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第67話 修学旅行27
しおりを挟むベッドに横になりながら、俺と麗華は今日の出来事を振り返っていた。暗闇の中、微かに聞こえる波の音が、部屋の静けさをさらに引き立てている。
石井のマーメイド探し、琉球ガラスでのマラカス事件、妖怪の騒動、アカマターとの戦い。
そして――――――黒瀬と鳥丸との邂逅。
なんか色々あったけど、こうして落ち着いた空間で話してると、少しホッとする。
「……こうして麗華と話してると、なんかホッとするよ。」
俺がぽつりと呟くと、麗華は少し驚いたような顔をした後、微笑んだ。
「私もよ。……今日は、本当に色々あったから。」
その言葉に、俺は少し安堵した。暗闇の中で、こうして話せるだけで、なんだか心が軽くなる気がする。
「でも本当に麗華がアカマターに洗脳された時はどうなるかと思ったぜ……」
俺はポツリと呟いた。声に出して話したのはいいけれど、その瞬間、胸の奥がズキリと痛んだ。目頭が熱くなり、あの瞬間の光景が頭をよぎる。
麗華が冷たい目をして、俺をまっすぐに見下ろしていたあの姿――まるで別人のようで、全てが壊れてしまったかのような絶望感だった。
「……本当に、怖かったんだよ。」
俺はベッドの上で目を伏せ、無意識に拳を握りしめていた。心の中にわだかまっていた感情が、今さらのように溢れ出す。
「麗華がアカマターのそばに立って、俺のことを完全に拒絶して……お前の目に、俺じゃなくてあいつが映ってるのが、本当に……嫌でさ。」
声が少し震えるのを感じる。普段はこんな弱いこと、絶対に言わないんだけど、今日だけはどうしても抑えきれなかった。
「……飯田君……」
麗華の声が暗闇の中で静かに響く。彼女の気配が少し近づいてきたのが分かった。
「でもな、諦められるわけなかったんだよ。お前がどんなに冷たくなっても、俺はお前を取り戻すって……必死だった。」
俺は息を吸い込んで、涙を堪えながら続ける。
「……だって、お前がいないハーレムなんて、考えられないだろ。」
その言葉に、麗華がクスッと小さく笑った気がした。
「飯田君……ありがとう。」
彼女の声が柔らかく、少し掠れて聞こえた。
「私……覚えてる。あなたが私を取り戻そうと、必死で叫んでくれたこと。」
俺は彼女の言葉に驚いて顔を上げる。
「え……覚えてるのか?」
「ええ。全部覚えてるわ。」
麗華は静かに、でも確かな声で言った。
「あなたがどんなにバカなことを叫んでくれたのかも……恥ずかしいくらい全部ね。」
そう言いながら、少しだけ笑う彼女の声に、俺は心底ホッとした。
「でもね……その時、心の奥底で、確かにあなたの声を聞いてたの。どんなにアカマターに支配されても、あなたの声だけは届いていたのよ。」
麗華がそう言って、そっと俺の手を握った。彼女の温かい手の感触が、胸の中に広がる。
「……本当に、ありがとう。飯田君。」
彼女の言葉が、心にじんわりと染み込んでいく。俺は握られた手に少し力を込めて、微笑んだ。
「……これからも、何があっても守るからな。」
俺のその言葉に、麗華は小さく頷き、微笑みを返してくれた。暗闇の中、俺たちの手はしっかりと繋がっていた。
「ねぇ、飯田君。」
麗華がふと口を開いた。
「実はね……アカマターが私に見せた幻覚、あなたにそっくりだったのよ。」
「…………え?俺に?」
俺は思わず体を起こしかけた。
「そうよ。」
麗華は少し恥ずかしそうに視線を逸らしながら続けた。
「アカマターの幻覚は、自分が最も理想とする男性の姿を見せるっていう妖術だったみたいなの。だから、つまり……」
俺は一瞬、言葉の意味を理解できずに目をパチパチさせた。
「……ってことは、麗華の理想の男って……俺だったの?」
「まぁ……そういうことになるわね。」
麗華は照れ臭そうに頬を染めながら、小さく頷いた。その姿がなんとも可愛くて、俺は思わず心の中でガッツポーズ!
「おおお!マジか!?俺が麗華の理想だったなんて、最高じゃねぇか!」
テンションが爆上がりし、ベッドの中で思わずガッツポーズを決めた俺。
「いやー、やっぱり俺、ハーレム王にふさわしいんだな!麗華も見る目があるぜ!」
「ちょっと、そんなに調子に乗らないで。」
麗華は苦笑しながら、俺の浮かれた様子を見ていたが、どこか呆れ半分、優しさ半分といった表情だ。
「でも……そうね、なんだかんだで、あなたが私の理想だったっていうのは、否定できないみたい。」
「おいおい、もう一回言ってくれよ!俺が麗華の理想だってさぁ!」
俺は完全に調子に乗りながら、ニヤニヤしつつ麗華に詰め寄る。
「……やっぱり言わなければよかったかしら。」
麗華は小さく溜め息をつきつつも、どこか笑っている。その表情が、普段のクールな麗華とは少し違って見えた。
――まさか、アカマターのおかげでこんなラッキーな話になるとは思わなかった。
心の中で謎の感謝をアカマターに捧げつつ、俺は自分の胸の奥で燃え上がる「俺力」を感じた。
「よっしゃ、俺力フルチャージだ!この勢いで、もっと麗華を幸せにしてやるぜ!」
心の中でそう叫びながら、俺はふと麗華の顔をじっと見つめた。暗闇の中でも、その端正な横顔はくっきりと浮かび上がって見える。美しくて、冷静で、いつも俺を助けてくれる彼女。そんな麗華を間近で見ていると、改めて自分の胸の中にある感情が押し寄せてくる。
――俺、ずっと麗華に憧れてたんだよな。
出会った頃から、彼女は俺にとって「高嶺の花」だった。強くて、賢くて、美しくて、俺なんかが届く存在じゃないと思っていた。でも、そんな彼女が――俺を理想だと思ってる?
信じられないような事実に、胸がじんわりと熱くなる。
「……飯田君?」
麗華が不思議そうに俺を見てくる。その瞳は、どこか柔らかくて穏やかだ。
「あ、いや、何でもない。ただ……なんか不思議だなって思ってさ。」
「不思議?」
「俺、ずっとお前のこと高嶺の花だと思ってたんだよ。なのにさ、お前の理想が俺だって聞いて、なんか……運命感じるっていうか。」
照れ臭くて、少し目を逸らしながらも正直に言葉を紡いだ。
「運命、ね……ふふっ。」
麗華が口元に手を当てて、小さく笑う。その笑顔は、普段見せるクールな雰囲気とは違って、どこか優しくて暖かい。
「確かに……こうして一緒にいること自体、運命かもしれないわね。」
麗華のその言葉に、俺の胸が一層熱くなる。
「だろ?俺たち、なんだかんだでそういう星の下に生まれたんだよ。ハーレム王とその婚約者って運命だ!」
調子に乗って言うと、麗華は少し呆れたように笑った。
「またそうやって、自信満々なところが出てきたわね。」
「だって、それが俺だからな!」
俺の言葉に、麗華は再び笑みを浮かべる。今夜、こうして二人で話している時間が、俺にとってかけがえのないものになっている気がした。
「ありがとうね、飯田君。」
唐突に麗華が小さく呟いたその言葉に、俺は少し驚いて顔を上げる。
「お前が言うのかよ。むしろ俺が、お前にありがとうだぜ。」
心の中で「これからもよろしくな」と呟きながら、俺は彼女の横顔をそっと見つめ続けた。
「いや~いい事聞いたな~。今日はぐっすり眠れそうだなぁ!」
なんて俺が上機嫌に言ったその瞬間、隣から聞こえた麗華の声が、全てをひっくり返した。
「……寝ちゃうの……?」
ほんのり甘く、どこか色っぽい響きに、俺は一瞬で目が覚め――いや、覚めすぎた!
「えっ……!?」
驚きのあまり反射的に麗華の方を振り向く。暗闇の中、ほんのり月明かりに照らされた麗華が、俺の顔をじっと見つめている。
その瞳はいつものクールさよりも柔らかく、どこか誘うような雰囲気を漂わせていて――心臓がバクバクと鳴り始める。
さっきまでの俺の浮かれたテンションなんて吹き飛んで、まるで時間が止まったかのようだ。
「……寝ちゃうの?」
麗華が再び同じ言葉を繰り返した。
その声が、優しくて甘くて、どこか危険な香りすら漂わせている。どうしても聞き逃せない響きがあって……俺の頭は完全にパニック状態に陥った。
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