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アレフガルド - 妖精の国 フィジュラアルド
妖精の姫
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妖精の国、フィジュラアルド。
現世と隠世の狭間にあり、位階が高くないと滞在すら出来ないといわれる幻の国。
そこには古くからの約定によって、ハヌマット大森林にあるとされる深淵の宝玉が無いと妖精種以外は入れない。
一年中春に覆われ、美しい草花が咲き誇り、まさに桃源郷と呼ぶに相応しい国だった。
そこは巨大な蓮の葉のような皿状の大地が三層に渡り縦に連なった構造をしていて、妖精種のみがひっそりと暮らしていた。
その二階層部分。歓びの森にある一つの村で、何やらプンスカ怒っている人族に似た女の子がいた。
「もーまた姫一人でどっか行ったぁ! 探しても見つからない…またいろいろ教えて欲しかったのにぃ!」
「…この身体でまあよく動きますよね。多分また銀の枝でしょう。あの赤い果実も食べられるんですね」
「妖精やめてから止まるところを知らないもんね。食欲」
「あ、そっかぁ、それでかぁ~でもだるい動くの…」
「ん~わかりますが、ね。何せ御伽噺なのですから。ん~奇跡体験。しかも勇者様。それに、私も何だかお腹が空きました」
「結構不便だよね、エルフの身体」
「現世は…ん~物質世界。仕方ありませんよ。京介様の見せてくれたあのチカチカ! 瞼の裏に光る花火のように、破裂して刹那の花を咲かせて散るのみ~あ~儚い! 尊い! ~んん! …またモノリス見ながら食事にしましょう」
「そーだね。ニナも来るよ~きっと!」
「照れながらチラチラ見ますね、きっと」
「ナニしながら」
「ですね。んふふ」
(聞こえてるわよ。あなた達…次代妖精女王を舐めないで。はー…四六時中お下品なのよ……まったく。まー国出たことないから仕方ないか…あたしも知らなかったし…身体だって趣向だって変わったし…)
次代妖精女王、妖精姫ニナモモは得意の透過の魔法を使ってその場で聞いていた。姿はもちろんのこと、魔力も封じ、気配をまったく感じさせないのは、流石は天才と呼ばれた妖精の姫だった。
確かにお腹が空いてきた。でも好物はもう変わってしまった。大好物も。
仕方なく、彼女達が言うように銀の枝に向かうことにした。
歓びの森の中心。銀の枝と呼ばれる周りと区切られた森。そこには多種多様の果実が実っていて、古来より妖精種はその香りとそれに含まれる魔力を好物としていた。
この身体になって、いろいろなものを食べることを知り、楽しむことを知った。
「はー、食った食ったー。案外緑のもいけたわね…。次は黄色いのも食べてみよ。ふー…ちゃんと食欲と性欲わけない連中とお昼なんてあたしには無理!」
一番高い木の頂点から、この平和になった妖精の国を見渡しながら愚痴をこぼす。
陽光が眩しい。もう春は終わらない。
氷の魔人、ディスティラッガによって長く極寒に閉ざされていたこのフィジュアルドに春が訪れたのは勇者京介のおかげだった。
◆
| ニナモモ
妖精種にとって何より必要な古代樹から採れる妖精バター。香りはもちろんのこと、味も魔力も最高の大好物だった。
だけど、突如として現れた氷の魔人の放つ極限のような寒さに次々と枯れていき、潤いを与えていた妖精の泉も凍ってしまい、もうバターは残り僅かとなった。その時には銀の枝も既に枯れてしまっていた。
このままではこの国は滅んでしまう。次代の妖精女王として、あたしは一人国を抜け出し、他国に助けを求めて旅立った。
現世、あたし達がそう呼んでいた世界は、アレフガルドは、初めての国外は、人族は、目まぐるしく、忙しなく動いていて、長命なあたし達妖精種にとってはまるで死に急いでいるかのように見えた。
何もかもが違っていた。
透過の魔法を使いながら身を隠し、いろいろな国を巡り、魔人を倒せるほどの強者を探した。
見せ物小屋、カジノの景品、奴隷など。希少な妖精種は捕まったら連れていかれ、二度と国に帰れない。古くから伝わる言い伝えを信じ、慎重に探した。
ミルカンデ、星読ミの元にも行った。探し物なら彼女だ。急に姿を現したあたしを見ても驚きもせずに、彼女は氷の表情を結構崩してこう言った。
このアレフガルドに、私の愛の剣が舞い降りた。
だからいずれ助かると告げられたが、勇者が訪れるまで待てなかった。あたしはミルカンデを出てまた探した。
お腹を空かせながら、我慢して街を巡った。
現世の食べものは口に出来ない。物質世界に引っ張られ、定着してしまう。一度でも現世に定着してしまえば、古代エルフ種になってしまう。そうなると位階に弾かれ、簡単には国に帰れなくなる。
魔力の多い自然溢れる場所ならお腹は空かない。でもそんなところに英雄クラスはいない。
そんな中、ある時噂を聞いた。
英雄の集まる場所。
しょーかんと呼ばれる場所のことを。
◆
勇者いた。めっちゃ簡単にみっけた。黒髪黒眼すぐいた。すぐみっけた。
今までの苦労はなんだったのよ…
でも……これ…何してるん…だろ??
え………???
◆
…………………はわぁっ! びっくりし過ぎて意識トんでた……え! はわわわわわわわわ…あ、嘘、わわわ、え、嘘嘘、そんな…! ナニこれ、ナニしてるのぉ…ひょっとして…もしかしてこれが…人族の…まぐわいなの……?? あたし達と違いすぎるんですけどぉ?! あひ! え、え、あ! ああ、壊れるよ! そんな格好壊れちゃ…う、お、お、う、嘘、え、良いの?! 壊れちゃわないの!? 何がそんなに良いのよ! そんなばちんばちんされて… 壊されちゃ…あ、あ、あ、そんなの突き刺し…あひぃ! え! もう死ぬの?! やっぱり死ぬんだ!? え? 良いの!? 死なないの!? どっちなのよ! ハッキリしなさいよ! なんなのよこれ!? ひぃ! 声おっきい! どっから出てんのよ! さっきからどこ行くのよ! 何回行くのよ! 行く行く詐欺なの! どこにも行ってないじゃない!! え?! やっぱり駄目なの!? 何がそんなに駄目なのよ! 説明してよ! ぃひぃぃぃぃぃぃ?! あ、あわわ、あわわ…あわわ、あわわわわわ…死んだ?……死んだの…?…そんな…幸せな顔して……人族のまぐわいって……命…散らすんだ……
勇者しゅごい…勇者の愛の剣しゅごい……はわわわわわ…
◆
それからは勇者に同行し、現世の事も知りながら、ハヌマットの裏咲守のダンジョンを攻略し、深森の姫から宝玉も手に入れた。
氷の魔人とその眷属に支配された妖精の国を瞬く間に攻略し、三階層、最下層の水底の島にいた氷の魔人、ディスティラッガと対峙した。
傍らにはあたしの母が氷漬けにされていた。幼馴染たちもだ。
氷の魔人がいやらしく笑いながら言った。
妖精種の花のような香りを持つ特殊な魔力が好物だと。氷漬けにし、ジワリジワリと吸い取り、氷の中で徐々に衰弱していく妖精の姿が何より楽しい娯楽だと。
あたしはアタマに血が昇って京介の静止を振り切り、がむしゃらに向かっていった。
でもすぐに氷漬けにされた。魔人は生きたまま砕いてやると言って攻撃してきたけど、京介が庇ってくれた。傷つきながらもあたしを守り、戦い、足手まといにしかなっていない悔しさでいっぱいだった。
長い戦いのすえ、ついに魔人が倒れた。
氷の中から京介に助け出されたと同時に、あたしの長い旅が終わりを告げたことを知った。
それからあのいけすかない聖剣の奇跡によって妖精の国、フィジュラアルドに春の日が訪れた。
一気に開花した草花が咲き乱れ、吹き荒れて、歓びが舞い散る中、その花吹雪から出てきた京介。
陽光を浴び、全身に薄くこびりついていた魔人の氷の魔法が溶けて綺羅綺羅と輝き……水も滴り……不本意ながら…見惚れたわ。
ばーか。
妖精の国の現状を聞いてからずっと氷みたいに痛々しい悲しい表情だったのに。
咲き誇る花とともににっこりと笑って。なんて。
ばーか。ばーか。
ほんっとキザなんだから。ばーか。スカしてるんだから。ばーか。ビッとキメてやる、なんて。ばーか。キライじゃないけど! ばーか。妖精のまま連れてけって言ったのに! 次は役に立ったのに! ばーか! 聖女ごときの小娘なんかに騙されて! ほんっとばーか! 避妊魔法なんかじゃないじゃない! これ二代目勇者の願いじゃない! ちゃんと孕んだわよ! ばーか…失神させるだけさせて…ほんっと…ほんと、ばかなんだか…ら…ん~~~京介のばか───っ! 絶対可愛い子産んでやるんだからぁぁぁ────っ!
ああ、星読ミ…あなたの言う通り…まさに愛の剣だったわ。それに貫かれたの。愛が溢れて止まらないの。
だから、だからあなたの言う通り…姫巫女に従ったわよ? 聖女を騙した賢者の策、楽しみにしてるわ。
でも、あなたの愛の剣では、決してないけどね。
◆
「ニナ~! 早く早くぅ! 始まるよぉ!」
「…フーキッカとエッテハルカ…はわかるけど、ヒーステリカまで…それにまた? え、また? あなた達そのシーンほんっと好きね…でもご飯の時はやめなさいってば。あの伝承は比喩だったって京介も言ってたじゃない。まあ? キライじゃないけど? 京介が我慢してる顔キライじゃないけど?」
「コレオカズニゴハンガイケルーってやつ? でも実際ご飯3杯いけちゃいますよ? モギュモギュ」
「ですよね。私の食欲我慢と京介様の放出我慢が拮抗しているこの瞬間! 切り取りたい! ん~ああ! 溜まりません…二度美味しい…いや、三度美味しい。パクパク。はー…ついていけば今頃は…まだありつけたのに…」
「ほんとだよねー。でも妖精バターより美味しいものがあるだなんて、知らなかったんだもん。仕方ないよ。モグモグ。あーもっともっと搾り取れば良かったな……京介バター」
「ほんと飼い殺したかったです…パクパク、モグモグ。京介バター」
「ほんとそれーなんで帰しちゃうかなーまだまだ搾り取れたのにぃ…京介バターパクパク。あーもーまた食べたい…モグモグ」
「……京介、流石に死んじゃうわよ」
現世と隠世の狭間にあり、位階が高くないと滞在すら出来ないといわれる幻の国。
そこには古くからの約定によって、ハヌマット大森林にあるとされる深淵の宝玉が無いと妖精種以外は入れない。
一年中春に覆われ、美しい草花が咲き誇り、まさに桃源郷と呼ぶに相応しい国だった。
そこは巨大な蓮の葉のような皿状の大地が三層に渡り縦に連なった構造をしていて、妖精種のみがひっそりと暮らしていた。
その二階層部分。歓びの森にある一つの村で、何やらプンスカ怒っている人族に似た女の子がいた。
「もーまた姫一人でどっか行ったぁ! 探しても見つからない…またいろいろ教えて欲しかったのにぃ!」
「…この身体でまあよく動きますよね。多分また銀の枝でしょう。あの赤い果実も食べられるんですね」
「妖精やめてから止まるところを知らないもんね。食欲」
「あ、そっかぁ、それでかぁ~でもだるい動くの…」
「ん~わかりますが、ね。何せ御伽噺なのですから。ん~奇跡体験。しかも勇者様。それに、私も何だかお腹が空きました」
「結構不便だよね、エルフの身体」
「現世は…ん~物質世界。仕方ありませんよ。京介様の見せてくれたあのチカチカ! 瞼の裏に光る花火のように、破裂して刹那の花を咲かせて散るのみ~あ~儚い! 尊い! ~んん! …またモノリス見ながら食事にしましょう」
「そーだね。ニナも来るよ~きっと!」
「照れながらチラチラ見ますね、きっと」
「ナニしながら」
「ですね。んふふ」
(聞こえてるわよ。あなた達…次代妖精女王を舐めないで。はー…四六時中お下品なのよ……まったく。まー国出たことないから仕方ないか…あたしも知らなかったし…身体だって趣向だって変わったし…)
次代妖精女王、妖精姫ニナモモは得意の透過の魔法を使ってその場で聞いていた。姿はもちろんのこと、魔力も封じ、気配をまったく感じさせないのは、流石は天才と呼ばれた妖精の姫だった。
確かにお腹が空いてきた。でも好物はもう変わってしまった。大好物も。
仕方なく、彼女達が言うように銀の枝に向かうことにした。
歓びの森の中心。銀の枝と呼ばれる周りと区切られた森。そこには多種多様の果実が実っていて、古来より妖精種はその香りとそれに含まれる魔力を好物としていた。
この身体になって、いろいろなものを食べることを知り、楽しむことを知った。
「はー、食った食ったー。案外緑のもいけたわね…。次は黄色いのも食べてみよ。ふー…ちゃんと食欲と性欲わけない連中とお昼なんてあたしには無理!」
一番高い木の頂点から、この平和になった妖精の国を見渡しながら愚痴をこぼす。
陽光が眩しい。もう春は終わらない。
氷の魔人、ディスティラッガによって長く極寒に閉ざされていたこのフィジュアルドに春が訪れたのは勇者京介のおかげだった。
◆
| ニナモモ
妖精種にとって何より必要な古代樹から採れる妖精バター。香りはもちろんのこと、味も魔力も最高の大好物だった。
だけど、突如として現れた氷の魔人の放つ極限のような寒さに次々と枯れていき、潤いを与えていた妖精の泉も凍ってしまい、もうバターは残り僅かとなった。その時には銀の枝も既に枯れてしまっていた。
このままではこの国は滅んでしまう。次代の妖精女王として、あたしは一人国を抜け出し、他国に助けを求めて旅立った。
現世、あたし達がそう呼んでいた世界は、アレフガルドは、初めての国外は、人族は、目まぐるしく、忙しなく動いていて、長命なあたし達妖精種にとってはまるで死に急いでいるかのように見えた。
何もかもが違っていた。
透過の魔法を使いながら身を隠し、いろいろな国を巡り、魔人を倒せるほどの強者を探した。
見せ物小屋、カジノの景品、奴隷など。希少な妖精種は捕まったら連れていかれ、二度と国に帰れない。古くから伝わる言い伝えを信じ、慎重に探した。
ミルカンデ、星読ミの元にも行った。探し物なら彼女だ。急に姿を現したあたしを見ても驚きもせずに、彼女は氷の表情を結構崩してこう言った。
このアレフガルドに、私の愛の剣が舞い降りた。
だからいずれ助かると告げられたが、勇者が訪れるまで待てなかった。あたしはミルカンデを出てまた探した。
お腹を空かせながら、我慢して街を巡った。
現世の食べものは口に出来ない。物質世界に引っ張られ、定着してしまう。一度でも現世に定着してしまえば、古代エルフ種になってしまう。そうなると位階に弾かれ、簡単には国に帰れなくなる。
魔力の多い自然溢れる場所ならお腹は空かない。でもそんなところに英雄クラスはいない。
そんな中、ある時噂を聞いた。
英雄の集まる場所。
しょーかんと呼ばれる場所のことを。
◆
勇者いた。めっちゃ簡単にみっけた。黒髪黒眼すぐいた。すぐみっけた。
今までの苦労はなんだったのよ…
でも……これ…何してるん…だろ??
え………???
◆
…………………はわぁっ! びっくりし過ぎて意識トんでた……え! はわわわわわわわわ…あ、嘘、わわわ、え、嘘嘘、そんな…! ナニこれ、ナニしてるのぉ…ひょっとして…もしかしてこれが…人族の…まぐわいなの……?? あたし達と違いすぎるんですけどぉ?! あひ! え、え、あ! ああ、壊れるよ! そんな格好壊れちゃ…う、お、お、う、嘘、え、良いの?! 壊れちゃわないの!? 何がそんなに良いのよ! そんなばちんばちんされて… 壊されちゃ…あ、あ、あ、そんなの突き刺し…あひぃ! え! もう死ぬの?! やっぱり死ぬんだ!? え? 良いの!? 死なないの!? どっちなのよ! ハッキリしなさいよ! なんなのよこれ!? ひぃ! 声おっきい! どっから出てんのよ! さっきからどこ行くのよ! 何回行くのよ! 行く行く詐欺なの! どこにも行ってないじゃない!! え?! やっぱり駄目なの!? 何がそんなに駄目なのよ! 説明してよ! ぃひぃぃぃぃぃぃ?! あ、あわわ、あわわ…あわわ、あわわわわわ…死んだ?……死んだの…?…そんな…幸せな顔して……人族のまぐわいって……命…散らすんだ……
勇者しゅごい…勇者の愛の剣しゅごい……はわわわわわ…
◆
それからは勇者に同行し、現世の事も知りながら、ハヌマットの裏咲守のダンジョンを攻略し、深森の姫から宝玉も手に入れた。
氷の魔人とその眷属に支配された妖精の国を瞬く間に攻略し、三階層、最下層の水底の島にいた氷の魔人、ディスティラッガと対峙した。
傍らにはあたしの母が氷漬けにされていた。幼馴染たちもだ。
氷の魔人がいやらしく笑いながら言った。
妖精種の花のような香りを持つ特殊な魔力が好物だと。氷漬けにし、ジワリジワリと吸い取り、氷の中で徐々に衰弱していく妖精の姿が何より楽しい娯楽だと。
あたしはアタマに血が昇って京介の静止を振り切り、がむしゃらに向かっていった。
でもすぐに氷漬けにされた。魔人は生きたまま砕いてやると言って攻撃してきたけど、京介が庇ってくれた。傷つきながらもあたしを守り、戦い、足手まといにしかなっていない悔しさでいっぱいだった。
長い戦いのすえ、ついに魔人が倒れた。
氷の中から京介に助け出されたと同時に、あたしの長い旅が終わりを告げたことを知った。
それからあのいけすかない聖剣の奇跡によって妖精の国、フィジュラアルドに春の日が訪れた。
一気に開花した草花が咲き乱れ、吹き荒れて、歓びが舞い散る中、その花吹雪から出てきた京介。
陽光を浴び、全身に薄くこびりついていた魔人の氷の魔法が溶けて綺羅綺羅と輝き……水も滴り……不本意ながら…見惚れたわ。
ばーか。
妖精の国の現状を聞いてからずっと氷みたいに痛々しい悲しい表情だったのに。
咲き誇る花とともににっこりと笑って。なんて。
ばーか。ばーか。
ほんっとキザなんだから。ばーか。スカしてるんだから。ばーか。ビッとキメてやる、なんて。ばーか。キライじゃないけど! ばーか。妖精のまま連れてけって言ったのに! 次は役に立ったのに! ばーか! 聖女ごときの小娘なんかに騙されて! ほんっとばーか! 避妊魔法なんかじゃないじゃない! これ二代目勇者の願いじゃない! ちゃんと孕んだわよ! ばーか…失神させるだけさせて…ほんっと…ほんと、ばかなんだか…ら…ん~~~京介のばか───っ! 絶対可愛い子産んでやるんだからぁぁぁ────っ!
ああ、星読ミ…あなたの言う通り…まさに愛の剣だったわ。それに貫かれたの。愛が溢れて止まらないの。
だから、だからあなたの言う通り…姫巫女に従ったわよ? 聖女を騙した賢者の策、楽しみにしてるわ。
でも、あなたの愛の剣では、決してないけどね。
◆
「ニナ~! 早く早くぅ! 始まるよぉ!」
「…フーキッカとエッテハルカ…はわかるけど、ヒーステリカまで…それにまた? え、また? あなた達そのシーンほんっと好きね…でもご飯の時はやめなさいってば。あの伝承は比喩だったって京介も言ってたじゃない。まあ? キライじゃないけど? 京介が我慢してる顔キライじゃないけど?」
「コレオカズニゴハンガイケルーってやつ? でも実際ご飯3杯いけちゃいますよ? モギュモギュ」
「ですよね。私の食欲我慢と京介様の放出我慢が拮抗しているこの瞬間! 切り取りたい! ん~ああ! 溜まりません…二度美味しい…いや、三度美味しい。パクパク。はー…ついていけば今頃は…まだありつけたのに…」
「ほんとだよねー。でも妖精バターより美味しいものがあるだなんて、知らなかったんだもん。仕方ないよ。モグモグ。あーもっともっと搾り取れば良かったな……京介バター」
「ほんと飼い殺したかったです…パクパク、モグモグ。京介バター」
「ほんとそれーなんで帰しちゃうかなーまだまだ搾り取れたのにぃ…京介バターパクパク。あーもーまた食べたい…モグモグ」
「……京介、流石に死んじゃうわよ」
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