異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

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第13話 根源解放Level1

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 地面に叩きつけられたまま、全身が悲鳴を上げる。
 だが――俺の中で、それ以上に強く燃え上がったものがあった。

 

「……んなわけ、ねぇだろ……!!」

 

 ここで終わる?
 倒れる?
 諦める?

 ――俺がそんなキャラなわけないだろうがッ!!!

 

 迫る妖狐たちの視線を正面から受け止めながら、俺はニヤリと口角を上げた。

 

「見せてやるよ……“俺”の本気を。」

 

 呼吸が静かに深まる。

 意識が、指先の先まで染み渡っていく。

 異世界で何度も修羅場に立つ前――
 必ず行っていた、俺だけの“準備”。

 

 拳を一つ、ゆっくりと天へ掲げる。

 

 ――その瞬間。

 空気が震えた。

 地面がわずかに軋む。

 まるでこの世界そのものが、俺の“根源”に反応したかのように。

 

 俺と世界が、ひとつの線で繋がる。

 戦う前の、静かで、強い──始まりの合図。
 
 

「――――根源解放(こんげんかいほう)……Level 1。」

 

 次の瞬間、稲妻が爆ぜた。

 バチィィッ!!

 黄色の雷光が全身を包みこむ。

 

 根源解放。

 それは、自分という存在の“核(根源)”をさらけ出し、世界に証明する力。

 

 俺の根源――俺(オレ)。

 だからこそ俺の魔法は、徹底的な“自己強化”。

 

 筋力、速度、反応、耐久――すべてが跳ね上がる。

 雷が俺の肉体を支配し、意思がそのまま速度になる。

 攻撃は鋭く、回避は直感に近く、思考と動作が一体となる。

 

 俺は、俺を信じる限り強くなる。

 

 かつては青白く揺らめく雷だった。

 だが今の雷は違う。

 黄色の稲妻は“質量”を持ち、存在そのものが圧倒的だ。

 皮膚が逆立つ。
 空気が鳴る。
 鼓動一つで岩が砕けそうなほどの力が全身に満ちる。

 

「――ああ……これだ。」


 
 雷が脈打つ。血が燃える。世界が鮮明になる。



 
「ここからだ。ここからが本番だ。俺はまだ終わってねぇ。」

 

 目の前の妖狐たちが、一瞬――ほんの刹那、俺の変化に反応して動きを止めた。

 その“間”は、普通なら気づけないほど短い。
 だが今の俺には、永遠に等しい隙に見えた。

 

 雷を拳へ集束。
 稲妻が、拳の一点へと収束していく。

 足が地を蹴る瞬間、雷鳴が遅れて響いた。

 

「――雷撃拳ッ(らいげきけん)!!」

 

 ドォォォォン!!


 
 拳が妖狐の体に触れた瞬間、雷の爆音が空気を裂いた。

 まるで落雷を叩きつけたような衝撃。
 妖狐は声を上げる暇すらなく、弾丸のように吹き飛んだ。

 その巨体は弾丸のように後方へ飛び、後列の妖狐たちを巻き込みながら薙ぎ倒す。

 

「まだだァッ!!」

 

 雷を纏った余波が地を奔り、周囲の空気がビリビリと震えた。

 俺は再び稲妻を集中させ、地面を蹴る。

 筋肉が爆ぜ、視界が一気に前へと伸びた。

 

 一撃――

 二撃――

 三撃――!

 

 稲妻を宿した拳が嵐の連打となって妖狐たちの防御を粉砕する。

 殴るたびに雷鳴が空気を裂き、火花が散り、毛並みが焦げる匂いが戦場に充満した。

 

 その瞬間――背後に“殺気”。

 

「――電光閃」

 

 今度は脚へ雷を凝縮。

 バチィッ!!

 時間が引き延ばされたみたいに、世界がスローモーションになる。

 背後から迫る妖狐の爪を――俺は跡形もなく“消える”ように回避。

 次の瞬間には、その背中へ回り込んでいた。

 

「喰らえッ――雷撃拳ッ!!」

 

 轟音。
 閃光。
 そして吹き飛ぶ巨体。

 

 さらに複数の妖狐が一斉に襲いかかる。

 

「――電光閃」

 

 雷が唸る。
 俺の動きは、もう奴らには追えない。

 尾も、爪も、炎も。
 全部すれ違いざまに空を切る。

 そこへ――俺の雷撃拳が叩き込まれる。

 次々と、迷いなく。
 まるで運命に沿っているかのような精度で。

 

「どうだ――ッ!!」

 

 稲妻を纏った俺は、戦場の中心に仁王立ちする。

 焦げた地面から白い煙が立ち上り、空気は雷で裂けていた。

 

「これが――」


 
 胸を張り、声を響かせる。

 

「異世界を生き抜いた俺の力だッ!!」
 



 だが息を整える暇もなく、視界の端に焔華が映った。彼女は立ち尽くしている──動けない。目は虚ろで、ただ“それ”を見据えていた。いや、見ているのではない。震えた眼差しは過去に縛られ、そこに囚われている。

 

 呪術で操られた先祖たちの亡霊がぎこちなく動く。その中に、母上の姿もある。かつての威厳はなく、命なき瞳だけが空を見ている。こんな光景を前に、焔華が硬直するのも無理はない。

 

 だが、ここで止まっている余裕はない。

 

「おい、焔華!!しっかりしろ!!」

 

 振り返りざまに叫ぶ。だが彼女は反応しない。ただ呆然と立ち尽くすだけだ。


 

「……母上は…………わしを恨んでおる。」

 

 その声は、震え、か細く、消え入りそうだった。



「わしのせいで……母上は死んだ。
 恨んで当然じゃ……。」

 

 焔華の肩は震え、拳は力なく垂れ下がっている。


 

「それだけじゃない……」

 

 焔華は、亡霊たちを見つめたまま続ける。

 

「わしの中に宿る“九尾の炎”が暴走して……
 同胞を……何人も……焼いた。」

 

 その声は、涙の代わりに血が滲みそうなほどの痛みを帯びていた。

 

「だから……わしらの血筋は、“災い”として恐れられた。
 わしは……一族に泥を塗ったんじゃ。」

 

 そして、ぽつりと――

 

「……彼らが、わしを憎むのは……当たり前じゃろ……。」

 

 その声を聞いて、俺の中で何かが弾けた。


 
「んなわけあるか!!!」



 全力で叫んだ。今の焔華には、それくらいの衝撃が必要だ。

 

「お前が勝手に母ちゃんの気持ちを決めつけてどうすんだよ!!」



 俺は焔華の前に立ち、彼女の肩を掴む。その瞳には怯えと後悔、罪悪感が渦巻いている。


 
「見てみろよ、あれを!」

 

 俺は炎狐たちの動き──操られたその所作を指差す。

 

「お前の母ちゃんも先祖たちも、今は“無理やり”動かされてるんだ!あれが本気だと思うか?違うだろ!!」


 
 焔華の視線が揺れ、小さく炎狐たちを見返す。


 

「それにな――お前!!」

 

 俺は焔華を指差し、そして自分を指差した。

 

「無傷だろッッ!!!!」

 

「……え……?」

 

 焔華の瞳が大きく開く。

 

 俺は自分の身体を叩きつけるように示した。

 

「見ろ、この俺をッ!!」

 

 全身に走る裂傷。焦げた服。焼け爛れた腕。呼吸するだけで痛む身体。

 

「今攻撃されまくってんの、俺だけなんだよ!!!!」

 

 その証明を補うように、雪華がいう。

 

「……はい。割合的には……雷丸様が八、私が二、焔華さんは……ゼロです。
 彼らは明らかに……焔華さんに攻撃を向けないように動いています……!」

「だよな!?なぁ!? これおかしいだろ!?
 俺だけ“ピンポイント狙い撃ち”かよ!!?」

 

 俺が叫ぶと、雪華は小さく咳払いして、更に追撃した。

 

「……あの……理由について推測してもよろしいでしょうか。」

「言え!!」

 

「雷丸様は……頑丈そうですし。」

 

「雑な理由だな!!!?」

 

「それに、命令には“私たちを倒せ”というニュアンスが強く残っているようです。
 その結果、“雷丸様を集中的に殴ることで焔華さんを攻撃するのを制御しようとしている”のだと思います。」

 

「いやひどすぎるだろ!?
 俺どんな扱いなんだよ!? “とりあえず殴っとけ”枠か!?」

 

 雪華はこくりと真顔で頷いた。

 

「……はい。現状、“雷丸様を殴っておけばとりあえず安定する”と判断されている可能性が高いです。」

「ひっっっどいな!!?」

 
 

 俺の嘆きが響いたあと、雪華が静かに言葉を続けた。

 

「……でも、これではっきりしましたよね。
 彼らは、焔華さんを“傷つけたくない”のです。」

 

 焔華の肩が、ビクリと震える。

 

「なぁ焔華。
 それが答えだろ。」

 

 俺は吠える。

 

「お前を守ってんだよ!!
 “恨んでる”奴らが、そんなことするかよ!!!」

「守ってんだよ!あの人たちも!母ちゃんも!!」

 

 焔華は驚いた顔で、俺を見る。

 

「抗ってんだよ、焔華……!
 魂まで縛られてんのに、それでも――お前を守ろうとしてんだよ!!
 傷つけないように!踏みとどまってんだよ!!必死に!!」

 

 焔華の唇が震える。
 迷い。後悔。恐怖。
 それでも、心は揺れている。

 

「下向いてんじゃねぇ……!
 ――ちゃんと、見ろよ。」

 

 焔華はゆっくりと、母と先祖たちを見つめる。
 その瞳は、もう“怯えるだけ”の目ではなかった。

 

「お前の過去がどうであろうと関係ねぇ!!
 でもよ、もし“お前のせいだ”と思ってんなら――」

 

 俺は拳で心臓を叩く。

 

「だったら、今ここで取り返せ!!」

 

「……取り返す……?」

 
「そうだ!!
 守られたってんなら――
 今度はお前が守る番だろ!!」

 

 焔華の瞳に宿る炎が、ほんの少し強くなる。

 

「お前の母ちゃんは今、
 “お前に救われるのを待ってんだよ!!”」

「……母上を……救う……」

 

 その呟きは、小さい。
 けれど確かに、力を持っていた。

 

「ああ、そうだ……!
 やるんだよ、焔華!!
 お前が救うんだ!!」
 

 
 焔華は目を閉じた。
 長く、深く――息を吸う。

 胸の奥に絡みついていた迷い、恐れ、罪の影。
 それを、ひとつひとつ燃やすように息を吐く。

 

「……ここまで言われて、うじうじしておれんわ。」

 

 焔華は静かに顔を上げた。

 その金色の瞳は、もう揺れていない。

 

「お主は……不思議な男じゃな、雷丸。」
「お主の言葉は、胸に刺さる。なぜじゃろうな……?」
「お主にも――そういう過去があるのか?」

 

 俺はただ、黙って焔華を見つめていた。
 焔華は、ゆっくりと言葉を紡ぐ。

 

「……ああ。わかった。
 わしが救う。母上も、皆も。
 今度は――わしの番じゃ。」

 

 その声は小さくない。震えていない。
 凛としている。

 

「つまらん姿を見せたな。いや、実につまらんかった。」


 
 ふっと笑う。
 どこか誇り高く、どこか懐かしい炎狐の面影と重なる。

 

「炎狐の娘として。
 いや――神獣“九尾”の血を継ぐ者として。
 恥じぬ戦いを見せよう。」

 

 焔華は一歩、前へ進む。
 炎が、彼女の身体から静かに立ち上る。
 意思を持った、強く澄んだ炎だ。

 

「よし、行くぞ!!」
「母ちゃんも、お前の血族も――全部取り返す!!」

 

 俺が叫ぶと、焔華は力強く頷いた。

 

「うむ!!共に行こう、雷丸、雪華!!」

 

 焔華の炎が、燃え上がる。
 その輝きは、過去を焼き払い、新しい未来を照らす焔だった。

 

 俺たちは、再び戦場へと駆け出した。



 


 ――――――――――――



 

 焔華の中に、ふっと――暖かな光景が蘇る。

 

 まだ幼かった頃の記憶。

 柔らかな日差しが差し込む縁側で、炎狐は焔華の小さな手を包み込んでいた。

 

「焔華ちゃん、火というのはね~、ただ熱いだけのものじゃないのよ~。」

 

 母の声音は、春の陽だまりみたいにやさしい。

 炎狐はそっと手を広げる。

 その掌に揺らめく炎は、燃え盛るはずの赤ではなく――ふんわりと、柔らかく灯る橙色だった。

 

「火は、誰かを傷つけるためだけにあるものじゃないの。
 あたためるため。照らすため。
 そして――守るためにも使えるの。」

 

 その炎は、見るだけで心が緩むような光だった。

 

「ほら、こうして……炎は優しく扱うのよ~。」

 

 炎狐は焔華の手の上に、そっと自分の炎を重ねる。

 焔華の掌にも、小さな炎がぽうっと生まれた。

 

「あ……あったかい……」

 

 胸の奥が、ほころびそうになる。

 だが――

 

「……じゃがな母上!!
 わしは最強の火を使いたいんじゃが!?」

 

 焔華はむすっと眉を寄せて言い返した。

 

「ドカンッ!て燃えて、敵を一掃するような!
 そういう“かっこいい火”がいいんじゃ!!」

 

 それを聞いた炎狐は――

 

「ふふ~。焔華ちゃんは、ほんとに元気でかわいいわね~。」

 

 と、にこり。

 なぜか、その笑みには何でも包み込むような深さがあった。

 

「でもね。強い火を扱うにはね。
 まず、あたたかい火を知るところからなのよ。
 “守れる火”が分かって、初めて“燃やす火”が使えるの。」

 

 焔華はその時、よく分からなかった。

 でも――今は、分かる。

 

「……母上。」

 

 燃やすための炎じゃない。

 守るための炎。

 優しさも、強さも、全部含んだ炎。

 

 その記憶が、焔華の胸に――はっきりと灯った。

 
 もう逃げない。もう迷わない。

 

 焔華は一歩、前に出た。

 

「……先祖の皆さん。
 “今のわし”を見ていてください。」

 

 構えた手に、小さな火が生まれる。
 それは幼い日に見た、母の掌の火と同じ色だった。

 

 ふわりと優しく。
 けれど、揺らがない芯を持つ炎。

 

 炎は広がり、彼女の全身を包む。

 

「――炎舞烈刃(えんぶれつじん)!」

 

 焔華の周囲に、炎が舞い踊る。
 それは破壊の炎ではなく――救いの炎。

 

 燃やすのではなく、鎖を断ち切る炎。

 狐たちを包むたびに、狂気の色が薄れていき、
 混濁した瞳に、少しずつ“生”が戻る。

 

 その中で、ひときわ大きな影が立っていた。

 炎狐。母。

 

 焔華の喉が震えた。

 

「……母上。」

 

 大切な人を前に、足が少しだけすくむ。
 だが、焔華は握った拳に力を込めた。

 

「わしに教えてくれたじゃろ……
 火は、守るためにも使えるって。」

 

 母の声が、優しい笑みが、胸に返ってくる。

 

「だから――今度はわしが守る番じゃ。」

 

 焔華は全ての炎を一つの点へ収束させる。

 炎は刃ではない。呪いを断ち、魂を抱く陽炎。

 

「――焔舞陽炎(えんぶかげろう)」

 

 炎が母をそっと包み込む。

 焼き尽くすのではなく、
 抱きしめるように――あたたかく。

 

 カシャン、と目に見えぬ鎖が砕ける音がした。
 

 


 
 ――――――――――――




 

 戦いが終わった後の静寂が、あたりを包み込んでいた。

 焔華の炎が残した余熱が地面に揺らめき、やわらかな橙の光となって夜を照らしている。
 焦げる匂いも怒号も、もうどこにもない。
 ただ静かに、暖かく、穏やかだった。

 

 解き放たれた妖狐たちは、炎に照らされながらゆっくりと顔を上げる。

 その瞳に宿っていた狂気や悲しみは、もうない。
 そこにあるのは――安堵と、優しさ。

 

 彼らは焔華を見つめ、ひとり、またひとりと、静かに頷いた。


 
「よく頑張った。」


 
 言葉にしなくても、伝わった。

 

 焔華は唇をかみながら、それでもまっすぐに顔を上げて頷き返す。


 
「――はい。」

 

 そのときだった。
 群れの中から、一人だけ、ゆっくりと歩み出る影があった。
 
 

 焔華の母――炎狐。

 

 ゆっくりと、しかし迷いのない足取りで。

 堂々とした背中。
 けれど、その瞳は驚くほど柔らかかった。

 

 焔華は喉が詰まり、声が漏れる。

 

「……母上……」

 

 ずっと思い出そうとして――思い出せなかった微笑み。

 いま、目の前にある。

 

「……母上……わし……わしは……」

 

 続けようとした言葉は涙に溶けて消えた。

 焔華は、子供の頃に戻ったように、母の胸へ顔を埋める。

 炎狐は、すべてを受け止めるように、そっと抱きしめ、背中を撫でた。

 

「本当に、よく頑張ったわね……焔華ちゃん。」

 

 焔華の肩が震え、涙がこぼれる。

 

「……わし……怖かった……
 母上が……わしを恨んでると思って……」

 

 炎狐は首を横に振る。

 焔華の頬を包む手は、どこまでも優しい。

 

「恨むわけ、ないでしょう……。
 焔華ちゃんは、私の自慢の娘よ。」



 その言葉は、焔華の胸に深く降りていった。
 ずっと欲しかった言葉。
 どれほど求めても、誰にも言われなかった言葉。


 
「……母上……」

 

 焔華は拳を握りしめ、震える声で続けた。

 

「わしは……何度も……死のうと思ったんじゃ。」

 

 炎狐の手が、そっと止まる。

 

 ぽたり、ぽたりと涙が落ちる。
 拭くこともせず、ただ地面に落ちていく。

 

「……あの時の火を、悔いて、悔いて……
 ただ、鍛えることしかできんかった。
 罪は消えん。過去もやり直せん。
 じゃが、それでも……それが“わしが生きている理由”じゃった。」

 

 焔華は、震える肩を抑えながら顔を上げる。

 

「なぁ、母上……」

 

 絞り出すような声。

 

「さっきの……わしの火……
 どうじゃった……?」

 

 炎狐は一度ゆっくり瞬きをし――
 焔華の頬に触れながら、いつもの“おっとりした”笑顔を見せた。

 

「うんうん、ふわふわでぽかぽかで、わたし大好き~。」




  ――その瞬間。

 

「「軽ッッッ!!!!」

 

 雷丸と雪華が、同時に盛大にずっこけた。

 

「あ、いや……もっとこう……!
 『誇りに思う』とか『立派になった』とか、感動系の流れじゃなかった!?!?」

「完全に締めが“お母さんの感想メモ”なんですよ……!?」

 

 焔華は涙を拭いながら――少しだけ笑った。

 その笑顔は、炎のようにやわらかくて、あたたかかった。

 

「……うん。
 なら、よかったのぅ。」
 


 炎狐は優しく微笑み返すと、ふわりと焔華の肩から手を離す。

 

「そろそろ……みたいね。」

 

 周囲にいた祖先たちの姿が、ゆっくりと透け始めていた。
 炎狐の輪郭も、淡い焔となって揺らいでいく。

 

「いくのか……。」

 

 焔華の声は、かすれていた。

 

「えぇ。」

 

 その返事は、静かで、揺らぎがない。
 まるで“また当たり前の日に戻る”ような優しさすら宿している。

 

 けれど――その意味は、あまりにも残酷だった。

 

 もう一度だけ会いたいと、あれほど願った母。
 やっと想いを伝えられた母。
 声が届いた母。
 笑いかけてくれた母。

 

 その母が、またいなくなる。

 

 焔華は胸元を掴んだ。
 息を吸うたび、肺が焼けるほど痛い。
 喉の奥がぎゅっと塞がり、呼吸がうまくできない。

 

「……残酷じゃのう……
 本当に……。」

 

 声は震え、笑みの形を保とうとした唇は、ひきつってうまく笑えない。

 

「会えて……嬉しかった。
 嬉しかったんじゃ……。
 でも……」

 

 焔華は、笑おうとした。
 必死に、必死に――泣かないように。

 

 けれど、その笑顔は崩れた。

 

「母上を、また失うなんて……
 耐えられる気が……せん……。」

 

 ぽろり、と涙があふれる。
 拭っても拭っても止まらない。

 

「わし……今度こそ……
 死んでしまうかもしれん……。」

 

 泣きながら、それでも笑おうとする焔華の顔は、
 今にも崩れてしまいそうに脆かった。

 

 その姿を見て、俺も雪華ももう黙っていられなかった。

 

「焔華、そして焔華の母ちゃん!!聞いてくれ!!」

 

 炎狐と焔華がこちらを見る。

 

「大丈夫だ、焔華には俺たちがいる!!」

 

 その言葉に、雪華も強くうなずいた。

 

「そうです。焔華さんはもう、一人ではありません。
 支える仲間がここにいますから。」

 

 炎狐は目を細め、優しく問いかける。

 

「……あなた達は、焔華ちゃんのお友達なの?」

 

 その問いに、俺は胸を張る。

 

「友達?いいや、それだけじゃ足りねぇ。」

 

 焔華が、涙に濡れた目をぱちりと瞬かせる。

 
 
「もっと深い。」

 

 そこから、なぜかスッと背筋を伸ばし、宣言する。

 

「――魂が惹かれ合った男女関係だ!!」

 

「は?」と雪華が一瞬だけ素に戻り、
炎狐は「あらあら」と上品に口元を覆った。

 

「まぁ……じゃあ、あなたは焔華ちゃんの“恋人さん”なのね?」

 
「そうだ!!」


「いや、まだそういう関係じゃないんじゃが!?」

 

 焔華が即座にツッコミを入れるが、声はもう泣き声ではなかった。
 その頬には、かすかに赤みが差している。

 

 だが俺は止まらない。

 

「さらに言うと、雪華も俺の彼女である!!」


「言わなくていいです!!!!」

 

 雪華が即座に俺の口を両手で塞いだ。


 その横で炎狐が普通に動揺していた。

 

「えっ……え……?
 えっ?? え? 三角関係……? それとも……増えるタイプ……?」

 

「ら、雷丸様ッッ!!ちょ、ちょっと!!」

 

 雪華は涙目で俺を揺さぶりながら、早口でまくしたてる。

 

「誰の前でも本音で生きるのは素敵ですが!!
 今回ばかりは!!! 自重してください!!」

 

「なんでだよ!! 俺は誠実だぞ!!」

 

「焔華さんのお母さまを安心させて送り出す場面なんですよ!?
 ここで“ハーレム制です!”とか宣言して不安にさせてどうするんですか!!
 ここで不安が残ったら、お母さまは成仏どころか普通に怨霊コースですからね!!?」

 
「お、おぉぉ……確かに……!!?」


 
 俺はガバッと姿勢を正した。

 

「焔華の母ちゃんを不安にさせるわけにはいかん……!
 安心させる言葉……落ち着け俺……ここは真剣な場面……!」



 俺は深呼吸した。

 ハーレムチーム……いや違う。なんか惜しいんだよな。
 もっとこう、俺たちの関係性に……ぴったりな言葉が……

 

「そうだ!!」

 

 ビシィッと指を突き出す。

 

「焔華、雪華、俺たちは家族だ!!
 そう――名付けて――」

 

 大きく息を吸い込んで、

 

「ハーレムファミリーだ!!」

 

 ――シーーーーーーン。

 

 風すら止まった。

 

 そして次の瞬間、雪華の 正拳ツッコミ が俺に炸裂した。

 

「雷丸様、それ家族じゃありません!!!
 ただのフォーメーション名です!!!!」

 

 焔華も腕を組んでじとーっと俺を見る。

 

「それただの願望じゃろ。しかも欲望混ざっとる。」

 

「違う!!!」

 

 俺は胸をドンと叩いた。痛い。

 

「俺が言ってるのはな!“同じ屋根の下でイチャつく権利”とかじゃなくて!!!」

「……いや、少しはあるんじゃろ絶対。」

「否定はしない!!」

 

 雪華の目がスッ……と死んだ魚みたいになる。

 

「雷丸様?
 後で、真剣に話し合いの時間を取らせていただきますね?」

「やめて!!その声やめて!!ガチのやつだろそれ!!」

 

 だが、それでも俺は息を吸って叫んだ。

 

「俺が言いたいのは――“運命を一緒に背負う”ってことだ!!」

 

 空気が一瞬、震える。

 

「“好き”とか“恋”とか、そういう言葉の先だ。
 逃げずに並んで立つ覚悟だ。
 焔華、お前は――もう一人じゃねぇ。」

 

 焔華はきょとんとしたあと――

 

 ぷっ……と吹き出した。

 

「くっ……はは……!
 お主は、本当に……おかしな男じゃな……!」

 

 揺れていた瞳に、今はちゃんと 光 がある。

 

「……でも、わかった。
 わしはもう、一人ではないのじゃな。」

 

 雪華がそっと隣に立つ。
 柔らかく、でも迷いのない声で言う。

 

「はい。何度でも言います。
 焔華さんには、私たちがいます。」

 

 炎狐は静かにその光景を見つめていた。
 その眼差しは――安心と誇りに満ちていた。

 

「……よかったわ。
 焔華ちゃん、ちゃんと……“居場所”を見つけたのね。」
 



 その言葉を聞いた瞬間、雪華が慌てた。

 

「えっ、でもその……“ハーレム”になる可能性があるんですけど!?
 それでお母さま的には、いいんですか!?」

 

 炎狐はふわりと微笑んだ。

 

「いいわよ~。
 焔華ちゃんが、笑って幸せでいられるなら。」

 

 俺は両手を天へ突き上げる。

 

「うぉぉぉぉぉ!!!!
 母ちゃん公認キタああああああ!!!!」

 

「落ち着け雷丸、テンションが馬鹿のそれじゃぞ!」

 

 焔華が肘で俺の脇腹を小突くが、口元はほころんでいた。

 

 炎狐は焔華へと向き直る。
 燃えるような赤い瞳は、今はただ優しい光を宿していた。

 

「焔華ちゃん。
 あなた……本当に、いい方たちと出会ったのね。」

 

 焔華は胸を張り、誇らしげに頷く。

 

「そうじゃろ?
 わしもこやつらは面白くて――何より、信じられる。」

 

 炎狐の唇が、柔らかく綻ぶ。

 

「うん……焔華ちゃんが、そう言えるなら。
 それが何より嬉しいわ。」

 

そして、優しい声で続けた。

 

「この素敵な人たちと一緒に、幸せな人生を歩んでね。」

 

 焔華は涙を拭い、拳を真っ直ぐに突き出す。

 

「――――うむ。」

 

 その一言には、強さと誇りが宿っていた。

 

 炎狐は、安心したように目を細める。
 その体が、ゆっくりと光に包まれていく。

 輪郭が淡く揺らぎ、少しずつ空へと溶けていく。

 

 風がそっと吹き抜ける。
 炎のように、温かくて優しい風だった。

 

「母上……さようなら、ではないの。」

 

 焔華は空に手を伸ばし――そして胸に当てる。

 

「この心の中に、いつまでもおる。」

 

 最後の光が、静かに空へ消えていった。

 

 残されたのは、焔華の心に刻まれた確かな温もり。

 焔華は震える手をぎゅっと胸に押し当て、静かに言葉を結ぶ。

 

「……母上。
 わしは、誰かを守れる火を持った、母上の誇れる娘になる。」

 

 その声は小さかったが――もう、揺れてはいなかった。

 焔華の瞳には、新しい決意の炎がはっきりと燃えていた。

 
 そして次の瞬間。

 

 にやり、と焔華はいつもの調子で笑った。

 

「雷丸、雪華。……わしも入るぞ。お主らの“ハーレム”にな!」

 

 
 ――――ファンファーレ!!(脳内)


 

 俺の脳内で勝手に祝福の音楽が鳴り響く。狐っ子ゲットォォォォォ!!ハーレム計画順調すぎるだろ!!



 俺が脳内でクラッカーを鳴らしていたその瞬間。

 

「えええええ!!??それで納得するんですか!?焔華さん!!」

 

 雪華が全力で叫ぶ。

 

「雪華。わしは思ったのじゃ。
 一人で背負うのは、もう……いい。
 “誰かと一緒に生きる”のも、悪くない。」

 

 焔華は、晴れやかに笑っていた。

 ――強くなった。ちゃんと自分の足で立っていた。

 

「で、でも私は!!ハーレムとか嫌ですからね!?普通に嫌ですからね!?」
 
 雪華は俺の襟を掴んで揺さぶる。

 

「雷丸様!!一人ひとりを丁寧に大切にするのが愛です!!
 “ハーレムだからまとめてOK”みたいな思想は最低なんですよ!!!
 倫理観!!!倫理観って知ってますか!!?」


 
 俺は胸を張り、堂々と言い放つ。

 

「俺が作るのは“全員が幸せになるハーレム”だ!!
 これは新時代の形だ!!」

「新時代じゃないです!!聞いたことないです!!」

 

雪華が絶望したように頭を抱える一方で――

 

 焔華は口元に手を当て、くつくつと笑った。

 

「ふふっ……やはりお主は面白い男じゃ、雷丸。」

 

 そして、その金色の瞳がまっすぐ俺を見た。

 

「これくらいぶっ飛んだ男の“隣”に立つなら……
 わしも、それでええ。」

  

その言葉に、俺は迷いなく拳を突き出した。

 

「よし、焔華!ようこそ俺のハーレムファミリーへ!これからよろしくな!」

 

 焔華はにこりと笑い、拳をこつんと合わせる。

 

「うむ。こちらこそ、頼むぞ。」

 

 その横で――雪華が地面に突っ伏していた。

 

「ハーレムって……なんなんですかね……私、疲れました……。」

 

 俺は心の中で全力でガッツポーズを決める。
 狐っ子、加入!!
 ハーレム王、また一歩前進!!!

 

 一方その頃、雪華は虚空を見つめていた。

 

「……どこで私は人生を間違えたんでしょうか……」

 

 だが俺は、その嘆きすら心地よく流す。

 人生は攻めてなんぼ!!!!!

 

 焔華はそんな雪華を見て、にやりと口角を上げる。

 

「ふむ……雪華よ。お主、すでにハーレムに馴染んでおるぞ?」

 

 雪華がビクンッと跳ねた。

 

「馴染んでません!!本気で馴染んでませんからね!!?」

 

 焔華は肩をすくめ、まるで姉のような余裕の笑み。

 

「まぁまぁ、肩の力を抜け。
 これからが本番じゃろ?」

「本番とか言わないでください!!不安が増えるだけです!!」

 

 俺はそんな二人を見ながら、堂々と宣言した。

 

「いいじゃねぇか。俺たちは“ハーレムファミリー”だ。
 だから――家族みたいに、共に進むんだよ。」

 

 雪華は額を押さえて深くため息。

 

「雷丸様……その“家族”の概念、だいぶ独特ですよ……」

 

 それでも。

 彼女はしぶしぶ拳を上げる。

 

「……はいはい。仕方ないですね。行きますよ、雷丸様。」

 

 焔華も拳を突き上げる。

 

「うむ!面白くなってきたのぅ!」

 

 俺も拳を高く掲げる。

 

「よし!ハーレムファミリー――行くぞ!!」

 

 三人の拳が、空の下で重なった。

 

 笑って、泣いて、騒いで。
 それでも隣には仲間がいる。

 

 ――そう思えたなら、もう十分だ。

 
 
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