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5.さようなら
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「お義父様、お義母様、今から出発致します。どうかお元気で。今までありがとうございました。」
「私達の真意を理解してもらえ感謝する。後の事は、私達に任せなさい。それで何処へ行くのか?」
「ここよりは田舎の都市で静かに暮らしたいと思います。場所を知らせない事をお許し下さい。」
「餞別に銀行に君の口座を用意した。これを見せると引き出せる。暗証番号はこの紙に書いてあるから覚えたら燃やしなさい。」
銀色に文字が書かれたキーホルダーとメモを渡された。このお金は私がここを出て生きていく為に必要な物。決して無くしてはならない。
「わかりました。有り難く頂戴します。では、これにて失礼致します。」
深々と頭を下げると振り返る事なく玄関へ向かい待たせていた馬車に乗り込んだ。
彼と婚約して2ヶ月、アルベルトがウィリアム殿下に同行して隣国に10日の旅に出た翌日に侯爵邸を出た。勿論、アルベルトには何も言っていない。
お別れは一昨日、熱い夜に思いをこめた。そして翌日の早朝、出発する彼を見えなくなるまで見送った。ただ、別れの手紙は預けている。
侯爵家を出る事は、あの日、侯爵夫妻に言われてからずっと考えていた。
アルベルトと生きる為、隣に立つ為だと頑張れば頑張る程に彼の隣で生きる責任の大きさと、半年、一年では取得出来ない知識や社交術が必要だと見えてきた。
「私じゃ何万人といる領地民の生活を守れない。」
きっとアルベルトなら優秀な補佐を雇ったり自分の寝る時間を割いて補佐するだろうけど、いつまで?5年?10年?それ以上?
私は、次期侯爵となる彼の為に役にたたないのだ。だから、この決断は間違っていない。
「たけど、だけどね、、、、うっうっ、、ずっと一緒にいたかった。」
馬車の窓からもう決して来る事のない王都の街を見ておこうと思ったのに涙が止まらない。
遠くへ行こう。出来るだけここら離れた所へ。もう2度と偶然にも会う事が無いような所へ。
*****
それから2週間後、アルベルトは、ハルナへのプレゼントを渡したくて心せいて帰宅した。いつもなら玄関ホールに駆け寄ってくるハルナが現れず不審に思った。
「ハルナは?体調が悪いのか?」
出迎えた執事に問うと目を逸らしながら答えた。
「いいえ。その、、、いらっしゃいません。」
「いない?どう言う事だ?説明しろ。」
「実は、、」
説明の途中でアルベルトはハルナの部屋へ向かった。そこには既にハルナの痕跡は片付けられていて、年代物の家具が整然と置かれている殺風景な使われていない部屋だった。
「クソッ!」
父親である侯爵の執務室へ向かうとノックも無しにドアを開けて侯爵の座る執務机に進み出た。
「父上!ハルナはどこへ?何故止めてくれなかったんですか?」
侯爵は、ジッと気が狂わんばかりの息子を見つめ引き出しから手紙を差し出した。
「彼女からだ。探すな。意思を尊重してやれ。」
奪うように受け取り読み終わると手紙を握り締めた。
「何故だ?ハルナ何故なんだ?何処へ、、、」
部屋を飛び出すと馬で飛び出して王都中を探し回り朝まで帰宅はしなかった。
「私達の真意を理解してもらえ感謝する。後の事は、私達に任せなさい。それで何処へ行くのか?」
「ここよりは田舎の都市で静かに暮らしたいと思います。場所を知らせない事をお許し下さい。」
「餞別に銀行に君の口座を用意した。これを見せると引き出せる。暗証番号はこの紙に書いてあるから覚えたら燃やしなさい。」
銀色に文字が書かれたキーホルダーとメモを渡された。このお金は私がここを出て生きていく為に必要な物。決して無くしてはならない。
「わかりました。有り難く頂戴します。では、これにて失礼致します。」
深々と頭を下げると振り返る事なく玄関へ向かい待たせていた馬車に乗り込んだ。
彼と婚約して2ヶ月、アルベルトがウィリアム殿下に同行して隣国に10日の旅に出た翌日に侯爵邸を出た。勿論、アルベルトには何も言っていない。
お別れは一昨日、熱い夜に思いをこめた。そして翌日の早朝、出発する彼を見えなくなるまで見送った。ただ、別れの手紙は預けている。
侯爵家を出る事は、あの日、侯爵夫妻に言われてからずっと考えていた。
アルベルトと生きる為、隣に立つ為だと頑張れば頑張る程に彼の隣で生きる責任の大きさと、半年、一年では取得出来ない知識や社交術が必要だと見えてきた。
「私じゃ何万人といる領地民の生活を守れない。」
きっとアルベルトなら優秀な補佐を雇ったり自分の寝る時間を割いて補佐するだろうけど、いつまで?5年?10年?それ以上?
私は、次期侯爵となる彼の為に役にたたないのだ。だから、この決断は間違っていない。
「たけど、だけどね、、、、うっうっ、、ずっと一緒にいたかった。」
馬車の窓からもう決して来る事のない王都の街を見ておこうと思ったのに涙が止まらない。
遠くへ行こう。出来るだけここら離れた所へ。もう2度と偶然にも会う事が無いような所へ。
*****
それから2週間後、アルベルトは、ハルナへのプレゼントを渡したくて心せいて帰宅した。いつもなら玄関ホールに駆け寄ってくるハルナが現れず不審に思った。
「ハルナは?体調が悪いのか?」
出迎えた執事に問うと目を逸らしながら答えた。
「いいえ。その、、、いらっしゃいません。」
「いない?どう言う事だ?説明しろ。」
「実は、、」
説明の途中でアルベルトはハルナの部屋へ向かった。そこには既にハルナの痕跡は片付けられていて、年代物の家具が整然と置かれている殺風景な使われていない部屋だった。
「クソッ!」
父親である侯爵の執務室へ向かうとノックも無しにドアを開けて侯爵の座る執務机に進み出た。
「父上!ハルナはどこへ?何故止めてくれなかったんですか?」
侯爵は、ジッと気が狂わんばかりの息子を見つめ引き出しから手紙を差し出した。
「彼女からだ。探すな。意思を尊重してやれ。」
奪うように受け取り読み終わると手紙を握り締めた。
「何故だ?ハルナ何故なんだ?何処へ、、、」
部屋を飛び出すと馬で飛び出して王都中を探し回り朝まで帰宅はしなかった。
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