異世界帰りの僕が100人斬りの勇者だなんてまだ誰にも知られていない ~帰還した元勇者の爛れたラブコメディ~

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肉断つと泣き面と挟み取りと

トライ&デストロイ

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| 海子ネリア


「は、は、は、は─────っ、もう無理~~」

「ふ───っ、私もちょっと無理です。八文字、一旦やめましょう。引き分けにしましょう」


「仕方ないね…はーっ」

「すごいすごい! ミッチ、組手? も得意なんですね! 海子さんもすごかった~!」


「そう? えへへへ。ありがとう。でも内緒だよ。イメージ悪いかもだしね」

「私は…疲れましたよ…」


 は──っ、やっと終わりました…もう、ヘトヘト…流石は八文字の消えた天与の資……噂より全然すごいじゃないですか…アイドルだけしてればいいのに…しかしそんな寄り道してなかったら、確実に負けてましたね。


「いたたた、流石は八文字ですね。三年離れていたとは思えませんでした」

「そっちこそ、先手譲ってばっかり。しかもダラダラと…ずるいよ」


 八文字古流は特にこちらの攻撃をスイッチにしてから入る攻防一体の連続攻撃が怖い。

 だからこそ先手を譲り、遠距離主体で削ってたのに、いつの間にか距離を詰められ誘い込まれて攻撃を仕掛けていました…咄嗟に気づいて手を引っ込めたから良かったものの、危うく全身を刺されるところでしたよ…


「八文字の循環の輪…そんなの飛び込むわけないじゃないですか。出られなくなるという噂ですし…それにお嬢の邪魔をさせるわけにはいきませんし」

「……錆びてたのはわたしだったかぁ~……稽古は続けてたのに…焦りもあったけどさ………は────っ、純くんに先越されたか……帰ろ……いたたた」


 ほ。引き分けで納得してくれましたか。良かったです。これで最中か、ピロートークご歓談中に飛び込めます。まずは藤堂きゅんを縛り…というか、お嬢は上手くいったのでしょうか。

 そのものズバリな体制にしてきたから大丈夫だと思いますが…


「? ミッチはいいんですか? 兄さんまだまだいけますよ?」

「義妹ちゃん、その言い方だと京介くんクズっぽいからやめて欲しいんだけど…」


 ──あれ? 未羽さんが引き留めてきましたね…さっきの様子だと、藤堂きゅんに懸想していたような…? でもそれだとお嬢は……とりあえず聞いてみましょうか。


「……未羽さんはいいのですか?」

「私…匂い集めてますから。実は兄さん、お相手によって匂いが変わるんです! 大発見でしょう!? これはコンプリートしないと!! ……だから良いんですよ。んふふ」


 何言ってんですか、この義妹……あれ? 『俺の義妹が毎晩ベッドに俺の匂いを嗅ぎに来て全然寝れないんだが?!』ではない?
 それに何やら不穏な気配が…これは…深く考えずに乗った方が良いかも知れませんね… ちょっと頭を心配しますが…あ! 義妹の目が!


「それは…相手の匂いと混ざり────」

「しっ…八文字! 未羽さぁん! 是非協力させてくださぁぁい! い、行きましょう! 行きましょう、八文字嬢!」


「う、うん…良いのかな…」

「さ、さあさあさあ、ま、まずは汗を拭いましょう!」


 今は! 乗る時です! お嬢といい、この子といい、どうして試合では柔軟に対応するのに、それ以外だとポンコツなんですか! 義妹の目を見て! 圧倒的にヤバいでしょう! こんな時は迅速に! 素早く動く! 

 大物はこれだから…


「あと…………全力で張り切って頑張ってくださいね………ランキングに…してますから……くすくすくす」


 ………ヤベぇです。
 これ、ヤバいですよ! この義妹、ほんまもんです!


「………は、八文字嬢……この義妹…ヤバ」

「し…!言わないで! ありがとう! 義妹ちゃん! ワ、ワールドマイン、センター、ミッチ! い、いっきま~す! キラッ!」


「わ~! ミッチだ~! 頑張って~! …兄さん×アイドル……いったい何位にランクインするでしょうか……うふふふふふふ」


「………きらっ、頑張るね」

「………こわっ、頑張りますぅぅ」


 聞かなかったことにしましょう! さあ行きましょう! さあ早く立ち去りましょう!





「お嬢~、お嬢~、変ですね…全然音がしないというか…全然気配が…」

「……まあ、京介くんだしね」


「? それはどういう意味ですか?」

「まあ、入ろうよ。……わたしはミッチ。ワールドマインのミッチ。…京介くん! 今からわたしのソロライブ……いっぱいいっぱい楽しんでね! たくさんたくさん唄うから! ナナごめんなさい! え? ぅわあっ!」

「八文字嬢! え、あっ! お、お嬢…………ん?」


 藤堂きゅんの部屋の扉が急に開くと、お嬢が八文字嬢のうでを掴んで中に引き込み、立ち位置をスイッチしていました。

 お嬢はアイドルワンピースを着たままで……あれ? 何もなかった? ワンピ、新品みたいですし…

 はー、まったくお嬢は…いえ、藤堂きゅんがヘタれたのか、それともお嬢では勃たなかったのか…あり得ますね、ガサツですし。でもノーパンM字で無理とか…これは後で慰めないと…


「ネリア姉さん…よくもあんな下品な格好を京介さんの前でさせたわね…」

「……………………はれ? …いったいどなたでしょうか…? お嬢が…そんな言葉遣いを…するはずありません……! ガサツで! 大雑把で! おバカで! でもそこが可愛くて! お尻のパオーンな痣もキュートで! あなたは誰ですか! 私のお嬢の姿形で…あれ? そんなホコホコした淫らなメス顔をして…? いや、あなたは違います! お嬢を…少年のようなあのおバカなお嬢を! 返してくださいっ! あなたいったい誰…あだっ! いたい!」


「京介、未知瑠を頼む。俺はこいつを指導してくるからよ。……京介の技、試してやる」


 お嬢はそう言って扉を閉め、ロープを何故か片手に持って…いやいやそれよりです!


「…元に戻った? …良かったです…何の悪夢かと……………ん? 技? えっ! あ! いや! やだやだやだ! お嬢のトライ&デストロイはいやっ! 私、壊されちゃ────」

「おら、まずは腹パンだ、ふんっ!」


「うぼぉっ! ぐ、に、肉を断たれるのはいやですぅぅ───っ!」

「治るから大丈夫だ。おらぁっ!」


「うげぇっ! げほっ、げほっ、な、何するんですか! 治るわけないじゃないですかぁぁぁ──!!」

「だいじょぶだいじょぶ」


 バカと悪夢はいやぁぁぁ────!

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