異世界帰りのハーレム王

ぬんまる兄貴

文字の大きさ
40 / 110

第40話 俺のヒーロー 2

しおりを挟む


 学校の昼休み。俺たちはサッカーのグラウンドにいた。


 
「小野寺、今日は昼休みだぞ。普通はご飯食べたり、教室でのんびりする時間だってのに、なんでサッカーしてんだよ?」



 雷丸が、苦笑いしながらボールを蹴って俺に渡してきた。俺はそれを受け取りながら、ニヤリと笑った。


 
「だってさ、俺にとってはお前とサッカーすることがご褒美なんだよ。」

「なんだそれ、ちょっと気持ち悪いぞ、お前。」



 雷丸がツッコミを入れてくるが、俺は気にしない。


 俺たちはボールを軽く蹴り合いながら、グラウンドを走っていた。昼休みの間、全力でサッカーなんてバカみたいなことをやるやつは、他に誰もいない。むしろ、俺たちが目立っていることにすら気づいていない。


 でも、そんなことどうでもいいんだ。今、俺が目の前にいるのは、あの飯田雷丸だ。


 
「よし、次はシュートだ!お前、ゴール守れよ!」



 俺がそう叫ぶと、雷丸はすぐにゴール前に立った。いつものふざけた顔じゃなくて、真剣な目で俺を見ている。


 
「来いよ、小野寺。お前がどれだけ成長したか、見せてもらうぜ!」

「上等だ、飯田!」



 俺はボールをゴールに向かって強く蹴り込んだ――


 ――が、次の瞬間、雷丸がジャンプして、見事にボールをキャッチした。


 
「おいおい、小野寺!それが本気かよ!?まだまだだな!」



 雷丸がニヤリと笑いながら、俺にボールを返してきた。


 
「くっそ……さすがだな、ヒーロー!」



 悔しいけど、なんだか笑ってしまう。


 
「ああ、今度は俺がシュートだ。お前が止められるか、見ものだぜ!」



 雷丸はボールを地面に置き、俺を挑発するように構えた。

 

「かかってこい、飯田!俺だって成長してんだ!」



 次の瞬間、雷丸はボールを蹴り出した。

 
 ボールはあっという間に俺の前をすり抜け、ゴールへ――


 
「うわっ、速っ!」



 反応する間もなく、ボールはゴールネットに突き刺さった。


 雷丸は余裕の笑みを浮かべ、腕を組んで俺を見下ろしてきた。


 
「どうだ、小野寺。まだまだ俺には勝てねぇだろ?」

「……ちっ、やっぱお前はすげぇな。」



 俺は悔しさを隠しきれずにそう呟いたけど、その瞬間、二人で爆笑してしまった。


 俺たちは昼休みが終わるまで、ただひたすらボールを蹴り合った。練習っていうか、もう遊びみたいなもんだったけど、それでも――


 
「やっぱ、お前とサッカーするのは最高だな、飯田。」

「当たり前だろ。お前がもうちょっと上手くなれば、もっと面白くなるぜ?」

「おい、聞こえてるぞ!」



 俺たちは、笑いながら昼休みを駆け抜けていった。


 

 昼休み、練習を終えてグラウンドの端っこで休憩していた俺たちは、ふとサッカーの話を始めた。


 
「なあ、飯田、お前ってなんでサッカーやってたんだ?」
俺が何気なく聞くと、雷丸はボールを手で転がしながら答える。

「ん?そりゃあ、モテるからだろ?」



 ……は?こいつ何言ってんだ?


 
「おいおい、それが理由かよ!?」



 俺は思わず笑ってしまったが、雷丸は真顔で頷いている。


 
「当たり前だろ。だってサッカーやってると女の子にキャーキャー言われるんだぞ?あんな快感、他にねぇよ。」
 
「いや、それ理由が軽すぎだろ!普通、サッカーが好きとか、上手くなりたいとかじゃねぇの?」



 俺はツッコミを入れながら、雷丸の意外すぎる理由に呆れていた。


 
「だってお前、試合でゴール決めたら、女の子たちがこっち見てくれるんだぞ?それに、お前だって、サッカー始めたきっかけなんて、どうせ女の子絡みなんだろ?」



 そう言って、雷丸がニヤニヤしながら俺に視線を向けてくる。


 
「いや、俺は……そんなわけねぇだろ!」
 
「おっ、照れてんのか?中学の頃、俺もお前が試合で『手塚ちゃん見ててくれー!』とか叫んでんの、知ってたぞ?」
 
「いやいや、あれはただの気合入れだから!」



 俺は慌てて否定したが、雷丸の笑いは止まらない。


 
「ま、冗談はさておき、サッカーはやっぱ楽しいからやってんだよ。あのボールを蹴る感触、ゴール決めたときの達成感――あれがクセになるんだよな。」



 真剣な表情で言う雷丸に、俺も頷いた。


 
「確かにな。俺もあの瞬間がたまらなく好きだよ。ゴール決めたとき、世界が俺のもんになったみたいに感じるんだ。」
 
「そうそう!その瞬間だけは、全てが俺のものだって思えるんだよな!あれがやめられねぇんだよ。」



 飯田も同じ気持ちだったらしい。

 

「……でも、お前、本当にサッカーやめたのは、足を怪我したからなのか?」



 俺が少し真剣なトーンで聞くと、雷丸は一瞬黙り込んだ。

 
 俺が知っている飯田雷丸はたとえ走れなくなってもサッカーを続ける奴だった。

 
 そして、ポツリと呟いた。


 

「……まぁな。足の筋が理由なのは間違いねぇよ。でも、それだけじゃねぇんだよ。」
 
「それだけじゃない?」
 
「俺、自分のためにサッカーやってるって思ってたけど、なんか途中から、周りの期待とかプレッシャーとかが重くてさ……それがイヤになって逃げたんだと思う。」



 雷丸が少し遠い目をしてそう言った。


 
「……でも今は、逃げてないよな?」



 俺がそう言うと、雷丸は笑って頷いた。

 

「そうだな。今はもう逃げる気はねぇよ。だって、俺にはハーレムを作る夢があるからな!」
 
「そこかよ!!」
 


 俺は思わず爆笑してしまったが、雷丸は真剣な顔で続ける。


 
「お前だって、サッカーで天下取る夢、あんだろ?俺はハーレムとサッカー両方だけどな。お互い頑張ろうぜ!」

 
「……お前、本当にブレねぇな。」


 
 俺はまた笑いながらも、心の中で決意を新たにした。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

クラスの陰キャボッチは現代最強の陰陽師!?~長らく継承者のいなかった神器を継承出来た僕はお姉ちゃんを治すために陰陽師界の頂点を目指していたら

リヒト
ファンタジー
 現代日本。人々が平和な日常を享受するその世界の裏側では、常に陰陽師と人類の敵である妖魔による激しい戦いが繰り広げられていた。  そんな世界において、クラスで友達のいない冴えない陰キャの少年である有馬優斗は、その陰陽師としての絶大な才能を持っていた。陰陽師としてのセンスはもちろん。特別な神具を振るう適性まであり、彼は現代最強の陰陽師に成れるだけの才能を有していた。  その少年が願うのはただ一つ。病気で寝たきりのお姉ちゃんを回復させること。  お姉ちゃんを病気から救うのに必要なのは陰陽師の中でも本当にトップにならなくては扱えない特別な道具を使うこと。    ならば、有馬優斗は望む。己が最強になることを。    お姉ちゃんの為に最強を目指す有馬優斗の周りには気づけば、何故か各名門の陰陽師家のご令嬢の姿があって……っ!?

サバイバル能力に全振りした男の半端仙人道

コアラ太
ファンタジー
年齢(3000歳)特技(逃げ足)趣味(採取)。半仙人やってます。  主人公は都会の生活に疲れて脱サラし、山暮らしを始めた。  こじんまりとした生活の中で、自然に触れていくと、瞑想にハマり始める。  そんなある日、森の中で見知らぬ老人から声をかけられたことがきっかけとなり、その老人に弟子入りすることになった。  修行する中で、仙人の道へ足を踏み入れるが、師匠から仙人にはなれないと言われてしまった。それでも良いやと気楽に修行を続け、正式な仙人にはなれずとも。足掛け程度は認められることになる。    それから何年も何年も何年も過ぎ、いつものように没頭していた瞑想を終えて目開けると、視界に映るのは密林。仕方なく周辺を探索していると、二足歩行の獣に捕まってしまう。言葉の通じないモフモフ達の言語から覚えなければ……。  不死になれなかった半端な仙人が起こす珍道中。  記憶力の無い男が、日記を探して旅をする。     メサメサメサ   メサ      メサ メサ          メサ メサ          メサ   メサメサメサメサメサ  メ サ  メ  サ  サ  メ サ  メ  サ  サ  サ メ  サ  メ   サ  ササ  他サイトにも掲載しています。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

魔法使いが無双する異世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです

忠行
ファンタジー
魔法使いが無双するファンタジー世界に転移した魔法の使えない俺ですが、陰陽術とか武術とか忍術とか魔法以外のことは大抵できるのでなんとか死なずにやっていけそうです。むしろ前の世界よりもイケてる感じ?

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

処理中です...