1 / 4
第一章 「ハルジオンの花」
プロローグ
しおりを挟む
春咲紫苑は後悔していた。
(・・・最悪だ)
少し高い場所に山道があり、道路脇のガードレールが壊れているのが見える。その直下には横転した車。
つまり車は山道から転落したという状況だ。
運転手と同乗者は気を失っているようで、車の中で身動き一つもしない。
車内に放り出された紫苑も身体がボロボロだ。
さらに小雨が降り始め、動かぬ身体を冷やす。
ただでさえ季節問わず山中は気温が低く、夕刻になりつつある今は、併せて体温が奪われていく。
紫苑は薄紅色の茶羽織に紺の腰下前掛の姿、山に滞在する格好ではないのが致命的だ。
(みんな心配するだろうなぁ)
そんな風に思った所で、ハッとした。
紫苑にとって縁遠い感情だったからである。
以前の自分だったら、そんな事は思わなかった。
それ程までに今の環境が心地良かったのかもしれない。
「・・・なんて“貧乏神“の私が烏滸がましいわね」
やっとの思いで持ち上がる程に痛めた左手を天に翳す。
雨粒が頬を伝い、地面に滴り落ちた。
ゆっくり目を閉じると、紫苑にとっては、濃厚で刺激的な、ここ数ヶ月の記憶が蘇る。
十七になる彼女の短くも壮絶な人生と境遇を癒す、たった数ヶ月の大切な想い出だ。
「最期に、ありがとう、って伝えたかったな、、、」
それは“貧乏神“と呼ばれた少女のお話。
ーーー“倖せ“を紡ぐ物語。
(・・・最悪だ)
少し高い場所に山道があり、道路脇のガードレールが壊れているのが見える。その直下には横転した車。
つまり車は山道から転落したという状況だ。
運転手と同乗者は気を失っているようで、車の中で身動き一つもしない。
車内に放り出された紫苑も身体がボロボロだ。
さらに小雨が降り始め、動かぬ身体を冷やす。
ただでさえ季節問わず山中は気温が低く、夕刻になりつつある今は、併せて体温が奪われていく。
紫苑は薄紅色の茶羽織に紺の腰下前掛の姿、山に滞在する格好ではないのが致命的だ。
(みんな心配するだろうなぁ)
そんな風に思った所で、ハッとした。
紫苑にとって縁遠い感情だったからである。
以前の自分だったら、そんな事は思わなかった。
それ程までに今の環境が心地良かったのかもしれない。
「・・・なんて“貧乏神“の私が烏滸がましいわね」
やっとの思いで持ち上がる程に痛めた左手を天に翳す。
雨粒が頬を伝い、地面に滴り落ちた。
ゆっくり目を閉じると、紫苑にとっては、濃厚で刺激的な、ここ数ヶ月の記憶が蘇る。
十七になる彼女の短くも壮絶な人生と境遇を癒す、たった数ヶ月の大切な想い出だ。
「最期に、ありがとう、って伝えたかったな、、、」
それは“貧乏神“と呼ばれた少女のお話。
ーーー“倖せ“を紡ぐ物語。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる