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第58話 修学旅行18
しおりを挟む俺が泣き崩れている横で、アカマターと麗華はまるで新婚夫婦のように将来の話をし始めた
……なんだ、この地獄みたいな光景は。
「麗華、これからは私と共に新しい王国を作るのだ。お前は私のそばで永遠に美しく、そして俺たちの子供たちがこの世界を支配する未来が待っている」
アカマターが麗華に優雅に絡みつきながら、まるで映画のワンシーンのように語りかける。その低く甘い声が響くたび、麗華の表情はますます輝きを増していく。
――もう、俺が入る隙なんて、どこにもねぇじゃねぇか……。
「アカマター様……素敵ですわ……♡」
麗華がアカマターに寄り添い、うっとりとした声で返事をする。その顔は、完全に幸せに満ちたものだった。
――おいおい、何だよこのシチュエーション!完全に俺、第三者じゃねぇか!?
俺は必死に彼らのラブラブトークを聞きながら、自分の存在感がどんどん薄れていくのを感じる。まるで俺がこの世界から消えかかっているみたいだ。
「私たちの子供たちは、きっと強くて美しいでしょうね……」
麗華が恍惚とした表情で言葉を紡ぐ。俺はその声を聞いて、心の中がさらにズタズタに引き裂かれるのを感じた。
「もちろんだ。お前と私の血を引く子供たちだからな。きっと誰よりも優れた存在になるだろう」
アカマターは微笑みながら自信たっぷりに麗華へうなずく。
――ちょ、ちょっと待て!お前ら、俺の目の前で将来の家族計画を語るんじゃねぇよ!俺はまだ諦めちゃいねぇんだぞ!!
「麗華ぁぁぁ!!俺だって未来の話したかったよぉぉぉ!!一緒にハーレムを作って、みんなで幸せになろうって言っただろうがぁぁぁ!!」
俺の声は張り裂けそうなほどだった。だけど、俺の必死の叫びは二人に届くことなく、麗華とアカマターはまるで俺の存在を忘れたかのように、二人の未来を語り続ける。
「そして、私たちの王国が完成したら、麗華は永遠に私のそばにいられる。お前は私の女王だ」
アカマターのその言葉に、麗華は微笑みながら答える。
「アカマター様……私、幸せです……♡」
――俺、今その幸せそうな顔を目の前で見せられるの、めちゃくちゃつらいんだけど!!
俺は涙でぐしゃぐしゃになりながら、必死に麗華に向かって叫んだ。
「麗華ぁぁぁ!俺たち一緒にハーレム王国を築こうって、そう言ったじゃねぇか!お前は俺のハーレムのメンバーだろ!?頼むから、戻ってきてくれよぉぉぉ!」
だけど、その声もまた虚しく響くだけだった。麗華はアカマターのそばに寄り添い、その瞳は彼だけを映している。俺の言葉は、まるで風のように彼女の中を通り過ぎていくだけだった。
麗華が俺を見た。いや、見下ろしたと言った方が正しい。まるでゴミを見るかのように、虫けらを踏みつけるような冷たい目だった。その視線が突き刺さり、俺の心臓が一瞬止まりかけた。
どうして、そんな目で俺を見るんだよ……?俺たち、一緒に笑い合った仲間だったはずだろうが――。
「……何言ってるの?私、アカマター様のそばにいる。それが私の幸せ。貴方なんて、最初から関係なかったのよ」
――麗華の言葉が、まるで氷の刃のように冷たく響く。俺の中にある僅かな希望すら切り裂かれていく。
「ちょ、ちょっと待てよ、麗華!俺たち……ハーレム仲間だっただろ!?一緒に未来を夢見たじゃねぇか!俺のこと、完全に忘れたのかよ!?」
泣きながら訴える俺。だが、麗華の顔には一切の感情が浮かばなかった。まるで俺の存在そのものが無意味だと言わんばかりに、淡々と見下ろしてくる。
「……哀れね」
――その一言が、俺の心を粉々に砕いた。
哀れ?俺が?
まるで俺がここに存在していること自体が無意味だと言われているような気分だった。麗華にそんな言葉をかけられるなんて……信じたくなかった。
「あ、哀れ……って……」
麗華のその一言が俺の体を凍りつかせた。全身が硬直し、動けない。
俺が哀れだって……?
その時、麗華はさらに冷酷な言葉を放った。
「飯田雷丸、貴方は雄としてアカマター様の足元にも及ばないわ」
「…………そんな……」
掠れた声が俺の喉から漏れる。
麗華は続ける。
「アカマター様は最高の雄。彼のものになることこそ、私にとっての幸せよ。貴方のような幼稚で頼りない人間なんて、私にはもう必要ないの」
その冷酷な宣告に、俺は完全に打ちのめされた。
「麗華……俺は……お前を……」
言葉にならない想いが喉に詰まり、震える声だけが漏れ出した。
しかし、麗華は冷たく微笑むと、何の迷いもなくアカマターに寄り添い、俺に背を向けた。まるで俺の存在なんて最初からなかったかのように。
「アカマター様、私、あなたのためなら何だってします。私に全てを捧げさせてください……」
――俺は、もう完全にアウトだった。
泣き叫びながら、俺は地面にへたりこんでいた。まるで全世界から見捨てられたような気分だった。麗華は一切俺を見ない。ただアカマターだけを見つめ、その胸に顔を寄せている。
アカマターは優しく麗華を抱き寄せ、その背中を撫でながら囁いた。
「もちろんだ、麗華。お前は我が妻だ。共に新しい世界を作り上げよう」
その甘美な言葉が耳に響き、俺は完全に崩れ落ちた。全てが無駄だったんじゃないかと思った。俺はただ、地面に転がる虫けらのように、麗華にとって無意味な存在になり果てた。
「麗華ぁぁぁぁぁぁ!!俺は、俺はお前を――!」
俺の叫びは虚しく空に吸い込まれるだけだった。麗華はアカマターの胸の中で微笑み続け、俺を見ることはなかった。
――その時だ。
アカマターが俺を鬱陶しそうに一瞥し、冷たく静かに言い放った。
「おい。そろそろ、目障りだ。消えろ。」
その言葉はまるで重たい石が俺の胸にぶち込まれるような衝撃だった。息が詰まる。――消えろって……!?
「俺が消える……?」
俺は呆然と立ち尽くした。まるで、この場に存在する価値なんてないと、無言で宣告されたように感じた。
すると、麗華が俺の名前を呼んだ。
「飯田君……あなたは、ただの障害よ。アカマター様の邪魔をする存在なんて、許されないのよ」
俺は唇をギリギリと噛みしめ、涙がこぼれるのを止められなかった。
「……俺は、お前を守りたかっただけなのに……!」
麗華はその言葉を聞いて、冷たく笑った。その笑みは、過去のどの麗華とも違う、氷のように冷酷なものだった。
「守る?……ふふ、笑わせないで」
その嘲笑は鋭い刃となって俺の心に突き刺さった。
これまでの思い出が、全て音を立てて崩れ落ちる。麗華がアカマターに寄り添い、俺を見下ろすその姿は、勝者と敗者をはっきりと分ける光景だった。
「俺……守りたかったんだよ……!」
声はかすれ、涙が頬を伝う。まるで泣きじゃくる子供のようだった。
麗華は冷淡に肩をすくめ、さらにアカマターの胸に顔を寄せる。
「飯田君、今まであなたが私を守ったことなんて一度もない。あなたの役割は終わったのよ」
麗華の冷たい言葉が俺の胸に突き刺さる。それは彼女からの宣告――俺が彼女の人生に何の意味も持たない存在だということを告げる、決定的な一撃だった。
「――――――――ぁ。」
その瞬間、俺の中の力がどんどん萎んでいくのを感じた。体の中から、熱が引いていく。俺力――俺の自信や自己肯定感が源となる魔法。それが、完全に消え失せようとしている。
「……俺力が……消えていく……?」
俺の魔力は、俺が自分を信じることで成り立つ力だ。でも、今の俺は――自分自身に自信なんて持てない。俺は麗華を守ることもできず、アカマターに敗北し、彼女に見捨てられた男だ。
「俺……もう、駄目だ……」
膝から崩れ落ち、泥の中にへたり込む。涙が止まらない。麗華を失った喪失感、そして自分の無力さへの絶望――それが全身を覆い尽くしていく。
俺力が消え、超人的な力も失われた。
完全な絶望。
――――――だが。
この程度の絶望は、異世界で幾度となく乗り越えてきたものだ。
俺の頭に浮かぶのは、異世界で共に戦った仲間たちの顔――マーリン、リディア、セレーネ、リリィ、ラティーナ、アリア。
彼女たちの声が、俺の心に響く。
「負けるな。」
そうだよ、俺は負けるわけにはいかない。
――俺はハーレム王だ。
俺は拳を握りしめる。泥に沈む体から、再び立ち上がる力を振り絞る。
「…………じゃあ、見せてやるよ。」
拳を握りしめ、俺は決意を固める。心の中に眠るハーレム魂が、再び炎を灯した。
「俺のかっこいいところを見せて、もう一回惚れ直させてやるよぉぉぉぉぉぉ!!!」
――いや、そもそも一度も惚れてないし、という麗華の心の声が聞こえた気がするが、それは無視だ!
俺は心に湧き上がる感情を拳に込め、青春ラブコメの主人公みたいな決意で麗華に向かって突撃する。
「うぉぉぉぉぉぉ!!!!」
バキバキに決まった俺の決意。しかし――
その時だった。
目の前に突如として現れたのは、巨大な蛇――アカマターの本体だ。
地面から沸き立ったかのように、その巨体が暗闇の中で堂々と現れる。巨大な鎌首を持ち上げた姿は、まるで自然の怒りが具現化したかのような威圧感だ。周囲の空気が一気に重くなる。
俺の行く手を阻むかのように立ちはだかるその姿は、地球が悪ノリして生み出した怪獣かと見紛うほどの圧倒的な存在感。
だが――俺は、負けるわけにはいかない。
「俺を止める気かよ、アカマター……でも、負けねぇ!」
拳を握り直し、泥まみれの体を奮い立たせる。たとえ相手がどれだけ巨大だろうと、たとえ俺がどれだけ傷ついていようと、俺には立ち向かう理由がある。
麗華を取り戻すために――俺は、この道を引き返すつもりなんて、これっぽっちもない!
アカマターが鋭い目を光らせ、瞬時に俺へ襲いかかる。その巨体から繰り出される攻撃は凄まじい速さと威圧感だ。一瞬ひるみかけたが、俺はその一撃をなんとかかわそうと身を投げる。
――だが、その時。
麗華の冷たい声が響き渡り、俺の心臓が一瞬凍りついた。
「邪魔よ、飯田君。」
次の瞬間、闇の力を纏った麗華の呪術が俺に向かって放たれる。それはまるで生きた闇そのものだ。冷たく、絡みつくように、暗黒の波が俺を飲み込もうと迫ってくる!
「くそっ……!!」
俺は全力でその闇の波をかわす。だが、追撃は止まらない。アカマターの巨体が麗華の呪術に合わせて動き、俺を追い詰めようとする。
二人の攻撃――まさか、こんなにも息がぴったりだなんて!
「冗談だろ!?麗華、お前がこんな奴と……!」
アカマターの尾が地面に叩きつけられた瞬間、激しい衝撃波が発生する。俺はその波に飲み込まれ、吹き飛ばされそうになる。全身が悲鳴を上げる中、何とか踏みとどまる。
だが、状況は最悪だ。麗華の呪術が闇の網のように俺を絡め取り、アカマターの巨大な攻撃がその網を補完するかのように動く。そのコンビネーションはまるで完璧な戦闘チームだ。
「麗華……本当に、そいつと一緒に戦ってるのかよ……!」
俺の問いかけは虚しく響き、彼女の赤い瞳は俺を冷たく見下ろしているだけだ。
俺の全力は、この二人の連携の前ではまるで及ばない。まるで泥沼にはまり込んでいるかのような戦い。必死にもがきながらも、俺の体力はどんどん奪われていく。
「まだだ……まだ終わっちゃいねぇ……!」
拳を握り締め、気力を奮い立たせる。だが、その瞬間、麗華の闇の呪術が形を変え、俺の頭上で網のように広がっていくのが見えた。
「――くそっ!」
避ける間もなく、闇の網が俺を絡め取る。体が拘束され、全身が締め付けられるような感覚に襲われた。
「素晴らしいぞ、麗華。」
アカマターの声が冷たく響く。その直後、彼の巨大な尻尾が振り上げられ、俺に向かって振り下ろされる。
「――――――――――!」
振り下ろされた尻尾の圧倒的な質量が、視界いっぱいに広がる。空気が震え、大地がその攻撃の前に震撼しているのが分かる。逃げ場はない。
「――――これ、やば――――。」
〈ドォン――!!!〉
尻尾が俺の体を叩きつけた瞬間、衝撃が全身を駆け巡った。骨がきしむ音が頭蓋の奥で響く。内臓が圧迫され、息が詰まる。視界が真っ白になり、脳が体に何が起きているのか理解しようとするが、痛みがその余裕を許さない。
意識が遠のいていく。目の前の世界がぼやけ、色が失われ、音が途切れていく。視界が薄暗い闇に包まれ、脳が徐々に沈んでいくような感覚に陥る。
「ダメだ……まだ……倒れるわけには……!」
俺は自分の唇を強く噛んだ。
〈ガリッ――!〉
鋭い痛みが走り、唇から血の味が広がる。それが、朦朧とした意識を無理やり引き戻した。
体中の力を振り絞り、泥にまみれながら何とか立ち上がる。足は震え、息が荒い。それでも、俺は拳を握りしめた。
「――――案外、頑丈だな。」
アカマターが冷たく言い放つ。その瞳には、まだ余裕がある。
麗華の瞳は――なおも冷たい。感情の欠片も見えない目で俺を見下ろしている。その姿は、俺を倒すために完全にアカマターと一体化しているかのようだった。
俺は拳を鳴らしながら口元に薄い笑みを浮かべた。体中が悲鳴を上げているけれど、そんなの気にしてる場合じゃねぇ。挑発だ。ここで奴のプライドを逆撫でする一撃をかましてやる。
「おいアカマター、その程度かよ。」
静かに言葉を紡ぎながら、俺はあえて肩をすくめてみせる。
「なあ、麗華のサポート付きでその結果? それで『最強の蛇妖怪』って……マジ? なんか悲しくならねぇ?」
痛む体を無理やり動かして立ち向かう俺に、アカマターが薄く笑う。
「ほう……ならば、もっと楽しませてくれ。」
麗華の呪術が再び闇を纏い、アカマターの攻撃と共に俺を押しつぶそうと迫ってくる。だが――俺は避ける。かろうじて、ギリギリで。
麗華の呪術とアカマターの圧倒的な力に、俺の体は限界に近づいていく。腕が痺れ、足はもうまともに踏ん張ることさえ難しい。
「それでも……それでも俺はお前を取り戻すんだよ……!」
俺の拳は震え、体中に激痛が走る。血と汗が流れ落ち、視界が霞んでいく。それでも、俺はあきらめない。
「……麗華。お前は俺の仲間だ!大事な家族だ!!こんなところで失う訳にはいかねぇんだよ!」
声を振り絞りながら、俺は再び二人に向かって駆け出した。胸の奥で燃えるのは、消えることのない熱――俺の仲間を取り戻すための意志だ。
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