Strawberry Film

橋本健太

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第2話 香塚 薫 誕生

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   香塚薫は、1974年11月15日 京都府京都市で、写真家の息子として生まれた。彼の父親は代々、写真家として活動しており、母親は画家で、絵画展を開くなど、彼は幼い頃から絵画や写真と言った美術品に触れる機会に恵まれた。小学生になった彼は、図工の時間が好きで、他の児童が真似出来ないような独創性の高い作品を作って、皆を湧かせ、先生の度肝を抜いた。
「阿修羅像です。」
「スゴい、細部までこだわっている…。」
他にも、彼は映画が好きで、特に1980年代は香港映画全盛期で、数々のヒット作が出ていた。ジャッキーチェンはコミカルなアクションで、観衆の笑いと興奮を誘った。父親とは、アクション映画をよく観に行った。

「プロジェクトA」(1983年)香港
ジャッキーチェン・サモハンキンポー・ユンピョウが共演した作品。1900年の植民地の頃の香港が舞台。海賊達と戦うアクションとコミカルが混じった作品。
「サモハンキンポー、めっちゃ動けるやん!」
コミカルなアクションを披露し、美しさにこだわったジャッキーチェンと「動けるデブ」と言われたサモハンキンポーの共演は、小学生だった薫少年の心を掴んだ。この映画の主題歌「東方的威風」の勇ましいマーチのような曲調は耳に残り、色々な意味で全盛期だった香港を象徴している。

「ポリスストーリー・香港国際警察」(1985年)香港
ジャッキーチェンが監督・脚本・主演を全て行い、主題歌も作曲するなど、ジャッキーチェンの傑作中の傑作。香港警察を舞台に、ジャッキーチェンが警官として、悪を取り締まり、マフィア達と戦う。
「おわー。ガラスが割れまくってる。」
「爆発しまくってる!大丈夫なん?」
最後のデパートの鉄柱を掴みながら、電飾が爆発する状態で下りるシーンは、ジャッキーチェンの身体を張ったアクションとして、伝説になっている。主題歌「英雄故事」は正義のために戦うヒーロー、の歌であり、当時の香港警察は市民に英雄として慕われ、警官もそれを誇りに思っていた…。

 小学校高学年になった彼は、心底ジャッキーチェンに心酔しており、アクションを真似して、独学で武術も身に着けた。1980年代は校内暴力が社会問題となり、ツッパリや暴走族が全盛期の頃だった。
「ったく、いい歳の人間がバイクでブンブンブンブン、何を粋っとるんや…。」
小さい頃から、美術に触れ、感性を磨いていた彼は達観して、冷めた様子で一瞥した。6年生になった薫は、同級生の女の子を好きになった。
「おはよう、有美子ちゃん。」
「おはよう、薫君。」
彼女の名前は、美倉由美子。ショートヘアで眼鏡をかけた大人しい感じの女の子である。薫は、有美子にメロメロでよく、父からプレゼントされた一眼レフカメラで、彼女の写真を撮っていた。
「いいよ、可愛いよ。有美子ちゃん。」
「ありがとう。薫君、ロバート・キャパみたいやな。」

    6年生のある日、学校の窓から風景を撮影していると、足を滑らせ、2階から転落し、腰を強打し、3週間家で寝込んだ。病院で診てもらい、家に帰って布団に横たわった時に、父は静かに諭すように呟いた。
「カメラは壊れたら修理すればいい。でもな、人は死んでしもうたら終わりや。薫、命を大事にせぇ。」
薫はしばらく立てない状態だったので、机を布団の上に置き、身体を起こした状態で勉強や読書をした。父親が持っていたグラビアアイドルの雑誌を読んで、恋愛に思いを馳せた。
「あー、こんな女の子と付き合いたいなー。」
グラビアで、年上の女の子の水着姿の写真を、真剣に見ていた。
「スゴい…。女の子、こんなムチムチなるんや…。いつか、こんな写真をいっぱい撮りたいなー。」

   怪我が完治し、再び学校に通えるようになった。1987年1月、恋人の由美子ちゃんが小学校卒業と同時に引っ越してしまうことを知り、最後に何か出来ないかと考えた。雪の降る京都の町を1人歩いていると、公園のブランコに座っている彼女を見た。赤いコートに身を包み、表情はどこか寂しげだった。
「由美子ちゃん!」
「あ、薫君!」
寒い中、2人はベンチに移動し、肩を寄せた。
「由美子ちゃん、引っ越すんやってな。」
「うん、お父さんの仕事で福岡まで行くんよ。」
「福岡か…。会われへんくなるな…。」
初めて好きになった女の子が、目の前から居なくなる。そんな切ない状況に、薫の目に涙が浮かぶ。雪が降り注ぐのと相まって、彼の心に冷たい隙間風が吹く。寂しさで涙が流れてくる。
「うぅ…。由美子ちゃんとお別れやなんて…。」
「薫君、泣かんといて…。」
由美子は薫をそっと抱き寄せ、見つめ合い、彼の頬を両手で挟んだ。
「薫君、元気出して…。」
そっとキスをした。彼女の唇の感触は、柔らかく、そして温かかった。冬が終わり、彼女は福岡へ引っ越した。由美子ちゃんを撮った写真は、小学校の卒業アルバムに挟んでいる。
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