白猫男子の紅色恋路

ゆるらりら

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白猫男子と再会の日

やっぱり、リオだったんだ……

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昨日ぶりのサルトルクト家の屋敷だ。昨日はここのパーティー会場で演技を披露した。だから、他のところはあまり歩いてないのだ。
豪華なシャンデリア、ふっかふかのカーペット。ニンゲンの暮らしを具現化したような玄関ホールだった。
でも、ご当主様だけは少なくとも良い人だ。俺を罪に問わなかった上に働いて返せば許してくれるというのだから。あの服が何円なのか知らないが、二ヶ月後以内に稼ぎ、みんなの元に戻るという目標を持って歩いていると、使用人に応接間らしきところに案内された。

「次の者が来るまで待っていろ」

「あ…はい」

大きいソファに座らされ、待機することになった。だが、暫く待っても人は来ず、忙しいのかな…と思いながら二時間ほど待機することになった。
空はもう暗く、どんだけ待たされたんだ…とため息をついてしまう。元々、話やら準備やらでここに着いたのは夕方だったが、何故待たせるのか理由が分からないし、もう待ち疲れてくたくただった。
そんな中、一人のメイドがノックもせずに部屋に入ってきたと思ったら、湯気が立ち上っている紅茶が差し出された。

「それを飲みなさい。旦那様がもうすぐお呼びになるから」

「ありがとう…ございます」

紅茶からはいい匂いがして、疲れた体には救いの神の様な存在だ。
一口飲んでみると甘い香りが口中に広がる。この甘みには覚えがある。
バニラ風味かな?おばあちゃんがよくバニラ味のクッキーを沢山作ってくれたっけ…
思い出に浸りながらゆっくり飲んでいると段々体が熱くなってきた。

「は、心臓、うるさい…」

紅茶を飲んだからってこんなことにはなるはずがない。心臓はばくばくなっているし、見ていないから分からないが心做こころなしか自分の股間に付いているものが立ち上がっている気がする。

「旦那様がお呼びだ。行くぞ」

「はあ、はあ…ん、はい…」

ふらふらする。体に力が入らない。
頭もボーッとするし、なにも考えることが出来ない。頭にあるのは、昂っているものを静めたいという思いだけだ。

「旦那様、例の亜人を連れてきました」

「入れろ」

ぼんやりとだが、立派な扉が開くところが見えた。
なにも考えられない頭の中で思った。旦那様と聞こえたから、ここはご当主様の部屋なのではないか、と。

「は、んぁ…ご当主、様…?」

「随分と仕上がっているでは無いか。あの薬は本当に聞いたのだな」

「そのようです。では、今夜はお楽しみ下さい」

そう言って、俺を連れて行っていた使用人は出ていった。
すると、俺を支えていたものがなにもなくなり、立っていられずにふわふわとしたカーペットに倒れてしまう。幸い、カーペットがクッションになってくれたおかげで痛くはなかった。

「最初に見た時から綺麗な顔をしていると思ったが、近くで見るとより際立つ」

床に倒れていた俺をご当主様は抱きかかえてベッドへと向かい、優しく下ろした。
そして、ゆっくりと着ていた服のボタンを取り外していく。

「辛いだろう、苦しいだろう。今、私が助けてやるからな」

「んん……は、ありがとう…ございます…」

胸元が見えるくらいまでボタンを外すとご当主様は乳首に手を伸ばし、くるくると乳輪を指でなぞっていく。

「あ、ん…はっ…」

最初は少しくすぐったかったが、どんどんと気持ちいいという感情が支配していく。自分の口からありえないほど高い声が出る。
すると、突然乳首に爪を立てられた。

「ひ、あ…っ!」

体がびくんと跳ねる。頭が真っ白に染まって、目の前に星が舞う。
温かいドロっとした液体で下着が濡れている。ズボンと下着を着たままだったため、少し気持ち悪かったがそんなことよりこれ以上の快楽を求める本能の方が強かった。
だが、それと同時にこれ以上気持ち良くなったら壊れてしまうのではと恐れる自分もいた。

「っく、う……はっ…」

頭がふわふわして羞恥心を忘れてしまったせいか、自然と涙がこぼれ落ちてくる。
ご当主様は泣き出した俺を見て更に口角をにやりと上げ、俺のズボンのチャックを下げ始める。

「泣くほど辛いのか、助けてやるから待っているんだぞ」

「ちが…っぁ、やぁ…!」

ご当主様が俺のズボンに手をかけ、下ろそうとした瞬間__

「坊っちゃん、いけません!」

「お義父様!話が__」

メイドと思われる女性の声と透き通った青年の声が聞こえたと思ったら、ドアを凄い勢いで開けて入ってくる青年が一人。
その青年は俺の方を見て目を見開いて驚き、固まっていた。

「お義父様、これは__」

「私の邪魔をするな!出ていけ!」

「そういう訳にはいきません!その少年は泣いているではありませんか!」

邪魔をされたことによって機嫌が悪くなったのか、ご当主様は舌打ちをして部屋から出ていった。
青年はご当主様に用があったにも関わらずこちらに来て俺の服を直し、横抱きにして俺を連れて行く。
朧気おぼろげな意識の中で見た青年の顔はどこかで見たことがある気がして、何故だかとても懐かしい気持ちになった。
優しく抱きしめる温もりに恐怖で怯えきっていた体も安心し、落ち着いたところで睡魔が襲ってきて、まだ大丈夫だと分かっていないのに眠ってしまった。
だが、なんとなくこの青年は大丈夫だと__勘が言っていた。



「んん……ここ…どこだ…?」

ゆっくりと目を開けると見慣れない豪華な天井が目に映る。
混乱したまま寝ていたベッドの上に座って辺りを見回していると、ドアから燕尾服に身に纏った男性が入ってきた。

「お目覚めですか?」

食事と飲み物を持ってにこりと微笑みながら声をかけてくる。
俺を助けてくれた見覚えのある青年もそうだが勘が危険な人物ではないと教えてくれる。
__あくまで勘だけど。
ご当主様からこれを感じなかったことを考えるとやっぱりご当主様は危ない人だったのか…。
あの青年が来てくれなかったら、自分は今頃どうなっていたことか。

「はい、ありがとうございます。……あの、ここは一体…」

「ここは旦那様の屋敷の客間です。帰ってきたと思ったら人を抱えてるんですから驚きました」

男性はまたふわりと笑いながら置いてあったテーブルに食事と飲み物を置いていく。

「旦那様、ってもしかして…」

「ご安心下さい、当主様ではありません。私の旦那様はあの方ではありませんから」

「そうなんですか、良かった…。あ、えと…」

そういえば名前を知らない。
名前を聞こうと口を開くと、男性は俺の心境を読んだかのように、まだ言っていないにも関わらず名乗った。

「自己紹介を忘れていましたね。私はツカサ・リアトリート。私の旦那様に仕える執事です。よろしくお願いします」

「俺はノエルです。こちらこそ、よろしくお願いします」

「お食事を食べ終わりましたらお呼び下さい。旦那様の元にご案内致します」

そう言ってツカサさんは立ち去って行った。
俺の手元にはとても美味そうな料理。卵粥とその他栄養が付くようなものが幾つか。まるで風邪をひいた人の食事みたいだが、目覚めたばかりの俺にはとてもありがたい。昨日の疲れも残っているし。
そうして出されたものをぺろりと平らげて、皿が乗っていたお盆に食器を乗っけて外まで運んでいく。
すると、ドアが開いた音が聞こえたのかツカサさんが現れた。

「わざわざ食器を運んでくださってありがとうございます。ここからは持ちますよ」

「あ、はい。こちらこそありがとうございます」

そこからは少し、この家の話を聞いた。ツカサさんの旦那様という方は純血のニンゲンらしく、身寄りがないところをご当主様に引き取られたそうだ。
だが、扱いが酷く使用人もツカサさん一人らしい。おかげで掃除が大変だと笑いながら愚痴を零していた。

「旦那様はこちらに居られます。私も食器を置いたらすぐに行きますので」

「はい。案内してくれてありがとうございました」

ツカサさんを見送ってから目の前の扉に目を向ける。
意識が朧気な中で見た姿と声だからどんな人か分からない。凄い緊張する。
……と、まあ色々考えて恐る恐る扉を叩く。

「お客人かな?いらっしゃい、入って」

「お、お邪魔します…」

開けた扉の奥に見えたのは、ふわっとした金髪、綺麗なアメジスト色の瞳__そう、七年前混血の兵士に連れていかれたはずのメルクーリオの姿だった。
優しく微笑むその表情も、声変わりしても変わらない透き通るその声も。
何もかもが、目の前に座ってこちらを出迎えている青年をメルクーリオだと語っている。

「リオ?リオなのか?本当に__本当にリオか?」

夜の蛾が光へと吸い寄せられるように俺はふらふらとメルクーリオと思しき青年に近づいて行く。

「ど、どうしたの?ちょ…ッ」

慌てふためく声も聞かずに肩をガシッと掴んだ所為で、ソファが大きい音を立てたがそんなのも耳に入らなかった。
気づけば、目からは涙が零れていた。

「リオ、リオ……会いたかった、ずっと…ッ」

すると、いきなり扉が開き、ツカサさんが血相を変えて飛び込んで来た。

「ツカサ…ッ!一旦落ち着かせて!」

「了解しました!」

実に速い動きで俺は離され、メルクーリオと思しき青年から少し離れたところにゆっくりと降ろされた。
それと同時に頭が冷えて、さっきまでの行動が恥ずかしくなった。

「…ふぅ、落ち着いた?」

「えっと…はい。急に取り乱してすみませんでした……」

赤くなってしまった顔を誤魔化すように俯き、謝罪の言葉を述べる。
すると青年はころころと笑い、位置がすっかり直ったソファの向かい側に掛けるよう勧めてくれた。
座るといつの間に持ってきていたのか、湯気が立っている紅茶が出てきた。

「…さっきのことだけど」

「はい…」

申し訳ないという気持ちが大きく、萎縮しているとまたも笑い、敬語なんて使わなくていいよと言った。

「君……あ、名前を聞いていないね。僕はメルクーリオ、この館に住んでる。よろしくね」

「やっぱり、リオだったんだ……。…あ、ごめん。俺はノエル、よろしく」

名前を聞いても、さっきのように取り乱したりはしない。俺だって学習したのだ。

「じゃ、ノエル。さっき、君は僕を見て取り乱していたよね?ということは、君は僕を知っているの?」

「……知ってるもなにも、俺たちは幼馴染なんだから当たり前だろ?」

当然のことだ。生まれた時から十一歳までずっと一緒で……そういえば、さっきも反応が薄かったような…。

「率直に言うよ」

その場の空気が、一瞬固まった。
息を吸い、口を開いた次の言葉に俺は驚愕することになる。


「僕は、生まれた時から十一歳までの記憶がすっぽりと抜け落ちてるんだ」


……どういうことだ?それってつまり、俺と過ごした十一年間の記憶だけが抜けていて、だから俺のことも知らなくて、だから俺を見ても何も反応を示さなかったのか?でもなんで?なんで、なんで、なんで、なんで、

「ノエル?」

「……ッ!あ、ありがとう…もっと深いところまで行くところだった」

頬を優しめに叩かれて意識が元に戻った。このままだとどうなっていたか…。

「本題に行くよ。僕は、失った十一年間を取り戻したい。だから、君が僕のことを知っているというのなら、僕の話を聞かせて欲しい。君の話も聞きたいしね」

「…わかった。ちょっと長くなるけど、いいよな?」

目の前のメルクーリオが小さく頷く。
遠い昔を思い出しながら、俺は語る__
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