の私達はいろいろと手を尽くした。


「…中学の、時もだった。三年間あったのに。京介くんに近づけなかった。聖ちゃんや、瑠璃ちゃんですら」

「それは円卓、さんたちの実力が……いや…中学になったらそれなりに策は思いつきます…周りも巻き込んだり。先生利用したり、同級生だし勉強とかも…イベント利用したり。そこにきぬきぬのデータもある。のに…だめだったと。そこまで強敵でしたか…」


 どのイベントにも愛香ちゃんが絡んできた。小学校の時と一緒。何手先を読んでるのか。わけがわからなかった。


「狂愛の愛香、ちゃん。あの京介くんを軽々と手玉にとっていた。それがあんなに蕩けた表情」

「それで方針を変えた、ですか」


 あの愛狂いがあんな表情したら誰も敵わない。京介くんがここにいる事自体防いでくるはず。

 なのに今日、いま、ここにいる。

 ならまだいけるはず。


「狂愛が蕩けたら、私には手が出せなくなる。ストーキングも気づいてる。泳がされてる。今度からは多分通報される」

「…認めるんですね」


 ええ、認める。ここで認めないと欲しいものは手に入らない。


「なりふり構ってられない。だから協力」

「跡追い姫がそんなにも……事実みたいですね…」


「…それやめて。円卓のみんなに配慮してたらこの瞬間は逃す。今日しかない」

「……たしかに。1対2、ご家族がいない、声を出しても聞こえない、明日は日曜日……………ぅふっ」


 円卓のみんなには悪いけど、連絡を待って、方針決めるまで待てない。逃す。だから私が突破口になる。魔女も使う。

 
「わかってもらえた?」

「っぇえ、ええ、ええ! この有用な時間をくださったこと、この間宮晴風。首藤先輩に感謝致します」


 この子…他の魔女には隠す気だ。いや、私と同じようにする気か。それも仕方ない。聖ちゃんと瑠璃ちゃんは学校で会える。私とはるはるは……明日からレンズキャップで暗闇だ。

 だから。


「…二人で籠絡する。一人じゃ逃げられるかも。だから代わる代わる扉の前」

「そういうことでしたか。でもどうやってその気にさせるんですか? さすがに拒否されたら堪らないんですけど…」

 
 そう。拒否されたら立ち直れない。でも愛香ちゃんがいる。明日からストーキングは封じられる。追いかけられない。

 この後の人生は今までの撮り溜めたものだけで過ごす事になる………それは、絶対イヤ。


「罰を利用する」

「罰? ああ、写真の。それをどう利用するんですか?」


 京介くんはまだ罰を決めていない。だから自ら罰したと言えば、止める事も拒否する事もしにくい。そこに、想像を超えた一撃。記憶に残る一打。女だってわからせる。そう。
 

「自発的、全裸ボディペイント。これしかない」

「何言ってんだ、こいつ」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...