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22.これから新しい一歩が始まる(完)
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「はい、アーンして下さいよ。」
「そんな事、誰が。」
「あら?まさか、恥ずかしいのですか?何て事ないでしょう?」
ふふふ。尻込みするマクレガー隊長なんてらしくない。面白い。
からかいたくなっちゃう。
「誰のお陰で助かったんでしたっけ?」
「フン!またそれを言うか。クソッ、一度だけだぞ。」
まあ、大きな口。サジに乗せた薬がスッと口の中に入った。
ふふふ、楽しくて仕方がない。
「さあ、もう一口ですよ。」
「退院したら覚えておけよ。」
「あら?覚えておく事なんてありましたか~?」
「おい、可愛くないぞ。本当に覚えておけよ。」
あらら、意地の悪い目をしているわ。
まあ、それだけ元気になったと言う事ね。
さあ、退院したら何処のお店に連れてってもらおうかしら?
*****
「キャー!降ろして!」
「しっかり掴まってろと言っただろ?
ここから更に道が悪いぞ。もっと掴まれよ。ハハハハッ!」
「意地悪!」
「ハハハハッ!」
もうありえない!初めて馬に乗せてくれた時は、気遣ってくれて優しい人だなぁと胸に響いたけれど、あれは幻だった!
こんなに早く走って揺らしてしがみつかないと乗ってられないじゃない!
「さあ、着いたぞ。よく頑張ったな。褒めてやる。手を。」
あの時みたいに馬から降りるのに手を取ってくれ抱きしめるように支えてくれる。
ん?ん?
離してくれない。
「あの~?」
ゆっくり離してくれたが目が合った視線は離してくれない。
そんな真顔をされたら戸惑ってしまう。
「どうしました?」
まだ黙りこんでいる。
わすがに唇が動いたと思ったら
「イヤ、いい。」
そう言うと馬を木に繋ぎに行ってしまった。
変なの。
気を取り直して周りを見ると一面の花畑だった。白、ピンク、青色の花が咲き乱れている。
「気に入ったか?綺麗だろう?」
「はい、とっても!色とりどりで天然の花束みたいです。フゥー、癒されますね。」
自然と大きく深呼吸をした。
「花は好きか?」
「嫌いな女性はいませんよー。」
「そうか。」
また黙っちゃった。
「あ、あの、、これ料理長さんと一緒に作ったタルトです。あれ?ああ、、割れてしまっちゃってる。。」
あーあ。
馬の揺れが激しくてベースの部分がいくつもに割れてしまった。遠出だからと張り切って作ったのに。
「美味いぞ、ほら。」
気がつくと私の口元にタルトのカケラを握る手が、、
「ほら、早く口を開けろ。」
思っても見なかった事が起こった。
恥ずかしい~!不意打ちだわ。
拒否っていると顔が近づいてきた。
「さあ、食べろ。レイナ殿は何て事ないんだろ?」
ニヤリとしている。
「知らない!」
「食べるなら帰りの馬はゆっくり走ってやってもいいぜ。」
「意地悪!わかったわ。早く、あーん。」
口を開けると手と顔が近ずいてきて、マクレガーが唇を見つめている。
唇にタルトが触れた時、急に離れた。
「いただき!」
隊長が自分の口に放り込んだ。
からかわれた!
カッと顔が赤くなるのを感じる。
「病院でのお返しだ。ハハハハッ!」
「もう!イヤな人!」
恥ずかしさからクルリと後ろを向いてしまった。
「ちょっと待っていろ。馬の様子を見てくる。」
立ち去る音を確認して1人になるとやっと落ち着けた。
丘の上に吹くその風が火照った顔を冷ましてくれ心地が良い。
遠くに見えるこの異世界の街を見下ろせる。中世のような街並みの魔法のある不思議な世界。
私、これからココで生きて行くんだなぁ。
「レイナ殿」
後ろから呼ばれ振り返ると花束を持ったマクレガー隊長が見下ろしていた。
帰って来たのに気がつかなかったのだ。
曇った顔つきをしている。
「どうした?そんなにさっきのが嫌だったのか?」
「えっ?どう言う事?」
「泣くほど嫌だったんだろ?からかいすぎた。すまない。」
私、いつの間にか涙を流していた。
「これは違うんです。えっーと、故郷を思い出してたらいつの間にかってやつでして。」
「そうか。実はアンリからもう帰る事が出来ないと聞いたんだ。その、、また景色の良い場所へ連れてこよう。」
目の前に花束を渡された。
突然の事でさっきまでの、悲しい気分がぶっ飛んだ。
人生初めて男の人から花をプレゼントだった。
「ありがとう。嬉しいです!」
今度は違う涙がにじんできたわ。
「もう泣くなよな。あー、じゃあ、そろそろ帰るとしよう。手を。」
差し出された分厚いマクレガー隊長の手をしっかりと掴んだ。
帰りは穏やかに帰ると言っていたのに!
大笑いする隊長を罵りながら街に戻って来た。
屋敷の前で別れ際、マクレガー隊長がさっきまでと違い真顔で話しかけてきた。
「コホン、レイナ殿、君をエスコートするのはいつも俺でいたい。俺では役不足だろうか?」
「それって、、、」
「ああ。俺の想いだ。応じてもらえないだろうか?」
見上げれば頬が赤くなって不安そうな目をしている。
「私、もうあの水晶は持ってませんよ。」
「ああ関係ないさ。そのな、、初めから気になってたんだ。玲奈殿の事が。だから応じてもらえないか?」
そんな前から?本当に?私の事を?!
信じられず顔を見つめているとまだ不安そうにしている。
「ダメか、、、」
そうだ!早く返事をしないと。
「よろしくお願いします。」
「本当か!良かった~!フゥー」
マクレガー隊長は大きな息を吐いて手で顔を覆っている。
凄く恥ずかしそうだ。
異世界で初めての彼氏が出来た。
私の事をどこまで知っているのか?
もし、異世界人と知った時、気持ちがられるだろうか?去っていくだろうか?
不安がよぎらない訳じゃない。
だけど、ここから一歩進んでいこう。
そんな日が来ないように信頼を愛を積み重ねて。
前へ、前へ行くとしよう。
「そんな事、誰が。」
「あら?まさか、恥ずかしいのですか?何て事ないでしょう?」
ふふふ。尻込みするマクレガー隊長なんてらしくない。面白い。
からかいたくなっちゃう。
「誰のお陰で助かったんでしたっけ?」
「フン!またそれを言うか。クソッ、一度だけだぞ。」
まあ、大きな口。サジに乗せた薬がスッと口の中に入った。
ふふふ、楽しくて仕方がない。
「さあ、もう一口ですよ。」
「退院したら覚えておけよ。」
「あら?覚えておく事なんてありましたか~?」
「おい、可愛くないぞ。本当に覚えておけよ。」
あらら、意地の悪い目をしているわ。
まあ、それだけ元気になったと言う事ね。
さあ、退院したら何処のお店に連れてってもらおうかしら?
*****
「キャー!降ろして!」
「しっかり掴まってろと言っただろ?
ここから更に道が悪いぞ。もっと掴まれよ。ハハハハッ!」
「意地悪!」
「ハハハハッ!」
もうありえない!初めて馬に乗せてくれた時は、気遣ってくれて優しい人だなぁと胸に響いたけれど、あれは幻だった!
こんなに早く走って揺らしてしがみつかないと乗ってられないじゃない!
「さあ、着いたぞ。よく頑張ったな。褒めてやる。手を。」
あの時みたいに馬から降りるのに手を取ってくれ抱きしめるように支えてくれる。
ん?ん?
離してくれない。
「あの~?」
ゆっくり離してくれたが目が合った視線は離してくれない。
そんな真顔をされたら戸惑ってしまう。
「どうしました?」
まだ黙りこんでいる。
わすがに唇が動いたと思ったら
「イヤ、いい。」
そう言うと馬を木に繋ぎに行ってしまった。
変なの。
気を取り直して周りを見ると一面の花畑だった。白、ピンク、青色の花が咲き乱れている。
「気に入ったか?綺麗だろう?」
「はい、とっても!色とりどりで天然の花束みたいです。フゥー、癒されますね。」
自然と大きく深呼吸をした。
「花は好きか?」
「嫌いな女性はいませんよー。」
「そうか。」
また黙っちゃった。
「あ、あの、、これ料理長さんと一緒に作ったタルトです。あれ?ああ、、割れてしまっちゃってる。。」
あーあ。
馬の揺れが激しくてベースの部分がいくつもに割れてしまった。遠出だからと張り切って作ったのに。
「美味いぞ、ほら。」
気がつくと私の口元にタルトのカケラを握る手が、、
「ほら、早く口を開けろ。」
思っても見なかった事が起こった。
恥ずかしい~!不意打ちだわ。
拒否っていると顔が近づいてきた。
「さあ、食べろ。レイナ殿は何て事ないんだろ?」
ニヤリとしている。
「知らない!」
「食べるなら帰りの馬はゆっくり走ってやってもいいぜ。」
「意地悪!わかったわ。早く、あーん。」
口を開けると手と顔が近ずいてきて、マクレガーが唇を見つめている。
唇にタルトが触れた時、急に離れた。
「いただき!」
隊長が自分の口に放り込んだ。
からかわれた!
カッと顔が赤くなるのを感じる。
「病院でのお返しだ。ハハハハッ!」
「もう!イヤな人!」
恥ずかしさからクルリと後ろを向いてしまった。
「ちょっと待っていろ。馬の様子を見てくる。」
立ち去る音を確認して1人になるとやっと落ち着けた。
丘の上に吹くその風が火照った顔を冷ましてくれ心地が良い。
遠くに見えるこの異世界の街を見下ろせる。中世のような街並みの魔法のある不思議な世界。
私、これからココで生きて行くんだなぁ。
「レイナ殿」
後ろから呼ばれ振り返ると花束を持ったマクレガー隊長が見下ろしていた。
帰って来たのに気がつかなかったのだ。
曇った顔つきをしている。
「どうした?そんなにさっきのが嫌だったのか?」
「えっ?どう言う事?」
「泣くほど嫌だったんだろ?からかいすぎた。すまない。」
私、いつの間にか涙を流していた。
「これは違うんです。えっーと、故郷を思い出してたらいつの間にかってやつでして。」
「そうか。実はアンリからもう帰る事が出来ないと聞いたんだ。その、、また景色の良い場所へ連れてこよう。」
目の前に花束を渡された。
突然の事でさっきまでの、悲しい気分がぶっ飛んだ。
人生初めて男の人から花をプレゼントだった。
「ありがとう。嬉しいです!」
今度は違う涙がにじんできたわ。
「もう泣くなよな。あー、じゃあ、そろそろ帰るとしよう。手を。」
差し出された分厚いマクレガー隊長の手をしっかりと掴んだ。
帰りは穏やかに帰ると言っていたのに!
大笑いする隊長を罵りながら街に戻って来た。
屋敷の前で別れ際、マクレガー隊長がさっきまでと違い真顔で話しかけてきた。
「コホン、レイナ殿、君をエスコートするのはいつも俺でいたい。俺では役不足だろうか?」
「それって、、、」
「ああ。俺の想いだ。応じてもらえないだろうか?」
見上げれば頬が赤くなって不安そうな目をしている。
「私、もうあの水晶は持ってませんよ。」
「ああ関係ないさ。そのな、、初めから気になってたんだ。玲奈殿の事が。だから応じてもらえないか?」
そんな前から?本当に?私の事を?!
信じられず顔を見つめているとまだ不安そうにしている。
「ダメか、、、」
そうだ!早く返事をしないと。
「よろしくお願いします。」
「本当か!良かった~!フゥー」
マクレガー隊長は大きな息を吐いて手で顔を覆っている。
凄く恥ずかしそうだ。
異世界で初めての彼氏が出来た。
私の事をどこまで知っているのか?
もし、異世界人と知った時、気持ちがられるだろうか?去っていくだろうか?
不安がよぎらない訳じゃない。
だけど、ここから一歩進んでいこう。
そんな日が来ないように信頼を愛を積み重ねて。
前へ、前へ行くとしよう。
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