異世界帰りの僕が100人斬りの勇者だなんてまだ誰にも知られていない ~帰還した元勇者の爛れたラブコメディ~

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幕間 ダズンローズの裏側

突き刺し姫

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 ダズンローズの腐った宴の最中。

 ネストの横、リングと名付けられた建屋の二階にて、円卓の和光エリカ、首藤絹子、菜切いろはが、恋のアポストルの嘉多桔花と堀北六花、嘉多家使用人の首塚桜子と事務所の応接間のような部屋で対峙していた。

 使用人の桜子が紅茶を用意し、全員が口にしたあとエリカが切り出した。


「こちらからは二点。まずは今回の首謀者の確認です。これは言われなき誹謗中傷を受けた私の京介さんに対するそちら側の誠意。が必要ですわね」

「そう、京介くんを貶めた。許さない」


「もう一点は…あーくん。この確認ですわね」

「京介くんは京介くん。あーくんとは違う。一緒にしないで」


 淡々と語るエリカとは対照的に、今日の絹子はそれはもう尖っていた。京介を誹謗中傷し、見せ物にした挙句、永遠をあんな目に合わせ、最後には遠隔お仕置きプレイを先にされ…絹子は使用人桜子をギンギンに睨んでいた。完全に私怨だった。

 桔花は京介との最初の出会いを思い返しながら切り出した。


「確信にはまだ至ってはいませんが…」

「あれはあーくんだにゃん! 絶対! ビっと決めたんだにゃん!」


「…六花、何ですか、その言葉使いは……」


 六花はせっかく子猫にされそうになってたのに、起きたらマイヒーローとは離され、歯痒さからせめて語尾だけはと自分をリメイクしていた。


「…桔花お嬢様。だいたいにゃんが語尾につく女は抱かれてまス。六花様はお嬢様より先に大人になってしまいましタ。今日はお赤飯ですネ」

「な、な、なってないにゃ! はにゃ! 元に戻らないにゃ!」


「…桔花お嬢様。これをあざとい、といい、世の殿方はイチコロだそうでス。見本をお見せしましょウ。ニ"ャン」

「あなた濁声じゃない…ドラ猫でももっとマシではなくて」


 桔花は気絶し助け出された後、使用人桜子の様子が変になっていて、解雇すべきか本気で悩み出していた。いや、それよりも。


「首塚はもう黙ってなさい。……青金もしくは鉛。この名前に…和光さん、聞き覚えはありませんの?」

「京介さんのお父様のお名前は藤堂巧《とうどう たくみ》、藤堂家にムコ入りしたのですわ。もう鬼籍に入っていますが、旧姓は鉛ですわね」

「青金は鉛。ならあーくんは…」


「まあ、過去の詮索など良い女がするものではありませんわ。それより、京介さんの不思議な力は目にしたでしょう?」

「…ええ。とても不思議な────」

「しゅごかったのでス! 桔花様! 人生のご主人様ヲ! 桜子ハ! 桜子は見つけたのでス!」

「さっきからなんなのですか! あなたの主人は私でしょう!」


「あら、使用人の方がよほどこの状況をわかっていますわ。それに…菜切さん」

「はい、こちらに」


「……なんですの…な!な!な!なんです!こ、これ!は、は、破廉恥な!悪趣味ですわよ!」


 菜切が用意したノートパソコンには、今現在のネストの様子が写し出されていた。カメラを仕込んだのはもちろん絹子だった。


「下の薔薇はまあ腐った方々にお任せして、私達はこの愛の睦み合いの鑑賞会をしましょう。あら、永遠さんのお胸、綺麗ですわね。こんなにも大きく…なのにあの動き…やはり紛う事なき天才ですわね」


 エリカは中田大也が沈んだ映像で今の永遠の強さと動きは把握していた。

 自身も幼少の頃から様々なお稽古を通して、いろいろな道を学んでいた。だが、何故か周りには化物みたいな女の子が多く、それほど自分には才能がない事に早くから気づき、違う方面を伸ばすことにしていた。

 こういった映像も、彼女にとっての研鑽の一つでしかなく、善悪などは瑣末な事だった。

 画面の中では、永遠が後ろからゆっくりと京介に爆乳を揉みしだかれながら乳首イキさせられていた。


「そうですね。これはもういろいろすごいです。いろは、これもらっても?」

「いえ、これは永遠さんにご確認いただいてからにしましょう」

「あ、あなた達は一体何を──」


 桔花は戦慄した。男女の秘め事を覗き見する事に何の躊躇いも罪悪感も持たないこの円卓とやらに。


「もちろん、京介さんの趣味趣向を把握するためですわ」

「今後の城のために、ですね~あー超絶愛撫すご! 映像が追いついてない! 永遠様がトロトロです~」


 京介は永遠を膝立ちさせたまま、乳首に吸い付きながら両手を前と後ろから股ぐらに通し…ていることはわかるが、腕がブレていて、なんだか分からない。わかるのは永遠のトロけるような淫らな表情と、腰の辺りを十秒おきにビクンビクンさせる動きだけであった。

 どうやら簡単には大きくイカさないようだった。

 皆で食い入るように画面に見入っていた。それほど京介の絶技に見惚れていた。


「六花はあーくんだと思う。いつも、包帯まみれだったけど、あんなのあーくんしかいないと思うし…」

「ではこれを鑑賞しながら、教えてくださいな。そのあーくんの事を。そのあとで今後の取り決めをしましょう」


 エリカの中では、あーくんがどちらでも構わないが、嘉多家のコネクションは欲しい。それもこちらが上になった状態で。だから言質だけは今日中に奪うつもりで虎視眈々と隙を伺っていた。
 先程から別の話だったり、こういった映像を見せたりするのは油断を誘う下準備の一つだった。


「エリカ様…私、お話は…無理なんですけど。あ、あ、皆様、イン! インしますよ!」


 最初は正常位だった。ゆっくりと浅い部分に剛直を揺らしながら挿入すると、次の瞬間にはヌルヌルの永遠の中にまるで抵抗の無いように入っていく。永遠はすぐにイカされないように、歯を食い縛っていた。


「…あんな…大きなもの…がスルスルと…」


「あら、嘉多さんも見てるではないですか。是非体験なさいませ。幸せに失神出来ますわよ?」

「は?! そ、な、なぜ! 他の女に嫉妬とかはありませんの!?」


 先程から行動にしろ言動にしろ、この和光の一人娘がいちいちおかしい。京介の女だと宣言しておきながら、何故か勧めてくる。映像には別の女だ。頭がおかしい。


「あら、もちろんありますわ。ただ…その嫉妬をこれでもかと溜め込んだあとに抱かれると…それはもう…はぁ…目の前に星が降るのですわ…」

「狂ってますわ!」

「うふ。ええ、もちろん承知の上ですわ。我々円卓は全員ね」

「もち」


 桔花は唖然としながらも画面を見ていた。

 京介の表情はカメラの角度からわからないが、大きな胸を優しくも強く鷲掴みしながら乳首イキさせつつ、リズム良く奥を叩いている事がわかる。キスも合間に挟み、その度に永遠は淫らな笑顔になる。

 目がどうしても離せない。あんなにも凶悪な技で護衛を倒し、眠らせ姫と六花を颯爽と救い出し、そして、繊細な技で愛を紡ぐ。

 その京介の挙動に目が、心が、奪われてしまう。


「……桔花ちゃん…他の恋アポ…どうする? このまま黙っておかない? 私は確信したよ」


 六花は、あーくんに違いないと確信していた。何せ、思い出の後ろ姿と言動がピタリと一致して頭から離れないのだ。
 今の彼女は永遠に身体を置き換えて妄想していた。


「悪魔の囁きですか…」

「おそらく、東雲詩乃は何か知っているでしょう。ですが、私も含めてあまり過去は詮索していないのですわ。一人一人思い出を大事にしていましたし。そもそもが幼馴染ですし。それにましてや他者に洩らすなどと。ですが…愛香さんの…いえ、ならばいい機会かも知れませんね…」

「ああ、皆様! 秒でイっちゃいましたよ! ナカイキなんて…ああ、あんなにビクンビクンするなんて…なんて…裏山死ぃ。肉鱈死ぃ…ペンで切り刻みたい…あ、あ、まるで流転…流れるように…次はそんな体位で…ああっ! そんな~エリカ様~!」


 ノートパソコンは、エリカによって閉じられた。いつの間にか画面にこれでもかと近づいていたいろはの長いまつ毛にサスっと擦った。

 京介はナカイキさせたタイミングで乳首イキもさせ、直様側位に切り替え、眠らせ姫の美しい見事な足を90度に立てたところだった。


「まあ、無粋な真似はここまでにしておきましょう。この続きが見たくなれば、ご相談くださいな。許可次第ですが。あと……この私が調べておきましょうか? 恋アポの復讐相手が果たしてこの藤堂京介なのか。どちらもこの和光の派閥に加われば、ですが」


「桔花お嬢様、まだ確定はしていませン」

「それは…そうですわ! まだ、恋アポの件、冤罪かどうかもわかっていませんわ! もし冤罪であれば嘉多家の長女として一考しますわ!」


 桔花の頭の中は混乱していた。だから普段ならしないミスも平気で口をついて出てきてしまう。
 釣れました。エリカは内心を表に出さないよう、努めて冷静に、平坦にいろはに指示を出す。


「ああ、そうでしたわね。菜切さん」

「はい。エリカ様。捕まえています。しかも…皆さん、くすっ。お笑いですよ。犯人は女装男子でした。外国人の方に判別は難しかったのかも知れませんね」

「では、直接伺いましょうか。もし、冤罪であれば…嘉多さんと堀北さんは、一体どういった対応をされるのか…非常に楽しみにしていますわ」


 ソファから立ち上がり、次の一手をまた思考しながら、エリカは圧を掛けながら桔花に顔を近づけて、暗に逃げるなよと言い含めた。


「最初から…知ってて……これが和光のやり方ですか…」


 桔花はこの年下の少女にいいようにあしらわれた自分を顧みて、悔しそうに呟いた。


「あら…人の心の油断と死角を…一息で突き刺し、仕留める。当然でしてよ? 嘉多先輩?」


 そう言ってエリカは濁った瞳のまま、薄気味悪く、くすりと笑った。


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