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第68話 修学旅行28
しおりを挟む「え、いや、あの……その……」
何か返事をしようとするが、言葉がまともに出てこない。なんだこれ?俺は普段こんなに動揺するタイプじゃないだろ!?
麗華の視線が微かに揺れているのを感じる。それはまるで、何かを期待しているような、でも少し不安そうな――そんな表情だ。
俺は深呼吸して、自分を無理やり落ち着かせようとするが、どうにも胸の高鳴りが止まらない。
「……飯田君、今日はありがとう。」
麗華がふっと小さく微笑み、柔らかい声でそう言った。その言葉が妙に距離を縮めてくる気がして、俺はドキッとしてしまう。
「あ、いや、こっちこそ……」
気の利いた返事をしようと思ったが、言葉が途中で詰まる。
麗華がゆっくりと近づいてきて、俺の視線をまっすぐに捉えた。その瞳には、何かを探るような光が宿っていて、俺の胸はドキドキと高鳴り始める。
「……少しだけ、話してもいい?」
耳元で囁くような麗華の声に、俺は完全にノックアウト寸前だった。
「あ、あぁ……もちろん……!」
何とか声を絞り出しながら頷くと、麗華はほんのり微笑み、さらに俺の方へ体を傾けてきた。
「ねぇ、飯田君は私のどういうところが好きになったの?」
突然の質問に、俺の脳内が一瞬真っ白になる。
「えっ……?」
戸惑う俺に、麗華はさらに追い打ちをかけるように、少しだけ首をかしげながら、再び問いかけてきた。
「教えて、飯田君?」
その仕草が妙に可愛くて、でもどこか色っぽくて、俺は思わずゴクリと喉を鳴らしてしまった。心臓が暴れるように早くなる。なんだこの状況は?
俺はベッドの上で体を起こし、できるだけ落ち着いた態度を装いながら、麗華の目をしっかりと見つめ返した。
「……麗華のことを好きになった理由?」
麗華が静かに頷く。彼女の瞳が、俺の答えを真剣に待っている。
俺は深呼吸をして、頭の中で言葉をまとめる。そして、意を決して話し始めた。
「最初はまず、憧れから始まった。お前っていつもクールでしっかりしてて、何でもできる完璧な人に見えたから。俺みたいな奴には高嶺の花だったんだよ。」
麗華の表情がほんの少し柔らかくなる。
「でも、一緒にいるうちに分かったんだ。お前が、ただ完璧なだけじゃないってこと。強がりだけど、本当は誰よりも優しくて……そして、どこか不器用なところもある。そういう全部を知った時、俺は……お前のことが、本当に大切になった。」
俺の言葉に、麗華は頬を赤らめながらも、じっと俺を見つめ続けている。
「それに、今日だってそうだ。お前は自分を責めながらも、みんなのことを気遣ってくれてた。そういうところが……俺は好きなんだよ。」
最後にそう言い切ると、麗華はほんの少しだけ目を伏せ、照れくさそうに微笑んだ。
「……ありがとう。飯田君。」
その声は、いつもよりも優しく、柔らかかった。そして俺は、その微笑みを見るだけで、今日の全てが報われた気がした。
だが、その瞬間、麗華はふと視線を落とし、少しだけ照れくさそうに俯いた。そして、まるで意を決するように、小さな声で呟く。
「……じゃあ、今度は私が言う番ね。」
「えっ?」
思わず間抜けな声を漏らしてしまう俺に、麗華はゆっくりと顔を上げた。その瞳はどこか真剣で、それでいて恥ずかしさが混じっているように見える。
「飯田君が、どうして私の理想だったのか……それを、ちゃんと話すわ。」
「マジか……!」
俺は緊張で思わず背筋を伸ばす。まさか、麗華からこんなに直接的な言葉を聞けるなんて思ってもいなかった。心臓の鼓動が早まるのを感じながら、麗華の言葉を待つ。
麗華は一度目を閉じて小さく息を吸い、静かに話し始めた。
「最初はね、飯田君のことを……正直、ちょっといい加減な人だと思ってたの。」
「そ、そりゃまぁ、俺は割と適当だからな……」
少し苦笑いしながら答える俺に、麗華は微笑みながら続ける。
「でもね、一緒にいるうちに分かったの。あなたは、いい加減なんじゃなくて……何よりも人を大切にしてる人だってこと。」
その言葉に、俺は思わず息を飲む。
「どんなに自分が辛くても、他人を優先して助けようとする。どんなにふざけてるように見えても、大事な人のことを一番に考えてる。……そういうところが、私にはすごく眩しかった。」
麗華の声が少しだけ震える。俺は思わず彼女の顔を見つめた。
「私……ずっと一人で強くならなきゃって思ってた。誰かに頼ったり、甘えたりするのが怖かったの。でも、飯田君を見てると、そんな気持ちが少しずつ変わっていったの。」
「麗華……」
「だから……あなたが私の理想だったのよ。私が、強がらずにいられる相手……私の弱い部分を、許してくれる人。」
彼女の瞳には、ほんの少しだけ涙が浮かんでいるように見えた。けれど、その表情はどこか安心しているようでもあった。
その瞬間、麗華が小さな声で呟いた。
「だから……そんな貴方の事が好きよ。飯田君。」
その言葉が静かに響いた瞬間、部屋の空気が変わったような気がした。麗華がそう言いながら微笑む姿は、まるで宝石のように輝いて見えた。その笑顔はあまりにも綺麗で、俺は一瞬、何を言えばいいのか分からなくなった。
心の中が温かくなる。いや、温かいなんて生ぬるいものじゃない――胸の奥がじんわりと熱くなって、全身にその熱が広がっていく感覚がした。
「あなたのことが大好き。」
麗華がもう一度、今度ははっきりと言葉にした。彼女の瞳は揺るぎなく、まっすぐ俺を見ている。その瞬間、俺の頭の中で何かが弾けた――いや、それ以上の衝撃だった。
――ズキューン!!!
まるで心の中に大砲をぶっ放されたかのような衝撃が走る。胸がドキドキどころじゃなく、爆発寸前だ。俺は目の前の麗華の姿に完全に飲み込まれていた。
麗華は少し頬を赤らめながらも、その瞳はしっかりと俺を見据えていた。恥ずかしそうな表情が余計に可愛くて、でもどこか勇気を振り絞っているように見える。その姿に、俺はますますどうすればいいか分からなくなる。
「俺も……麗華のことが好きだ。本当に……大好きだ。」
気づけば俺の口からそんな言葉が出ていた。いや、出てしまったというよりも、自然に溢れたというべきだろう。俺の心の底からの本音が、言葉になっていた。
俺の顔が熱い。いや、全身が熱い。こんなに真剣に、そして素直に気持ちを伝えたのは初めてかもしれない。けれど、それ以上に麗華の微笑みが眩しくて――もう完全にやられてしまった。
麗華は俺の言葉を聞いて、ふわっと優しい笑顔を見せた。その笑顔には、どこか照れくささと、でも嬉しさが混じっているように見える。その姿が、俺の心をさらに温かくしていく。
俺、今……本当にハーレム王になった気分だよ……!!
俺は無意識のうちに、彼女の横顔をじっと見つめていた。風呂上がりの髪はまだ少し湿っていて、月明かりが差し込むカーテン越しの光が、その艶やかな髪をほんのり照らしている。頬に浮かぶ赤みと、恥ずかしそうに微笑む唇。その全てが眩しすぎて、言葉を失ってしまう。
「……マジで、麗華って……どうしてそんなに可愛いんだよ……」
気がつけば、心の声がそのまま口を突いて出ていた。自分でも驚くくらい素直な言葉だったけれど、もうそれを止める余裕なんて俺にはなかった。
麗華はその言葉に驚いたように目を見開き、それからすぐに頬を赤らめてうつむいた。
「……そ、そんなこと、急に言わないでよ……恥ずかしいじゃない……」
そう言いながら、麗華は照れ隠しのように俺の腕をそっとつついた。その仕草がまた妙に可愛くて、俺はさらに追い詰められる。
「いや、だってさ……本当に可愛いんだよ……反則だろ、これ……」
思わず呟いた俺の言葉に、麗華はさらに顔を赤くして、今度は俺の方をじっと見つめた。
「……本当に?」
その一言に、俺は心臓が止まりそうになる。こんな純粋な瞳で見つめられたら、誰だって言葉を失うだろう。
「ああ、本当に。麗華、お前はマジで……最高に可愛い。」
俺は真剣に答えた。照れ隠しもなく、ただありのままの気持ちを伝えた。
麗華は少し驚いたように目を見開いた後、ふわりと微笑んだ。その笑顔は、これまで見たどの表情よりも優しくて、暖かかった。
「くそ……こんなの……我慢できねぇよ……。」
俺は内心の熱が一気に吹き出しそうになる。今の麗華が可愛すぎて、冷静でいられるはずがない。
麗華は俺の言葉に少し驚きながらも、薄く笑って言った。
「今まで我慢してくれてたの?」
その言葉に、俺は思わずドキリとしながらも、必死に落ち着こうとして言葉を絞り出す。
「そりゃ、するさ。麗華の気持ちが一番大事だからな。」
なんとか体裁を保とうとする俺に、麗華は目を細めて微笑んだ。
「確かに飯田君って……意外に紳士よね。」
その優しい笑顔と落ち着いた声に、俺の心臓は破裂寸前だ。「紳士」だなんて言われたこと、これまで一度もなかったからな!
「そ、そうだろ?俺だって……まぁ、こう見えて結構気を使ってるんだぜ。」
なんとかカッコつけようとするが、麗華はそのまま、俺をじっと見つめて言った。
「……ありがとう、飯田君。私のこと、ちゃんと考えてくれて。」
その一言が、俺の胸にズシンと響いた。今、この瞬間、俺は確信した――俺、やっぱり麗華のことが大好きだ。
俺は口を開こうとするが、感情が溢れすぎて言葉にならない。ただ麗華の瞳をじっと見つめる。彼女の表情は穏やかで、瞳にはどこか照れたような光が宿っている。
「でも、今日は我慢しなくていいわよ?」
次の瞬間、麗華が放ったその一言は、俺の頭の中で雷鳴のように響き渡った。
――何かが、プツンと切れた瞬間だった。
麗華は少し恥ずかしそうにしながらも、じっと俺を見つめている。その瞳にはどこか覚悟のようなものが宿っていて、いつもの冷静で知的な麗華とは違う、柔らかな雰囲気を纏っていた。その表情は、少女のような可愛らしさと大人の女性の魅力が混ざり合っていて、俺の動揺は最高潮に達していた。
俺の手は、気づけばわずかに震えていた。理性が薄れるのを必死に止めようとする一方で、胸の中の熱が抑えきれずに膨れ上がっていく。俺の心の中では、天使と悪魔が取っ組み合いの大喧嘩を始めていた。
――「我慢しなくていい」って? 本当に? いや、これは何かのドッキリか?けど、俺、これをスルーできるほど大人じゃねぇぞ!
心臓がドキドキと爆発するような音を立てている中で、俺は彼女をじっと見つめ返した。目の前の麗華の頬が薄紅色に染まっていて、その視線はどこまでも真っ直ぐだ。息が詰まる。俺の思考はどんどん麻痺していった。
「麗華……!俺……!」
俺は叫びたくなるほどの感情を抱えながら、気づけば体が勝手に動いていた。理性の警鐘なんて、もうどこにも聞こえない。脳内で慎重派たちが次々と爆破され、俺の中の本能が完全に支配権を握った瞬間だった。
俺の手が麗華の顎に触れる。彼女の肌の柔らかさが指先に伝わると同時に、心臓がさらに速く高鳴る。何も言わず、ただ彼女を見つめる。麗華の瞳がわずかに揺れ、でも彼女は目をそらさない。
俺はそのまま、彼女の顔をぐいっと引き寄せた。
そして――
唇が重なった瞬間、世界が止まった。
麗華は驚いたように目を見開き、唇を重ねられたまま俺を見つめている。その表情には驚きがあったが、頬は真っ赤に染まり、どこか照れたようでもあった。俺の心臓は、もはや爆発寸前だ。
「……もう、強引ね……」
麗華が顔を真っ赤にしながら小さく囁く。その声には責めるような響きがあるけれど、その言葉とは裏腹に、彼女はそっと目を閉じた。その瞬間、俺の胸が熱く満たされる。
彼女の唇は柔らかく、触れるたびに心の奥底から湧き上がる感情が溢れ出しそうになる。これまで抑え続けてきた思いが、一気に爆発するように、彼女に伝わっていく。
俺は彼女を抱きしめた。その体は温かく、柔らかい。麗華もまた、俺の背中にそっと腕を回し、力を込めて応えてくれる。
――もう、何もいらない。この瞬間だけで、俺のすべてが満たされた気がした。
俺の頭の中は真っ白になり、言葉も考えもすべてが消え去っていく。ただ彼女の存在だけが、今この瞬間、俺のすべてだった。
「麗華……」
声にならない思いを呟きながら、俺はさらに彼女を抱きしめる。その瞬間、俺たちの間に言葉なんて必要ないと感じた。ただ、互いの温もりを感じるだけで、すべてが伝わる気がしたから。
――――――
朝が来た。
カーテンの隙間から差し込む柔らかな陽の光が、部屋を静かに照らす。寝ぼけた意識の中で、その光が俺の顔に触れるのを感じた。まどろみの中で目を開けると、天井がぼんやりと見える。
――昨日の夜のことを思い出す。
瞬間、胸の奥から込み上げてくる温かな感覚。微かな残り香が、俺の記憶を鮮明に呼び起こした。
肌の温もり、触れ合う感覚、潤んだ瞳で俺を見つめる麗華の表情。彼女の柔らかな声が、耳に残っている気がする。
――あれが、生きるっていうことなんだろうな。
自然と微笑みがこぼれる。俺はゆっくりと横を向いた。
麗華がいる。
ベッドの隣に眠る麗華の姿が目に飛び込む。シーツにくるまった彼女の肩が、小さく上下している。少し乱れた髪が、顔の横にふわりとかかっている。その寝顔は驚くほど穏やかで、美しい。
昨夜の彼女の照れた顔、優しい瞳、そして愛おしい仕草が頭に浮かんでくる。そのたびに胸がぎゅっと締め付けられるような気持ちになる。
俺はそっと手を伸ばし、彼女の髪を指先で優しく整えた。触れるたびに感じるその柔らかさと温もりに、思わずため息が漏れる。
――俺は、本当に幸せ者だ。
昨日の出来事は、俺にとって一生忘れられない瞬間になった。麗華と共有した時間、触れ合い、感じた彼女の想い――そのすべてが、俺の中で永遠に刻み込まれた。
少しの間、麗華の寝顔を見つめ続ける。まるでこの瞬間が永遠に続けばいいと思うくらい、満たされた気持ちだった。
すると、麗華が小さく身じろぎをした。薄く目を開けると、まだ眠たそうな瞳で俺を見つめてくる。
「……おはよう、飯田君。」
その声はかすれていて、昨日の夜の彼女の柔らかさをそのまま映し出しているようだった。
「おはよう、麗華。」
俺は微笑みながらそう答えた。これから始まる新しい一日が、どんなものになるのか楽しみだった。
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