偏屈恋愛奇譚

橋本健太

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第1章 17歳 〜思春期少年少女と狂気の社会人〜

第1話 奇妙JK ゆかり

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 2025年4月、大阪関西万博を控え、大阪市は賑わっていた。関西は2府4県あり、その中で京都府・大阪府・兵庫県がメインであり、特に政治・経済・文化の面で多大な影響力を持つ三都がある。歴史情緒溢れる千年の古都 京都市、異人館・南京町・ハーバーランドと新旧の海外の文化が入り混じる港町 神戸市、と並ぶカジュアル×コテコテの商人文化が息づく大阪市。この物語は、そんな大阪を舞台にした思春期少年少女×狂気の社会人が織り成す奇妙×狂気×恋愛の偏屈奇譚活劇である。

 大阪は、キタと呼ばれるエリア。HEP FIVEなど若者文化の中心地 梅田や国立国際美術館や中之島美術館と言った文化的エリア 中之島から離れたビジネス街 淀屋橋・北浜のとある古い街並み残る路地裏に、ひっそり佇む大型の和風家屋。ここは、「曼珠沙華」という名の和風骨董屋で、着物(和服・振袖様々)・茶器・陶芸品などを扱う。店舗兼住宅で、店舗の奥に居住スペースがあり、2階は個人の部屋となっている。
「「「お釈迦様は、蜘蛛の糸を地獄へ垂らしました。犍陀多(かんだた)は、それを掴み、登ろうとしております。すると、足元には、他の亡者たちが登ってくるではありませんか。犍陀多は「「降りろ」」と叫んだ。すると、糸は切れてしまいました。(中略)極楽は、昼でございます。」」」(芥川龍之介「蜘蛛の糸」)
畳張りの小さな和室に、1人の少女が座布団に正座し、小説を読み耽っていた。部屋の本棚には、明治・大正期の文豪の小説や、歴史にまつわる本が置いてある。まるで、明治から昭和初期にタイムスリップしたかのような、そんな雰囲気がある。少女は、黒髪ショートで円縁眼鏡をかけ、コスプレイヤーが着るような軽装の和服を着ており、谷間を露出している。
「犍陀多、アホやん。せっかく、お釈迦様が助けてくれる言うのに「「降りろ」」やなんて。芥川龍之介先生は、ホンマ、人間のエゴイズム書くん上手いわ。」
薄ら笑いを浮かべながら、湯呑のお茶を飲む。彼女の部屋には、制服のカッターシャツ・ブレザー・スカートが、ハンガーにかかっていることから、彼女は学生である。
「さてさて、お客様は何が欲しいんかな?」
階段を降り、店舗に出て、接客を行なう。この時期は、大学の卒業式などで振袖の需要が多く、売り上げはかなり高かったようだ。

 その日の夜、いつものように夕食をとる。翌週から、彼女は進級し、高校2年生になる。家が和風骨董屋を経営している、と言うこともあるのと、彼女が和服が好きということで、店舗の奥にある家の中では、皆和服(軽装)を着ている。
「来週から、ゆかりは高校2年生か。早いモンやな。」
彼女の父親は、お猪口に日本酒を注ぎ、ちびちび飲みながら話す。
「貴方、更に今年は、大阪関西万博やで。世界中から人が、ぎょうさん(関西弁で「たくさん」と言う意味)来よるよ。そしたら、ここも大儲けよ。」
髪を結った細身だが、気の強い感じの女性。彼女の母親である。居間には、昔懐かしのちゃぶ台があり、そこでいただく。この日の夕食は、天ぷら盛り合わせ。
「いただきます。」
お食事中の所、失礼します。黒髪ショートの彼女、名前は笹川ゆかり 16歳。大阪市内の高校に通う高校生である。文学好きで、風変わりな少女。 
「大阪関西万博ね。あのミャクミャクって知っとるか?」
「あぁ、あの目々連か百々目鬼みたいな目のバケモノ?」
「バケモノたぁ、辛辣やなぁ。まぁ、アレやな。70年代の万博の時の、太陽の塔みたいなモンや。分かるヤツには分かるわ。」
ゆかりの父親 笹川康次郎 48歳。茶色い和服を着ている。歴史好きで、特に明治から昭和の文化に興味がある。紅しょうがの天ぷらを塩でいただき、日本酒をグイッと行く。
「前回が、アラブ首長国連邦のドバイでやったらしいで。向こうは空飛ぶ車や、金箔アイスとかがあるで。」
ゆかりの母親 笹川雅(みやび) 45歳。藍色の和服を着ている。骨董品や和服好きで、刀剣にも興味がある。
「金箔アイス?美味いんかな?」
海老天・さつまいも天を食べ、天つゆをかけたご飯をかっこみながら、ゆかりは呟く。
「さぁ、金箔なんか味はせぇへんやろ。せやけど、あれは10万円するで。」
「じ、10万円?!」
父は驚いて、飲んでいた日本酒を噴き出す。
「すまん、すまん。まぁ、なにはともあれ楽しみやな、万博。ゆかりも高2か、青春楽しみや。」
「うん。」

 4月7日、高校2年生としての学校生活が始まる。
「う、うーん…。」
小春日和の陽気な陽射しが、窓から射す。寝間着用の浴衣を脱ぐ。下は純白のふんどし。ふんどしを外し、同じく純白の下着を身に着ける。歯を磨き、それから制服に着替える。
1階に下りて、朝食をいただく。ゆかりの好物のココアと、ロールパンにスクランブルエッグ。ココアを飲んで、一息つく。
「ふぅ。」
「宿題は、全部持ってるか?」
「もちろん。」
朝食を済ませ、母から弁当を受け取り、ゆかりは学校へ行く。ダークネイビーのブレザー・ボックスプリーツのスカート・黒い靴下・青いリボンと様になっている。通勤通学ラッシュの淀屋橋から梅田に向かい、阪急電鉄 大阪梅田から淡路へ行く。淡路で地下鉄堺筋線で学校へ向かう。桜が咲き、新入生は入学式、在校生は進級と新たな門出である。新クラスになり、ゆかりは気分が高まる。
「また新たなストーリーが、幕を開ける…。」
始業式が終わり、ゆかりは文芸部の活動として、小説を書く。奇妙な恋愛物語で、人形の女の子が出て来る。

「私は、球体関節人形のユミ。私の旦那様は人間なの。」
人形のユミは、黒髪ロングで着物を着ている。着物は、「はいからさんが通る」のようなものである。

「人形との恋?人形が人間に恋してるの?」
「どっちもやで。」
あまりに奇妙なストーリーで、同級生も難解さに戸惑う。見方によっては、稲川淳二の伝説の怪談「生き人形」を彷彿とさせる不気味さもある。
「こんな感じで、男の子に抱かれたいんよ。」
桜が咲く校庭。花びらが舞う景色を見ながら、弁当を食べる。ゆかりの物語は、始まったばかりだ。
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