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9.懐かしい侯爵邸

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5年ぶりに帰ってきたギャンダー侯爵邸。あの頃と変わらず庭園には花が咲き乱れ邸内の様子も豪華で変わりがないわ。

見知った場所なのに馬車を降りてから何だか落ち着かない。ここには前侯爵夫人が居ないのはわかっているけど、視線が気になってしまう。直ぐに領地にいる前侯爵夫人の耳に入るんだろうな。約束違反と責めを受けたら、、、でも今は出ていけない。グリーンを置いて出ていけないもの。

「ハルナ?この部屋が不満なのかい?」

「え?」

しまった!あれこれ考え過ぎてボーとしていた。
いつの間にか以前使っていた3階の部屋に案内をされていた。

「ううん、驚いたわ。あの時のままなのね」

「いつでも帰って来れるようにしていたんだ。絶対に逢えると信じていたから。叶って嬉しいよ。」

そう言って頬に手を伸ばしてきたので慌てて両手で彼をつっぱねると下を向いた。

「アル、、ごめんなさい。私はあの時はあれが、、。」

「シッ。今日はその話はよそう。」

その時、続き間の寝室を見に行っていたグリーンベルトが興奮して駆け寄ってきた。

「お母さんすごいよ!ベットがフカフカだ。それに大きなお風呂があるよ!」

アルベルトは、グリーンベルトをヒョイと抱き上げると愛しそうに笑いかけた。

「グリーンベルト、今日からここ侯爵邸がお前の家だ。名前もグリーンベルト・ギャンダーになる。これからはずっと一緒だからな。お父さんと呼んおくれ。」

「うん、、お父さん?へへっ。」

グリーンも照れた笑いをあげて本当に嬉しそうにアルを見つめている。
こうして2人並ぶと赤髪の特徴もだけど2人はそっくりだわ。この2人を引き離していた者として胸が痛んだ。

「アルベルト、あの、、後で今後の事を話をしたいんだけど。」

「すまない。執務が忙しくて1週間はゆっくり話せないんだ。落ち着くまで許して欲しい。」

「う、うん、大丈夫。その頃に時間をくれたら。」

「グリーンベルト、いいやグリーン、お父さんはちょっと忙しくて顔を合わせられないけど、いつもお前の事を思っているからな。」

 そう言うとグリーンベルトの頬にキスをした。グリーンを降ろすと私にスッと手を伸ばし迷いなく唇にキスをしてきた。

驚いて声をあげそうになったらグリーンがニコニコとしながら見あげていた。

「お父さんはお母さんが好きなんだ。友達のカールのお父さんとお母さんみたいだね。」

「ああ、そうだ。愛してる。お前の事もだ。」

そう言ってグリーンの頭をクチャっとなぜると部屋を出て行ったが、私は何も言えなかった。

「お母さん!お父さんのどこが好きなの?お父さんの仕事は何?何歳なの?何が好きなの?」

彼がさると矢継ぎにアルベルトの事を聞いてくるので答えに困ってしまった。
父親がいない事を口には出さないけれどずっと寂しかったんだろう。

親子の対面がスムーズで嬉しいけど、私はこれからどうしたら良いのだろう?
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