白猫男子の紅色恋路

ゆるらりら

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白猫男子と再会の日

俺の話

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俺とリオ…あ、リオってのはお前のことな?
俺たちはスラム街に住む亜人だったんだ。俺が九十パーセントで、お前が七十パーセント。
リオは、混血とニンゲンの間の子供なんだ。でも、検査結果が亜人だったからこのスラム街に捨てられた。俺も似たようなもんだけどな。
スラム街は何ヶ所か地区ごとに分けられていて、俺たちがいたのは捨て子が多いところ。生まれた時期が似てるお陰で捨てられるタイミングもほぼ同時くらいだったらしい。
それで、捨てられた俺たちは心優しいおばあちゃんに拾われたんだ。
住む家が同じだったから毎日毎日ずっと遊んでた。兄弟みたいにな。貧乏だったけど、毎日すっごい楽しかった。あのバニラ味のクッキー美味しかったなあ…。
……でも、十一歳のある日。二人で本を読んでたら、混血の兵士にお前だけが連れていかれたんだ。メルクーリオ様ってな。
そりゃもちろん反抗したけど、子供の力じゃ大人には叶わなかった。俺は吹き飛ばされて、お前は連れて行かれた。
その後スラム街の大人に聞いてみたら、生まれた時にした種族検査の結果は間違いだったって。機械が故障してたらしい。
それで、十歳の時にした種族検査で純血のニンゲンだってわかったから、兵士がロイヤルエリアの方に連れて行ったんだと。
俺は、なんで大人なのに兵士を止めてくれなかったんだ、って八つ当たりした。手を出したらどうなるかってのは大人の方がわかってるだろうし。
……まあ、ここまでで俺が知ってる範囲のお前の情報は終わりかな。…今と変わったところ?穏やかな感じとか、髪の毛とか……目とか。全部俺の知ってるリオと同じだな。何一つ変わってない。
ああ、次は俺の話だったな。
……俺はもちろん、大きくなったらリオを取り戻すんだ!って息巻いてたよ。どこにいるかもわかんないし、方法なんて考えもつかない。
今思うと、どんだけ無謀だったのかなって思うよ。
そのために走ったりして体力付けてた。漠然と、そうした方がいいって思って。
でもさ……そんな中、追い討ちをかけられた。
俺が十四歳の時だったかな。おばあちゃんが死んだんだ。…別に、事故とか殺されたってわけじゃない。
寿命で死んだんだ。生きとし生けるもの、寿命はあるからしょうがないんだけどさ…縋りつける、拠り所みたいなものがなくなって、お前を取り戻すって夢も諦めかけてた。自暴自棄になってたんだ。
…そんな時に、団長に出会ったんだ。今俺さ、サーカス団入ってて。前にここの敷地のもう一個の屋敷に演技を披露しにも行ったんだ。
それで、自暴自棄になって、夢も諦めかけてた俺に団長はこう言った。
「そこで諦めていいのか?大切な人なんだろ?俺と来れば見つかるなんて言わない。だが、何もせず自暴自棄になって腐るよりは、なにかしてみた方がいいと思わないか?」
って。
そこは、必ず見つかるって言って欲しかったけど、曖昧なところが心から言ってくれてるって思って。それでついて行くことにしたんだ。
お前を助ける為に付けてた体力とかがそこで役に立ったんだ、これまでの努力が報われた気がしたよ。
毎日がまた楽しくなって、各地をめぐりながらお前も探して。目の中にある紋章も隠せるし、普通に接してくれるのが嬉しかったんだ。…そうだ、中には亜人に対して差別をしないところもあったな。
そこから四年、先輩達が自分の道を見つけて自立してって、気づいたら俺が最年長だった。後輩も出来てさ……。
俺より背が高かったりしてムッとしたりもしたけど。初めて出来た後輩はベッタベタに甘やかしたっけ。
でさ、ある日貴族への公演を行うって聞いて、俺らが認められたんだって凄い喜んだ。それがこの家なんだ。
緊張もしたけど凄い楽しかった。だけど、その次の日。ここのご当主様にぶつかって、服を汚しちゃって…。弁償する為にここで働くってなったんだけど、薬を盛られてあんな状況に……
リオが助けてくれなかったら危なかったよ。本当にありがとう。
……と、まあこんなところかな。
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