異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第1話 飯田雷丸

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 俺の名前は飯田雷丸。普通の高校2年生。
 ……いや、「普通」って言葉で誤魔化してるけど、要は地味な非モテ男子だ。

 何が地味かって?聞いて驚け、これが俺のスペックだ。
 
• 彼女いない歴=年齢
• 友達少なめ、コミュ力低め
• 放課後はゲーム三昧
• 童貞(ここ重要!)

 そう、俺は堂々たる非モテエリートなのだ。

 クラスではモテるやつがバカ騒ぎしてるのを遠巻きに見ながら、「あーあ、俺も青春してぇな」とか思う日々。でも、そんな俺が勇気を振り絞って告白するなんて、そんなリア充ムーブをする勇気なんてあるわけがない。

 現実が無理なら、ゲームの世界でヒーローになるしかねぇ!ってことで、放課後はひたすらゲームをしてる。冒険して、魔王を倒して、美少女NPCとイチャイチャするのが俺の日課だ。え?それが人生で楽しいのかって?いや、それ以外楽しいことがないんだよ!

 でも、たまに思うんだ。俺、これでいいのか?って。
 このまま平凡な日々を過ごして、地味に卒業して、地味に働いて……まぁ人生なんてそんなもんなのかもな。


 
 ―――――――――


 
【自宅】


「ただいま~!!」



 玄関の扉を開けると、リビングから義理の妹・飯田貴音の声が聞こえてきた。

 

「……お、おかえりなさい」

 

 飯田貴音――成績優秀、運動神経抜群、スタイル良し、性格明るい。
 完全無欠の妹キャラにして、お兄ちゃんの目を合わせない選手権全国大会3年連続優勝者だ。

 

「……なんか、今日も元気そうだな。」



 俺が思い切って声をかけると、貴音は微妙に目線を逸らしながら、困ったように答えた。
 

 
「う、うん……お兄ちゃんも、元気そうで……」



 いやいやいや、何だこの空気感!?
 返事の内容は普通っぽいけど、顔が全然普通じゃないぞ!?合わない陰キャ兄だからか!?


 
「なぁ、別にそんな気を遣わなくてもいいんだけどな。」



 俺が苦笑いしながら言うと、貴音は微妙な笑顔を浮かべながらモゴモゴと答えた。


 
「いや、別にそういうんじゃないから……その……」

「その?」

「……近くにいると恥ずかしいから!」

 

 ……え?
 義理の妹に言われた衝撃的な一言、堂々のナンバーワンに決定しました。

 

「お、お前さ、そんなこと言うなよ!兄貴を恥ずかしがるなんて……!」

「えっと……わたし、勉強があるから、部屋に戻るね。」



 そう言って立ち去る貴音の後ろ姿は、まるで「これ以上は無理です」って掲げた赤旗そのもの。
 


 ……義理の妹との距離感、火星と地球くらい離れてる気がするんだが!?
 お兄ちゃん、これからどうやって挽回すればいいんだよ!!

 こうして、今日も俺の兄妹関係は冷え切ったまま、暖かくなる兆しすら見えないのであった。
 
 
 
 
――――――――――――
 

【翌日の学校】


 
「はー、面白かったなー、ドラクエ25。」



 俺は昨日クリアしたゲームの余韻にどっぷり浸りながら、教室で隣に座る石井智也――通称オタク君に話しかけた。


 
「いやー、俺が世界を救っちゃったぜ。やっぱ現実でも俺がやるべきことはこういうことだよな!」


 
 話してる内容は完全にイタいが、ここは俺たち二人の秘密の領域。問題ない。

 で、そんな俺の話を聞いているオタク君だが、これがまた、ザ・オタクって感じの奴なんだよ。

 まず、彼の黒縁メガネ。これがなきゃ、もはや彼の顔が成り立たない。
 ただ、そのメガネ、何故かいつも斜めにズレてる。見てるこっちが気になるくらいズレてるけど、本人は直さないし、周りも「石井のメガネ=斜め」がデフォルトだからツッコまない。

 そのメガネの奥にあるのは、常に細められた三日月みたいな目。
 だけど、好きなアニメやゲームの話題になると、目がギラッと開くんだよ。普段は眠そうな目が急に本気モードに切り替わるもんだから、俺も最初はビビったよな。あれは完全に開眼スキルだ。

 で、髪。これもすごいぞ。
 ボサボサで、跳ね放題。朝起きてから一回もブラシ通してないんじゃないか?いや、多分ブラシというアイテムの存在を忘れてる。そんなレベルだ。

 服装?もちろん制服だよ。でもその下にはいつもアニメTシャツを着込んでる。
 シャツの襟元から覗くのは、可愛い美少女キャラの顔。冬でも夏でも関係なく、常に推しを見せつけたいオーラが全開だ。

 そして、彼の猫背。これがまた強烈なんだよな。
 授業中なんか、机に身体を丸めて、まるで古代魔法書でも研究してる賢者みたいな姿勢でノート取ってる。いや、取ってるフリかもしれないけど。

 あと、歩き方。これが……こう、なんて言うか、両手を胸の前でモゾモゾさせながら、こっそり動くんだよ。
まるで異世界から転生してきた小動物みたいに教室の端から端をウロウロしてる。

 でもな、こいつ、スイッチが入るとやべぇんだ。
  

 
 オタク君、スイッチON!


 
「デュフフ、ドラクエ25ですかぁ!?それは神ゲーですよねぇ!」



 俺の話を聞いた瞬間、テンション爆上げ。急に机をバンッと叩きながら熱弁を始める。


 
「いやぁ、あのラスボス戦のBGM、ヤバいですよねぇ!わかるわかる!ドラクエ史上最高傑作と言っても過言ではないかとぉ!」


 
 話してる時の目がギラギラ輝いてる。もはやメガネが光を反射して怖い。
 手振り身振りで語り続ける彼を見てると、もう止める気も失せるんだよな。


 
「勇者の成長イベントも最高でぇ……デュフフ、まさに神展開!」



 おいおい、そんなに身を乗り出すなよ!机から落ちそうになってんじゃねぇか!

 そんな感じで、今日もオタク君は元気に暴走中だった。
でも、こうして楽しそうに語る彼を見てると、俺もちょっとだけ元気がもらえるんだよな……まぁ、次のゲームを買う金がない俺とは違って、彼は推しに全力投資できる人生を楽しんでるんだ。ある意味、羨ましいかもしれない。


 ……いや、やっぱ羨ましくねぇや。


 そう思った瞬間――


 
「――――きもちわりぃ。」



 突如、鋭い声が俺たちの空間を切り裂いた。
 その声の主は、角刈りの短髪、サッカー部キャプテンの小野寺雄二。

 教室の空気が一瞬でピリつく。
 見なくてもわかる――部活で鍛え上げられた体、キリッとした目つき、そして何よりその「俺、モテますから」オーラ。

 俺とオタク君の天敵ランキング堂々の1位だ。



「……なんだよ?」



 思わず俺が声を漏らすと、小野寺は鼻で笑いながら言い放った。

 

「お前に言ったんだよ、飯田。何?ゲームクリアしたことをそこの石井に自慢げに話してんの?きもちわりぃよ、お前。」


 
 ……おい、ちょっと待て。俺たちがどんな話してたか知ってんのか?っていうか、お前、話の途中に割り込むとかマナー違反だろ!

 隣を見ると、オタク君は「デュフッ」と小さく震えた声を漏らして俯いている。

 ……こいつの防御力は豆腐かよ。俺が何とかするしかないか。」


 
「……別にゲームすんのは俺の勝手だろ」



 俺はできるだけ冷静に、でも負けないように言い返した。
 小野寺の眉がピクリと動く。おっと、これは地雷を踏んだか?


 
「ゲームだ?いやいや、ゲームが悪いとは言わねぇよ。ただ、それを『自慢げ』に語るのが問題だろ?」


 
 ……は?自慢ってなんだよ?ただ話してただけだろ。

 小野寺はさらに追い打ちをかけてくる。


 
「お前、たぶん家で母ちゃんにまで自慢してんだろ?『ママ!僕、今日も勇者になったよ!』とか言ってよ!」



 教室内の何人かがクスクス笑う声が聞こえる。
 くっそ……!やりやがったな……!!

 

「……お前に言われる筋合いねぇだろ!」



 俺が思わず声を荒げた瞬間、周囲が一気に静まり返った。

 

「……なんだ、飯田。やるのか?」

 

 小野寺の鋭い視線が俺を貫く。その目はまるで、獲物を逃がさない猛禽類のようだ。
……まずい。完全に地雷踏んだな、俺。

 隣のオタク君はすでに顔面蒼白。カタカタ震えながら、「デュフ……」という謎の音しか出せていない。おい、助けろよ!俺だけがやられる流れじゃねぇか!

 頭の中では『逃げる』『謝る』『とぼける』の三択がぐるぐる回っているけど、小野寺のオーラが強すぎてどれも選べねぇ!

 その時――


 小野寺が鼻で笑いながら、俺を見下ろして一言。

 

「サッカーやめて、そんなヒョロヒロの身体になったお前に俺が勝てる訳ねぇだろ」


 
「な、なんだと……!?ヒョロヒロってなんだよ!?」と反撃しようとするが、小野寺は容赦ない。

 

「見ろよ、その二の腕。俺の小指より細ぇじゃねぇか。お前、腕相撲したら自分の腕が折れんじゃねぇの?」

「ぐっ……!!」



 いや、確かに細いけど、それを面と向かって言うか!?俺の自尊心が今、リアルタイムで削られてる!!

 

「……飯田、お前、喧嘩挑む前に自分のスペックを確認しろよ」



 小野寺の一言が、まるで鋭い剣のように俺の心をズタズタに切り裂いた。

 でも、その次に飛び出した言葉は、まさかの優しさだった。


 
「サッカー部入れよ、飯田。俺と一緒にまたサッカーやろうぜ」


 
 え、なんか急に温かい雰囲気じゃねぇか。どうした、これがサッカー部の絆とかいうやつか?
 一瞬だけそう思った俺は、つい口を滑らせた。


 
「いいよ…………サッカーは」



 その言葉と共に、昔の記憶がフラッシュバックする。


 かつての俺は、確かにサッカーに熱中していた。
 ボールを追いかけ、ゴールを決めるたびに仲間たちと喜び合った日々――。

 だが、それも終わった。あの日、不良たちに囲まれた路地裏でのリンチ。
 足の筋をやられ、もう全力でボールを蹴ることも、走ることすらできない俺。

 思い出すだけで、足がズキリと痛む。
 

 そんな俺が言えるのは、せいぜい自分を嘲るような言葉だけだった。
 だから、俺はその記憶を振り切るように笑いながら言ったんだ。

 

「サッカーなんて所詮は玉ころ遊びだろ……?」


 
 言った瞬間、教室中の空気が凍りついた。


 
「…………あ?」



 小野寺の声が、氷のように冷たく響く。

 この瞬間、俺は確信した。
 やべぇ、地雷を思いっきり踏んだ。しかも特大のやつだ。


 小野寺の表情が徐々に険しくなり、その目が俺を貫いてくる。
 だが、それは怒りだけじゃない――。

 失望したような、絶望したような、まるで自分自身を否定されたかのような顔だ。
 

 
「……他ならぬ、お前がそれを言うのかよ……!!」



 その一言が、俺の胸にグサリと刺さる。
 

 そして――


〈バキッ!!〉

 

 突然、小野寺の拳が俺の頬に炸裂した。


 
「ぶっ……!!」



 俺は教室の床に転がりながら思った――
 ああ、これがリアルの洗礼か……。

 オタク君が慌てて駆け寄ってくる。


 
「だ、大丈夫でござるかぁ!?」



 俺の頭の中では、ゲームのHPバーが赤く点滅しているイメージが浮かぶ。


 
「だ、大丈夫……じゃねぇ……」



 小野寺は俺を見下ろしながら冷たく言い放った。


 
「――――チッ!この腑抜け野郎が!!」



 そして颯爽と教室を出ていく。


 教室の中には、微妙な沈黙が漂っていた。
 俺は床に転がったまま、天井を見つめながらぼんやり思う。

 ……もう異世界とか行きたい。
 
 
 
 ――――――――――――――
 
 
 
【自宅】


 
「……ただいまー。」



 誰もいない家に響く、自分の声がちょっとむなしい。
 靴を脱ぎながら姿見にふと目をやると、俺の顔が目に飛び込んできた。

 

「うわっ!?」



 そこには見事に真っ赤に腫れた頬が。殴られた部分がジンジンと痛むたび、小野寺の容赦ない拳がフラッシュバックする。

 

「くそっ……あいつ、本気で殴りやがった……」



 しかし嘆いても仕方ない。
 俺にはやるべきことがある――妹と俺の晩ご飯の準備だ。

 
 両親が亡くなった時、俺は誓ったんだ。「貴音の面倒は俺が見る」って。
 その使命感だけで、今日も俺は台所に立つ。

 
 包丁を持ちながら「俺、偉いよな」と自己肯定しつつ、黙々と料理をしていると、玄関のドアが開く音がした。
貴音が帰ってきたらしい。



「……おかえり!」



 俺はいつものように穏やかに声をかけた――その瞬間。


 
「………………え?」



 彼女の表情が珍しく驚きに染まる。俺の腫れた頬を見てだ。


 
「顔……どうしたの?お兄ちゃん。」



 俺は少しドヤ顔になりながら、この状況をどうするか考えた。
 よし、ここはあえてユーモアで切り抜けてみよう。兄としての器を見せるチャンスだ。

 

「それがよ!!サッカー部のキャプテン小野寺って奴に殴られたんだよ!」

 

 俺は大袈裟に身振り手振りを交えて説明。


 
「ヤツの鉄拳制裁が火を吹いて、このザマさ!」

「……お兄ちゃん、大丈夫……?」




 貴音が心配そうに俺の顔を見つめている。え?何この感じ。いつもの塩対応と違うじゃん?
 

「お、おう、大丈夫だよ!全然平気!」



 俺が返すと、貴音は少し首をかしげながら、ポツリとこんなことを言い出した。


 
「お兄ちゃんも、またサッカーやって見返したらいいんじゃない?」

「……は?」



 この意外すぎる発言に、思わず聞き返してしまう。


 
「だって、小野さんって人サッカー部なんでしょ?だったら、サッカーで勝って見返せばいいんじゃない?」


 
 貴音の何気ない提案。
 でも俺にとっては、その一言が心に刺さる。

 
 
「サッカー?……そんなの、もういいよ。」



 つい、冷たく返してしまう。
 だって俺の足じゃ、もうサッカーなんてできない。あの日、ボールを蹴る夢は潰えたんだ。

 貴音の視線が一瞬だけ俺の足元を見た気がしたけど、俺はすぐに話を切り替える。

 
 

「それより、ご飯!用意できたぞ!冷めちまう前に早く食おうぜ!」



 無理やり明るい声を出してみたけど、貴音の表情は微妙なままだった。

 俺は、張り切って皿をテーブルに並べていた。
 一日の締めくくりに、妹と飯を食う――それが、俺のささやかな家族サービスだ。


 
「貴音の分もしっかり作ったからな!さぁ、食おうぜ!」



 自信満々に振り返る俺だったが――。



「ごめん、お兄ちゃん。今日はご飯いらない。」



 
 ……は?

 冷たい一言が、俺の心にサクッと刺さる。
 目の前が少し揺れた気がした。


 
「……え?」

 

 思わず間抜けな声が漏れる。
 だが、次に放たれた言葉は、俺の心をズタボロに切り裂いた。


 
「これから彼氏と食べてくるから。」



 彼氏……?
 その言葉が、俺の脳内でゆっくりと反響する。

 彼氏って……あの彼氏だよな?カレシだよな?彼、氏、だよな!?


 
「……え、あ、そう。」



 なんか反射的に返事しちゃったけど、全然理解が追いつかない。
 今、妹が俺に「彼氏」って言ったよな?その言葉をこの耳で聞いちゃったよな?



 気づけば、俺の中にじわじわと絶望が広がっていた。
 頬が痛いとか、晩ご飯が無駄になったとか、そんなのもうどうでもいい。

 妹に無視されるのは慣れっこだけど、彼氏持ちの妹に「晩飯いらない」と冷たく断られるのは新たな地獄だった。

 こうして俺の心に、また一つ深い傷が刻まれたのだった――。


 
「俺って……一体なんなんだよ……」


 
 その日は、作ったご飯を一人で黙々と食べた。
 味?苦い。まるで人生みたいにな。



 
 ――――――――――――――

 
 
 「くそっ!!!」



 俺は部屋の中で叫びながら、全力で枕をぶん殴った。


 ――いや、物を壊したら貴音に嫌われるから、せめて枕で我慢してるんだ。

 けど、全然足りねぇ!何だこのモヤモヤは!?


 
「……あぁもう、ゲームやろう!」



 結局、俺は手っ取り早くストレスを解消するため、机に向かってコントローラーを握りしめた。
 目の前にあるのは、俺の唯一の癒し――ゲームの世界。

 今やってるのは、『異世界ハーレム大戦』。
 はい、そうです。夢と希望しかない2次元ライフだ!

 

「よし、今日は最高のエルフ美女を仲間にして、妄想ハーレム作るぜ!!」



 そんな意気込みでゲームを始めた瞬間――画面に突然、見慣れないメッセージが表示された。

 

「あなたは、異世界で過ごしたいですか?」



 ……は?何これ?ウイルス?新しいイベント?

 いや、待て。
 これ……来たんじゃねぇか?



 異世界転生フラグってやつがよ!!!



 頭の中で閃光が走る。
 ダメ人間な俺を救う唯一の手段――異世界転生。
 あのクソみたいな現実から解放され、俺だけの理想郷が広がる……!


 
「これ……押すしかねぇだろ……」



 コントローラーを握る手が少し震える。
 画面には、選択肢が二つ表示されている。

 
「YES」
「NO」

 

「いや、迷う余地ねぇだろ!!!」



 俺は迷うことなく、「YES」にカーソルを合わせてボタンを押した。

 次の瞬間、画面がパッと光り、俺の部屋全体が眩しい光に包まれた。


 
「うわっ、眩しっ!!」



 目を閉じていた俺が、恐る恐る目を開けると――そこは、見知らぬ風景だった。



 
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